ウイルス・花粉症対策をサポートするアロマティックライフ1 マスクスプレー編 【乙庭Styleのガーデンセラピー3】

ネガティブな話題が多いこの時期ですが、香りの効果で気分をリフレッシュしながら前向きに乗り切りたいですよね。そこで、今回は精油のチカラで免疫力の向上をサポートするアロマティックライフスタイルを、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんが提案。ご家庭でできるマスクスプレーの作り方と活用法などをご紹介します。
目次
ウイルス・花粉症対策、免疫力向上をサポートするアロマティックライフ

例年だと2月中旬頃からは花粉症対策の話題が増えてくる時季ですが、2020年春は、加えて新型コロナウイルスの世界的な感染拡大という深刻なニュースで持ちきり。

マスクや消毒用アルコール、トイレットペーパーなどが品薄で入手困難となったり、世界的な経済の停滞・混乱など、日常生活での不便や先行きの不透明感による心配やストレスも、実感として増してきているように思います。

いろいろネガティブな話題も多い状況ではありますが、ストレスや不安、それに伴う睡眠不足なども免疫力を下げる原因になりますので、こんな時こそ、ぜひ少しでも気持ちを明るくもって事態を乗り越えていきたいですよね。
そこで、今回から数回シリーズで、乙庭でも「まずできる取り組み」として実践している、抗ウイルスや花粉症対策、免疫力向上などにフォーカスした精油の活用法をご紹介したいと思います。

アロマセラピーにはもちろん、科学的なエビデンスが得られている「療法的」「予防対策的」効果もありますが、こんな困難な局面だからこそ「香りを楽しむ」という、もっと自由な使い方も忘れてはいけないと思います。積極的に自分らしく香りを暮らしに取り入れて、日常を健やかに過ごすきっかけにしましょう。

初回となる今回は、ウイルスや花粉症対策として外出時の必需品ともなりつつあるマスクに吹きかけて使用するマスクスプレーについて。療法的効果・作用も配慮しつつ、香りも自分らしくカスタマイズして楽しめる、オリジナルスプレーの作り方をご紹介します。
また、アロマセラピーのマスクスプレーレシピで一般的に使用される無水エタノールも、今はマスクと同様、品薄でたいへん手に入りにくくなっています。

そこで、ここでは無水エタノールを使用しない、代用レシピを提案します。
アロマセラピーを応用した自分オリジナルのマスク用スプレー
今回の新型コロナウイルスだけでなく、毎年、花粉症やインフルエンザ流行の季節の外出時には、マスクをつける機会も多くなりますよね。
ずっとマスクをつけていると、フィルターがかかる分、息苦しく感じたり、マスク内にニオイがこもって不快に感じることも多いのではないでしょうか。

そんなとき、マスクに精油を配合したスプレーをひと吹きするだけで、植物が持つ抗ウイルス作用や免疫力向上作用を享受しつつ、同時に植物由来の天然の芳香や爽快感も楽しめるようになります。防御一辺倒ではなく、リラックス効果やメンタルの向上にもつながり、マスクをつける日常を、積極的にプラス方向にイメージ転換できますね。

既製品でも、ウイルス対策や花粉症対策に特化したブレンドオイルがいろいろ出ています。
手っ取り早くそういった製品を使用してもよいのですが、既製品は作用性を重視している傾向が強く、好みに合わないことも。

私もこの記事を書くに当たり、数社のアンチウイルス対策ブレンドオイルを購入して試してみましたが、「いかにも対策ど定番」といった香りで、ちょっと薬っぽいように感じたり、作用最優先で画一的な感じがして、正直あまりときめきませんでした。
香りを選ぶときには、この「ときめき」とか「フィーリング」がとても大事だと思います。好きじゃない香りをつけるのは、逆にストレスにもなりかねませんよね。
どうせなら、自分の求める香りや作用性をもっと掘り下げて、マスク着用ライフも自分好みにカスタマイズしてみたら、人生の質がちょっと向上するように思うのです。

マスクスプレーに使用するだけだと、使用量も少なく精油を持て余してしまいそうですが、ご安心を。アロマセラピーの手法を使えば、アロマディフューザーで部屋の空気ごと抗ウイルス・免疫力アップ仕様にしたり、抗ウイルスかつ手肌ケアも期待できるハンドクリームを作ったりなど、生活のいろいろな場面で精油を無駄なく活用することができます。

精油のブレンドで、空気や香りを自分オリジナルでデザインする。
ネガティブに思われがちなウイルスや花粉症対策も楽しく思えてきませんか?
【参考記事】
手荒れする園芸作業を極上の手肌ケアタイムに! ハンドクリーム活用法1 概要・作り方編
マスクスプレーの使い方。こまめにスプレーすると効果的
次項でウイルス・花粉症対策向けのアロマティックマスクスプレーの作り方をご紹介しますが、その前に、マスクスプレーの効果的な使い方について解説します。

精油の成分は揮発性で、長時間持続するものではありません。ウイルス・花粉症対策向け精油の代表格ともいえるティートリーやユーカリは、香りの揮発スピードの速さでいうと「トップ~トップ・ミドルノート」に分類され、おおむね1~2時間程度で成分が揮発してしまいます。そのため、1回スプレーしてからずっとマスクをつけっ放しにしていると、持続的な作用が得られず、あまり有効な使い方とはいえません。

なので、マスクスプレーは、携帯に便利な容量のスプレーボトルに入れ、1~1.5時間ごとにこまめにスプレーするのが効果的です。

スプレーしたてのマスクを着用した直後は、ユーカリやペパーミントの清涼感や柑橘系精油のフルーティな香りが一番感じられて、気分がとてもリフレッシュできます。また、これらの香り成分は、集中力を高め、気分を前向きにする効果もあります。

人間の効率的な集中力持続限度は90分程度といわれていますので、それくらいのタイミングで、ちょっとした息抜きもかねてスプレーし直すようにすると、気持ちをリセットするのにもとても効果的でしょう。

スプレーする際の大切なポイントを一つ。マスクスプレーは、必ずマスクの外側に吹きかけてください。内側にスプレーすると、必要以上に刺激が強く感じられたり、顔の皮膚に直接精油が触れたりしてよくありません。ごく簡単なことですが、安全第一で使用しましょう。
ウイルス・花粉症対策をサポートするアロマティックマスクスプレーの作り方
では、本題のアロマテッィクマスクスプレーの作り方をご紹介します。
前述したように、2020年3月の時点では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、エタノール製品がたいへん入手困難になっています。

そのため、今回は、アロマセラピーでも無水エタノールの代用として使用されることもあるグリセリンで代用するレシピとなっています。
グリセリンは肌の保湿材としてスキンケア製品にも使用される材料です。精油を溶かす親油性の基材としても使えますが、エタノールよりは少し親油性に劣ります(精油分が分離しやすい)。
市場状況が改善し、再びエタノールが手に入りやすくなったら、ぜひ無水エタノールを使って作ってみてください。
【レシピ】ウイルス・花粉症対策向けアロマティックマスクスプレー(50mlスプレーボトル1個分)
<材料>
□グリセリン 4ml (薬局などで購入可能)
※無水エタノールの代用です。手に入るようでしたら、無水エタノールを使用しましょう。
□抗ウイルス・花粉症対策向けの精油をお好みのブレンドで 10〜20滴
※ティートリーなど、抗ウイルス・花粉症対策・免疫力向上向け定番精油を軸に、作用や香りの好みに合わせてブレンドします。4種類以上を組み合わせると、オリジナリティのある複雑な香りになっていきます。
- 定番精油:ティートリー、ユーカリ(グロブルス、ラディアータ)、ラベンサラ、ペパーミント
- 抗ウイルス作用性精油:オレンジスイート、パルマローザ、プチグレン、ラベンダー、レモンなど
- 花粉症対策向け精油:ローマンカモミール、シダーウッドアトラス、フランキンセンス、ローズマリー1,8シネオールなど
- 抗感染作用性精油:グレープフルーツ、サイプレス、ジュニパー、スイートマジョラム、パイン、ゼラニウムなど
- 免疫力向上性精油:オレンジスイート、サイプレス、ジュニパー、パイン、パルマローザ、フランキンセンス、ミルラ、ゼラニウムなど
□水(水道水でも可だが精製水だとなおよい) 45ml
【参考】乙庭でのマスクスプレー用精油ブレンド例
- ティートリー 5滴
- ユーカリ ラディアータ 4滴
- ペパーミント 1滴
- オレンジスイート 4滴
- サイプレス 2滴
- フランキンセンス 2滴
<用意するもの>

- スプレー容器(今回はポリスチレン製50mlのものを使用)
- ビーカー(今回は50mlのものを使用。ご家庭用のアロマセラピーだと、30ml・50mlのビーカーと10mlのメスシリンダー、小型の漏斗を買っておくと計量に便利)
- 竹串(正式にはガラス棒がよいが、ご家庭用のアロマセラピーなら竹串や割り箸で代用可)
- ラベルシール
<作り方>
1.ビーカーにグリセリンを入れ、精油(10〜20滴)を加え、竹串でよく混ぜます。

精油は、ティートリー・ユーカリを中心に、定番精油が構成比で5~7割、残りは作用や香りの好みに応じた精油を組み合わせていくと、作用を維持しつつブレンドのバリエーションが広がります。
本レシピの香りのブレンドで失敗しないコツを、以下3点挙げておきますね。
<ポイント1>
1滴のブレンドで香り全体が変わっていくので、精油は少しずつ足して、香りを確かめながら調香作業を進めましょう。
<ポイント2>
定番精油の中でも、ペパーミント精油は特に香りが強いので、使用量は少量に留めましょう。
<ポイント3>
柑橘系精油は特に短時間で香りが揮発するので、分量は多めに配合するとバランスが整います。
2.1のビーカーに水を少しずつ加え、竹串でかきまぜながら、精油-グリセリン混合物を希釈していきます。

3.2の希釈液をスプレーボトルに移して完成!

作成日と使用精油名をラベルシールに書いてボトルに貼っておくと、使用期限やレシピの確認ができて便利でしょう。
【注意事項】

※鮮度が劣化していくので、1〜2週間程度で使い切るようにしましょう。
※精油原液は刺激が強いため、直接皮膚につかないように注意して作業しましょう。
※上記レシピの量では、精油使用量は20滴程度までにします。高濃度になると刺激が強すぎたり、気分が悪くなることもありますので、使用量は少量から試していくとよいでしょう。
※各精油で成分や作用が異なります。作用やリスクについて事前によく調べてから使用しましょう。
※精油は医薬品ではありません。治療目的では使用せず、健康状態が気になる方は医師にご相談ください。
※妊娠中・授乳中の方、病気治療中の方、アレルギー体質等の心配がある方は、使用に注意が必要なものもあります。使用する前に、かかりつけの医師にご相談ください。また3歳未満のお子さんには使用しないでください。
※精油を用いて作ったものは、自身が製造者となります。自己責任で安全に配慮して活用しましょう。
住まい方療法としてのアロマセラピー
植物から抽出した香り成分である精油(エッセンシャルオイル)を使って、心身の健康に役立てていくアロマセラピー(芳香療法)。

超高齢化や生活上のストレス増加が懸念されている今日において、病気や不調の原因となる生活習慣やストレスなどのメンタル面の問題、住環境などを包括的に整えていくホリスティック(包括的)ケアの一つとしてアロマセラピーにも注目が集まっています。
植物を多角的に生活の中に取り入れることで、健康寿命を延ばしたり人生の質を高めることを目指すガーデンセラピー。心身ともに溌剌と健やかに日々を過ごすという観点からも、老若男女問わず、住まい方療法の一つであるアロマセラピーを効果的に暮らしに取り入れたいですね。
では、次回記事では、ウイルス・花粉症対策をサポートするアロマディフューザー活用法をご紹介します。どうぞお楽しみに!

「おれは、落胆するよりも次の策を考えるほうの人間だ。」
(坂本龍馬 土佐藩郷士 1836 – 1837)
Credit

写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科、および前橋工科大学建築学科卒。趣味で楽しんでいた自庭の植栽や、現代建築とコラボレートした植栽デザインなどが注目され、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)ほか、掲載・執筆書多数。
「6つの小さな離れの家」(建築設計:武田清明建築設計事務所)の建築・植栽計画が評価され、日本ガーデンセラピー協会 「第1回ガーデンセラピーコンテスト・プロ部門」大賞受賞(2020)。
ガーデンセラピーコーディネーター1級取得者。(公社) 日本アロマ環境協会 アロマテラピーインストラクター、アロマブレンドデザイナー。日本メディカルハーブ協会 シニアハーバルセラピスト。
庭や植物から始まる、自分らしく心身ともに健康で充実したライフスタイルの提案にも活動の幅を広げている。レア植物や新発見のある植物紹介で定評あるオンラインショップも人気。
「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp
Photo/ 2)Zephyr_p 3)Blue Sky Stories 4)Love You Stock 7)Zephyr_p 8)takasu 10)AmyLv 15)Dmytro Zinkevych 16)Love You Stock 31)bitt24 / Shutterstock.com
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