イギリスのお菓子代表、スコーン!【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】
イギリス菓子の王道、スコーン。イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんは、英国留学中にたくさんのティールームを訪ね、理想のスコーンを求めて、あちこち食べ歩きました。材料はいたってシンプルなのに、作るのはなかなか難しい。奥の深いスコーン作りを教えていただきます。
目次
イギリスのお菓子といえば
イギリスのお菓子といえば、スコーン。イギリスのことをあまり知らない方でも、きっとこれだけはご存じなのではないでしょうか。かつて、友達に留学する話をした時も、「イギリスでお菓子の勉強? イギリスって何がある? スコーン? あとは?」と、スコーンだけは名前が出てきました。
イギリスには、ティールームがたくさんあります。どんな小さな田舎の村にも、パブとティールームは必ずあるといってよいでしょう。
そのティールームでイギリス人が何を頼むかというと、一番人気はクリームティー。スコーンと紅茶のセットです。私もイギリスで暮らす間にたくさんのティールームを訪れましたが、初めてのお店では、必ずこのクリームティーをオーダーしていました。なぜかというと、まずはその店のスコーンがどんなものか、確かめたいから! 私にとって、スコーンは美味しさを計る基準。スコーンが美味しければ、その店はリピート確定、他のメニューも試すことになります。
相棒はクロテッドクリーム
クリームティーを頼んで、スコーンと一緒にお皿にのってくるのは、大抵はイチゴジャムとクロテッドクリーム。時には、生クリームやバターだったりもします。英国に滞在中、私はクロテッドクリームが大好きでした。生クリームとバターの中間といった感じの、とろりとした、とっても濃厚なクリームです。遠心分離機にかけた生乳を、低温のオーブンで長時間焼いて作るもので、表面には乳脂肪の層となる〈クラスト〉が現れます。
さて、このクロテッドクリーム、乳製品で有名なイギリス南西部がその産地なのですが、南西の端にあるコーンウォール州では〈コーニッシュ(コーンウォールの)クリーム〉、そのお隣のデボン州では〈デボンクリーム〉と呼ばれています。
イギリスのホテルで働いていた時、同僚のダニーに「コーニッシュクリームとデボンクリームって、どう違うの?」と訊いてみたら、
「同じだよ! 作っているところが違うだけさ。イギリス人は自分が住んでいるところが好きだからね。主張するのが好きなのさ」
との答え。2つの州はどうやら、永遠のライバル同士のようです。
コーンウォールへの旅
デボンを訪ねる機会は残念ながらなかったのですが、コーンウォールには友達と旅することができました。宿泊したペンザンスという町からバスに乗り、セント・アイヴスという、これまたラブリー(イギリス人は「可愛い」だけでなく、「素敵!」とか、いろいろな場面で「ラブリー」という表現を使います)な町に行ったのですが、その時、スーパーで、スコーンとジャム、クロテッドクリームをおやつに買ってから向かいました。
この時のクロテッドクリームはロダス社(Rodda’s)のもの。後から知ったのですが、ロダス社は1890年創業のコーンウォールの老舗メーカー。ロダス社の製品は、当時、私が住んでいたコッツウォルズのティールームでも使われていましたし、近所のスーパーでも売られていました。なんと、最近は日本でも手に入るようになりました。これにはびっくり!
そのお味はというと、海の近くということもあるのか、ちょっぴり塩気を感じて、甘味もあり、コクもあり。表面にクラストがあって、感動するほど美味しかったなあ。
イギリス人って面白いなと思うのですが、クロテッドクリームに関して、こんな論争があります。スコーンを横に半分に割って、クリームを先にのせるか、ジャムを先にのせるか。スコーンを頂く流儀は地域によって違いがあるようで、クリームを先にのせるのがデボン、ジャムを先にのせるのはコーンウォール。これは、長いこと議論されている、かなり真剣な戦いなのです。ちなみに私は、クリームを先にのせる派! これは絶対譲れないなあ。
ベストのスコーンを求めて
スコーンは面白いもので、材料はいたってシンプルで、作り方も、誰でも作れるくらい簡単ですが、だからこそ、美味しく作るのが難しい。簡単なのに難しい? そうなのです、簡単、シンプルなものほど、お菓子作りは難しいのです。ほとんどの場合は、混ぜ方にポイントがありますが、材料自体の味も要(かなめ)になります。気温や湿度でも違ってくる。だから、お菓子作りは面白い!
イギリスのティールームでも、あるところではパンのようだし、あるところではポロポロしてとってもドライ。いろいろなスコーンがあります。
おうちで作れるものなので、どの家庭もきっと、これがベスト! というレシピを持っていると思います。でも、中にはスコーンを作ったことがないという英国人も。作るのが難しいし、どこでも買えるから、というのが理由のようですが、私はやっぱり手作りするのが好きです。
留学中に、どれほど食べたか分からないスコーン。結局、ベストだと思ったのは、私が住んでいた、コッツウォルズのチッピングカムデンにあるティールームのスコーンでした。周りがサクッとしていて、中がふかっとしているスコーンで、本当に美味しかった!
そのティールームには、よくランチを食べに行ったりもしていました。半地下で、ちょっと薄暗くって、暖炉があって。とってもイギリスらしいティールームでした。よく、食べ物が美味しくないといわれるイギリスですが、田舎のティールームやパブのお食事はとっても美味しいですよ!
さて、今回は、その最高の味に近づけるべく、何度も何度も焼いて作った、私のベストと信じるレシピをお伝えしたいと思います。作り方を覚えるほど何度も作っています、と言ってくださる方もいるレシピです。秘密にしておきたいくらい美味しいですよ!
では、作っていきましょう!
スコーンの作り方
材料(直径4.5cmの抜き型約9個分)
- 薄力粉 250g
- ベーキングパウダー 15g
- きび砂糖 30g
- バター(小さく角切り) 60g
- 卵 1個
- 牛乳 大さじ4
作り方
- オーブンを200℃に予熱する。
- 薄力粉、ベーキングパウダー、きび砂糖、角切りバターをボウルに入れ、両手ですり混ぜる。
バターをほぐして粉にまぶした状態。
指先をすり合わせたり、両手をこすり合わせたりするようにして混ぜ、どんどんサラサラにしていく。これは、まだバターの粒が残っている状態。
バターの粒がなくなれば終わり。全体がサラサラの状態になりました。 - 粉がサラサラになったら、割りほぐした卵と牛乳を合わせたものを入れ、スパチュラで手早くさっくり混ぜる。
- このくらいになったら手でひとまとめにする。ここまでの作業は手早くやりましょう。
- ひとまとめにしたら台に出す。まだポロポロしている、打ち粉をしなくていいくらいの状態がベスト。
- 手で厚さ3cmくらいに整える。のし棒などは使わなくて大丈夫。手で厚さを均等にしましょう!
- 型で抜く。
- 200℃のオーブンで約15分焼く。
- 完成!
今回は、ロダス社のクロテッドクリームを特別に用意しました。ちゃんとクラストもありますね! 国産のものは個人的にあまり好みでないので、いつもは食感が似ているサワークリームを代用しています。これはこれで、さっぱりとしていて美味しいですよ。
横に半分に割って、クロテッドクリームとジャムをたっぷりのせていただきます。
たっぷりのミルクティーもお忘れなく! お庭でお茶するにもいい季節。
みなさんのティータイムが素敵なものになりますように。
Credit
写真&文/The Pudding Party Tomo
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
*スコーンの作り方を動画でご覧になれます。
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