私たちの暮らしに寄り添い、喜びや安らぎをもたらしてくれるペットなどの動物たち。ですが、動物たちもストレスを感じ、時に体調不良にもなってしまうことをご存じでしょうか。ハーバルセラピストの資格を持ち、ペットのための自然療法も学ぶ海野美規さんに、動物の福祉の基本として認められている5つの自由と、愛犬と共に過ごすくつろぎの庭時間について伺いました。
目次
「動物の5つの自由」とは?
「動物の5つの自由」ってご存じでしょうか。「5つの自由」とは、次の項目のことです。
- 飢えと渇きからの自由
- 不快からの自由
- 痛み・傷害・病気からの自由
- 恐怖や抑圧からの自由
- 正常な行動を表現する自由
この「5つの自由」は、1960年代のイギリスで、家畜の劣悪な飼育管理を改善させ、家畜の福祉を確保させるために、その基本として定められました。 現在では家畜のみならず、ペットなどの動物の福祉の基本として世界中で認められています。
動物福祉とは「動物が精神的・肉体的に充分健康で、幸福であり、環境とも調和している」ということ。自分の思うままに、気の向いた時だけかわいがることは、動物福祉が満たされているとはいえないとされています。
この5つの項目を見て最初に考えたのは、「生き物にとってごく当たり前」ということです。でも、もしかしたら気がつかないうちに、その自由を侵していることがあるかもしれないと思い至りました。例えば、散歩中に、ついついあれはダメこれはダメと言って、匂いを嗅いでいるところを急かしてしまったり、急に座り込んでしまったときに、理由を考えず、無理に立たせてリードを引っ張ってしまったり。こんなとき、彼らはとても悲しい気持ちになっているのかもしれません。
犬だってストレスを感じる
私たち人間や犬などの生命体には、身体を常に一定の安定した状態に保とうとする働き、ホメオスタシス(恒常性)があります。このホメオスタシスのおかげで、外部環境や精神的な緊張によって乱された体内の変化も元の状態に戻ることができます。
一般的には、この乱されたときの体内に起こる変化や、それを元に戻そうとする反応を「ストレス反応(ストレス)」と呼びます。ストレスには大きく分けて、暑さ、寒さ、騒音などの物理的・化学的ストレス、疲労や病気などの生理的ストレス、不満や自信喪失、挫折感、不安などの心理的ストレスがあります。
「5つの自由」で示されている自由が守られなければ、犬などの動物にとっては「ストレス」となってしまいます。
なんらかのストレスを抱えた犬は、首回りやしっぽの付け根が緊張していたり、しっぽを丸めて股の間に入れたままになっていることがあります。我が家の愛犬あんも、病院の診察台の上に立つとかなり緊張するようで、先生から「随分と首が凝ってますね」と言われます。こういう緊張状態が続くと、身体的な滞りができて体調不良になったりするのだそうです。人間と同じですね。
過度にストレスを与えないことや、それを軽減してあげることは、健全な精神と健康を保つためにとても大切なこと。そして飼い主も同じように、過度なストレスを受けないように、その原因を取り除くことを心がけていきたいものです。
ストレスはお互いに伝わる
2019年の夏頃の朝日新聞に、興味深い記事が掲載されていました。
「ストレス 飼い犬へ以心伝心」という見出しで、飼い主がためているストレスは飼い犬に伝わるという研究結果を、スウェーデンの研究者が英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表したというものでした。
内容はというと、「室内で飼われていたボーダーコリー25匹と、シェットランド・シープドッグ33匹、それぞれの飼い主の計58組について、ストレスの変化を1年にわたり調査した。ストレスを感じると分泌される『コルチゾール』がどれくらい毛髪に含まれているか調べたところ、季節や運動量にかかわらず、飼い主のコルチゾールが多いと、犬も同様に多かった」というものでした。
ずっと一緒にいると、言葉は通じなくても、愛犬はやはり分かっていたのです。このような研究結果が出て、「そうでしょ、そうでしょ」と納得する飼い主がほとんどではないでしょうか。もちろん私もそう感じていました。
庭時間でストレス解消
飼い主の責任として、私のストレスが愛犬あんに伝わらないように、また、あん自身のストレスがたまらないようにしてあげなくてはと思います。
それにはやはり、リラックスできる時間が大切。あんにとっても、もちろん私にとっても、一番の気分転換になるのは外に出ることだと思います。普段、特に冬は家に閉じこもりがちになりやすいので、積極的に外に出る機会を作ろうと心がけています。
温かなお日様の光を浴びて、穏やかな風に吹かれ、風の音を聞き、植物に触れて過ごすことが、きっと何よりのストレス発散になるのではないでしょうか。毎日公園に散歩に出かけますが、限られた時間では十分とはいえないでしょう。時間に追われることなく、ゆっくりのんびり心ゆくまで、外の空気に触れることが理想です。幸い、私は近くに実家があり、あんを連れて一緒に出かけることができます。実家に着くと、あんは庭に飛び出していきます。そして、草の匂いをかいだり、空を見上げたり、芝生の上で気持ちよさそうに寛ぎます。
今の時期は、植物の芽が出てきたり、花が咲き出したり、少しずつ色づいてきて、とても楽しい気分になりますね。庭にはいろいろな植物があって、あんも興味津々で、ウロウロと探検するのが楽しいようです。先日は、黄色のクロッカスが咲いているのを見つけて、私に教えてくれました。真っ赤なアネモネの花を覗き込んで、しばらく匂いを嗅いでいたこともあります。あんはアネモネを見て、何を思うのでしょうか。
庭で過ごすときに、一つ気を付けたいことは、中にはスイセンの球根のように、犬にとって有毒な植物もあるということ。危険なものには近づかないようにすることが大切です。
私も、庭に出て、咲いている花を少し摘んで小さな器にアレンジし、写真を撮って過ごすことがとても好きです。また、母と一緒に種まきをしたり、球根を植えたり、花苗を植えたりするのも、とても愉しい時間です。
先日、オリーブの木とラベンダー、シルバーレース、パンジー、プリムラを合わせて寄せ植えを作りました。オリーブの木とラベンダーを合わせると、南仏プロバンスのような雰囲気になります。
でき上がりもとても気に入って、ウキウキした気分で写真を撮っていると、あんがボールを持って鉢に寄ってきました。「わぁ、きれいね!」と言ってくれた? かどうかは分かりませんが、私が楽しそうに嬉しそうにしていたのが伝わって、あんも上機嫌になったように思いました。やはり以心伝心なのです。
これからも、愛犬あんと庭で一緒に過ごす時間を大切にしていきたいと思います。
Credit
写真・文/海野美規(Unno Miki)
フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
https://www.annegarden.jp/
参考:ホリスティックケア・カウンセラー養成講座テキスト
「動物の5つの自由」日本アニマルウエルネス協会 http://www.j-awa.jp/philosophy/index.html
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