神宿る松と福を呼ぶ花。いつもの器で、迎春アレンジ | 花のある週末、はじめませんか Vol.22

こんにちは! 「ウィークエンドフラワー」プロデューサーの小川典子です。こちらでは、旬の季節に楽しみたい花の、“長もちさせるハウツー”や“簡単おしゃれなコーディネイトのコツ”をお伝えしていきます。花瓶がなくても大丈夫。少しの花材と身近な雑貨を組み合わせて、家のなかに自分のお気に入りの花コーナーを作ってみませんか?
目次
12月のおすすめは「お正月の花」
12月のウィークエンドフラワー.その4/松と代表的なお正月花
お正月の松は、黒松、赤松、五葉松、大王松など種類が豊富です。なかでも、お正月飾りにもっとも用いられるものが若松。黒松の樹齢が若いものの呼称で、生気みなぎる端正さが慶ばれています。迎春アレンジにはほかに、五葉松や根引き松、蛇の目松などが人気です。松を購入する際は、葉の色が濃く、触った感触がイタッ!と感じるものを選びましょう。勢いがある証拠です。

代表的なお正月花:松、千両、南天、梅、椿、キク(マム)、ラン(オンシジウム、シンビジウム、コチョウランなど)、葉ボタン、日本水仙


早いもので2020年が、まもなく暮れようとしています。
「お正月の花は欠かせない」という家庭が、きっと多いことと思います。街のフラワーショップは、大晦日まで大忙し! 福を呼び込むおめでたい花々をたくさん用意して、人々が新しい年を気持ちよく迎えられるよう頑張っています。
迎春の花といえば、慶事のシンボル、松竹梅、千両や南天(難が転ずる)などの縁起物たち。不老長寿を願う高貴な花、キク(マム)や吉事が重なるとされる葉ボタン、早春の香りがする日本水仙もおすすめです。どれもお正月の定番の花ですが、一年の節目には古来から伝わる和の伝統に親しむのもよいですね。
お正月の花は、その花選びだけではなく「飾るタイミング」がとても重要。その意味は、玄関の「門松」や「しめ飾り」に由来します。
お正月の花はいつ飾る? 12月28日か30日にぜひ!
松をお正月に飾る風習は、平安時代から始まったといわれています。松は「常緑」であることから、永遠の若さ、不老長寿のシンボルとして、新年を迎えるのにふさわしい存在とされてきました。
門松は、神様が宿る場所とされ、歳神様がお正月に家に降りてくる際の目印だそう。つまり、お正月に神様を迎え入れるためのもの。ですから、年末28日頃までに飾るのが慣わしです。
家のなかに飾るお正月花も同じ。29日に飾るのは「二重の苦しみ」となり縁起が悪いとされ、31日に飾る「一夜飾り」は神様に対して失礼との理由でNGです。忙しくて28日までには間に合わなーい! という方は、30日中には飾りましょう。そして「松が明ける」1月7日(=関東地方/関西地方は1月15日)に片付けます。
白いボウルがお正月仕様に! 手毬のように愛らしい迎春花
アレンジは花の種類と器が同じでも、選ぶ花色で雰囲気は随分変わります。ピンク×白なら初々しく清楚、シックな赤やオレンジなら華やかで凛とした魅力のアレンジに。
そして、こんもり丸くアレンジすると、花手毬のようにも! 見る人が思わず微笑んでしまうような福々しい愛らしさになります。


■材料(花材費合計=2000円前後)
●花材
*若松/1本の脇枝部分
*キク(ポンポン咲きのタイプ)/3本
*シンビジウム/1/2本、1~2輪ずつ小分けにカット
*オンシジウム/1/2本、小分けにカット
*千両、金塗りのドライの実
*タッセル、水引など
●資材
*花留めに、吸水性スポンジを使用
●器について
シンプルな白いボウルを選びました。

●コーディネイトについて
迎春アレンジは特に、器の下に黒塗りか朱塗りのお盆を敷くと、それだけでお正月感やしつらえ感がアップします。普段使いのシンプルなボウルでも、お盆を敷くだけで、お正月の器に早変わり!
●吸水性スポンジについて
器の大きさに対して、これほどの量の花材をアレンジする場合は、吸水性スポンジ、またはフローラルフォームと呼ばれる、生花用のスポンジを活用するとよいでしょう。スポンジは、花店で購入できるほか、最近では100円ショップでも入手できます。器の大きさに合わせてカットし(今回は1/3個程度)、ボウルなどに張った水の上に浮かべます。浮かべたら、自然に水を吸って沈んでいくのを待ちます。スポンジが完全に沈んで、水をたっぷり吸ってから使用します。強引に沈めると、水がうまく浸透しないので注意して。

■3ステップでアレンジ
①松のなかでもポピュラーな若松は、中心の長い枝の下のほうに3~4本の脇枝があります。それを小さくカットし、水に浸かる部分の葉を取り除いて、小さなアレンジに使用します。ほかの花材も器の高さに合わせて短くカットし、下葉を取り除きます。


②器の中に2/3くらいの高さの、水を吸ったスポンジを仕込みます。花材は若松の小枝から。アレンジのアウトラインを作るように、左右と背後にあしらいます。
③手前のキク、シンビジウムをこんもりといけ、オンシジウムの黄色がキラキラするように、アレンジにプラス。最後に、実ものや水引などを飾りつけて仕上げましょう。飾る際は、器に水をたっぷり入れておきます。
片口にいける、やさしい色合いのお迎えアレンジ

■材料(花材費合計=1500円前後)
●花材
*葉ボタン(ミニタイプ)/1本
*若松/1本の脇枝部分
*シラタマツバキ/1本の枝の花が咲いている先端部分
*キク(ポンポン咲きのタイプ)ピンク/2本
●器について
片方だけに口がついた器「片口」、主に酒器として用いられます。片口という少しだけ遊び心のあるデザインは、季節の食材を盛ったり、花をいけたり、楽しみ方はさまざま。一つ持っていると重宝する器です。写真は青磁のもの。
●コーディネイトについて
鏡餅のピンクと、まるでバラのように咲く愛らしいピンクの葉ボタン、キクの色を揃えました。和モダンななかにも少しほっこりするような、やさしい雰囲気に仕上げます。楚々と咲くシラタマツバキが真冬ならではの美しさ。アレンジのポイントです。
■3ステップでアレンジ
①前述の手毬風アレンジ同様、若松の下のほうの3~4本の脇枝を使用。水に浸かる部分の葉を取り除いて、小さなアレンジに使用します。ほかの花材も器の高さに合わせて短くカットし、下葉を取り除きます。
②シラタマツバキの濃い葉色をいかすように器の口元にあしらいながら、松、葉ボタンを器の縁を利用しながらいけていきます。
③アレンジ全体がややこんもりとするように、中心にキクをあしらいます。キクの背後にも若松を入れ、全体を固定させればできあがり! こちらのアレンジは、吸水性スポンジフローラルを使用せず、そのままいけています。
●迎春のアレンジ、応用編
同じような花材、色合いで、若松をしっかり大きく活けたバージョンです。梅の小枝や、グリーンのシンビジウム、ポンポン咲きのキク(マム)を追加し、さらにゴールドの水引をアクセントにしています。
年末に飾るときはつぼみの状態の梅は、室内に飾っておくと、元日から1輪、また1輪とほころんで、甘くすがすがしい香りで楽しませてくれます。

升(マス)を使った、小さな迎春アレンジ
新春を祝うおせち料理のテーブルに、お正月花を小さく飾るのも、コーディネイトのポイントになって素敵です。升であれば、お正月の塗りのお重や、柄物の皿など、どんな器とも相性がよく馴染みます。
松や南天の葉、南天の実や千両の実などは、おせち料理のアクセントにも活用できます。テーブルにお正月の縁起物をちりばめて、目にも華やかなテーブルコーディネイトにしましょう。


■材料
●花材
*若松/1本の脇枝部分
*日本水仙/1本
*キク(ポンポン咲きのタイプ、グリーン)/1本
*千両(黄色の実)/1本の先端の1枝
日本水仙や白梅の凛とすがすがしい香りも、新春の慶びです。

忘年会に仕事納め、家の大掃除におせちの準備…と、大晦日にむけて気忙しい日々。そんななか、心静かに居住まいを正し、凛とした冬の空気のなかでお正月の花を活ける時間を、私はとても大切にしています。そして皆さまにも、すごーくおすすめします。
この一年に感謝しながら、来たる新年に想いを巡らせ、花と向き合うひととき。自然と背すじが伸びて、来年もよい年にしよう! という前向きですがすがしい英気を、神が宿りし植物たちから授かることができます。
丁寧にゆっくりと、心を込めて。
皆さま、花と素敵な年越しを。どうぞよいお年をお迎えください。
2021年もよろしくお願いいたします。
Credit

小川典子
(一社)花の国日本協議会プロモーション推進室長/
「WEEKEND FLOWER」 http://www.floweringjapan.com/weekendflower/
インスタグラム、@weekendflower_official
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