ユーカリやボトルブラシ、バンクシアなどオーストラリア原産の植物が庭で見頃を迎える秋は、BBQをしながらお花見パーティーがおすすめというベテランガーデナーの遠藤昭さん。オーストラリア駐在中に招かれた現地流のBBQエピソードや、自宅BBQでおすすめの食材とレシピなど、楽しみ方も教えていただきます。
目次
歓迎会で知った「BYO」スタイルのBBQ
僕は5年間、メルボルンに駐在していたことがある。オーストラリアは多民族国家なのでイタリアンをはじめ、チャイニーズ、タイ、インドなどなど、さまざまな美味しいレストランで食べ歩きを楽しんだ。それでもやはり、一番の思い出の料理は、週末ごとのオーストラリアンBBQだ。オーストラリア料理といえばBBQなのだ。
メルボルンに赴任してすぐに、現地人のジェネラル・マネジャーが自宅に「歓迎会だ」といって招いてくださり、訪れたら50人以上のスタッフとともに広い芝生の庭で大バーベキュー大会! さぞかしパーティー料理の準備が大変だろうと思いきや、招待状に「BYO」と書かれていた。はじめ僕は意味が分からず、現地スタッフに聞いた。すると、「Bring Your Own」の略で、自分で食べる肉とビールやワインなどの飲み物は持参するというのだ。なかにはケーキを焼いて持参したり、ワンディッシュやフルーツを持参したりする人もいたが、原則、招待された人が自分で食べる肉と飲み物を持参し、勝手に焼いて食べるという。この「BYO」は、お互い気遣いもなく、なかなか合理的なシステムだ。
公園でBBQが気軽にできるオーストラリア
オーストラリアでは、住宅街の公園(日本とは比較にならないほどの広さ)にも必ずといってよいほどBBQコーナーがあり、誰でも使用できるのだ。それも場所によっては燃料の薪がタダの所もあった。ガス式のものは当時、1ドルで使用できた。我が家の庭でも、週末には親しい家族を招いたり、あるいは出かけたりして、本当に頻繁にBBQをやったものだ。
BBQコンロは、オーストラリアでは一家に一台の必需品だ。正月に家族旅行をして、泊まったモーテルの近くの海岸の公園では、誰でも使用できるBBQコンロを使って水着姿でBBQ。そう、オーストラリアのお正月は真夏なのです! 子供たちに、お年玉をやるのをすっかり忘れてしまった。
オーストラリアンBBQの特徴とは
BBQにはそんな楽しい思い出が山ほどあって、帰国してからも庭で、年に数回は楽しんでいる。
では、オーストラリアンBBQの特徴はというと、オーストラリアの文化と同様に質実剛健で自然志向、本物志向だ。悪くいえば粗野で雑、日本みたいに肉や野菜を切り刻んで串に刺したりはしない。
まずは素材でポピュラーなのは、ラムチョップだ。日本のスーパーでも最近は見かけるようになったが、僕にとってはやはり、ラムチョップはお洒落なフランス料理より、シンプルに塩コショウで味付けし、BBQで油を落とすほうが美味しい。そして次に、当たり前だがオージービーフだ。現地では1枚200~300gはありそうな肉を大胆にそのまま塩コショウして焼く。ビーフは1kg単位でしか購入できなかった。なにしろ価格が日本の10分の1程度だったのだ。
遠藤流BBQレシピを大公開
もう一つ、オーストラリアンBBQの特徴といえば、生ソーセージだ。現地の肉屋ではボイルする前の生ソーセージが安く売っていた。日本でもコストコで見かけたことがある。日本の小さなウィンナソーセージと違って、1本で100gはあるビッグサイズ。僕は、これが日本では入手できないので、自分でソーセージメーカーを使い、オリジナル生ソーセージを作ってBBQをやっている。
もちろんボイルしたり燻製したりしたソーセージも作っている。BBQの残り火にチップを加え、密閉して一晩燻製料理をすることもある。BBQの後の燻製料理も楽しい。
サラダは、現地では、よくセロリ、キュウリ、ニンジン、白菜などのスティックが出た。ニンジンでも白菜でも生でかじってしまう。あとはコールスローもポピュラーだった。
日本風BBQにアレンジ
そんなメルボルンで覚えたオージーBBQだが、帰国してから我が家でやるときは、オージーBBQをかなりアレンジして、サザエやホタテやハマグリ、イカやエビなどのシーフードを焼いたり、野菜やおにぎりをアルミホイル焼きにしたり……。かなり日本風にしている。
ホイル焼きで美味しいのは、ガーリックブレッドだ。フランスパンにバターと摺り下ろしたニンニクを塗り、アルミホイルで包む。そして、コンロの火力の弱い隅に置いておくと美味しく焼ける。締めに、フライパンで焼きそばを作ったりすることもある。まあ、なんでもアリの僕流だ。
そして、オージーBBQに欠かせないのがオージーワインだ。時によってスパークリングだったり、赤ワインだったりするが、僕は現地にいたときからハーディズのシャルドネ(現地ではシャドネイズと発音していた)の箱に入ったカスクワインを愛用していた。日本でもコストコで入手できるし、最近はネット通販でも入手できる。フルーティな若いワインだが、屋外でオージーBBQをする時には、さっぱり系を豪快に飲むのが似合う。
ユーカリが咲く時期がベストシーズン
さて、オージーBBQの雰囲気を盛り上げてくれるのが、ユーカリをはじめとする我が家の庭の植物たちだ。11月にはピンクの花のユーカリが満開になる。我が家ではこのユーカリが咲き始めると、庭に蚊もいなくなり、BBQシーズンの到来なのだ。
この時期のBBQは、ユーカリの花を見ながらのお花見パーティーだ。この時期には、他にストレリチアが咲き始め、ピンクのボトルブラシやバンクシア、グイヴィレア‘ロビンゴードン’なども咲き続けており、一年で最も美しい季節なのだ。25年間かけて育ててきた植物たちが、その美しい姿を見せてくれる。
バンクシアやストレリチアも開花時期だ。この季節、快晴も多く、オージーBBQをし、ワインをたらふく飲んで、青空のユーカリの花を仰ぎ見ると、本当に幸せな気分になれる。ジャカランダは青空に葉を広げ、レモンも色づいてきた。
そして、いつもBBQの時は愛犬が一緒だった。
食事が終わったら残り火でやかんに湯を沸かし、コーヒーを入れる。そして庭のミカンを捥いで、その場で食べる。
コロナ禍の今年は外食にも行けないが、夫婦2人で、コロナの心配もせずに楽しめるBBQが至福の時なのだ。
コーヒーを飲み終わる頃には、西の空は夕日に染まる。
ガーデンストーリークラブでは、この記事内容をテーマに、2020年12月10日(木)にオンラインサロンを開催予定! 会員の方は無料にてご参加いただけます。ご興味のある方はぜひ会員サイトよりお申し込みください。(※終了しました)
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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