おやつのテーブルに飾るユキヤナギと小さな花のリース 〜ヘレンド風に〜

まだ冷え込む日もありますが、春はもうすぐそこまで来ています。近づいてくる春の気配を心待ちにしながら楽しむティータイムには、優しい春色のテーブルリースを飾ってみてはいかがですか? フラワー&フォトスタイリスト、海野美規さんによる今回のWeb上フラワーアレンジメントレッスンでは、春に咲くユキヤナギの枝と春の花を使った、ペールカラーのテーブルリースの作り方を教えていただきます。
目次
おやつのテーブルを楽しむ

皆さんは、おやつの時間を楽しんでいらっしゃいますか?
一日の中で、ほっと一息のおやつの時間は、とても大切ですね。何か作業をしているとき、「あーここまでやったらお茶にしようー」と、おやつの時間を目標にして、もうひとふんばり頑張れたり、うまく作業が進んでいないときは、このお茶の時間がよい気分転換に。お茶と甘いもので、頭も気分も幸せ気分に満たされて、おやつの後は効率がぐんと上がります。 自宅での一人おやつの時間では、手軽につまめるクッキーか甘いお饅頭、そしてお気に入りのカップに美味しいお茶があれば、私はそれだけで十分嬉しいティータイムです。

カップとお皿も含めて、お茶まわりの小物が充実していると、さらに愉しい時間になります。せっかくなので、テーブルにはお花も一緒に飾りませんか? あまり立派な大きなアレンジだと仰々しくなりますから、小さく、でもテーブルが明るく華やかになるようなものがいいですね。それと、簡単にできるのが一番です。
家族やお友達と一緒なら、少し気の利いたアレンジにすると、おやつ時間がいっそう愉しくなります。今回は、春の花ユキヤナギを使って、ティータイムのアレンジにちょうどいい、愛らしいテーブルリースを作ります。

アレンジに使った花

ユキヤナギは枝が柔らかいので、丸めやすい花材です。このアレンジは、ベースを使わず、ユキヤナギの枝だけで作ります。
水を入れることができる程度の、少し深さのあるコンポート皿に入れて飾ります。
リースに合わせる花はお好みで。私は、ヘレンドの器に描かれているような、優しいペールトーンの色でまとめました。

- ユキヤナギ 1〜2本
- アオモジ 1本
- スイートピー 1本
- ストック 1本
- スイセン 数本
- ビオラ 数本
- プリムラ 数本
アレンジの作り方
- 長めのユキヤナギの枝を1本選びます。
- 器の大きさよりも一回り小さめに丸くして、リースのベースを作ります。
枝の端を絡めて留めます。
留められなかったら、麻紐やワイヤーなどを結んで留めます。 - ユキヤナギのベースに、ユキヤナギの枝を重ねて絡ませていきます。
- 水を張った器に入れます。
- アオモジやストックなどの花を入れていきます。

優しいペールトーンの、春らしいテーブルリースの完成!



ユキヤナギとアオモジだけでまとめれば、また違う雰囲気に。
ハンガリーの名陶 ヘレンド

お茶の時間に欠かせないアイテムの一つに、もちろん茶器があります。日常使いとお客様用と、シーンによって使い分けをされているかと思いますが、どちらにしてもこだわりを持って揃えている方が多いのではないでしょうか。私は、小さな草花のモチーフが絵付けされたカップ&ソーサーが好きです。
私が以前住んでいたことのあるハンガリーには、3つの陶磁器ブランドがあります。
ハンガリー最古のHollohaza(ホロハーザ)、Zsolnay(ジョルナイ)、そしてHerend(ヘレンド)です。
ヘレンドは、オーストリア=ハンガリー二重帝国時代のフランツ・ヨーゼフ皇帝夫妻にとても愛され、後発ながらヨーロッパの各博覧会で賞を獲得して成長していきました。 特に、“ビクトリアブーケ”は、1851年のロンドンの博覧会で、ヴィクトリア女王の目に留まり、英国王室のディナーセットとして使われるようになりました。それを機に、ヘレンドの名前は全世界に広まっていきました。“ビクトリアブーケ”は、今でも人気のシリーズです。
ヘレンドの工房があるヘレンド村は、ハンガリーの首都ブダペストから車で2時間弱のところにあります。ヘレンドの博物館、工場、ショップ、レストランがあり、見学用の工房では、すべての工程を、順を追って見学できるようになっていました。実際に絵付けをしているところも見ることができるので、観光客にとても人気があるようです。
私も、ハンガリーに渡って初めて郊外にドライブしたのがヘレンド村。それからも、日本からやってきた友人知人を何度も案内しました。近くにバラトン湖があり、のんびりしたよいところです。ブダペストにご旅行の際には、ヘレンド村にもぜひ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
ブダペストの小さな絵付け教室

ハンガリーに暮らしていた当時、ブダペストに駐在する日本人の間で、絵付け教室が密かに人気を集めていました。教室とはいっても、オープンな生徒募集をするのではなく、運よく空きが出れば入れるというシステム。私もなんとかして習いたいと思い、ずいぶん長く空きが出るのを待ちました。
この絵付け教室は、ヘレンドの絵付け職人をだった方が、ご自宅で開いているものでした。先生とのレッスンは、週に1回1時間程度で、生徒は一人か二人。先生はとても優しく穏やかで、真っ白な口髭の小柄なハンガリー人おじいちゃんでした。
レッスンといっても、生徒が持参してきた真っ白なカップやプレート(生徒の間では“白ヘレンド”と呼ばれていました)に、先生のデザインのファイルから生徒が希望するものを選んで、先生に絵付けをしていただく。私たち生徒はそれをじっと見学するというものでした。

先生は、耳が不自由でいらっしゃいました。アトリエはいつも静寂に包まれていました。音楽もラジオも、会話もなく、アトリエは何の音もありません。ただ、先生の筆のカリカリという音だけが静かに響いていました。先生と会話するときは、英語の筆談で。訪問者(次の生徒や郵便配達人)が来ると、呼び鈴のランプがついて、先生に知らせる仕組みになっていました。
冬は、外の小径を歩く人が雪を踏み締めるサクッサクッという音や、庭木の枝から雪がバサッと落ちる音が聞こえ、春や秋は鳥の声がとてもよく聞こえました。この静かな空間の静かな時間が、私はとても気に入っていました。あまりに静かで、ついうとうとしそうになったりしましたが。
さて、肝心な絵付けはというと、先生の職人技を間近で見ることができたことは、たいへん貴重な経験となったのですが、実際に私が筆を持ったのは、窯に入れる前に、絵付けが施された器の底に日付と自分の名前を書くときだけ。先生の素晴らしい技術を目の当たりにすると、絵付けというものは、そうそう一朝一夕でできるものではないということがたいへんよく分かりました。

先生に絵付けをしていただいた6客分のディナーセットは、スープ皿とスープサーバーポットを残してほぼ完成しました。
一つひとつのモチーフを、決して手を抜くことなく、丁寧に丁寧に描かれた器の中の絵を見ると、今でも、優しい先生とアトリエの静かな佇まいを思い出します。
Credit
写真・文/海野美規(Unno Miki)
フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
https://www.annegarden.jp/
参考:『旅名人ブックス ハンガリー”千年王国”への旅』日経BP社
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