ウイルス・花粉症対策をサポートするアロマティックライフ2 ルームフレグランス前編【乙庭Styleのガーデンセラピー4】
新型コロナウイルス感染症については状況が刻々と変わって落ち着かない日が続きますが、香りの効果で気分をリフレッシュしながら前向きに乗り切りたいですよね。そこで、今回は精油のチカラで免疫力の向上をサポートするアロマティックライフスタイルを、分類の垣根を取り払った植物セレクトで話題のボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんが提案。ご家庭でできるルームフレグランス活用法と香りのブレンドについてご紹介します。
目次
自分でブレンドした香りをお部屋に!
ウイルス・花粉症対策をサポートする過ごし方
前回からお送りしている『抗ウイルスや花粉症対策をサポートするアロマティックライフ』シリーズ。第2回目は、お部屋の空気をまるごと対策仕様にしながらも、積極的に自分らしい香りを楽しめるように、自身でブレンドした精油を用いるルームフレグランスの手法についてです。しっかりお伝えしたいので前・後編の2編に分けてご紹介します。
2020年春は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大という深刻なニュースで持ちきりですが、例年でも2月から春にかけては、花粉症やインフルエンザ、あるいは季節の変わり目で体調を崩しやすい時期ですよね。
現代の住宅は気密性も高いので、空気がこもりやすいものです。しかし、人間は常に呼吸して生活をしていますから、身体に取り入れる空気の質にも配慮したいところ。
そこで、部屋全体に行き渡るように空中へ精油分を揮発させて、ウイルス・花粉症対策をしつつ免疫力を高め、その上、よい香りでメンタル的にも心地よく穏やかに過ごすことができたら、よりポジティブな対処になるのではないでしょうか。
2020年4月の時点では、ウイルス感染拡大を防ぐための不要不急の外出を控える動きも強まっており、家や室内で過ごす時間も増えています。そんな時、100%植物から抽出された精油の心地よい香りに包まれて過ごせたら、気持ちの閉塞感も和らぎ、落ち着いて前向きになれることでしょう。
先の見えないストレスや不安、それに伴う睡眠不足なども免疫力を下げる原因になりますので、予防対策だけでなく、メンタルケアや免疫力アップにも気をつけたいですよね。
そこで、今回は、乙庭でも「まずできる取り組み」として実践している、抗ウイルスや花粉症対策、そして免疫力向上にフォーカスした、カスタマイズブレンドの精油を使ったアロマディフューザーの活用法をご紹介したいと思います。
アロマセラピーの「療法」的見地はもちろん、「香りをつくる」「香りを楽しむ」ということも視野に入れて、予防対策というディフェンス一辺倒ではなく、この困難の局面を、むしろクリエイティブに、楽しく健やかに過ごす契機にしていきましょう。
まずはご家庭でできるウイルスや花粉症の予防サポート、あるいはおうち時間の過ごし方として、自分らしく、しなやかに事態に対処するヒントや不安解決の糸口となれれば幸いです。
外出時にも役立つ前回記事、「マスクスプレー編」もぜひ併せてお読みください。
精油をそのまま気化させるネブライザー式アロマディフューザー
抗ウイルスや花粉症対策・免疫力向上などの作用が期待できる精油の作用は、湯気と一緒に吸い込む吸入法や入浴時に精油を使うことでも得られますが、ウイルスや花粉など、空気中に散逸しているものからの防御を考える場合には、ルームフレグランスも兼ねて精油を空気中に拡散し、屋内の空気を対策モードにする方法もよいでしょう。
精油の香りを屋内に拡散するアロマディフューザーには、上写真のような竹串などを利用したリードディフューザーや、加湿機も兼ねる超音波式のアロマディフューザーなどもあります。しかし抗ウイルス・花粉症対策という切り口で考えると、前者の場合、精油は比較的長持ちして拡散しますが揮発スピードが遅く、後者の場合は、主に加湿機としての要素が強く精油の使用量が少ないため、香りはともかく、療法的に見た場合の積極的な精油の作用効果が期待しにくいと考えられます。
そこで乙庭では、大空間のアロマ演出で使われる業務用アロマディフューザーと同じ、ネブライザー方式を用いたアロマディフューザーを採用しています。
ネブライザーとは何かというと、よく耳鼻科での吸入治療などで用いられる、薬液を気化させる器具を想像していただけると分かりやすいと思います。
ネブライザー式のアロマディフューザーは、精油を原液のまま微細に気化し室内に噴射します。そのため他の方式のアロマディフューザーよりも、高濃度かつ安定的に精油成分を拡散でき、常に作用性のある精油成分を空気中に漂わせることができます。芳香を楽しみつつ、常に呼吸する空気から精油のチカラを享受できますね。
アロマディフューザーで精油を使用する場合、皮膚への直接的な刺激の心配も少ないので、クローブなど刺激の強い精油や、レモンやグレープフルーツなど紫外線と反応して皮膚を刺激する光毒性のある精油、またローズアブソリュートやベンゾインなど有機溶剤を用いて抽出された精油にも使えます。使える精油の選択肢が増えるので、ブレンドのバリエーションやつくり出せる香りの世界観がさらに広がるのも嬉しいところです。
ネブライザー方式のアロマディフューザーは、精油の原液、あるいはブレンドした精油を、無希釈か無水エタノールで1.2倍程度希釈したものをボトルごとセットして使用します。精油の使用量は、他のディフューザーと比較して多くなりますが、その分、拡散する香りも強く、空気中の精油濃度も高くなるので、より強い芳香、より高い作用性が期待できます。
もちろん、ティートリーやユーカリなど、ウイルスや花粉症対策に有効とされる精油を単体で使ってもよいですし、既製品の精油の中にもウイルス対策用や、花粉症対策に特化したブレンドもいろいろ出ていますので、手っ取り早くそういった製品を使用するのも一つの方法です。しかし、その場合は、防御一辺倒で香りが単調・画一的になりがちで、香りの好みが合わないこともあります。
だから、せっかく精油の香りを楽しむのなら、自分の求める香りや作用性についてもう少し詳しく知って、香りや作用の組み合わせなども考えた上で、シーンや好みに合わせてお部屋の香りをカスタマイズできたら、お家で過ごす時間の質が向上するように思うのです。
精油をブレンドする場合、複数の種類を揃えていくことになりますが、毎日の気分で着る服のコーディネートを変えたり、気分に合わせて食事のメニューを考えたりするように、常に吸っている空気もコーディネートできれば、精油を集めていく過程も楽しくなるのではないでしょうか。それは、香りのワードローブを揃えていくような感覚です。
アロマセラピーの手法を使えば、アロマディフューザーに限らず、スキンケアやダイエットサポートなど、日々の生活の中で多角的に精油を活用することができます。
精油のブレンドで空気の性能や香りを自分のオリジナルでデザインすると考えれば、ウイルスや花粉症対策もより楽しく取り組めますよね。
香りの持続時間と調和も考慮しましょう
お部屋の香りとして精油をブレンドして使う場合、精油によって違う香りの揮発・持続時間も考慮しながら配合すると、時間経過による香りの変化や移ろいも感じられて、香りがもたらしてくれる世界観がより複雑になったり、奥行きや彩りを与えたりすることができます。
調香の分野では、香りを音符にたとえて「ノート」と表現します。精油も揮発の速さによって香りの持続時間の長さが「短い」「中くらい」「長い」の順に「トップノート」「ミドルノート」「ベースノート」と呼びます。
音楽でいえば複数の音を組み合わせて和音(アコード)をつくりますが、その調和がハーモニーです。それと同じように、香りもトップ〜ベースノートをバランスよく組み合わせることによって、よいハーモニーが生まれます。無数にある組み合わせから、自分にあった響きをつくり出せるということです。
精油のブレンドでは、一般的に芳香成分の揮発時間の「トップ」「ミドル」「ベース」という分類を、もう少し細分化して、トップとミドルの中間の「トップミドル」、ミドルとベースの中間に当たる「ミドルベース」を加えた5段階に分類します。
アロマブレンドを楽しみたい場合、まずは少ない種類からでもよいので、「トップ」「ミドル」「ベース」の各ノートから好みのものを揃えるとよいでしょう。
一般的には「トップ」:「トップミドル」「ミドル」「ミドルベース」:「ベース」の ブレンド比率の目安は、3:5:2などといわれていますが、これは目安であってルールではありません。
まずはこの配分を念頭に置きつつ、慣れていく過程で自身のハーモニーにアレンジしてみてはいかがでしょうか。
抗ウイルス、花粉症対策、免疫力アップの作用を期待できる主な精油のノートを以下に記載しますので、参考にしてください。カッコ内は香りの持続時間の目安です。
【トップノート(30分〜2時間)】
オレンジスイート、レモン、グレープフルーツなど柑橘類全般
【トップミドルノート(1〜3時間)】
ティートリー、ユーカリ、ペパーミント、ラベンサラ、ローズマリーなど
【ミドルノート(2〜6時間)】
ジュニパーベリー、スイートマジョラム、ゼラニウム、ラベンダー、パルマローザ、プチグレン、ローマンカモミールなど
【ミドルベースノート(3時間〜1日)】
クローブ、フランキンセンス、サイプレス、パインなど
【ベースノート(4時間〜数日)】
シダーウッドアトラス、ミルラ、ベチバーなど
各精油の作用についても考慮しましょう
今回のブレンドオイルは、「ウイルス・花粉症対策と免疫力向上」にフォーカスしていますので、そういった作用のある精油を組み合わせていきます。以下、作用別に、汎用性の高い精油をいくつか挙げます。ブレンドの際、自身が求める効果を考える際の参考にしてください。
各精油について詳しく書かれているアロマセラピー関連書籍を持っていると、調べごとに便利ですよ。
【ウイルス・花粉症対策向け定番精油】
ティートリー、ユーカリ(グロブルス、ラディアータ)、ラベンサラ、ペパーミント。
【抗ウイルス作用性精油】
柑橘系精油各種、クラリーセージ、クローブ、パルマローザ、プチグレン、ブラックペッパー、ホーウッド、ラベンダーなど。
【花粉症対策向け精油】
ジャーマンカモミール、ローマンカモミール、サンダルウッド、シダーウッドアトラス、フランキンセンス、ホーウッド、ローズマリー1,8シネオールなど。
【抗感染作用性精油】
柑橘系精油各種、サイプレス、ジュニパーベリー、スイートマジョラム、ゼラニウム、パイン、パルマローザ、フランキンセンス、ベチバーなど。
【免疫力向上性精油】
柑橘系精油各種、サイプレス、ジュニパーベリー、ゼラニウム、パイン、パルマローザ、フランキンセンス、ミルラ、ローズマリー1,8シネオールなど。
まずは、精油のブレンドにおけるノートと作用性について、概要がお分かりいただけたかと思います。
では次回、記事後編にて、ブレンドオイルのつくり方や、乙庭での配合レシピの実例などについて具体的にご紹介します。どうぞお楽しみに!
「すべての芸術は絶えず音楽の状態に憧れる。」
(ウォルター・ペイター 文人・批評家 1839 – 1894)
Credit
Photo/ 2)New Africa 3)sitthiphong 4)Leszek Glasner 5)DimaBerlin 6)carballo 8)New Africa 10)Africa Studio 11)kazmulka 13)AmyLv 14)Lars Hallstrom 15)PR Image Factory 16)New Africa 17)bejo 19)Jozef Klopacka 20)furtseff /Shutterstock.com
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