部屋にお花を飾りたいけど、管理の仕方もよく分からないし…と思っている方におすすめなのが『プリザーブドフラワー』。話に聞いたり、実物を見たことがある方も多いと思いますが、プリザーブドフラワーは生きているような質感で、世話がいらず長い期間楽しむことができる魔法のお花。年齢性別問わず、フラワーギフトとしても人気があります♪ この記事では、プリザーブドフラワーの魅力的な特徴やメリット、保存・保管方法などについてご紹介します。
目次
プリザーブドフラワーとは?
プリザーブドフラワーとは、「保存された(preserved)」という意味を持つお花です。略して「プリ」「プリザ」などとも呼ばれます。よく、ブリザーブドフラワーや、ブリザードフラワーなどと間違われることがありますが、正しくは、「プリザーブドフラワー」といいます。
プリザーブドフラワーは、生花に、オーガニック系の染料を吸わせ、特殊な加工を施すことで、ナチュラルな姿や風合い、質感、生きているときの状態に近い鮮やかな花色を、長期間にわたって保つことができるお花です。一見すると「これは生花? 造花?」と悩むくらい、生花に近い見た目をしています。
この技術は、フランスのヴェルモント社が生み出したものです。20年以上前になりますが、私が初めてプリザーブドフラワーを見た時には、非常に画期的なアイテムが海外から来たぞ…いう印象でした。その後、一大ブームとなり、多くの生花店でも取り扱われ、また習い事としても人気に火がつきました。現在では、ポピュラーな花材として認知されています。以前は、フラワーアレンジメントといえば、生花で作られるものが一般的でしたが、生花は華やかである反面、日もちや管理の面から敬遠されることがあります。一方、プリザーブドフラワーは、そうした心配や手間がないため、日本では母の日をはじめとした記念日のギフトや、ディスプレイフラワーとして人気が出てきた背景がありますね。
プリザーブドフラワーの特徴
特殊な加工を施したプリザーブドフラワーは、「枯れることがない=キレイな状態が長もちする」ことが最大の魅力ではないでしょうか? 水換えなどの管理が不要なので、切り花の知識がない方や、忙しい方、高齢の方にも安心して飾ってもらえます。
上の写真は、一見すると普通の花のアレンジに見えますが、じつは花材はすべてプリザーブドフラワーです。ドライフラワーや造花との違いが見た目でもお分かりいただけると思います。さらに、ドライフラワーや造花と違うところは「感触」。ドライフラワーは触れると花びらがボロボロ落ちてくるイメージですが、プリザーブドフラワーは本当にソフトで、実際に触っても、ドライ? 造花? 生花? と、分からないほどです。
プリザーブド加工された植物は、バラをメインに、アジサイやカスミソウ、ラン、菊、葉など、とてもたくさんの種類が! バラは咲き方やサイズが違うものが多種あり、そして、アジサイには、ガクアジサイ・ピラミッドアジサイ・ヤマアジサイなど、元の植物の数だけ色がある…というように、年々プリザーブド加工された植物の種類が増え続けています。
そして、どのアイテムも、色がとても鮮やかで美しい!
数年前から流行している「ハーバリウム」にもよく使用されています。これは、ドライフラワーでは出せない発色です。
プリザーブドフラワーのメリット
プリザーブドフラワーには魅力がたくさん! 長くもつことや管理が楽な点など、いろいろなシーンと共に、深掘りしていきましょう。
長もちする
プリザーブドフラワーの特徴は、キレイな状態のまま、長期保存が可能な点。切り花だと、大体1週間程度で枯れてしまいますが、プリザーブドフラワーは1~2年、購入時と同じ状態を保つことができます。色が褪せたり、花びらにヒビが入ったりといった経年劣化はありますが、ボロボロと花びらや葉が落ちたり、茶色くなって枯れたり…といった心配はありません。環境に気を付ければ、もっと長きに渡って楽しめる場合もあります。
プリザーブドフラワーは、ウェディングブーケの花材としても優秀! カラーも豊富に揃うので、理想通りのブーケが作れます。また、自分で作ったブーケを挙式で持つ方も多いのですが、生花で作るとなると、花嫁さんは何かと忙しい前日に準備する必要がありますが、プリザーブドフラワーなら事前に作って準備しておけるのも嬉しいですよね。
花が長もちするので、挙式が終わった後は、新居に飾れます。思い出をずっととっておけると人気ですよ。
また、ハロウィンやクリスマスの時期にしか飾らないアレンジメントやリースなども、プリザーブドフラワーなら季節が終わったら仕舞って、また来年飾ることができます。造花のように保存性も高く、何度も繰り返して使えるのも嬉しいですね。
色が豊富
プリザーブドフラワーには、さまざまなカラーバリエーションがあるのも魅力です。生花にはない「青いバラ」や「レインボーカラーのバラ」もプリザーブドフラワーなら揃います。
なかでも、バラのカラーバリエーションは最大のラインナップ。各メーカーによって異なりますが、30~40色ほどあり、例えば「白」といっても、少しくすんだ「アンティークホワイト」、真っ白な「ピュアホワイト」、少しピンクがかった「シャンパンホワイト」など、微妙なニュアンス違いのバリエーションがあるので、色選びも楽しみ一つ。
毎年、新色が各メーカーから発表され、技術の進化と共にグレーがかかったスモーキーカラー、カラフルなマカロンカラーといったおしゃれな色合いもありますよ。ぜひ、あなたのお気に入りの色を見つけてみてください。
手間がかからない
生花を長持ちさせるためには、霧吹きで水をかけたり、花瓶の用意や水換えをしたりと、どうしても手間がかかりますね。その点、プリザーブドフラワーは手を加えずにそのままの形で飾ることができるため、特に、男性や高齢の方、切り花の知識がない方や忙しい方も、安心して、お花のある生活をスタートすることができます。
最近では、お供え用のプリザーブドフラワーアレンジも人気です。
仏壇用のお花は、生花を飾るのが一般的ですが、高齢で一人暮らしだからお花を買いに行くのも大変…という声もよく聞きます。また、夏場は花のもちが悪く、生花を維持するのも大変ですよね。かといって、造花だとちょっと…と悩まれる方も多いです。そんな場合にも、プリザーブドフラワーが活躍します。
アレルギーの心配がない
フラワーアレンジメントの使い道の一つに、病院へのお見舞いがあります。色とりどりのお花は、病気の方にとっても癒しになることでしょう。
ですが最近では、水の衛生面や花粉、また花によっては強い香りやアレルギーの問題などから、生花の持ち込みを断られることもあるようです。そんな時は、プリザーブドフラワーがぴったり! 見た目は生花に近いのですが、香りの心配はありませんし、水の管理も必要ありません。アレンジ自体は軽くて、比較的小さいため、病院のベッドサイドにもいいですね。
プリザーブドフラワーのデメリット
そんなプリザーブドフラワーですが、いくつかデメリットも。
高価である
プリザーブドフラワーは、1輪ずつ、長期保存のための特殊加工が施されているため、生花と比べると高くなります。アレンジメントになると、小さいけれど高価なもの…という印象でしょうか。
ですが、生花よりはるかに長もちするので、コストパフォーマンスは悪くはありません。
*目安の価格は、直径5~6cmのバラが1輪600円程度から
芯(茎)がない
大抵のプリザーブドフラワーには茎がついていません。
花首だけの状態で箱に入って販売されているので、アレンジメントやブーケ(花束)にするときは、ワイヤーを通して茎を作ってから、作成していきます。そのため、お祝いのスタンド花のような大きなものや、茎を効果的に見せるようなアレンジメントには向いていません。
プリザーブドフラワーの注意点
生花を加工して作られたプリザーブドフラワーは、とてもデリケート。長く楽しむために、プリザーブドフラワーを扱うときの注意点やコツをまとめていきます。
高温多湿な場所での保管を避ける
プリザーブドフラワーが苦手なのが、高温多湿な環境です。そういう環境に置いておくと、花びらが透けてしまったり、染色液が漏れ出てしまったりすることも。日本では、特に梅雨から夏にかけては注意しましょう。
プリザーブドフラワーは、気温が18~25℃、湿度は30~50%の環境を好みます。春秋は問題ありませんが、夏は涼しい部屋に移動するなどして楽しむといいですね。幸い、プリザーブドフラワーは軽くて移動もラク。
ただし、エアコンの風が直接当たると、乾燥して、花びらがやぶれて割れてしまうこともありますので、気をつけましょう。
直射日光を避ける
プリザーブドフラワーは室内で楽しみましょう。強い光が当たると色あせの原因になりますので、屋外は不向きです。
また、室内でも、窓際など光の当たる場所に置くと、花の色が抜けて白っぽく退色します。プリザーブドフラワーの最大の特徴は、きれいな発色なので、日が差し込む場所は避けたほうが窓際などは避けるとよいでしょう。
プリザーブドフラワーのトラブル対処法
生花でもなく、ドライフラワーでもないプリザーブドフラワー。「こんな時はどうしたらいいの?」とよく聞かれるトラブル対処法についてまとめました。
ホコリが付いた場合
長く飾っていると、ホコリが付いてしまうことがあります。プリザーブドフラワーは繊細なので、ホコリの除去はなるべくしないほうがいいでしょう。どうしても気になる場合は、毛先の柔らかい筆タイプのチークブラシなどで取り払うか、もしくはドライヤーの弱冷風を当ててホコリを吹き飛ばすとよいでしょう。特にバラは、花びらに触れると破れることが多々あります。
ホコリが気になる場合には、クリアケースに入れるのもおすすめ。キレイが長もちしますよ。
色が透ける場合
プリザーブドフラワーは高温多湿の時期には、湿気の影響で花弁が透明になってしまう場合があります。透明になった際は、お花が入る箱を用意して、中にシリカゲルなどの乾燥剤を入れて密閉し、数日間置いてみてください。
色移りした場合
プリザーブドフラワーの着色に使われる染料が染み出て、衣服やカーテンに色が移ってしまうことがあります。こちらも原因は高温多湿です。付着した色は落ちにくいので、すぐにティッシュなどでふき取ります。ふき取っても落ちない場合は、クリーニングに出しましょう。プリザーブドフラワーは、衣服やカーテンなどに触れないところに置くといいですね。
リースなど壁に飾るタイプのアレンジメントも、外すと壁に色が移っていることがあります。飾る際にはご注意ください。
プリザーブドフラワーの寿命、楽しめる期間は?
よく、「プリザーブドフラワーは何年持つの?」と聞かれることがあります。
プリザーブドフラワーは生花と違い、枯れたり、花びらが落ちてしまったりと、見た目が激しく変化することがありません。前述したように、置いておく環境によっても劣化のスピードは異なります。じわじわと劣化し、経年変化を遂げていくことがほとんどですので、私は、『キレイだなと感じられなくなったら、寿命が来たと思う』をマイルールにしています。
プレゼントしてみよう!
日本では、プリザーブドフラワーのアレンジメントは、誕生日などの記念日ギフトや、ウェディングアイテムによく使われています。いくつかアレンジメントのタイプをご紹介していきます。
このように、さまざまな形に加工され、販売されていますよ。
ぜひ、大切な方へ、プリザーブドフラワーをプレゼントしてみてください。頑張っている自分へのご褒美プレゼントにもいいですね! お気に入りのアレンジメントが見つかりますように。
Credit
写真&文/堀 久恵(ほり ひさえ)
花音-kanon- 代表、ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。
生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。植物に囲まれ、日々ガーデンセラピーを実践中。埼玉県熊谷市在住。
https://kanongreen.com/
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