クリスマスリースだけではもったいない! 冬の植物の効能とアイデア

日本ではクリスマスのリースやスワッグは12月25日を過ぎると出番を失い、代わりにお正月飾りが登場しますが、リースやスワッグは冬の間しばらく飾り通していただきたいのです。なぜなら、それらに使われる植物には、殺菌や消毒作用の強い常緑針葉樹がたくさん含まれているから。ここでは、アロマティックな視点から、スワッグやリースに使われる植物の効能と、冬のインテリアとして長く楽しむヒントを、神奈川県葉山で旬の野菜を育て、植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんがご紹介します。
目次
朝の市場で森林浴

花市場は毎年11月頃になると、モミや‘ブルーアイス’、ユーカリなど、花材の流通が盛んになり、市場全体がクリスマスの香りに包まれます。「やだ! 私、間違えて森に来ちゃった!」と勘違いするほど、清々しく気持ちのいい空気感。

早朝の市場で白い息を吐きながら、リースワークショップ用の花材を探すのは、この時期だけのお楽しみ!

手際よく、目利き鼻利き! さまざまな材料を集めていきます。

こうして集めた材料は、同じグリーンでもそれぞれのトーン(色味)が違い、とても鮮やか。

ドライにしても水に挿しても、どちらも長く楽しめます。
ルーシーのおすすめ3つの植物

クリスマスの時期が過ぎても、忘れてほしくないのが「ジュニパー」「モミ」「ユーカリ」の3種類です。
香り高くアロマの効能も優れている彼らは、私のリースワークショップでも欠かせない存在です。
短く切りながらリースの土台に刺す作業をしていると、植物に蓄えられている「香りのカプセル」がブシャーっと弾けて、部屋中にいい匂いが広がります。
この香りを嗅ぐことで呼吸がいつもより深くなり、リラックス効果も高まるのです。

ジュニパー

「デトックス効果が高く老廃物を排出する手助けをしてくれる」、これがジュニパー最大の特徴です。アロマトリートメントでは、むくみケアに必ずといっていいほど使われる精油です。
古くから魔除けや宗教儀式の際にも使われてきたジュニパーベリーは、兎にも角にも浄化に優れた植物!
「何かに翻弄されているような不安感に包まれた時」、「雑念を取り払い一つのことに集中したい時」にもよい精油です。まさに新しい一年の始まりにぴったりの香りといえるでしょう!

玄関の外に吊すと、家の中に悪魔が入って来られないといわれています。
そもそも悪魔が礼儀正しく、「ピンポーン!」と玄関からやってくるのかは疑問ですが。
モミ

ウッディで爽やかでありながらも、奥深くに甘みを感じる香りです。殺菌消毒作用があり空気を浄化してくれるので、風邪をひきやすい冬に嬉しい植物です。
成分が濃縮されている精油ほどの効果は望めませんが、フレッシュなクリスマスツリーやモミのリースを部屋に飾るというのは、季節柄とても理にかなったアクション! 言うなれば、天然の空気清浄機ってとこかしら。
フレッシュなリースやスワッグにモミの精油を垂らして、ディフューザー的に使用するのも相乗効果でおすすめです。

モミの香りは、「環境の変化」や「新しく何かを始める時」、「忙しい毎日で神経が消耗した時」に心強い味方となります。
まるで森を散歩したような清々しい気持ちになり、背筋をピンッ! と伸ばしてくれるような香りは、「今年の抱負」が毎年三日坊主な誰かさんにもぴったり!
ユーカリ

今回ご紹介する3種類の中でも、一年を通して一番手に入りやすいのがユーカリです。清涼感のあるシャープな香りが特徴。
以前、ユーカリの大きな束を担いで歩いていたら、知らないおばちゃんに「その葉っぱ、何?」と話しかけられ、「ユーカリですよ」と答えたら、おばちゃんに「あんたコアラ飼ってんのかい?!」とビックリされたことがあります。
じつはユーカリには600種類以上の品種があるといわれており、コアラが食べるのは限られた種類だけです。しかも食べるのは新芽だけ。
私が特に好きなのが「銀世界」と呼ばれている種類のユーカリです。学名表記では「ベイビーブルー」や「プルベルレンタ」が銀世界にあたります。
ユーカリの中でも抜群に香りが強く、少し触るだけでも香りが広がります。お花屋さんでもよく見かけるので、ぜひ手に取ってみてください。

最も一般的に使われる「ユーカリ精油」は、ユーカリ・グロブルスという種類です。
特に抗菌・抗炎症作用が強いので、風邪のひき始めにおすすめです。呼吸器系のトラブルはおまかせあれ! お掃除にも使え、気持ちのよい清潔感がある香りなので、一家に一本常備したい精油です。
オーストラリアの先住民であるアボリジニは、ティーツリーと同様、ユーカリを傷や病気の治療などに幅広く用いていました。
スーッと透き通る香りは、「注意力散漫な時」、「ストレスが溜まりイライラしてしまう時」などに、頭の中の雑音をクリアにして集中力を高め、心に溜めてしまった「要らないもの」を外に吐き出し、目の前を明るくしてくれるような力強さがあります。
クリスマスを過ぎてもインテリアの主役に
私のリースワークショップでは、残った細かい葉などはお持ち帰りをおすすめしています。なぜなら、見た目も可愛く香りもあるので、お皿やキャンドルに添えれば素敵な冬のインテリアに早変わりするから。
以下でご紹介するものは、全てリースを作った時に出た端材を使っています。お花屋さんでお好みのものを1〜2本買っても、簡単に楽しめます。

例えば、お皿の上にナプキンとカトラリーと共に置いて、テーブルセッティング。

キャンドルの周りに散らせば、香りのよいインテリアに。
フランスからやってきたヤドリギのプレートは、この季節にぴったり。

テーブルセンターに置くと、グッと華やかに。日常はもちろん、ハレの日の食卓にもお似合いです。

キャンドルの色やお皿のテイストを変えて雰囲気を楽しんで!

クッキーには、庭から摘んだ月桂樹と共にバラの実を添えて。
ちょっとしたことですが、アイデア次第で季節感を感じる素敵なプレゼンテーションになるので、ぜひお試しください。
リースは少し手を加えて落ち着いた雰囲気に
最近ではお花屋さんで素敵なフレッシュのリースやスワッグを購入したり、ワークショップに参加して自分好みのものを作る方も多いでしょう。
商業施設などでは、25日の夜に大どんでん、26日の朝になる頃にはもうお正月ムード一色!
家庭でも玄関先に飾っていたリースは、26日からお正月飾りに変えるのが一般的です。
しかし、せっかくのリースやスワッグを、クリスマスまでの1カ月足らずで外してしまうのは寂しいもの。

そんな時は、リースに付いている華やかなリボンを取って、お正月の落ち着いた雰囲気に変えてみては?
キラキラのオーナメントが付いていたら、お花屋さんで売っている干支や凧が書かれたピックに変えてみるのも方法です。
私はリースに海老をつけて、ちょっとユニークに。

神奈川の葉山などの海沿いでは、お正月飾りを燃やす「どんど焼き」を開催します。昔は海岸を散歩すると、この素焼きの海老の一部分が落ちているのをよく見かけましたが、最近はほとんどがプラスチック製のためか、あまり見かけなくなりました。
焦げた大黒天は祖父母の家の取り壊しの際に、裏庭に埋まっているのを見つけました。

おそらく裏庭でどんど焼きをしてしまったのでしょう。
なんだか可愛くて、こっそりポケットに入れてお持ち帰り。
元来リースは、健康祈願や豊作祈願の意味も含まれています。
冬になっても枯れない常緑樹を使うのは、生命力(健康)の象徴、飾りに実ものやリンゴ、オレンジなどを使うのは、豊かさ(豊作)の象徴です。
そう! リースには日本のしめ飾りと通ずる意味があるのです。国が違えど、神が違えど、大昔から人類の願いは世界共通なのですね。
最近は、伝統的なしめ飾りも、おしゃれで素敵なものがたくさんありますが、せっかくの素敵なリースやスワッグだもの! この冬はインテリアの一部として長く楽しんでみてください。
Credit
写真&文 / ルーシー恩田

ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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