緊急事態宣言の解除に伴い、外出自粛要請が終了しましたね。約3か月のおうち時間、皆さまは、どのようにして過ごしていましたか? 今まで経験したことがない状況の中、どうやって住空間を快適にするか・限られた空間でいかに楽しく過ごすか、そんな『住まい方』と向き合った時間だったように思います。そんな中、自然と「植物を育ててみよう」という気持ちになった方も多かったのではないでしょうか? 植物と共に暮らすことは、メリットがたくさん。ストレスを減らして、病気の発生を抑え、健康づくりにも役立つのです。このように暮らしの中で植物から癒しを得ることを『ガーデンセラピー』と呼びます。
目次
ストレスを減らしたい! 人々の目は植物や自然に
自粛生活を振り返ってみましょう。はじめの1カ月(3月)は、私も世間の流れと同じく、掃除や片付けをし、過ごしやすい環境を整えることから始め、久しぶりにお菓子やパンを作ったりしました。
薪ストーブで手作りピザにも初挑戦しました。
自粛2カ月目・4月に入り、学校も会社にも行けない、行くところもないという、今まで体験したことがない環境の変化に、「ストレス」という目に見えないモノが蓄積していく感じがした方も多かったのではないでしょうか?
4月はお庭で過ごすにもいい季節。テレビなどでも、外での過ごし方が取り上げられるようになり、「おうちキャンプ」「ベランピング」という言葉が出てきましたね。
今まで、ガーデニングをやったことがなかった人たちの中にも、植物や自然に興味を持つようになったという人が増えた気がします。特に4月は園芸ベストシーズン! ベランダでも栽培できるミニトマトやキュウリなどの野菜や、ハーブ、草花などが大人気に。園芸用品を購入する人が急増し、前年の3.4倍にもなったそうです(2020/5/19付日本経済新聞)。
我が家には、イギリス製のおしゃれなプランター「ベジトラグ」が登場しました。
実際、私の周りでも、畑を借りて家庭菜園を始めた人が複数いましたし、「今まで園芸に興味もなかった家族が、急に私の庭いじりを一緒に手伝い始めた」という人も。生産農家さんからは、「近所の人が苗を買いに来るようになった」というお話も聞きました。
意識的な人もいれば、無意識に植物を選んだ人もいたと思いますが、今まで、“植物は大変だから”とか“時間がない”とか思っていた人々も、自然と緑を求める気持ちになったのでしょう。緑の癒し効果を肌で感じてくれる人が増えて、私もなんだか嬉しくなりました。
庭が健康をつくる『ガーデンセラピー』
人類は、自然と共存し、心や体の健康を守るための知恵を大切に受け継いで、繁栄をしてきた歴史があります。自然から切り離された現代生活を送ってきた私たちですが、この数カ月の自粛生活は、改めて、自然のよさを再発見する機会になったのではないでしょうか?
植物は、落ち着きや安らぎをもたらしてくれます。季節の移り変わりや、風の匂い、鳥のさえずり、そこから感じる癒しは、ストレスを軽減減する作用も。
コロナウイルスの対策として、まずは、日頃から病気に対しての抵抗力(免疫力)を上げておくことが大切です。それには、ストレスをためないことが大事→植物に触れることが有効、というわけです。
今までは、公園や旅行に行って、植物と触れることが休日の過ごし方…という方もいらっしゃったと思いますが、今回のように家から出られないとなると、「一番身近な自分の家に緑がある」ことが最大の癒しに繋がります。
このような、自宅で植物を愛で、植物と共に生きる暮らし方を通じ、自然と一体となってストレスを減らすことは、『ガーデンセラピー』といわれる自然療法です。植物と触れることを意識し、継続して行うことが免疫力を上げることになり、また、笑顔が増える・家族との会話が増えるといった、健康的な暮らしへの入り口になります。
おうちで楽しめる! 私のガーデンセラピーな暮らし方
植物と触れることによって、さまざまな発見と感動があります。日々ガーデンセラピーを意識して取り入れている私のライフスタイルを、ちょっとご紹介してみますね。
園芸療法
植物を育て、成長を楽しむことを「園芸療法」といいます。庭の自然は、五感を働かせ、脳を活性化させることで、ストレスを減らす作用が期待できます。育てる植物は、木・ハーブ・野菜・草花など、なんでもOK! 植物の成長を楽しむことが大事です。
私の活動拠点・花音の森です。去年12月に植栽をして初めての春を迎えました。こちら(上写真)は、4月10日撮影の写真。植物がちょっとずつ芽吹いてくる様子は、感動的でした。
そしてこちらは、5月25日の写真。植物の生命力は素晴らしく、いろいろなことを気付かせてくれる場にもなっています。自粛生活で運動不足は否めませんが、庭での作業は体を使うため、健康維持にもなりますね。
「こんなに広いと管理が大変じゃない?」とよく言われますが、毎日ちょこちょこお手入れする程度で済むよう、手間がかからない植栽計画を立てています。
ポイントは、草との共存!
ブランコのある場所には芝が植えてありますが、雑草もそのまま生えています。雑草を敵視すると、管理がとても大変になってしまいませんか? 私にも、雑草は根こそぎ抜いていた時期がありましたが、どんなに戦ってもすぐ生えてくるわけです。夏は特に暑いこともあり、ガーデニングが嫌になってしまった経験があります。
そのことから、考え方を変えて、勝手に生えてくる草も植栽の一部ととらえ、仲良く管理することで、ストレスを感じない庭作りを実践しています。
食事療法
量やバランスを考えた食事など、食で健康管理をすることが、広い意味での食事療法ですが、ガーデンセラピーにおける食事療法は、庭でハーブや野菜を育てて、それを外空間での食事に用いることで、ストレス軽減を目指します。
お気に入りのウッドデッキ。外で食事をするとなると、気候のいい時は意外と限られてしまいます。日差しが強くなった4月には、シェードを設置したら、とても過ごしやすくなりました。
ポイントは、バーベキューなど特別なことをするのではなくて、ごはんに味噌汁…といった日常の食事をすること!
仕事をデッキですることも。アウトドアワークもなかなかよかったですよ。毎日のハーブティーもここで飲むことが多くなりました。
芳香療法
植物の持つ芳香成分を利用して、ストレスを減らし、心身のケアに役立てる自然療法を、芳香療法といいます。「アロマセラピー」といったほうが分かりやすいかもしれませんね。
アロマセラピーも、私の毎日の暮らしの中に欠かせないものです。
おこもり美容には、ホホバオイルで美容液を作ってセルフトリートメントを。
ディフューザーで、リラックス作用のある精油を拡散させながら、ヨガやストレッチを。
庭作業をするのにも、蚊が出てくる時期。レモングラスの精油で手作りする虫除けスプレーは手放せません。
毎日のスキンケアは、みつろうと植物油で作るクリーム。精油はその時の気分で変えています。今回は柑橘類ベルガモットとオレンジ。
そして、今のマイブーム「和精油」。日本で採れた、ヒノキやヒバ、クスノキ、クロモジなどの植物から抽出された精油は、心を落ち着かせてくれます。ヒノキのウッドキューブに和精油を垂らして香らせるアロマポットを枕元に置いて、リラックスしながら眠りにつきます。
植物のある暮らしをもっと身近に
うちは庭がないから、時間がないからと、諦めないでください。植物の楽しみ方は無限大。工夫次第で誰でもできるのがガーデンセラピーのいいところです! どこかに出かけて、たまに植物に触れるだけではなく、これを機に、癒しの植物のある暮らしにどっぷり浸かってみましょう♪
これからも引き続き、植物を身近に感じられる、ガーデンセラピーの魅力をお伝えしていきますね。
Credit
写真&文/堀 久恵(ほり ひさえ)
花音-kanon- 代表、ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。
生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。植物に囲まれ、日々ガーデンセラピーを実践中。埼玉県熊谷市在住。
https://kanongreen.com/
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