真っ赤なイチゴが輝くパブロヴァ 【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】

イチゴの美味しい季節がやってきました。イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんが、この時期に作りたいと思うのは、雪のように真っ白なメレンゲの上に、真っ赤なイチゴと生クリームがたっぷりとのった、パブロヴァ。イギリスでは人気のお菓子で、サクサク、ほろほろと崩れるメレンゲの甘みの中で、爽やかなイチゴの酸味が口いっぱいに広がります。美味しいパブロヴァの作り方をTomoさんに教えていただきます。
目次
イチゴの季節

宝石のようなイチゴが店頭に並ぶ季節がやってきましたね。日本では、冬から春にかけてハウス育ちのイチゴが出回りますが、イギリスでは、イチゴの季節は夏。夏の間、イギリスの田舎ではイチゴ狩りが盛んに行われていて、道路脇にもイチゴの絵の看板がよく見られます。私もイギリスに暮らしていた頃に何度か体験しましたが、あちらのイチゴ畑は本当にのどか。青空の下、広々とした畑で、可愛らしいかごいっぱいに、イチゴを摘んだものでした。

イギリスのイチゴは、日本のように粒が揃っていなくて、酸味のある、力強くて野生的な味がします。その力強い酸味が、お菓子作りにはぴったり。今回ご紹介するパブロヴァにも、そんな酸味の強いイチゴを使うのをおすすめします。私は、スーパーではなく八百屋さんに行って、おそらく規格外ではじかれたと思われる、小粒で酸味のある(しかも安い!)イチゴをわざわざ買ってきて使っていますが、もちろん、粒の揃った甘いイチゴでも大丈夫。イギリスでイチゴのデザートの代表ともいえるパブロヴァを、一緒に作ってみましょう。
パブロヴァとは

パブロヴァ(Pavlova)とは簡単にいうと、焼いたメレンゲに、泡立てた生クリームとフルーツをのせたデザートのことです。イギリスのスーパーやデリカテッセンでは、よくパブロヴァ用に小さな丸いメレンゲのセットが売られていて、時には、人の顔よりも大きなメレンゲを見かけることもあります。

私はかつて、イギリス菓子に興味を持って、コッツウォルズに語学留学をしたのですが、かの地の小さなデリカテッセンで、天井からメレンゲがぶら下がっていた景色は衝撃的で、今でもよく覚えています。

パブロヴァとの出合い

私がパブロヴァに初めて出合ったのは、そのコッツウォルズ滞在時でした。じつは、私の留学は、語学習得よりも、イギリス中を巡ってお菓子をたくさん食べるぞ! というのが本当の目的。田舎のティールーム巡りを楽しみたかった私にとって、コッツウォルズはもってこいの場所でした。

当時、私は語学学校に通いながら、和食レストランでアルバイトをしていましたが、そこで、日本好きのイギリス人夫妻に出会いました。ある時彼らに、イギリス菓子を食べ尽くすという、留学の真の目的を打ち明けると、「それなら、ぜひ我が家に来て和食を作って! その代わりに、イギリス菓子を教えてあげるわ」という嬉しいお申し出が。さっそく、学校が終わってからお宅に伺うと、そこでびっくり。ルバーブが植わっていたり、コンサバトリー(温室)があったり、本当に素敵な庭で、感動を覚えるほどでした。その頃の私は料理が全くできなかったのですが、どうにかこうにか肉じゃがを作り終え、いよいよ待ちに待ったイギリス菓子作り! そこで教わったのが、このパブロヴァだったのです。

そんな出合い方をしたことから、パブロヴァはてっきりイギリスのお菓子だと思っていたのですが、発祥はオーストラリアかニュージーランドといわれています。でも私にとっては、イギリスで、イギリス人に初めて教わったお菓子。とっても思い出深い、イギリスのお菓子です。

その数年後、私は縁あって、コッツウォルズにあるスリーウェイズ・ハウス・ホテル(Three Ways House Hotel)で、パティシエとして働く機会を得ました。イギリスではデザートのことをプディングというのですが、このホテルは、英国伝統の美味しいプディングを守り伝え、人々に楽しんでもらおうと、〈プディング・クラブ〉という会を主催していて、さまざまなプディングを食べ尽くす集まりを定期的に開いています。そこで私は、本当にたくさんのパブロヴァを作りました。
イギリス人はきっと誰しも、パブロヴァが大好き! 甘そうな見た目ですが、サクッ、ほろっとしたメレンゲと、生クリーム、イチゴの組み合わせは、日本の皆さまもびっくりするほどの美味しさです。おうちでも簡単に作れますので、ぜひ挑戦してみてください。では、作っていきましょう!
パブロヴァの作り方

材料(8人分)

- 卵白……2個分
- グラニュー糖……卵白の重さの2倍
- コーンスターチ……小さじ1/2 (片栗粉で代用可)
- モルトビネガー……小さじ1/2 (白ワインビネガーやレモン果汁で代用可)
- バニラオイル……小さじ1/2
- 生クリームとイチゴ……好きなだけ
作り方
- オーブンを150℃に予熱する。
- 卵白をボウルに入れ、泡立てる。
*手立てもできますが、ミキサーを使うのがおすすめ。この時、ボウルやミキサーに油分や水分が残っているとうまく泡立たないので、しっかり確認してください。
白くなって、ふんわりとしてきたら、グラニュー糖を大さじ1ほど、分量の中から加えて、泡立てる。 - ツノが立ってきたら、残りのグラニュー糖の約1/3を入れ、ピンとツノが立つまでしっかり泡立てる。この手順をもう2回、グラニュー糖がなくなるまで繰り返す。
*グラニュー糖がジャリジャリと残りますが、そのままで大丈夫。最後のほうは重くなって、手立てだと大変ですが、がんばって! - つやのあるメレンゲになったら(ボウルを逆さにして落ちてこなければ大丈夫)、コーンスターチ、モルトビネガー、バニラオイルを加え、しっかり混ぜる。
- オーブンシートを敷いた天板に、大きな円形になるようにメレンゲを落として、約1時間30分焼く。
オーブンで焼く前。 焼いた後。メレンゲが膨らんで、焼き上がりは一回り大きくなります。 - メレンゲが焼けたら、そのままオーブンの中で冷ます。
*取り出さないで冷ますのがコツです。湿度の低い冬場は取り出して冷ましてもよいですが、春から秋にかけては、必ずオーブンの中で冷まします。取り出して冷ますと、その間にメレンゲが湿気てしまって、食感が台無しになるからです。
私はいつも、食べる日の前の夜にメレンゲを焼きます。朝までオーブンの中に入れたままにしておいて、それから、生クリームとイチゴの用意をするようにしています。メレンゲは密閉容器に入れておけば、常温で1カ月ほどもつので、前もって焼いておくのもよいでしょう。メレンゲを1人分ずつ、小さく焼くのもおすすめです(焼く前の大きさで、直径8cmほどの円形)。 - 生クリームを泡立て、イチゴの準備をする。
*メレンゲが甘いので、生クリームに砂糖は入れません。どうしても入れたい場合は、ごく控えめにしましょう。 - すっかり冷めたメレンゲの上に、生クリームとイチゴをたっぷりのせて、完成。
*生クリームの水分をメレンゲがどんどん吸って湿気てしまうので、作ったらすぐに食べましょう。

Credit

写真&文/The Pudding Party Tomo
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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