和菓子と“ Vase d’Avril (4月の花器)”のアレンジで春色テーブル
お花見に行きたくても、なかなか外に出かけられない2020年の春。そんなときこそ、フラワーアレンジメントを楽しみましょう! フラワー&フォトスタイリスト、海野美規さんによる今回のWeb上フラワーアレンジメントレッスンでは、誰が活けてもうまくいく魔法の花器を使った庭花アレンジと、可愛い春の和菓子のマリアージュ。春色のテーブルを設えて、晴れやかに新しい季節を迎えましょう!
目次
パリの和菓子店とフランス語の和菓子の本
2020年は例年になく、桜の開花が早いですね。いよいよ春本番です。
この季節には、和菓子の世界も春爛漫になります。和菓子は、日本が誇る素晴らしい文化の一つです。海外でも大人気ですね。
私は今から27年前、1年ほどパリに暮らした時期がありました。まだEUが発足する前、通貨もフレンチフランが使われていた頃です。
当時からオペラ座の近くに、和菓子の老舗中の老舗『とらや』がありました。「TORAYA PARIS」のサイトを見ると、パリ店がオープンしたのは1980年。今年で40年になるとのことです。
私は小豆が大好きなので、和菓子には目がありません。パリといえばスイーツの宝庫で、キラキラ輝く美しい美味しいスイーツを、たくさん見たり食べたりしました。パリの極上のケーキを食べると、反動(?)なのか和菓子も食べたくなり、オペラ座近くのとらやに行っては、お汁粉やクリームあんみつなどをいただいていました。「あー、私はやっぱり日本人だ〜」とつくづく思い、ちょっぴりホームシックにかかってしまったこともありましたが、「とらやさんでお汁粉」が私の密かな楽しみでした。
そんな「TORAYA PARIS」で、とても素敵な本を見つけました。フランス語で書かれた「フルール・エ・ワガシ」という和菓子の本です。ピンクの表紙が上品で、「日本の和菓子らしいな」、「とらやさんらしいな」と思いました。
季節ごとに、
春は、桜 椿 桃
夏は、菖蒲 牡丹 藤 朝顔
秋は、菊 桔梗 紅葉
冬は、松 梅 水仙 南天
と日本の花をモチーフにしたお菓子、練り切り、お干菓子、薯蕷饅頭などが掲載されているのですが、例えば桜といっても一つだけではなく、その表現はじつに豊か。「初桜」「花衣」「花筏」「手折桜」と、桜が開花してから散っていくまで、そのときそのときの様子をイメージして銘がつけられたお菓子があるのです。一つの花に美しい瞬間をいくつも見いだす感性や雅やかな名づけも、和菓子の奥深さ、面白さの一端だなと思います。
もちろん、フランスのお菓子も芸術的で素晴らしいですが、このような四季折々の花を模して作られたお菓子は、そうそうないのではないでしょうか。自然の事象と結びついた、こんなにも美しいお菓子があるなんて、なんだかそれが私にはとても誇らしいのです。
4月といえば、「Vase d’Avril 4月の花器」
桜の季節、4月(今年は3月ですね!)にぴったりな器というと、その名前の通りの「4月の花器」は欠かせません。「4月の花器」というネーミングはご存じなくても、多くの方がきっとどこかで、一度は目にされているのではないでしょうか。または、お手元にお持ちの方もいらっしゃると思います。
「4月の花器 Vase d’Avril 」は、1992年に発表された、女性2人組のデザイナー、Tse&Tse associees(ツェツェ・アソシエ)のデビュー作品で、現在は、パリのポンピドゥー・センターの永久展示品となっている伝説の花器です。
21本の試験管が20個の留め金でつながれていて、全体を自由に動かすことができます。中央に寄せ集めたり、長く伸ばしたり。試験管の大きさは3パターンほどありますが、私が持っているのは、一番小さな「Petit」サイズです。
このサイズだと、ビオラのような茎の短い花や繊細な花を活けるのにちょうどよく、春の庭の楽しい雰囲気をそのまま器にアレンジできるところが、私はとても気に入っています。
この花器に花を活けていると、2人のデザイナーが「4月の花器」と名付けた訳が、よく分かるような気がします。心躍る4月にぴったりだなと思います。
今回は、この「4月の花器」を使って、春の花をアレンジしました。
<使った花>
- ルピナス
- ムスカリ
- クリスマスローズ
- スイセン(マウントフット)
- ヒヤシンス
- チューリップ
- ビオラ
- ラベンダー
ルピナスの葉は明るい黄緑色ですので、全体に優しい雰囲気にまとまります。葉の色の選び方で印象が変わります。
<アレンジの手順>
難しい決まりはなく、ラフに入れていくだけ。背の高い花があったり、横を向いている花があったり、自由気ままな感じがいいなと思います。どうやって入れても素敵に見える! それがこの花器のよいところで、楽しいところです。
- 伸縮性のある花器ですが、横一列に伸ばさず、束ねて水を入れます。
- ルピナスの葉を全体に入れます。
- クリスマスローズやスイセンなど、大きな花を入れていきます。
- ムスカリなど、小さな花を入れます。
- 全体のバランスを見ます。
この「4月の花器 プチ」は、それほど高さはないのですが、それでも全体を高めにすると、21本の試験管があるので大きなアレンジになります。
テーブルに飾るなら、向かい合った相手の顔が見えなくならないように、できれば低めにコンパクトにまとめたいですね。
美しい和菓子と春の花で、お茶の時間
なかなか外へ出かけられないこの春。庭の花と美しい和菓子で、おやつの時間を楽しんではいかがでしょうか。
少し前の日本経済新聞の週末版に、「ネオ和菓子」について紹介されていました。「四季や自然を表現する和菓子の文化や製法を大切に引き継ぎながら、素材の和洋を問わないスタイリッシュで独創的な『ネオ和菓子』は、新世代の職人が創り出した現代に合った和菓子」ということでした。ドライイチジクやクルミなどが入った羊羹は、漆器に描かれた絵のような美しさで、とても印象的。どんな味がするのかな、と想像するだけでもワクワクしました。
ネオ和菓子のビジュアルに負けない、元祖アート作品ともいうべき練り切りは、やはり普遍の美しさです。桜、梅、桃など、季節の花を、こんなにも巧みに、色といい形といい、上手に作られているなと感動してしまいます。
私は、和菓子に魅せられて、6カ月ほど和菓子教室に通ったことがあります。あの美しい練り切りはどうやって作られているのか、興味があったからです。初めて作ったのはウグイスでした。初心者にはハードルが高く、難しかったです。いかがでしょうか、ウグイスに見えますか? 私としては可愛くできたと、納得の出来栄え!? です。
春の花を飾り、桜の花や菜の花のお菓子をいただくなんて、ちょっと風流なお茶の時間です。
Credit
アレンジ作成・写真・文/海野美規(Unno Miki)
フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
http://www.annegarden.jp
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