とっておきのベースに大好きな花を。北欧デザインのフラワーベースに活けるガーデニア
お気に入りの花は、普段使いの花瓶からちょっと背伸びして、とっておきのベースに活けたくなりますね。初夏にかぐわしい花を咲かせるガーデニアは、フラワー&フォトスタイリスト、海野美規さんのお気に入りの花。今回のWeb上アレンジレッスンでは、このガーデニアを、北欧のガラスベースでシンプルに楽しむフラワーアレンジメントを教えていただきます。
目次
季節限定の花! ガーデニアを
とっておきのフラワーベースに
クチナシ、アナベル、アジサイなど、初夏の庭を彩る花が咲いています。
クチナシ、特に八重咲きのオオヤエクチナシ(ガーデニア)は、優雅でとても美しいですね。ガーデニアのファンの方は世界中にたくさんいらっしゃることでしょう。私も大好きな花の一つです。花びらの質感、白色の白さ、花びらの重なり方。完璧な美しさです! そして、香りにも魅了されてしまいます。
実家のキッチンの出入り口から庭に通じるところの階段沿いに、ガーデニアの木が1本あります。最初は小さな木で、花も2〜3輪ほどしか咲きませんでしたが、年々成長し、今ではたくさんの花が咲くようになりました。その階段をのぼるとき、花数が増えたのに比例して、ますます濃厚な香りに包まれます。ここを通るのが、家族だけなのがもったいないほどです。
大好きな花、お気に入りの花は、いつも使っている花瓶ではなく、ちょっとお洒落な、とっておきのベースに活けたいなという思いになります。
一年に一度、ほんの短い間だけ華麗に咲くガーデニアを、とびっきり素敵に活けるには、どんな花器が似合うかなと探してみました。
デザインチックなフラワーベースは難しい?
デザインの素晴らしいフラワーベースに花を活けるとき、あまりにも個性的なベースだと、かえってデザインに呑まれてしまうということがあるなと思っていました。デザインを生かしきれないように感じてしまうのです。
じつは、今回のアレンジメントに使用した「アルヴァ・アアルト」のガラスのベースも、そんな風に感じていたフラワーベースの一つでした。
曲線のデザインが美しく、「なんて素敵なベース!!」と思い、買ってはみたものの、うーん、どうもしっくりする花活けになりません。この雲のような花びらのような独特な曲線を活かすにはどうしたらいいのかと、いつも迷ってしまいます。
この記事を読んでくださっている読者の方も、もしかすると、どう使おうかなと迷っている個性的な花瓶をお持ちではないでしょうか。
人気のフラワーベース、北欧デザインiittalaのガラスのベース
北欧のブランドiittala (イッタラ)から出されているこのガラスのフラワーベースは、フィンランドを代表するデザインの巨匠、アルヴァ・アアルト氏により1936年に発表された作品です。通称、「世界で一番有名で、一番美しい花瓶」。私が「雲のような形」と思ったこのフォルムは、フィンランドの湖の形、白樺の断面の形など諸説いろいろあるようです。
今でもイッタラの工房で、熟練の職人さんが7人がかりで、手吹きで制作されています。以前テレビ番組で、この工房が紹介されていました。職人さんが持つ長い棒の先に、この湖の形、雲の形の曲線がグニャ〜とでき上がっていく様子を、「わぁ、こんな風に作っているー」と、とても面白くワクワクしながら見ました。
色はいくつかあるようですが、私が持っているのは透明のクリアタイプ。ガラスのベースのよいところは、透明で清涼感があるところですが、水の中、茎が丸見えなのは注意を要するところです。
サイズは一番小さなものです。小スペースのところに少しの花を活けて飾れるので、小さな花を活けるのが好きな私にとっては、とても使い勝手がよいサイズです。それに、このフラワーベースは、このままサイドテーブルに置いておくだけでも雰囲気があります。
とはいえ、やはりお花を入れて楽しみたいですね。ちょっと使いどころが難しく感じていたアルヴァ・アアルトのベースですが、じつは、大好きな花や季節の花をポンと入れるだけで、ちゃんと魅せてくれるフラワーベース。とてもスタイリッシュに、素敵に花を引き立ててくれるのです。
花選びと活け方
一種活け、一色活けなど、シンプルなアレンジをご紹介します。花も、ガラスのベースも、どちらも美しく見えるようにアレンジしましょう。
<一種活け>
初心者さんなら、まずは一種活けがおすすめです。一種活けにすると、茎も同じ形状なので、水の中がごちゃごちゃに見えないところも利点です。どの花を活けるか、花選びがポイントになりますね。
もともと器が小さいですから、花の本数も少なくて大丈夫。カーブした器の形をうまく使って、花留めにしましょう。
*ガーデニア
ガーデニアの葉はツヤツヤとしていて、明るい緑色。ここでは葉っぱも一緒に活けます。あまり背を高くしないようにしましょう。少し大きな花だと重たいので、器の縁に載せるような感じで入れて、留めるようにします。
*アジサイ
器の中にたっぷりの水を入れて、アジサイの花を活けます。器から、モリモリとアジサイが湧き出るようなイメージで、高低差をつけましょう。
今回は、白のアジサイを活けましたが、フィンランドの湖の形をイメージした器なら、水色のアジサイもぴったりではないでしょうか。
*アナベル
アナベルだけでシンプルに活けます。フラワーベースの独特な輪郭を生かして、アナベルを入れましょう。撮影時はまだグリーンアナベルでした。
<一色活け>
フラワーアレンジメントの時は、一色でまとめて活けるのもおすすめです。一色といっても、葉の緑色を入れると2色になってしまいますが、純白のガーデニアと、白いアジサイを合わせて、グリーンをアクセントにしました。
ガーデニアの香り、プルメリアの香り
ガーデニアの香りは、甘く濃厚。どこか南の島のリゾート地でリラックスしているような気分になりませんか?
7年ほど前まで、私はシンガポールに住んでいました。シンガポールでは、街でよくプルメリアの木を見かけました。プルメリアの花の香りも、ガーデニアのような甘い優雅な香りです。熱帯性モンスーン気候のシンガポール。じっとり暑い中、木陰に入っていると、どこからともなく甘い香りが漂ってきて……あれはプルメリアの香りだったのかなと思い出されます。
湿気があり、暑さも増してくるこの季節、日本の初夏に咲く花ガーデニアは、南の国の花プルメリアと重なります。そういえば、一重咲きのクチナシとプルメリアは、花の形もなんとなく似ているようですね。
ガーデニアの花言葉は、初夏の風に運ばれてくる甘い香りから、「喜びを運ぶ」というのだそうです。
Credit
写真・文/海野美規(Unno Miki)
パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
http://www.annegarden.jp
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