健康と美容をサポートする「美味しい」メディカルハーブティーライフ1 [概要編]
世界的なパンデミックの状況下、免疫力アップの効果や、ナチュラルなおうち時間の楽しみとして注目されているハーブティー。ボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんが、植物とのさまざまな関わりを通して、より健康で心地よい暮らしを実現する提案をする連載【乙庭Styleのガーデンセラピー】。健康や美容をサポートしてくれて、飲んでも美味しいメディカルハーブティーについてご紹介します。
目次
健康や美容をサポートするメディカルハーブティー
今回から数回に分けて、健康や美容・アンチエイジングをサポートし、美味しい食習慣としても取り入れやすいメディカルハーブティーの活用法についてご紹介します。
2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大の影響などもあり、免疫力向上など「病気にならないための」予防や、先行きの不透明感からくる精神不安や不眠の改善への意識が高まった方も多いのではないでしょうか。
また、テレワークなどにより増えたおうち時間をナチュラルに・健やかな気分で過ごしたいという方も多いことと思います。
ところで、私は2020年、植物のある生活から健康寿命を延ばし人生の質の向上を目指すガーデンセラピーコーディネーターの1級資格を取得し、植栽事例でもガーデンセラピーコンテストのグランプリを受賞いたしました。
ガーデンセラピーの重要な要素の一つである「食事療法」への専門知識として、メディカルハーブの勉強もしており、自身の毎日の生活習慣としても積極的にハーブティーを取り入れています。
そのような、ガーデンセラピーとメディカルハーブの知見から、実際に私が行っている具体例なども交えて、実践しやすく「自分に合った」ハーブティーの活用・カスタマイズ法を紹介していきます。
上写真は、私のある日の「リラックス&気分ベースアップ&肌ケア」コンセプトのオリジナルブレンドティーです。体調や気分に合わせてハーブをコーディネートできると楽しいですよね。
本記事はメディカルハーブティーの概要編、次回以降は実生活や目的に応じた実践編となります。
健康で心地よい日々の暮らしのヒントになれば幸いです。
「ガーデンストーリークラブ」のオンラインサロンでもいち早く情報発信しています
じつは、私のメディカルハーブティーの活用法については、2020年12月に開催されたガーデンストーリークラブ会員向けの私のオンラインサロンでも、私が実践しているガーデンセラピーのひとつとして取り上げ、具体的に解説しています。
ガーデンセラピーのことだけでなく、園芸家、デザイナーとして私が注目している植物の最新情報や、園芸の世界観を広げるのに役立つ図書の紹介など、オンラインサロン限定の情報をたくさん発信しています。
私以外の先生方のオンラインサロンや講座、ガーデンストーリー の倉重編集長のオンラインサロンなど、テーマも多岐に渡り充実し、交流の場としても盛り上がっておりますよ!
ご興味ある方はこちらの記事をご参照ください。
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メディカルハーブとは
「ハーブ」という言葉はよく聞きますが、「メディカルハーブ」という言葉にはあまりなじみのない方も多いかもしれませんね。
「ハーブ」という言葉の定義は広く、一般的には料理の香り付けや保存料、薬、香料、防虫などに利用されたり、香りに鎮静・興奮などの作用があり、生活に役立つ有用植物を指します。
主にヨーロッパで古くから用いられてきたローズマリーやタイムなどの香草以外にも、オーストラリアの先住民が薬用に用いてきたティーツリー、南米地域でお茶として愛飲され近年ではその高い栄養価が注目されているマテなども「ハーブ」といえます。その中でも健康維持を目的に使用される植物が「メディカルハーブ」という呼び方で区別されます。
ハーブという言葉で真っ先に思い浮かぶラベンダーやミントなどのいわゆる「香草」だけでなく、スギナやセイヨウタンポポ、イチョウなど、日本人になじみの深い「えっ、これもハーブ?」と一瞬考えてしまう、健康・美容効果が期待できる植物も、メディカルハーブの分野では取り扱います。
いくつか例を挙げてみましょう。
街路樹などでおなじみのイチョウ(Ginkgo biloba)の葉も重要なメディカルハーブの一つ。アルツハイマーや脳血管型の認知症の症状に対する研究も進んでおり、血行循環の促進により冷え性や肩こりにも役立つといわれています。
宿根草ガーデニングでもおなじみのエキナセア・パリダ(Echinacea pallida)は、北米先住民が最も重用したハーブといわれています。その免疫力向上作用が注目され、サプリメント製品でも販売されていますよね。
「ビタミンCの爆弾」と呼ばれるローズヒップ (Rosa canina)。ビタミンCは美肌に必要とされるコラーゲンの産生に必要だったり、白血球・リンパ球に含まれ病気への抵抗力を高めたり、イライラやストレスに抵抗する際に多く消費されますが、ヒトの体内では合成できず、飲食物から摂取しなければならない栄養素です。ローズヒップには、ビタミンCが熱に壊れにくい形で豊富に含まれており、ハーブティーでの摂取はまさにうってつけといえます。
このように、メディカルハーブのメジャー選手の中には、園芸家にとって観賞用としてなじみの深い植物も多いのです。
一方で、厄介な雑草の代表格として知られるスギナ (Equisetum arvense)も、メディカルハーブとして取り扱われます。スギナはケイ素などのミネラルに富み、肌や爪、髪ツヤを健やかに保ったり、骨粗鬆症の予防などに用いられます。
メディカルハーブの分類は、園芸で目にしていた植物や雑草だと思っていた植物が持つ健康や美容への有用性に改めて気づかされることも多く、生活に役立つ知識としても大変興味深いものです。
ただし、植物の中には人体に有毒なものもありますし、メディカルハーブも医薬品との飲み合わせや用法用量に注意を要するものもありますので、安全を第一に考えて使用しましょう。近年では、メディカルハーブの入門書や専門書も出版されています。書籍などもぜひ参考にしてください。
自然療法としてのメディカルハーブとその成分・作用
人間が本来持っている自然治癒力をサポートし、不調や病気で崩れた心身バランスを整えることで元のよい状態に戻すアプローチをナチュロパシー(自然療法)と呼びます。
人間は世界各地で古くから植物の効能を健康維持や病気の予防などに役立ててきました。メディカルハーブはもっとも歴史がある自然療法の一つといえるでしょう。
古来からの伝統的な療法ではありますが、今日ではメディカルハーブの有効性について、科学的な研究も進み、多くの研究成果も発表されています。身体の悪い部分だけに対処するのではなく、心と体を全体的(ホリスティック)に整調していく自然療法は、近代西洋医学と統合的に補完し合えるアプローチとして注目されています。
植物は光合成で作られたブドウ糖を元に炭水化物やアミノ酸・脂質など生命維持に必要な物質を作ると共に、その他さまざまな植物化学(フィトケミカル)成分を体内で合成します。このフィトケミカル成分がナチュラルハーブの有効成分となります。厳しい自然環境や外敵から植物が自身を守るために作り出したこれらのフィトケミカル成分の作用を人間も利用させてもらっているのですね。
メディカルハーブには、1種類のハーブでも数百種というフィトケミカル成分が含まれます。複数の成分が相乗的に作用して、一つの症状に対してだけでなく、心と体の両方に穏やかで複合的な効果ではたらきかけます。
メディカルハーブが持つ主なはたらきとしては、細胞の老化を促進する細胞の酸化を抑える抗酸化作用、病原菌などから身体を守る抗菌・抗ウイルス作用、自律神経やホルモン分泌・免疫系を整える生体防御機能調節作用、炎症を鎮めたり筋肉の緊張を和らげたりする薬理作用、そしてビタミン・ミネラル・食物繊維などを補う栄養素補給が挙げられます。
日常生活に上手にメディカルハーブを取り入れることで、心身の健康バランス調整や美容・アンチエイジングなどに役立ててみてはいかがでしょうか。
通年使えるドライハーブが便利です
一般に「ハーブティー」というと、庭摘みのミントなどを使ったフレッシュハーブティーを連想される方も多いかもしれませんね。
しかしメディカルハーブは、植物的にみると、日本では雑草扱いのスギナから熱帯性の植物まで多岐にわたり、庭という環境で一概に育てられるものでもなく、園芸的な観賞目的にはそぐわないものも多いです。
上写真は、南アフリカで「不老長寿のお茶」として親しまれ、老化を促進する活性酸素の除去や代謝促進のはたらきが注目されているルイボス(Aspalathus linearis)です。ルイボスが自生・栽培できるのは、南アフリカの西ケープ州 セダーバーグ山脈一帯のみに限られています。
このように、メディカルハーブは、日本での栽培自体が難しかったり、栽培したとしても乾燥の手間や、ハーブティーだけでは消費し切れないほど収穫できてしまったりと、栽培労力に対してメリットが得られにくいといえます。
そのような観点から、メディカルハーブは、自家栽培ではなく、食用として製品化されているドライハーブを使うほうが、必要なハーブを必要な分だけ手に入れられて合理的でしょう。今日ではネット通販などでも大概のメディカルハーブが入手可能です。
ドライハーブを購入する際は、必ず「食用」クオリティのものを購入します。無農薬・有機栽培のものであればより安全ですね。またパッケージや購入サイトで、植物学名や原産国、賞味期限なども確認しておくとよいでしょう。
メディカルハーブを使用する際の注意事項
本シリーズで紹介するメディカルハーブは、人類が薬草として使用してきた歴史もあり、比較的安全性の高いものですが、メディカルハーブに含まれるフィトケミカル成分は、元来、植物が強い紫外線や病害虫や食害から身を守って自然界を生き抜くために進化の過程で身につけた防具や武器のようなものであるとも言い換えられます。
植物だから安全というわけではなく、用法用量を守ることが肝要です。
下記注意事項もよく理解した上で、正しく・安全に利用しましょう。
【注意事項】
※メディカルハーブは医薬品ではなく、それを使用する行為は医療ではありません。治療目的で使用するものではないので、体調が悪い場合、気になる症状がある場合は必ず医師に相談しましょう。
※ハーブは安全性が高く、作用も穏やかですが、アレルギーや飲み合わせ等によっては使用に注意が必要なもの、使用できないものもあります。各ハーブの注意事項をよく調べてから使用しましょう。
※治療中の病気がある、服用している薬があるなど健康状態に問題のある方、妊娠中の方は、決して自己判断では使用せず、必ず医師に相談の上、ハーブを利用しましょう。
※ハーブの持つ効能や作用の現れ方には体調差・個人差や製品による差があり、同じ人が同じハーブを使用しても反応が異なる場合があります。
※子供や高齢者、妊娠中の方が使用する場合は、分量を減らす等、安全に注意を払ってください。
※ハーブを用いて作ったものは自身が製造者となります。自己責任で安全に活用しましょう。
ガーデンセラピーとしてのメディカルハーブティー
植物を多角的に生活の中に取り入れ、健康寿命を延ばしたり、日々の暮らしを心身ともに溌剌と健やかに過ごして人生の質を高めることを目指すガーデンセラピー。
ガーデンセラピーでは庭や植物の有効性を改めて確認し、さまざまな関わり方で心身を整え、健康な暮らしを実現する「住まい方療法」として「芳香療法(アロマセラピー)」「食事療法」「森林療法」「芸術療法」「園芸療法」という5つの療法をバランスよく組み合わせて、病気になりにくい健康的な生活や未病状態の改善、生活の幸福度の向上を実現させていきます。
味や香りなど植物が与えてくれるナチュラルな癒しを感じながら栄養素の補給や心身の不調改善に効果が期待できる植物成分を美味しく摂取できるハーブティーも、「食事療法」の大切な要素の一つです。
コーヒーや緑茶のように日常的な飲み物として生活に取り入れることができ、心身のさまざまな不調を整えるサポートとなったり、美容やアンチエイジング効果も期待できるメディカルハーブティー。老若男女問わず、人生の質の向上させる生活習慣としてぜひ効果的に生活に取り入れたいですね。
今回の概要編1では、健康増進や美容・アンチエイジングをサポートしてくれるメディカルハーブティーについて、ざっくりと解説いたしました。次回は、もう少し実生活への応用にフォーカスして、メディカルハーブティーを美味しく飲むコツや、仕事をしながらでもメディカルハーブティーを生活習慣に取り入れられる活用法などについて紹介したいと思います。どうぞお楽しみに!
「健康は最上の善であり、他のあらゆる善の基礎である」
ルネ・デカルト(1596 – 1650)
Credit
写真&文 / 太田敦雄 - 「ACID NATURE 乙庭」代表 -
おおた・あつお/園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科、および前橋工科大学建築学科卒。趣味で楽しんでいた自庭の植栽や、現代建築とコラボレートした植栽デザインなどが注目され、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)ほか、掲載・執筆書多数。
「6つの小さな離れの家」(建築設計:武田清明建築設計事務所)の建築・植栽計画が評価され、日本ガーデンセラピー協会 「第1回ガーデンセラピーコンテスト・プロ部門」大賞受賞(2020)。
NHK『趣味の園芸』講師。(一社)ジャパンガーデンデザイナーズ協会(JAG)正会員デザイナー。ガーデンセラピーコーディネーター1級取得者。(公社) 日本アロマ環境協会 アロマテラピーインストラクター、アロマブレンドデザイナー。日本メディカルハーブ協会 シニアハーバルセラピスト。
庭や植物から始まる、自分らしく心身ともに健康で充実したライフスタイルの提案にも活動の幅を広げている。レア植物や新発見のある植物紹介で定評あるオンラインショップも人気。
「太田敦雄」公式ブログ https://note.com/acid_nature_0220
プロフィール写真/田中雅也
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