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旬のチェリーを楽しむ、ブラックフォレストカップケーキ【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】

旬のチェリーを楽しむ、ブラックフォレストカップケーキ【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】

アメリカンチェリーの季節がやってきました。イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんが、チェリーと聞いて思い出すのは「ブラックフォレストケーキ」。チョコレート生地のケーキに、キルシュで煮たチェリーと生クリームを挟んだ、リッチなケーキです。今回は、ご家庭でも作りやすいカップケーキに応用したレシピを教えていただきます。旬のチェリーにひと手間加えれば、新しい美味しさが発見できますよ。

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イギリスでも人気の「黒い森のケーキ」

黒い森のケーキ
チェリーを飾ったブラックフォレストケーキ。Anna_Pustynnikova/Shutterstock.com

アメリカンチェリーの季節ですね! チェリーってもう、その見た目だけで本当に可愛くて、私の大好きなフルーツの一つです。アメリカンチェリーといえば、私の中では「ブラックフォレストケーキ」。日本でも「黒い森のケーキ」や「フォレノワール」などと呼ばれていますが、ドイツ発祥のケーキで、チョコレートのスポンジ生地に、お酒の効いたシロップを染み込ませ、チェリーのコンポートと生クリームをたっぷり挟んで仕上げるお菓子です。聞いた話によると、白いクリームは森を覆う雪を、削ったチョコレートは落ち葉を表しているとか。森の広がるドイツらしい、深い味わいを感じさせるケーキですよね。

私はかつて、イギリス、コッツウォルズのホテルで働いていたのですが、このお菓子はイギリスでも人気があって、クリスマスシーズンや特別な機会に提供していました。華やかで、とっても美味しいですからね。

コッツウォルズでの修業の日々

コッツウォルズ、ボートン・オン・ザ・ウォーター
コッツウォルズで人気の村、ボートン・オン・ザ・ウォーター。

さて、今回はコッツウォルズでの修業時代のお話を少ししたいと思います。

日本でカフェやティールームのパティシエとして働いた後、私は、英国コッツウォルズにある「スリー・ウェイズ・ハウス・ホテル」という、イギリスの伝統的なプディングを提供することで有名なホテルで働く機会を得ました。ホテルという大きなキッチンでの仕事は初めてでしたが、渡英前は不思議なことに、英語や仕事の不安を全く感じず、ワクワクが優っていました。

スリー・ウェイズ・ハウス・ホテル
私の修業の場、スリー・ウェイズ・ハウス・ホテル。

しかし、行ってみてびっくり! たくさんのカルチャーショックが私を待ち受けていたのです。まずは、仕事の担当範囲。多い時には100人を超えるお客様のデザートや朝食の支度を、たった一人で準備するということも。それまでそんな量のお菓子を作ったこともなく、材料の質の違いもあって、それはもう、本当にたくさんの失敗をしました。それから、レシピもあってないようなもの。お菓子作りの担当を引き継ぐ時、砂糖の量は味見して決めるなど、かなり適当で驚きました。また、季節ごとのメニュー替えの際には、前日になっていきなりシェフに言われたことも……。日本では考えられない、はちゃめちゃな感じで、最初は本当に苦労しました。悔しくて家で泣いたこともたくさんありましたし、何度辞めたいと思ったことか!

イギリスの仕事中
数少ない仕事中の写真。近隣の方々を招いてのワークショップで、とっても楽しかった思い出。

そんなこともありましたが、ここでの経験はかけがえのないものでした。何があってもなんとかなるさという私の強さ、言い換えると大らかさは、この経験で培われたといってもよいでしょう。

苦労した生クリームの扱い

生クリーム
生クリームの扱い方が分かるまで一苦労。HikoPhotography/Shutterstock.com

材料の違いに苦労したとお話ししましたが、特に苦労したのは生クリームです。イギリスの生クリームには、「シングルクリーム」という脂肪分の低い泡立たないものと、お菓子作りに使う、脂肪分の高い「ダブルクリーム」というものがあります。このダブルクリーム、とっても濃厚で美味しいのですが、泡立てるときに気をつけないと、すぐにボソボソになってしまいます。日本でいうところの「8分立て」にすると、とんでもなくボソボソになって飾り付けに使えなかったり、日本での感覚でムースを作ると、ボソボソしてしまうか、逆に加減しすぎて固まらなかったり。この材料には、本当に泣かされました。

でも失敗があるからこそ、成功がある! 何度も何度も失敗したけれど、最後には私の作ったデザートが褒められるようになりました。最初の頃は、「日本人の小娘が何しに来た?」という冷たい雰囲気だったので、普段多くを語らないシェフにポンと肩を叩かれた時に、やっと認められたとホッとして、涙がじわっと溢れたのを覚えています。

そんな、私にとっては、イギリスでの生クリームの失敗や成功を思い出させる「ブラックフォレスト」。今回は簡単にできるよう、これをカップケーキにして仕上げていきます。

ブラックフォレストカップケーキの作り方

ブラックフォレストケーキの作り方

材料(ミニマフィン型 12個分)

〈チェリーのコンポート〉

  • アメリカンチェリー(柄を除いて) 100g
  • きび砂糖(グラニュー糖でも可) 25g
  • キルシュ 大さじ1/2

〈カップケーキ〉

  • 無塩バター 60g
  • きび砂糖(グラニュー糖) 60g
  • 卵 1個
  • 薄力粉 60g
  • ベーキングパウダー 小さじ1
  • ココア 15g
  • チェリーのコンポート 12個

〈飾り用〉

  • チョコレート(またはココア) 適量
  • アメリカンチェリー 12個
  • 生クリーム 150ml
  • グラニュー糖 小さじ2

作り方

  1. チェリーのコンポートを作る。
    アメリカンチェリーを洗い、タネを取る。
    *「チェリーピッター」という器具を使うと、とても簡単にタネを取り出すことができます(インターネットで販売しています)。
    チェリーのコンポートの作り方
  2. 小鍋に、タネを抜いたチェリーときび砂糖、キルシュを入れ、1時間ほど置いておく。
    *お酒の強い方はお好みで、チェリーに火を通した後にキルシュを入れてもよいでしょう。
    チェリーのコンポートの作り方
  3. 1時間後、きび砂糖が溶けて、チェリーからジュースが出ていたらOK。
    チェリーのコンポートの作り方
  4. 火にかける。沸騰したら弱火にして5分ほど煮る。煮えたら火を止め、冷ましておく。
    *火を通す時は、あまり煮崩れないように。しっかりとジュースが出ていればOKです。
    チェリーのコンポートの作り方
  5. カップケーキを作る。
    オーブンを180℃に予熱する。
    柔らかくしたバターにきび砂糖を入れ、しっかり混ぜる。
    カップケーキの作り方
  6. 白っぽくなったら、溶いた卵を少しずつ入れ、その都度しっかり混ぜる。
    カップケーキの作り方
    卵が全部混ざった状態。
  7. 粉類(薄力粉、ベーキングパウダー、ココア)をふるい入れ、さっくり混ぜる。
    カップケーキの作り方
    全部混ざった状態。
  8. カップケーキ型にペーパーカップを入れ、型の半分くらいまで生地を入れる。
    そこにチェリーのコンポートを1つ入れて、ちょっと押し込み、その上に、残りの生地をのせていく。
    黒い森のケーキの作り方
  9. 180℃のオーブンで約20分焼き、冷ましておく。
    黒い森のケーキの作り方
    焼き上がり。
  10. 生クリームにグラニュー糖を入れ、8分立てにする。
    冷めたカップケーキに生クリームを絞り、チェリーを飾り、削ったチョコレート(もしくはココア)をかけて完成。
    *絞り口金はなんでもOK! 今回は直径1.3cmの口金を使用。
黒い森のケーキの作り方

カップケーキは冷蔵庫に入れると固くなるので、食べる直前に生クリームを絞るのがおすすめです。コンポート用のチェリーが大きめな場合(100gはかって12個に届かない)は、半分にカットして使いましょう。

今回は作るものがちょっと多くて、大変そうに見えるのですが、一つひとつは簡単なので、日を分けて作ってもよいでしょう。私も今、6歳と2歳のやんちゃな子供たちの子育て中で、コンポートとカップケーキを作る日を分けて仕上げました。そういう作り方もあってもいいのです。お菓子作り、気軽にぜひ試してみてくださいね!

Credit

写真&文/The Pudding Party Tomo
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA

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