紺碧のフラワーベースに似合う夏のアレンジ
梅雨が明ければ、いよいよ夏本番! 暑い季節には、涼しげな青い花瓶に花を飾って、お部屋に涼を演出してみませんか? フラワー&フォトスタイリスト、海野美規さんによる今回のWeb上アレンジレッスンでは、紺碧のフラワーベースを使った、夏らしい爽やかなアレンジを4種ご紹介いただきます。
目次
Henry Deanの紺碧のフラワーベース
いよいよ夏本番! 今年も暑くなる予報です。
夏は、見た目にも涼しいフラワーアレンジで楽しみたいですね。
もうだいぶ前になりますが、Henry Deanの青いフラワーベースを買いました。きれいな青、紺碧というのでしょうか、この青い色に惹かれました。
Henry Deanはベルギーの小さな町で始められた、吹きガラスのブランド。デザイナーのDean氏は、「旅と読書とモダンアート、そして何よりもガラスを愛し、日々の生活の中でふと浮かんだ映像をガラスによって表現し、多くの作品を作ってきた」そうです。この青いフラワーベースは、何からイメージしてデザインされたのでしょうか。
旅がお好きということですから、どこか景色のよいところ、例えば、コート・ダジュールの青い海? 南仏プロヴァンスの青い空? 私はまだ行ったことがないのですが、イタリアの青の洞窟も、きっとこんな深い青い色なのではないかしら〜と想像しました。
いつもは透明のガラスベースや、白い花器を使うことが多いのですが、今回は、このインパクトのある色付きのガラスのベースに似合う花アレンジをしたいと思います。
青いフラワーベースのアレンジ4つ
青いベースを使う時は、同色のブルー系の花を選ぶと、やはりまとめやすいです。ここでは、夏の青い花をメインにした3つのアレンジと、葉っぱだけのアレンジをご紹介します。
Type1 色が変化するブルースターとアジサイで
<使った花>
- ブルースター
- アジサイ
ブルースターという花は、初めはきれいな水色で、だんだんと薄紫から薄いピンク色に変化していきます。
ウエディングブーケのサムシングブルーとして使われるなど、とても人気のある花です。丸い花弁が可愛いですね。お庭で育てているという方も多いのではないでしょうか。
ブルースターの茎や葉をカットすると、ミルクのような白い液が出ますので、水で洗い流すようにします。
庭のアジサイはピークを過ぎて、だんだんアンティークカラーへと変化しはじめました。最盛期の爽やかなブルーも好きですが、ちょっと落ち着いたアンティークカラーもニュアンスがあって素敵なんですよね。色の変化が楽しめる2種類の花でアレンジしました。
それぞれの花はまとめて入れて、コンパクトに。
Type2 クレマチス‘ロウグチ’とブルースター
<使った花>
- クレマチス‘ロウグチ’
- ブルースター
- カリフォルニアライラック
青紫色のクレマチス‘ロウグチ’と、水色のブルースターを合わせました。
クレマチスの茎の動きを生かすところがポイントです。自由な動きを楽しんでください。
ブルースターは、まとめていくつかのグループにして入れます。
Type3 庭の花を足して
その1
<使った花>
- クレマチス‘ロウグチ’
- ブルースター
- 薄紫のサフィニア
- ミント
- アメリカノリノキ‘アナベル’
Type2のアレンジに、庭の花をプラス。ナチュラルな雰囲気になります。
自分で育てた花を少しプラスすると、より自分らしい花スタイルになる感じがして、私はとても好きです。
その2
<使った花>
- クレマチス‘ロウグチ’
- ブルースター
- カリブラコア
- ビオラ
- アメリカノリノキ‘アナベル’
もう一つは、差し色に、濃いめのピンクを選んで合わせました。
数本入れるだけで、華やかになります。
Type4 グリーンを多めに
<使った植物>
- ギボウシ
- ミント
- ブルーベリー
- ワイヤープランツ
- ヒペリカム
- アジサイの葉
など。
葉ものを中心に組み合わせました。
華やかさはありませんが、青いベースとの相性はよいと思います。夏らしい雰囲気になりますね。実のついたものを入れると、グリーン一色の中に変化が出ます。
ご紹介した4つのアレンジは、どれも投げ入れです。色の濃いフラワーベースですので、透明のものほど、ベースの中の茎の入り方が気にならず、ずっと気楽に生けられるのが嬉しいですね(透かすと見えるけれど…)。
アジュール(Azur)「紺碧」という色
今回使ったフラワーベースは、光に透けると、海の中のような、上から見た透明感のある美しい海のような、どこまでも抜ける高い空のような、そんな青い色です。
コート・ダジュール(Côte d’Azur)のアジュール(Azur)は、日本語で「紺碧」。アズールともいいます。
調べてみると、
「紺碧(こんぺき)とは、真夏の日差しの強い青空の色のような深く濃い青色のことです。濃い青色の『紺色』と強い青緑色の『碧色』と青を表す文字が繰り返されていることから、「紺碧の空」「紺碧の海」のように濃く美しい青の表現によく使われます」
(『伝統色のいろは』より)
とあります。
「紺碧」とは、深く濃い、そして美しい「青い色」なのです。
ピーター・メイル氏の南仏プロヴァンス
紺碧の海、青い空といえば、コート・ダジュール、南仏プロヴァンス! 私は、ピーター・メイルさんの「南仏プロヴァンス」シリーズの大ファンでした。
『南仏プロヴァンスの12か月』『南仏プロヴァンスの木陰から』が出版されて少し経った頃、私はパリに住んでいました。この本が世界中で大ブームになっていると知り、日本から旅行に来る友人にお願いして、この本を持ってきてもらいました。当時のパリでは、今のようにインターネットもなく、日本のテレビ番組を見ることもできず、日本の新聞や雑誌、書籍類はとても高額で、現地で買う気にはなれませんでした。書籍や雑誌などは知り合いになった日本人同士で、貸したり借りたりしていたため、本や雑誌は貴重品でした。待望のこの『南仏プロヴァンス〜』が届き、毎日楽しみに読んだことをよく覚えています。
本では、外国人がフランスで暮らすにあたっての苦労が、ユーモアたっぷり皮肉たっぷりに描かれています。ちょうど私たちがパリで体験していることと重なり、「そうそう! フランスってそういうところあるよね〜」と、思い当たることがたくさんあり、クスッと笑ってしまう場面も多くて、とても面白く楽しく読みました。
毎日読み進めるにつれて、南仏プロヴァンスへの憧れもどんどん高まっていき、ぜ〜ったいプロヴァンスに行きたい! と思うようになりました。
この本の影響で、世界中でどれほどの人がプロヴァンスへと思いを馳せたのでしょうか。後から、プロヴァンスに観光客が押し寄せて大変なことになったと何かで知りました。やはりどの国の人も、同じことを感じるのだなと思ったことを覚えています。
この本を読むまでは、ニースやカンヌ、マルセイユなど有名な地名は知っていましたが、プロヴァンス地方の、エクサンプロヴァンス、レ・ボー、ニーム、カヴァイヨン、ボニュー、リュベロンなどはまったく知りませんでした。本のおかげでずいぶん詳しくなり、実際に旅行で訪れた際にも、なんだかとても親近感があって、初めて訪れた感じがしませんでした! は、ちょっと大袈裟ですね〜。
かの地への旅行中は毎日お天気がよく、カラッとした暑さで、「うんうん、南仏プロヴァンスはこういうところ」というのを実感しました。のどかで、全てのことに自信があって、いろいろな意味で豊かなところだなという印象を受けました。そう感じさせる著者のプロヴァンス愛が、読み手にもそのように思わせるのかもしれません。読んでいて愉しくなる一冊です。
初めて読んだ頃から、もう30年近くが経ちます。今読んだらまた違う感想を持つかもしれません。この夏は、ふたたび『南仏プロヴァンス〜』シリーズを読んで、プロヴァンスを旅している気分に浸りたいと思います。
ピーター・メイルさんは2018年1月に惜しまれつつ亡くなりました。遺作は翌年に出版された『南仏プロヴァンスの25年 あの頃と今』。こちらも読もうと本棚に入れてあります。
Credit
写真・文/海野美規(Unno Miki)
パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
http://www.annegarden.jp
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