アレンジ上手は器選びにコツあり! ぽったり型の花器にレモンイエローの春の花活け

フラワー&フォトスタイリスト、海野美規さんのWeb上アレンジメントレッスン。季節の花をサラリと活ける感覚を身につけて、素敵な大人になりましょう。むずかしい決まりやテクニックは一切なし。ちょっとしたコツと自由な発想で、アレンジメントが上手になりますよ。今回はアレンジメント上手になれる器選びのコツと明るい春をイメージさせるレモンイエローのフラワーアレンジをご紹介します。南仏のユニークな「レモン祭り」のお話も!
テクニック要らずのフラワーベース選び
春爛漫、色とりどりの花がお花屋さんにも庭にもたくさん! フラワーアレンジするのが楽しい季節です。むずかしく考えずに、室内に花を飾ってみましょう。フラワーアレンジには、基礎的なものから上級者向きまでさまざまなテクニックがありますが、そんなテクニックを習得せずとも、誰でも簡単に上手にまとめるコツが、器選びです。
意外と難しいガラス器、「投げ入れ」OKの陶器

まずは素材。花器に多いガラス素材は、透明感があり軽やかでどんな花とも似合います。ただし、水につけた茎の部分も見えるため、「スパイラル」といったテクニックやガラスの花器の一箇所に茎が集まるように花を挿すなど、とにかく花だけでなく、器の中の茎の様子にも気を配る必要があります。


一方、陶器などの茎の部分が見えない器は、「投げ入れ」ができます。投げ入れとは、給水スポンジに花茎を固定したり、前述のようなスパイラルなどの手法を用いるアレンジメントに対し、花器にフリースタイルで花を挿していく気軽なアレンジの方法です。中の茎の形状を気にする必要がないので楽ですが、ただし「投げ入れ」は花が思った位置に留まらず、新しい花を挿し足していくにつれ形が崩れて手こずることも。そんな場合には器の中に「落とし」という花留めを入れる方法もありますが、花器の口がある程度狭いものを選ぶのも花器選びのもう一つのコツ。口が狭いとある程度花が留まってくれて、生けやすいのです。そして、色はやはり白色がどんな花にもよく合い重宝します。
生けやすくてお気に入りのデンマークの花器

私が投げ入れするのにとても気に入っているフラワーベースは、ケーラー(KÄHLER)のハンマースホイ(Hammershoi)というシリーズ。デンマークのブランドで、食器や雑貨など、魅力的な陶器やガラス器が多数あります。ハンマースホイシリーズの花器はいくつかサイズがありますが、私はこのコロンとした形のSサイズがお気に入り。口が小さいので、花が動かずに生けやすいのです。ぽったりしたシルエットながら、縦のラインがとても美しく洗練されたデザインで、大輪の花も、可愛らしい小さな花も、枝物の花もよく似合い、どんな花もモダンな印象にしてくれる魔法のフラワーベースなのです。
今回は、このハンマースホイのSサイズの花器を使って、雰囲気の違う2つのアレンジをしていきましょう。
春を告げる黄色の花と白い花の組み合わせのアレンジ
<使った花>

春らしいレモンイエローの花と白い花の組み合わせにしました。花びらがヒラヒラした花を選んで、軽やかで、柔らかい雰囲気のアレンジに。
- 八重咲きチューリップ 黄色 3本
- 八重咲きチューリップ 白色 2本
- スイートピー 5~6本
- 胡蝶蘭 2本
<手順>
同じ花をまとめて入れるようにします(グルーピング)。
- 黄色のチューリップ3本を入れます。
- 胡蝶蘭の枝ぶりを見て、左右どちらかに流れるように入れます。
- 白のチューリップ2本を入れます。
- スイートピー を入れます。
- 全体を整えて完成!

ユキヤナギを入れると、また少し違った雰囲気になります。

ユキヤナギをメインに白い花のアレンジ
<使った花>

こちらは、ユキヤナギの小さな白い花とネコヤナギの枝物の花の組み合わせです。フワッとラフに生けると雰囲気がでます。
- ユキヤナギ 3本
- ネコヤナギ 5本
- 白チューリップ 2本
- ホワイトスター 2本
- スイセン 2本
<手順>

- ユキヤナギを横に広がるように入れます。
- ネコヤナギ、チューリップなどを入れます。
- 全体的に、フワッと広がったような感じに入れましょう。高さは、器とだいたい同じくらい。1:1がバランスよく見えます。
南仏マントンのレモン祭り

3月になると、春をお祝いするお祭りが盛んになりますね。長く寒い冬が終わり、待ちに待った春の訪れは世界中の人々の喜びです。
南フランスにマントンという街があります。ここマントンでは、2月中旬から3月初めにかけて、春をお祝いするレモン祭りFête du citronが開催されます。レモン祭りは、モナコF1グランプリとニースのカーニバルと並んで、南フランス3大祭りの一つです。私は二十数年前に、このレモン祭り開催中のマントンに行きました。

レモン祭りの内容を知らないままマントンを訪れたものですから、街中レモンとオレンジだらけでただただびっくり! 想像以上のレモン! 圧倒されてしまいました。札幌の雪まつりの雪像の、レモンバージョンといった感じでしょうか。それに加えて、レモンで飾り付けた巨大な山車のパレード。毎年テーマがあるようで、私が見たのはたくさんの恐竜(?)でした。パレードでは、次から次へと、黄色とオレンジ色の恐竜が闊歩していました。
驚くほどのレモンとオレンジ、きっと街の中は爽やかな柑橘系の香りがしただろうと思いますが、残念ながら、香りについてはどうも思い出せません。どんなだったでしょうか?

大きなオブジェも山車も、生のレモンとオレンジを1個1個付けています。後から調べると、1回の祭りで使うレモンの量は150トン。「これだけのレモンを使って、ちょっともったいない?」とその時に気になっていましたが、そこは心配ご無用、無駄にするなんてことはないのだそうです。実を傷つけないように、針金や釘などは使わず、金属製の土台にゴムで実を取り付けていて、お祭り後は、レモンジュースやジャム、お酒などに加工して販売するそうです。よかった!

今年のレモン祭りは来年まで延期ということです。レモン祭りがなくても、あの素敵な南仏マントンの街には、暖かくて、眩しくて、キラキラした春の陽が、今年もあふれていることでしょう。
Credit
写真・文/海野美規(Unno Miki)
フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
https://www.annegarden.jp/