2020年の2月4日は立春。一年で最も寒い時期ですが、暦の上では春が始まります。まだ春は遠いのに、この時期に立春があるのはなぜか、疑問に思ったことがある人もいるのではないでしょうか。今回は、意外と知らない立春の意味や成り立ち、立春に関する食べ物から季節の植物まで、さまざまな基礎知識をご紹介します。日本ならではの行事について、今一度確認してみましょう!

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立春とは

黄道
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まず、立春とはそもそも何なのでしょうか?

立春は、二十四節気の最初の節気で、現在二十四節気を定めている定気法では、太陽黄経が315度の時のこと。毎年、2月4日頃に訪れます。2020年の立春は2月4日です。

二十四節気というのは、太陽の運行に基づいて1年を24の節気に分けた季節の分類法のようなもの。もともとは日数によって分割されていましたが、現在では黄道を24等分して、太陽の位置から求めています。二十四節気の節気には、例えば今回ご紹介する立春や、春分、夏至、冬至、啓蟄などがあります。もともとは古代中国で作られたもので、日本では平安時代から使われているそう。この二十四節気をさらに細かく分けた七十二候というものもあります。

二十四節気は太陽の位置によって決まるため、毎年同じ日ではなく、年によって日付が移動します。例えば、2020年の立春は2月4日ですが、2021年の立春は2月3日。ちなみに、節気の名前は、その基準となる位置に太陽がある1日だけを指すこともあれば、次の二十四節気までの期間全体を指すこともあります。2020年の立春は2月4日ですが、次の二十四節気である雨水の前日、2月18日までの期間を指すこともあるという感じですね。

なぜ春立ではなく立春なの?

さて、この立春は「春が立つ」日。そう考えると、「春立」という字の並びになるのでは? なんて素朴な疑問が湧いてくるかもしれません。実際、古今和歌集に収められた紀貫之の和歌「袖ひぢてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらん」では、「春立つ」という言葉で出ています。

しかしながら、立春という言葉が生まれたのは日本ではなく古代中国です。この頃の中国では、星々の運行や季節の巡りについて国民に知らせるということも、王の重要な役割でした。そのため、立春というのは、春が勝手にやってくる「春が立つ」ではなく、王が春の始まりと宣言する「春を立てる」という意味でつけられたのではないかと考えられます。

立春はなぜ寒いのか

凍った枝
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立春がやってくる2月4日頃は、まだ一年で最も寒い時期。暦の上では春の始まり、といわれても、今一つ実感がわかない方も多いかもしれません。それでは、なぜこの寒い季節に立春という節気がやってくるのでしょうか。

まず、そもそも二十四節気は古代中国由来のものであるため、日本の季節感とは少しずれているというのが理由の一つにあります。日本には梅雨や台風など日本特有の気候もあり、気温の変化の時期も中国とは異なります。このような季節感のずれを補足するため、日本では八十八夜や入梅、半夏生などの雑節も取り入れられてきました。

また、立春が寒いのは、寒さのピークから春に転ずる転換点に当たるため。中国の陰陽五行思想では、陰が極まれば陽に転じる、つまりこの時期に寒さが極まり、暖かさに転じて次の春へと季節が移っていくと考えられていました。ちなみに、立春の時期は、気温こそまだまだ低いですが、冬至の頃より日の出は約10分早く、日の入りは約40分遅くなっていて、昼間の時間が50分ほど長くなっています。しかし、昼間の時間が長くなってはいても、大きな地球の温度が変化するには時間がかかります。日照時間の長さが気温に反映されるにはおよそ1~2カ月かかるといわれており、大寒から立春の頃は、ちょうど冬至の頃の日照時間の短さが反映され、一年で最も寒い時期となるのです。

しかし、ここで寒さのピークを過ぎた後は、少しずつでも確実に春が近づいてきます。立春以降に初めて吹く暖かい突風を春一番といい、以降徐々に気温も上昇していきます。春の気が立つ、つまり春の気配が感じられる頃という名前の通り、春の始まりを感じ始めることができます。

立春と節分の違い

節分
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立春とちょうど時期を同じくして、節分がありますね。同じような印象を受ける節分と立春ですが、2つの違いをおさらいしましょう。

節分は季節の分かれ目という意味を持つ言葉で、立春など季節が変わる日の前日を指す雑節の一つです。本来は、春夏秋冬に応じて立夏、立秋、立冬もあるため、それにともなって節分も年に4回あるのですが、江戸時代頃から節分といえば立春の前日の節分を指すようになったようです。

ここ最近は、節分は2月3日の日が多いため、節分は2月3日に固定されていると思っている方も多いかもしれませんが、じつは立春が移動すれば節分も移動するので、2月3日とは限りません。実際に、立春が2月3日になる2021年は、節分は2月2日になります。

立春と節分の関係は、ちょうどお正月と大晦日の関係のようなもの。先にお話しした通り、立春は二十四節気の初めの節気です。かつて、立春は新しい年の始まりであり、今でいう元日でした。つまり、立春の前日である節分は、大晦日のような大事な日だったのです。そのため立春の前日の節分は特に重視され、他の季節の節分がほとんど祝われなくなった現在でも、この節分には、「魔滅」や「魔目」に通じることから厄を払う力を持つと信じられていた大豆を撒いて厄を払う豆まきをしたり、厄払いにイワシの頭やヒイラギを飾ったり、恵方巻を食べたりなど、さまざまな行事が行われています。

立春と旧正月の違い

春節
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さて、もうひとつ立春と混ざりやすいのが旧正月(春節)。こちらも立春の頃にやってきますが、立春と旧正月は異なる行事です。それぞれの違いについても確認しておきましょう。

二十四節気に基づいて決まる立春に対し、旧正月はその名前からも分かる通り、旧暦に基づいた行事です。日本の旧暦とは太陰太陽暦のことで、月(太陰)の運行を大きな基準にし、太陽の動きも取り入れた暦です。明治時代に太陽暦(グレゴリオ暦)が導入されるまでは、この太陰太陽暦が暦として使われていました。今回取り上げている立春が含まれる二十四節気は、太陽の運行を元にした季節を表す暦ですが、旧暦は月日の暦です。

さて、旧正月はこの旧暦の1月1日のことで、中国の春節やベトナムのテトのように、アジア諸国では、お正月といえば旧正月を意味する国も多くあります。また、立春から旧暦の新年が始まると思われることもありますが、旧暦の1日は朔、つまり新月の日になるように調整されているため、ほとんどの場合は立春と旧正月は別の日になります。旧正月が立春より遅い年は年内立春、早い年は新年立春と呼ばれます。旧正月と立春が同日となる年は朔旦立春と呼ばれ、とてもめでたい年とされています。ちなみに前回の朔旦立春は1992年、次に朔旦立春が訪れるのは2038年だそうですよ。

立春大吉とは

立春大吉
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みなさんは、立春大吉というお札を見たことはありますか? 禅寺では、新しい年の始まりである立春の早朝に、一年の厄除けの願いを込めて、立春大吉と書かれた厄除けのお札を門に貼る習慣があります。立春大吉の札が厄除けとなる理由は、「立春大吉」という文字が、縦書きにすると左右対称であり、裏から見ても同様に読めること。家に入ってきた鬼が振り返って立春大吉の札の貼られた玄関を見ると、外から見た時と同じように立春大吉と読めるため、鬼は「まだ家に入ってなかったのか」と勘違いして逆戻りし、また出て行くという言い伝えから、厄除けになるのだといわれています。

立春大吉のお札は、基本的には禅寺の風習であり、お札は檀家さんにのみ配るというお寺も多いですが、お寺や神社によっては一般の人への販売や、通信販売などをしていることもあります。また、本来は自分で書いていたともいわれ、自分でお札を作ることもできます。

お札を自分で作る場合は、白い紙と習字道具、もしくは筆ペンを用意します。紙はできれば裏が透ける半紙や和紙などがよいでしょう。紙のサイズには特に決まりはありません。準備ができたら、無病息災の願いを込めながら、紙に縦書きで立春大吉と書きましょう。でき上がったお札は、玄関の表、向かって右側に、目線の高さに貼るのが一般的。その際、お札を傷つけないよう、ピンや画びょうではなくテープや糊を用いて貼るとよいでしょう。お札に糊が直接つかないよう、台などを作ればよりよいですね。

立春の食べ物

桜餅
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節分の日に食べるものとして、近年は恵方巻が一般的になっていますね。それでは、立春にはどのような食べ物があるのでしょうか?

近年人気が高まっている立春朝搾りは、その名の通り、立春の朝に搾ったばかりのお酒。節分の夜から一晩中もろみを搾り、早朝にでき上がったお酒をその日のうちにいただく、めでたい祝い酒です。

立春朝生菓子は、立春の朝に作ってその日のうちに食べる生菓子のこと。桜餅やうぐいす餅など、主に春を感じる生菓子が食べられます。小豆や餅には穢れを祓う力があるとされ、立春の朝にできた大福も縁起がいいといわれ、立春大福の文字が立春大吉に通じることからも人気があります。

また、豆腐は昔から体を清める力があるとされていたことから、立春に立春大吉豆腐を食べるという習慣もあります。立春の前日の節分では、豆腐の原料である大豆を撒きますが、これも厄払いのため。ちなみに、節分にも豆腐を食べるといいとされ、節分に豆腐を食べることによって罪穢れが祓われ、翌日の立春にも豆腐を食べると、清められた体に幸せがやってくるといわれています。

立春に汲む若水とは

井戸の水
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元日の朝一番に井戸から汲んだ一年で最初の水のことを若水といい、神棚に供えたり、お茶や食事の支度に使いますが、もともとこの若水は立春の行事でした。元は宮中において、立春の日に主水司が天皇に奉じた水のことを意味したのですが、現在は元日の行事として一般に浸透しています。多くの地域で、この若水取りは男性の仕事とされ、人に会わない早朝に汲みに行き、人と会っても口をきかないなどのしきたりもありました。

一年で一番初めに汲まれた若水には、邪気を払ったり、若返る力があると信じられてきました。若水で淹れたお茶を福茶といい、煎茶やほうじ茶に結び昆布や小梅を入れて飲みます。現在ではお正月の風習として行われることが多いですが、今年の立春は、朝一番の水で福茶を淹れて飲んでみてはいかがでしょうか?

立春の頃の植物

寒さが厳しい立春の頃ですが、季節は着実に春へと進んでいます。春が近づいていることを教えてくれる、立春の頃の植物をいくつかご紹介します。

ヒナギク

ヒナギク
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デージーとも呼ばれるキク科の多年草。ヒナギクという和名は、可愛らしい丸い花の様子をひな人形に例えたことからついた名前だといわれています。

フクジュソウ

フクジュソウ
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早春に黄色い花を地際に咲かせるフクジュソウ。花がまだ少ない立春の頃に明るい黄色の花を咲かせ、福寿草という漢字もめでたい、縁起のよい植物です。

ウメ

ウメ
Photo/ガーデンストーリー

紅梅・白梅など、ウメは初春を象徴する花。早春にかぐわしい香りを放つ花を咲かせ、古くから中国や日本で愛されてきました。

ネコヤナギ

ネコヤナギ
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ふわふわとした丸い花穂が可愛いネコヤナギ。なめらかな手触りも、名前の通りまるで猫を撫でているかのようです。

どれもささやかながら、すこしずつ近づいている春の訪れを感じさせてくれる植物です。

立春は春の始まり

このように、立春はかつては一年の始まりであり、新しい年の息災を願う大切な日でした。現在でも暦の上では春の始まりを意味し、寒さの厳しい頃に訪れるとはいえ、実際に次第に長くなる日や、控えめに咲き始める花々により、春の息吹を感じることができる季節です。これから訪れる新しい春を祝い、今年は伝統的な立春の習慣を行ってみるのはいかがでしょうか?

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献:
『福を呼び込む和のならわし』(広田千悦子著・KADOKAWA刊)
『改訂新版 旧暦読本 日本の暮らしを愉しむ「こよみ」の知恵』(岡田芳朗著・創元社刊)
『美しい日本の旧暦 二十四節気・七十二候』(マガジンハウス)
『日本の七十二候を楽しむ ー旧暦のある暮らしー』(白井明大文・有賀一広絵・東方出版刊)
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