5月1日はスズランの日、大切な人に贈るスズランのガーデン風ブーケ
鈴のような形をした、純白の小さな花が連なって咲く、スズランの花。フラワー&フォトスタイリスト、海野美規さんによる今回のWeb上フラワーアレンジメントレッスンでは、スズランを主役にしたミニブーケをご紹介します。ヨーロッパでは、スズランの花言葉は「return of happiness(幸せの再来)」。スズランのブーケを贈り合って、幸せの再来を願いましょう。
目次
Jour des Muguets 5月1日はスズランの日
5月1日はスズランの日。フランス語でスズランはミュゲ(Muguet)といい、この日のことはJour des Muguetsといいます。
ヨーロッパでは、スズランは春のシンボル、幸せを呼ぶ花とされてきました。
スズランの日には、大切な人に、家族に、日頃お世話になっている人に、スズランの花束を贈り合うという、とても素敵な風習があります。
私の母は、5月1日が誕生日です。今年もこの日には、スズランの小さな花束を贈ろうと思っています。母の名前は五月。シンプルでちょっとチャーミングな名前だなとずっと思っていました。5月1日がスズランの花を贈り合う日だなんて、なんだかとっても素敵で特別な日のように感じています。
パリのスズラン
16世紀、ヨーロッパでスズランの栽培が始まって間もなく、スズランを贈る風習が生まれました。シャルル9世が宮廷の婦人方に贈ったのが始まりで、その後、19世紀末頃には、一般の人々の間でスズランを贈る風習が定着していったそうです。
パリ近郊の人たちは、森に自生しているスズランを摘み小さな花束にして、パリの街角でスズラン売りをします。この時ばかりは、「誰でもスズランを売ってもよい」ということになっているのだそうです。それにしても、森にはどれほどたくさんのスズランが咲いているのでしょう。ぜひスズランが群生しているところを見てみたいと思います。
パリのような大都会では、森のスズランは香りが高いこともあり、希少価値が高くなります。フランス国内の年間6,000万本のスズラン生産量のうち、85%は西部の温暖な地域で栽培されているそうです。
パリの街角に現れたスズラン売りの少年
随分前のことになりますが、私は一年ほどパリに住んでいました。その時に、私もスズラン売りの少年から小さな花束を買った思い出があります。
5月1日が近くなるとスズラン売りの少年がいると聞いていたので、どんな様子なのか、とても興味がありました。
当時住んでいたアパルトマンはバス通りに面していました。その通りの先の角に、ブーランジェリー(パン屋さん)がありました。アパルトマンの窓から、そのブーランジェリーがよく見えました。記憶は曖昧ですが、お昼頃だったか、ブーランジェリーの入口の横に可愛らしい男の子(小学校の高学年くらいだったか)が足元にバケツを置いて立っているのが見えました。「おー、あれが噂の……」とワクワクしながら、私は窓からしばらく様子を見ていました。バゲットを手にして店から出てきたおしゃれなマダムたちがスズランを1束ずつ買っているようでした。杖をついたムッシュも1束。やはりパリの人はスズランの花束を買うんだなと実感しました。あのスズランの花束は、昼食のテーブルに飾るのかな、それとも誰かに贈るのかなといろいろな光景が思い浮かびました。
私も売り切れてしまう前に買わなくてはと思い、急いで出かけました。1束10本ほどのスズランは、森のスズランかどうか分かりませんが、優しくてノーブルな香りがしたような気がします。「Merci ! メルシー」といってニコッとしたスズラン売りの少年の笑顔が、とても嬉しかったことが、おぼろげに思い出されます。
スズランのアレンジのアイデア
【その1】一種活け
スズランの魅力は、なんといっても清楚な美しさですね。小さな鈴のような花は、どうしてこんなにも可愛らしい形をしているのかと思うほど、芸術的な美しさです。
この小さく可憐な花姿を魅せるアレンジを考えました。
一番は、あれこれ合わせずスズランを一種だけで活けること。それがやはりシンプルで美しいと思います。
飾る時は、ガラスの器に入れて、茎ごと見せるようにします。
<注意すること>
束ねる前に、葉と花を分けておきます(簡単に離れます)。そして、改めて葉と花を組み直します。そうすると、花が葉に隠れてしまわないで、きれいに見せることができます。
【その2】純白の一色活けで、小さなガーデン風ブーケに
純白のスズランに合わせて、白い花を集めて合わせてみましょう。
できれば、スズランのように優しい花がいいかなと思います。
ちょうど今頃の季節の、2011年4月、2018年5月に行われたイギリス・ロイヤルウエディング。この時のブーケは、どんな花が選ばれていたかを調べてみました。
キャサリン妃のブーケは、スズラン、ヒヤシンス、ナデシコ(英名スウィート・ウィリアム)、銀梅花、アイビーを合わせたもの。メーガン妃のブーケは、スイートピー、スズラン、アスチルベ、ジャスミン、アストランティア、ワスレナグサ、銀梅花だったそうです。
ハリー王子がプライベートガーデンで摘まれたお花も使われていたとか。ロマンティックですね〜。
私は、スズラン、SPバラ(‘スプレーウィット’)、クリスマスローズ、スカビオサを選んで、小さな花束にしました。
ポイントにしたのは、スズランを少し高めにして目立たせることと、庭で摘んで束ねたような雰囲気にすることです。
スズランのガーデン風ブーケ、大切な方へのプレゼントにしてはいかがでしょうか。
<手順>
- スズランの花と葉を分けておきます。
- バラの下の方の葉を取り除いておきます。
- それぞれの花を順番に束ねていきます。
スズランは少し高めにして、目立つようにします。 - リボンで束ねます。
【その3】マグカップにカジュアルなアレンジ
花束に選んだ花を、白いマグカップにアレンジします。
カジュアルな雰囲気になります。
*スズランには毒がありますので、活けた水などをペットや小さな子どもが飲んだりしないようご注意ください。
グレース・ケリーのスズランのウエディングブーケ
スズランのブーケと聞いて思い浮かべるのは、グレース・ケリーのウエディングブーケではないでしょうか。
グレース・ケリーはご存知の通り、モナコ公国の王妃。1956年4月18日に、モナコのレーニエ大公と結婚されました。
グレース・ケリーのウエディングドレスは、歴史上最も上品で美しいドレスの一つといわれ、50年以上もあとの2011年4月29日に結婚されたイギリス・キャサリン妃のドレスも影響を受けています。どちらもレースが美しくエレガントです。
そして何より注目したいのは、ブーケです。グレース・ケリーが手にしていたのは、大きなブーケではなく、小さく控えめなスズランのブーケなんですよね。
当時は、ブーケの代わりに小さな聖書を持って臨む花嫁もいたそうですが、グレース・ケリーもシルク、レース、パールで飾りつけた祈祷書を持ち、そして、スズランの小さなブーケを持っていました。4月18日といえばスズランの季節です。旬のスズランはどれほどか美しく、素晴らしい香りがしたことでしょうね。想像しただけでも、うっとりしてしまいます。
写真で見ると、このスズランの小さなブーケは、グレース・ケリーのクールビューティーさを一層引き立てているように思います。どんなに立派で大きなブーケでも、このスズランのブーケには勝てないのではないでしょうか。
エレガントなレースのドレスとともに、「あぁ! さすがグレース・ケリー!」と改めて魅了させられるのです。
参考:『花で巡るモナコ公国』藤田晃子/著(インフォレストパブリッシング刊)
Credit
アレンジ作成・写真・文 / 海野美規 - フラワー&フォトスタイリスト -
うんの・みき/フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
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