ローズマリーで爽やかなボロネーゼソースを【ルーシーのおいしい暮らし】

ほったらかしでも力強く成長し、冬の間も常緑で楽しませてくれるハーブ「ローズマリー」。素晴らしい香りと可憐な花で、ガーデニングの人気者! 庭で元気に育っていても、「料理に使うレパートリー」が少ないとお悩みの方も多いかも。今回は、スッキリとした清涼感が特徴のローズマリーを使った「ボロネーゼソースレシピ」を、神奈川県葉山で旬の野菜を育て、植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんがご紹介します。その歴史や効能も知ることで、ローズマリーのイメージが変わるかも?
目次
ガーデニングの頼もしい味方

一年を通して栽培でき、鉢植えでも育てやすいローズマリー。
挿し木で簡単に増やすことができますが、植え替えは嫌う頑固者! 成長が早いので、あらかじめ少し大きめの鉢に植えるとよいでしょう。地中海沿岸地方が原産の常緑低木ですが、上に向かって伸びていく立ち性の種類では2mを超えることもあります。基本的には肥料が必要ないので、ガーデニング初心者やハーブガーデンにもおすすめです(植え替えの後や元気がない時は肥料をあげましょう!)。

お料理中に庭から「必要な分だけ」を切ってきて使えば、気分はイタリアのマンマ(お母ちゃん)。
なんだか料理がいつも以上に楽しくなっちゃう! そんなハーブです。日当たりと風通しがよければ室内でも育てることが可能なので、キッチンのインテリアとしても優秀です。
ローズマリーにまつわる言い伝え
古くからさまざまな国で愛されてきたローズマリーには、「言い伝え」がいくつもあります。数ある「お話」の中から今回ご紹介したいのが、この「4人の泥棒物語」。
むか〜しむかし、17世紀の南フランスで「ペスト」が大流行していた頃のお話。
ペストに感染して亡くなった人の遺体から盗みを働く、「けしからん4人組」がいました。普通なら感染してしまうはず、でもなぜか彼らはピンピン! お元気。
後に逮捕され、裁判官が「君たちはなぜ感染しなかったのだ?! もし、教えてくれたら死刑にはしないぞ!」と追求すると、泥棒4人組はこう答えました。「いやー。じつはね、ローズマリー、タイム、セージ、ラベンダー、ミントなんかのハーブを、お酢に漬け込んだのをねー、全身に塗ってたんすよー!」と。

ペスト菌を媒介していたのは「ノミ」なので、「殺菌作用」「防虫作用」のある酢を体に塗るのは、理論上では効果的! だってお酢って家庭菜園や花壇の「虫除けスプレー」にも使えますからね。そこにハーブのエキスが加わって、最強の天然ブロッカーとなったのでしょう。
体中にお酢を塗るというのは現実的ではないけれど、ハーブビネガーとして食事に取り入れるのは簡単です。ワインビネガーなど、お好みのお酢にお好きなハーブを2週間ほど漬け込めば完成! オイルと塩コショウを足して、ドレッシングに!
食事は「免疫力」を高めるファーストステップ! 明日、スーパーからお酢が消えたら私のせいだわ。やだ、どうしよ! 買い占めないでくださいねぇ。
一家に一本、ローズマリー精油

ローズマリーは効能が多いので、ラベンダーと共に頻繁に使用されている精油の一つです。ラベンダーは「鎮静」の作用、ローズマリーは「強壮」の作用を持ち、まるで2つは「陰と陽」のような関係です。朝(ローズマリー)と夜(ラベンダー)で使い分けることで、生活リズムを整える「サポーター」となってくれるでしょう。

清々しいほどにスーッとした香りは、呼吸を深くして頭の中をクリアにしてくれます。鼻炎や花粉症にも効果的なので、お部屋でディフューザーなどを使った芳香浴にも向いている精油です。清潔感を感じる香りは、玄関や洗面所にもピッタリ!
ローズマリーの数多い効能の中でも私のお気に入りは、まるでドラえもんの秘密道具のような「頭脳明晰作用」。シネオールやカンファーの成分が「集中力」、「記憶力」を高めるといわれ「記憶のハーブ」とも呼ばれています。最近では「アルツハイマー」に効果的という研究結果も出ているそうです。
そんなローズマリーの花言葉は、「思い出」「記憶」「変わらぬ愛」「私を忘れないで」などです。素敵だけど、なんだかちょっと現代では「重め女子」なキーワードのフルコース。
神聖な植物としてのローズマリー
17世紀頃のイギリスの小説では、お葬式の参列者が「for remembrance」(追憶・思い出のため)と言って、ローズマリーの枝を棺桶の中に入れるシーンが見られます。日本的に解釈すれば「現世ではお世話になりました。向こう岸で待っていてね!」というメッセージかしら? ローズマリーのよい香りに導かれて、なんだか無事に川を渡れそうですね。
余談ですが、私の祖父が亡くなった際にもローズマリーを棺桶の中に入れました。おじいちゃんが大好きだったトマトも一緒に入れたら、「なんだかイタリア料理みたいで、美味しそうだね!」と、なってしまいましたが…。
じつは、世界中のさまざまな儀式(結婚式やお葬式等)で、ローズマリーを使う習慣が見られます。古代エジプトのお墓からはローズマリーのブーケが発見され、古代ギリシャでは悪霊を払う薫香として使われていました。ローズマリーは古くから浄化やヒーリングに用いられ、神聖な役割を果たしてきた「スピリチュアル」な植物なのです。

イギリスを代表する作家、シェークスピアの作品には、多くのハーブや木、草花が象徴的に登場して、暗に物語を演出しています。
例えば『ハムレット』の劇中では、花束を抱えた狂気のオフィーリアが自分の兄を恋人のハムレットだと思い込み、「これはローズマリーよ、思い出のため、愛しい人よ、お願い、私を忘れないで」という台詞と共に、ローズマリーを手渡すシーンがあります。
ローズマリーの「意味や歴史的背景」「花言葉」を理解していると、オフィーリアの的確なメッセージ性のある花選びに、「ねぇ! あんたじつは正気だったでしょ!!」と思わずツッコミを入れたくなるのです。
シェークスピアが生きた「エリザベス朝時代(1558 – 1603)」は、ハーブの本が数々と出版され知識が広まった、いわば「ハーブの黄金時代」。物語に出てくる植物の「香り」を想像しながら、植物の持つ「意味」を理解して読み進めると、さらに深い解釈で楽しむことができるのです。
ルーシーのボロネーゼソースレシピ

毎度ながら話が「脇道」にそれてしまいましたが、今回の主役は、いわゆるミートソースの「ボロネーゼ」です。でも「寄り道」って、人生を豊かにするスパイス。だって、真っ直ぐで平坦な道なんて、平々凡々で面白くないでしょう? 同じように、料理でもスパイス(ハーブ)が深みとコクを演出してくれるのです。
このレシピでは、コンソメやブイヨンは使わずに、お肉と野菜の旨味を引き出し、ローズマリーやオレガノ、タイムなどのハーブをたっぷり使います。シンプルな味付けですが、「老若男女」に愛される味なのです。
<材料 5〜6人分>

- 牛挽肉(合挽でもよい) 600g
- ニンニク 1片
- 玉ねぎ 1個
- セロリ 1/2〜1本
- ニンジン 1/2本
- 干し椎茸 2個程(1カップの水を加えて冷蔵庫で一晩戻す)
- トマト缶 400g
- 赤ワイン 1カップ
- ローズマリー 適量
- ナツメグ 適量
- 塩(ハーブソルトもおすすめ) ・コショウ 適量
- ケチャップ 大さじ1〜2
- ハチミツ 大さじ1
- お好みでオレガノやタイム、バジルなどのハーブ(フレッシュでも乾燥でも) 適量
<作り方>
- 玉ねぎ、セロリ、ニンジン、ニンニク、戻した干し椎茸(戻した水は取っておく)をみじん切りにしておく。
セロリは香りのよい葉の部分も入れましょう。 - 挽肉に、刻んだローズマリー、ナツメグ、塩、コショウを混ぜておく。
ローズマリーは、硬い茎は残して柔らかい葉の部分だけ刻む。 挽肉に下味を付けるように軽く混ぜ込む。 - 鍋にバターを溶かし、玉ねぎを入れ、飴色になるまでしっかり炒める。
玉ねぎをよく炒めることで甘みが出ます。 - ③にニンジン、セロリ、ニンニク、ハーブを加え、さらに炒める。
今回はドライのオレガノ、タイム、ディルなども入れてみました。お家にイタリアっぽいハーブがあれば、何でも入れてオッケー! 赤、白、緑でイタリアの国旗カラー! - 火が通ったら、トマト缶、乾燥椎茸と戻し汁を加えて弱火で煮込む。
本場イタリアでは乾燥ポルチーニ茸を使いますが、干し椎茸でもボーノ! 冷たい水でゆっくり戻すことで旨味成分を引き出します。 - 別の鍋にオリーブオイルを入れ、挽肉を強火でしっかり炒める(焦げるようならフライパンで!)。
挽肉を炒める時は、あまり混ぜず、焦げ目が付くくらいに。そうすることでローズマリーの香りがお肉に広がります。 - ⑥の炒めた挽肉に赤ワインを加える(強火)。
- ⑦の挽肉を⑤の鍋に入れ、ケチャップとハチミツを加えて弱火で30分〜1時間ほど煮込む(時間をかけるほど濃厚に!)
※焦げないように混ぜながら煮込んでください。お好みでバターを入れても美味しいです。 - 最後に塩で味を整え、でき上がり! お好きなパスタで召し上がれ!


これは私が作りやすい分量ですが、このレシピをもとに、お好みの分量でぜひ「我が家のボロネーゼレシピ」を作ってみてください。もし味が足りないようだったら、ケチャップやハーブソルトを足してもOKです。半量でも作れますが、大きなお鍋でたくさん作ったほうが絶対に美味しいです(冷凍保存も可能です)!
煮込むのに少し時間がかかりますが、せっかくなので「キッチンにイスを置き、本を読む」など、素敵な暇つぶしタイムに。よい時間を過ごしてみては? ただ、本に夢中になりすぎて焦がさないようご用心!
Credit
写真&文 / ルーシー恩田

ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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