日々変化して落ち着かない毎日が続いていますが、香りの効果で気分をリフレッシュしながら前向きに乗り切りたいですよね。ここでは精油のチカラで免疫力の向上をサポートするアロマティックライフスタイルを、ボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんがご紹介。今回は、ご家庭で使い勝手がよい抗ウイルス作用が期待できる精油6種について、原料である植物と併せて解説します。

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抗ウイルス作用が期待できる精油

「ウイルスや花粉症対策をサポートするアロマティックライフ」シリーズ。前回までは、香りを楽しみながら対策をサポートするマスクスプレー編、ルームフレグランス(前編・後編)、ウイルス・花粉症対策定番精油編を掲載してきました。今回は、抗ウイルス作用が期待できる精油のプロフィールをご紹介します。

精油

アロマセラピーで使われる芳香精油は数多くありますが、高価だったり、さほど頻繁には使用しないものもあります。本記事では、抗ウイルス作用が期待できるものの中から、比較的手に入りやすく、汎用性も高くて使い勝手のよい精油をセレクトしてご紹介します。

前回記事でご紹介したウイルス・花粉症対策定番精油4種と組み合わせて使うと、楽しめる香りのバリエーションが広がりますよ。

アロマ

また、これらの精油を使ったウイルス・花粉症対策をサポートする精油の日常使いの手法については、下記の記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてお読みください。

ウイルス・花粉症対策をサポートするアロマティックライフ1 マスクスプレー編

ウイルス・花粉症対策をサポートするアロマティックライフ1 マスクスプレー編

ウイルス・花粉症対策をサポートするアロマティックライフ2 ルームフレグランス

ウイルス・花粉症対策をサポートするアロマティックライフ2 ルームフレグランス前編

ウイルス・花粉症対策をサポートするアロマティックライフ3 ルームフレグランス後編

ご家庭でできるウイルスや花粉症の予防サポート、また、おうち時間の過ごし方として、自分らしくしなやかに事態に対処するヒントや不安解決の糸口になれば幸いです。

※現在、日本ではアロマセラピーは医療としては認められていません。精油を用いて美や健康(未病対策や予防)に役立てていく自然療法です。精油は医薬品ではありません。治療目的では使用せず、健康状態が気になる方は医師にご相談ください。

【セレクト1】柑橘果実系精油各種(Citrus

柑橘果実系精油(Citrus)

食用のフルーツとしてもなじみ深く、アロマセラピーでも爽やかなシトラス香で広く愛用されている、ミカン科の樹木の果皮から低温圧搾法で抽出される精油です。

柑橘類

アロマセラピーで精油として取り扱われる柑橘類には、オレンジスイート(Citrus x sinensis)、レモン (Citrus limon)、グレープフルーツ (Citrus paradisi)、マンダリン (Citrus reticulata)などがあります。これらの精油に65~90%以上含まれる主成分リモネンが抗ウイルス作用、抗感染作用をサポートします。

ベルガモット

また、アールグレイティーの香りづけでも知られるベルガモット (Citrus bergamia)精油には、リモネンが40%弱含まれています。他に約30%程度含まれる酢酸リナリルとリモネンの相乗効果で、抗ウイルス作用、抗感染作用をサポートします。

アロマライフ

柑橘系の精油はどれも、気分を明るく前向きにリフレッシュしてくれる効果もあり、他の精油とも幅広く組み合わせやすいです。

抗ウイルスや抗感染といった作用性で考えると、ユーカリやティートリー、ペパーミントなどと組み合わせると、抗ウイルス対策をしつつ、柑橘系精油による抗うつ作用や集中力向上も期待できます。

柑橘類の栽培

園芸的に見ると、柑橘類の樹木はやや寒さに弱いのですが、近年では温暖化の影響もあり、日本でも関東平野部以南の暖地では、レモンやベルガモット、マンダリンなどを庭植えで育てられます。とはいえ、暖かい気候を好む植物ですので、よく日の当たる場所に植え、冬季はマルチングなどで寒さから保護してあげるとよいでしょう。

柑橘系精油はどれも親しみやすく誰からも好まれる香りですが、グレープフルーツ、ベルガモット、レモンの精油は、光毒性のあるフロクマリン(ベルガプテン)を含みます。肌に使用した直後に紫外線に当たると肌を刺激したり、シミなどの原因になることがあるので注意しましょう。アロマディフューザーで室内に拡散させる程度の使い方でしたら、特に光毒性の心配はありません。

【セレクト2】クラリーセージ(サルビア・スクラレア Salvia sclarea

クラリーセージ

地中海沿岸地域や北アフリカなどを原産とするシソ科の二年草(あるいは短命の多年草)、サルビア・スクラレアの花から水蒸気蒸留法で得られる精油です。

サルビア・スクラレア

サルビア・スクラレアは、和名オニサルビアとも呼ばれ、地表に展開する大ぶりの起毛葉ロゼットや、草丈1m以上にもなる開花期の姿も壮麗で、園芸的にも宿根草ガーデンのフォーカルポイントなどにしばしば用いられます。

サルビア・スクラレア

生の葉の香りは、「猫のおしっこ臭」とも評され、あまりよいニオイではないのですが、花から得られる精油はとても個性のある甘い芳香を持っています。

サルビア・スクラレアの花

クラリーセージ精油に約65%含まれるエステル類の酢酸リナリルが抗ウイルス作用をサポートします。その他に約15%、アルコール類の成分リナロールが含まれます。酢酸リナリルとリナロールはラベンダーとも共通する含有成分で、甘い香りとともに鎮静作用や抗不安作用も期待できます。

単体だとやや個性の強い重めの香りですが、ユーカリやグレープフルーツなど、比較的メジャーで分かりやすい精油とブレンドすることで相乗効果を発揮し、とても複雑で大人っぽい香りになります。存在感の強い香りなので、控え目に加えるとよいでしょう。

クラリーセージはリラックス作用が強い精油なので、車を運転する予定があるときや、集中力を要する場面では、注意が必要です。

リラックス

逆にゆったりとリラックス感に浸りたい時は、オレンジスイートやベルガモット、フランキンセンスなど、気持ちを落ち着かせたり、くつろいだ気分へと誘ってくれる精油と組み合わせるとよいでしょう。

【セレクト3】クローブ(シジギウム・アロマティクム Syzygium aromaticum

クローブの精油

「丁子」や「丁香」の名でも知られ、スパイスや生薬としてもなじみの深い、インドネシア、モルッカ諸島原産のフトモモ科の高木、チョウジノキの花のつぼみから水蒸気蒸留法で得られる精油です。

クローブ

本種の学名は、エウゲニア・カリオフィルス(Eugenia caryophyllus )が用いられる場合もありますが、異名同種で、どちらの名で流通していても植物分類上は同じものです。

クローブの蕾は、古くから香辛料としても重用されています。シナモンなどと共に「チャイ」の甘くスパイシーな香りを特徴づけるスパイスといえば分かりやすいでしょうか。

クローブ

クローブ精油に80%以上含まれる主成分、オイゲノールが、抗ウイルス、抗菌、免疫強壮作用をサポートします。

オイゲノールは高い作用性を有する一方で、皮膚や粘膜などに対する刺激も強いため、スキンケアやマスクスプレーでの使用は避けたほうがよいでしょう。

チャイ

ダイレクトにチャイの香りを連想させる甘いスパイス香は、とても個性的なだけでなく、他の精油とのブレンドでも複雑な相乗効果を発揮してくれます。ブレンドしてアロマディフューザーで空気中に拡散させると、クローブの精油の香りと作用性の両方を効果的に享受することができます。

オレンジ

同じく抗ウイルス作用のある柑橘類やペパーミント、ユーカリなどとも好相性です。クローブは、少量でもとても存在感のある香りなので、ブレンドする際には使いすぎないように注意しましょう。

前述のように、クローブは刺激の強い精油なので、スキンケアには向きません。また妊娠中の使用も禁忌とされていますので注意しましょう。

【セレクト4】パルマローザ(キンボポゴン・マルティニィ Cymbopogon martinii 

バラやローズゼラニウムに似た芳香をもつ、インド原産のイネ科の植物、キンボポゴン・マルティニィの葉から水蒸気蒸留法で得られる精油です。

キンボポゴン・マルティニィ
いかにもイネ科らしい草姿のこの植物から、バラの香りに似た芳しい精油が抽出されます。

ゲラニオールという成分を、バラやゼラニウムよりも多く(80%弱程度)含有しており、この主成分ゲラニオールの抗ウイルス・抗感染・免疫向上作用が複合的に機能して、ウイルス対策をサポートします。

パルマローザ

パルマローザは、高価なローズ精油の代用としても重用されてきました。ゲラニオールには皮膚弾力回復作用も期待でき、また、交感神経の興奮を抑えて鎮静や落ち着きをももたらしてくれます。防御と芳香の両面を兼ね備えた、とても有用性の高い精油といえるでしょう。

イライラや興奮した気分を和らげてくれるので、マスクスプレーにはもちろん、アロマディフューザーやリラックスタイムのスキンケアなど、幅広く使用できます。

マスクスプレーやルームフレグランスなど、抗ウイルス観点からブレンドするのであれば、ラベンサラやユーカリ、オレンジスイートなどと好相性です。

パルマローザ精油

スキンケア使いでしたら、老化肌のケアや、むくみ除去作用のほか、抗ウイルス・抗感染・免疫向上作用なども兼ね備えたフランキンセンスやジュニパーベリーと組み合わせてみてもよいでしょう。

【セレクト5】メイチャン(リツェア・クベバ Litsea cubeba

メイチャン精油

アオモジという和名でも知られ、中国・台湾を中心に日本の温暖地でも自生が見られるクスノキ科の高木、リツェア・クベバの果実から水蒸気蒸留法で得られる精油です。

クスノキ科の樹木ですが、精油を抽出する実の部分だけでなく、幹や枝にも柑橘系のレモン、もっと厳密にいうならレモングラスに似た芳香があります。日本では、ナチュラルな雰囲気の庭木として植栽に使われることもあります。

アオモジ

メイチャンの実は、中国では古くから薬用として使われ、今日でも中国が主な精油産地となっています。レモンに似た香りですが、成分的にはイネ科のレモングラスと共通する成分、シトラールを約70%含み、この主成分シトラールが抗ウイルス・呼吸器系強壮作用をサポートします。

また、メイチャンの精油成分には、抗うつ・抗不安作用も期待できます。マスクスプレーやアロマディフューザーに使えば、沈んだ気分や不安を抱いた心理面に前向きに寄り添ってくれるでしょう。

メイチャン精油の香りは、レモングラスよりややマイルドで爽やか。万人が好む香りで、素晴らしい作用性も併せ持ち、幅広く利用することができます。

ブレンドでは、同じく抗ウイルス作用のあるティートリーやユーカリ、ラベンサラなどとも好相性です。

また、レモンに似た香りながら、光毒性のある成分を含まず、植物油やジェルなどの基材で低濃度に希釈すれば、肌にも使用できます。

さらには、シトラールにはデオドラント作用や昆虫忌避作用も期待できるので、夏場のガーデニング作業で気になる汗の匂い対策や、蚊などの虫除けをサポートしてくれるでしょう。

虫除け

シトラールはアルデヒド類の成分で、高濃度だと皮膚を刺激します。香りの強い精油なので、少量でもよく香ります。肌に使用する際は、低濃度を守るよう注意しましょう。

【セレクト6】真性ラベンダー(ラバンデュラ・アングスティフォリア Lavandula angustifolia、syn. Lavandula officinalis

ラベンダー精油

アロマセラピーで最もなじみ深いものの一つ、地中海沿岸部原産のシソ科の植物であるラベンダーの花から水蒸気蒸留法で得られる精油です。

ラベンダーの仲間には、約30種の原種をはじめ、品種まで含めると多くの種類があります。その中でも、真性ラベンダーの名で区別されるのは、ラテン語で「細い葉」という意味をもつ、アングスティフォリア種です。

真性ラベンダー

アングスティフォリア種の自生地は、比較的標高の高いエリアです。園芸的に見ると高温多湿にやや弱いことから、日本の温暖地では栽培が難しく、冷涼な地域での栽培に向きます。

真性ラベンダーと暑さに強いスパイクラベンダーとの交雑種、ラバンジン(Lavandula x intermermedia)は、精油が採取されるラベンダーの中でも花穂が大きく、日本でもより育てやすい種類です。生活に役立てたり、ハーブや観賞用として庭植えするならば、ラバンジン系のほうがおすすめです(ラバンジン精油に含まれる成分は真性ラベンダーと異なります)。

真性ラベンダーの精油に約40%含まれる成分、酢酸リナリルには抗ウイルス作用だけでなく、神経バランス回復作用も期待できます。また、抗うつ作用が期待できるリナロールも20%以上含まれており、それらの作成分の相乗効果で、イライラや不安などで乱れた精神のバランス回復をもサポートしてくれるでしょう。

酢酸リナリルとリナロールは、前出のクラリーセージとも共通する成分ですが、含有比や他の含有成分が異なるため、香りの印象はかなり違います。

ラベンダー

ラベンダーは、「いい香り」というイメージが先行しがちですが、意外と主張が強く、第一印象では好き嫌いが分かれる香りです。まずはイメージに惑わされず、自身の感覚に従って、好みに合うかどうか判断しましょう。また、最初は苦手と思っても、慣れるにしたがってラベンダーの香りが好きになってくる人も多いですし、他の精油とブレンドすることで、前に出すぎず、ほどよい存在感に整えることもできます。

ラベンダーは「精油の中の万能薬」とも呼ばれ、アロマセラピーでも多用途に用いられる精油です。抗炎症作用による日焼け後の肌ケアをはじめ、新しい細胞の成長促進や皮脂バランスの整調作用などがあり、さまざまな肌トラブルに効果が期待できます。

ラベンダー

抗ウイルス作用に着目しつつブレンドを考えるならば、昼間に使用するイメージだとティートリーやユーカリ、ペパーミント、レモンなどとも合いますし、安眠やおうち時間でのディープリラックスを考えるならば、ベルガモットやクラリーセージと組み合わせてよいでしょう。

精油を使う際の注意事項

精油に含まれる成分は、植物自身が進化の過程で、強い紫外線や病原菌、そして害虫などから身を守り、自然界を生き抜くために生み出した防具や武器のようなものともいえるでしょう。

精油の使い方

100%植物由来だから安全というわけではなく、使い方を間違えれば毒や害になるものもあります。用法・用量を守ることが肝要です。

下記注意事項もよく理解した上で、正しく・安全に利用しましょう。

【注意事項】

精油利用の注意事項

※精油原液は刺激が強いため、直接皮膚につかないように注意しましょう。また作業中に気分が悪くなった場合は作業を中止し、換気するなどして精油の刺激に当たり続けないようにしましょう。

※精油は引火性がありますので、火気のない場所で安全に作業しましょう。

※各精油で成分や作用が異なります。作用やリスクについて事前によく調べてから使用しましょう。

※精油は医薬品ではありません。治療目的では使用せず、健康状態が気になる方は医師にご相談ください。

※妊娠中・授乳中の方、病気治療中の方、アレルギー体質などの心配がある方は、使用に注意が必要なものもあります。使用する前に、かかりつけの医師にご相談ください。また3歳未満のお子さんには使用しないでください。

※精油を用いて作ったものは自身が製造者となります。自己責任で安全に配慮して活用しましょう。

住まい方療法としてのアロマセラピー

植物から抽出した香り成分である精油(エッセンシャルオイル)を使って、創造的に心身の健康に役立てていくアロマセラピー(芳香療法)。

アロマセラピー

超高齢化や生活上のストレス増加が懸念されている今日において、病気や不調の原因となる生活習慣やストレスなどのメンタル面の問題、住環境などを包括的に整えていくホリスティック(包括的)ケアの一つとしてアロマセラピーにも注目が集まっています。

植物を多角的に生活の中に取り入れることで、健康寿命を延ばしたり人生の質を高めることを目指すガーデンセラピー。心身ともに溌剌と健やかに日々を過ごすという観点からも、老若男女問わず、住まい方療法の一つであるアロマセラピーを効果的に暮らしに取り入れたいですね。

次回も引き続き、ウイルス作用や花粉症対策サポート、また免疫力向上作用のある精油について、手に入りやすく汎用性の高いものを、乙庭セレクトで詳しくご紹介していきます。どうぞお楽しみに!

アロマセラピー

「生命のあるかぎり、希望はあるものだ。」
ミゲル・デ・セルバンテス (Miguel de Cervantes 作家 1547 – 1616)

Credit


写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科卒業後、前橋工科大学で建築デザインを学ぶ。趣味で楽しんでいた自庭の植栽や、現代建築とコラボレートした植栽デザインなどが注目され、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)ほか、掲載・執筆書多数。
2020年 ガーデンセラピーコーディネーター1級取得。庭や植物から始まる、自分らしく心身ともに健康で充実したライフスタイルの提案にも活動の幅を広げている。
レア植物や新発見のある植物紹介で定評あるオンラインショップも人気。
「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp

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