本格的な冬を迎えると、バラを育てている人には屋外での大切な作業がたくさん待っています。そんな季節を、ローズヒップとプラスαのスパイスの効果で暖かく元気に乗りきりましょう! ここでは、バラ文化と育成方法研究家で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんに、ローズヒップを使った冬のお茶の楽しみ方と、組み合わせたいスパイスの効能を教えていただきます。
目次
ローズヒップで冬のガーデニングをサポート!

いよいよ本格的な冬の到来となりました。
冬の野外は寒くて大変ですが、来年の春に向けて最も大切なバラのお手入れシーズンでもあります。できるだけ自分自身の体をいたわりながら、冬の季節のガーデニングを元気に楽しみたいものです。
今回は、庭のローズヒップ(なければ市販品でも可)を利用したお茶の作り方や、ローズヒップにハーブやスパイスをプラスした、体がポカポカ温まるスパイスティーの作り方をご紹介します。
●元木さんの冬の庭作業の記事はこちら
お茶に活用するローズヒップとは?

写真は‘アルティシモ’(Cl)の大きなローズヒップです。
現代バラ(モダンローズ)は、通常ローズヒップが実ると樹勢が弱りますので、野生種のバラやオールドローズ、現代バラなら樹勢の強い品種のローズヒップを利用します。なるべく大きい、つるんとしたローズヒップが扱いやすいと思います。

この大きなローズヒップを実らせる‘アルティシモ’の花。写真のように、花は大きな一重咲きで四季咲き性です。今回は、ローズヒップが実っても樹勢が特に弱くならないモダンクライマーの実を使ってご紹介します。

まず、基本のローズヒップティーの作り方をご紹介しましょう。タネを取り除いて小さくカットした小さじ1/2ほどのローズヒップを、直接ティーカップに入れます。そして、上から熱湯を注げば、アッという間にビタミンCたっぷりのローズヒップティーができ上がりです。

たくさん収穫できた時は、刻んだローズヒップを天日に干してドライにし、保存容器に。乾燥剤を入れておけば、約1年間はおいしく飲めます。
冬におすすめのスパイス+αのホットティー

ローズヒップにいろいろなスパイスをプラスして、心も体もポカポカになるスパイスティーの作り方をご紹介しましょう。
【マグカップ250㏄約3杯分の材料】

- ローズヒップ(写真中央)……小さじ1/2(中央)
その他のスパイス(写真上から時計回り)
- スターアニス(八角)……1個
- キンカンの皮……少々
- ローズマリーの葉……3枚
- クローブ……5個
- シナモンパウダー……ひと振り
- レモングラス……小さじ1
- ピンクペッパー……3粒
- 茶葉(セイロン)……2g(ティーバッグ1個分)
- ショウガ……スライス2枚
- 熱湯……750㏄
ホットスパイスティーに使う材料の各効能
ローズヒップ

ローズヒップは、正式には「偽果」で、植物学上では果実ではありません。花床という部位が膨らんだものですが、一見果実に見えることから「偽果」と呼ばれます。
ビタミンC、カルシウム、鉄分、ベータカロテン、ビタミンE、植物繊維などが含まれ、特にビタミンCは、レモンの約20~30倍も含まれているといわれています。
本来、ビタミンCは、水や熱に弱く、体に吸収されにくいのですが、ローズヒップの中には、ビタミンCを守るビタミンPやビタミンEも含まれているため、熱を加えてもビタミンCの効果が壊れにくいとのことです。
一緒に含まれるフラボノイドは、ビタミンCの働きを増強します。ビタミンCは、肌のハリや弾力性を保つコラーゲンの生成を促進し、紫外線などからのダメージによるコラーゲンの減少を抑えます。シミの原因となるメラニン色素の生成を抑え、新陳代謝を活発にし、美白効果、肌荒れ改善効果もあるといわれています。また、風邪の予防効果も期待できます。
ローズヒップは、繊維質が多いので、便秘の改善効果もあります。他に、利尿作用、抗酸化作用、鎮静作用があるといわれています。
スターアニス(八角)

スターアニスは、中国原産で、漢方薬として胃薬、風邪薬に利用されています。代謝をよくし、利尿作用もあります。スターアニスに含まれる「ピネン」という成分には、気持ちを落ち着かせる作用があります。
キンカン(金柑)

ビタミンCを多く含み、風邪の予防や美肌効果があります。キンカンの皮に多く含まれるヘスペリジンは、毛細血管の強化や血中コレステロール値の改善効果、血流改善効果、抗アレルギー作用、発ガン抑制作用があるといわれています。
ローズマリー

ローズマリーには記憶力や集中力を高める作用があるとされ、消化促進・強壮の効果もあるといわれています。また、血管を強くし、血行を促し、新陳代謝を促進します。細胞の老化を防止する抗酸化作用があることから、「若返りのハーブ」とも呼ばれています。
抗菌作用や抗ウイルス作用、鼻詰まりの改善効果もあり、ローズマリーの精油には、アレルギー疾患の原因となるヒスタミンという化学物質を抑える作用があるといわれています。
クローブ

抗菌作用、鎮痛作用、消化促進作用があり、局所麻酔、歯痛、消化不良などに用いられてきました。柑橘系の香りとの相性がよく、腐りにくくするため、柑橘系の果物の皮にクローブを挿したポマンダー作りにも大活躍です。
オレンジポマンダー作りの記事はこちら
シナモン

消化促進、駆風作用、抗菌作用、血糖調整、強壮作用、発汗作用、血行促進作用などがあるといわれています。風邪の症状の緩和や、精神の安定などに用いられることもあります。
レモングラス

鎮痛作用、抗炎症作用、抗菌・抗真菌・抗ウイルス作用、収れん作用、抗うつ作用、鎮静作用、解熱作用、利尿作用、催乳作用(母乳の出をよくする)などがあるといわれ、風邪の予防や、胃の働きを助けて消化を促進し、脂肪の分解を促す効果が期待できます。
ピンクペッパー

抗菌防腐効果があり、原産の南アメリカでは伝統医療としてさまざまな症状に処方されていました。特に風邪やインフルエンザの予防、筋肉の緊張を和らげる、痛みや炎症を抑える、歯痛や月経痛の緩和などに効果があるといわれています。
ピンクペッパーは、その名前と主な用途から胡椒の仲間と思われがちですが、実際はコショウボクというウルシ科の植物の実です。ウルシアレルギーの方、ナッツ類(特に同じウルシ科であるカシューナッツやピスタチオナッツ)またはマンゴーにアレルギーのある方は、アレルギー反応が出ることがあるので注意が必要です。
茶葉 セイロン紅茶

紅茶に含まれている紅茶ポリフェノールは、老化を進行させる活性酸素の働きを抑える抗酸化作用があるといわれています。また、抗菌作用や抗ウイルス作用もあり、虫歯や風邪、インフルエンザの予防効果が期待できます。さらに、血糖値上昇の抑制作用や血中コレステロールの調整、血圧上昇抑制、動脈硬化予防などにも効果が。
また、紅茶に含まれるカフェインは、交感神経を刺激して脳を活性化し、疲労回復・血液循環促進・強心・消化促進・脂肪燃焼効果があるといわれています。利尿作用もあり、体内の老廃物を外へ排出します。ガーデニングの合間に紅茶を飲んでリラックスすれば、疲労も回復し、脳が活性化して、屋外などでのケガの予防にもつながります。
ショウガ(生姜、ジンジャー)

体をポカポカ温めてくれるショウガは、寒い冬には必需品です。
消化促進作用、健胃作用、利胆作用、消炎作用、鎮痛作用、抗菌作用、血行促進作用、発汗作用、去痰作用、強壮作用などがあるといわれています。
【さらに美味しく】
上記の材料にリンゴを少々加えると、甘さがプラスされ美味しいです。
【オリジナルブレンドのストックもおすすめ】
以上の材料は作りやすい1回分の材料ですが、数回分の分量をまとめて作り、缶や瓶などに保存しておけば便利です(要乾燥剤)。

材料をティーポットに入れ、750㏄の熱湯を注ぎ、3分以上蒸らしたら飲み頃。

寒い冬のガーデニングの合間に、ビタミンCたっぷりのローズヒップティーや、さまざまな効能が得られるスパイスティーで、体をいたわるティータイムを楽しんでください。
*注:ご紹介のスパイスやハーブなどをご使用の際は、妊娠中や小さなお子様、高血圧、心臓病、アレルギー他持病のある方は使用を避けるなど、十分気をつけてください。
Credit

写真&文/元木はるみ
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。「日本ローズライフコーディネーター協会」代表。近著に『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
http://roseherb.exblog.jp
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