【Christmas Crafts】スーパーで材料調達可能 オレンジポマンダーの香り飾り
クリスマスにぴったりの香り豊かなクラフト、オレンジポマンダーをご存じでしょうか。海野美規さんによる今回のウェブ上アレンジレッスンでは、ヨーロッパで古くからお守りとして大切にされてきたオレンジポマンダーの作り方と、オレンジポマンダーを使ったクリスマスのアレンジメントを教えていただきます。今年のクリスマスには、香り漂うオレンジポマンダーを手作りしてみませんか?
目次
大好きなクリスマスの香り
クリスマスといえば、ツリー、ケーキ、サンタクロース、トナカイ、クリスマスソング、パーティーなど、たくさんのキーワードが思い浮かびますね。 クリスマスのどんなことがいちばん好き? と聞かれたら、私は迷わず「香り!」と答えます。リースやツリーを作るときのモミやスギの香り。シュトーレンやクリスマス・ティー、ホットワインの、フルーツとナッツ、シナモン、クローブなどのスパイスの香りです。 美味しそうな香りでもあり、元気になる香りでもあります。 シュトーレンをカットして、クリスマス・ティーを淹れると、リビングルーム中にクリスマスの香りが広がって、年末の忙しい中でもゆったり落ち着いた気分になれます。そして家中が、ワクワクとした、なんだかとても幸せな空気に満ち溢れます。
この幸せなクリスマスの香りをぎゅっと凝縮したのが、オレンジポマンダーなんですよね。私はこの香りに包まれたくて、毎年必ずオレンジポマンダーを作ります。 今年はぜひご一緒に作りませんか? でき上がったオレンジポマンダーをメインに、クリスマスアレンジをするのもおすすめです。
オレンジポマンダーって?
そもそもオレンジポマンダーって何? と思われる方も多いかもしれませんね。 ポマンダー(Pomander)は、匂い玉のことで、生のオレンジに、クローブというスパイスをホール 状のまま隙間なく刺して、シナモンなどのスパイスをまぶして乾燥させたものです。オレンジとスパイスの香りがマッチして、とても心地よい香りになります。それに、リボンを結んで飾るので、見た目にも可愛らしいものです。
オレンジポマンダーの歴史は古く、イギリスでは16〜17世紀のエリザベス朝時代の肖像画にも描かれています。貴族たちが、細かい穴のあいた金属製の球形のケースにハーブや練り香料を入れて、腰から下げている様子が描かれているのです。今から500 年も前からあったのですね。 イギリスやヨーロッパの貴族たちは、ペストなど当時流行していた病気の予防や魔除けのために、 このポマンダーをお守りのように携帯していました。貴族から庶民の間に広まる過程で、金属製の球形のケースから、より庶民の手に入りやすいオレンジなどのフルーツを使って作るポマンダーに変化していきました。
果物は手に入れやすくても、クローブなどのスパイスは、当時はとても貴重品だったと思いますので、庶民といっても、お金持ちや権力のある人たちだけのものだったのかなと想像します。それとも、クローブは、身近に存在する植物だったのかなと、クローブについてもどんどん興味が湧いてきました。
クローブについて調べてみると、歴史は紀元前4,000年頃まで遡り、ミイラ作りに使用されていた記録があります。ヨーロッパでは、6世紀頃には貴族たちの間に広まり、15~16世紀の大航海時代を経て、18世紀の終わり頃にフランスがモーリシャスなどでクローブ栽培を盛んに行うようになって、各地で大農園が開かれ、一般に広まっていきました。
クローブの力とは?
オレンジポマンダーの主な材料は、オレンジとクローブ。クローブは、インドネシア・モルッカ諸島を原産とする常緑の小高木です。私たちがスパイスとして目にするものは、8~9月、つぼみが緑色から黄色、黄色から紅色になった頃に採取したものです。和名は丁子(ちょうじ)といい、釘のような独特な形をしています。 刺激的なスパイシーな芳香が特徴で、強い香りは百里離れていても届くという意味で「百里香」 とも呼ばれています。お料理で使っている方も多いのではないでしょうか。
クローブの粉末は、伝統医学で芳香性健胃薬として用いられた歴史があったり、歯痛や頭痛の薬としても利用されてきました。そういえば、子供の頃通っていた歯医者さんのあの独特な匂いは、 クローブだったのだなと、ふと香りの記憶が蘇りました。クローブには、強力な殺菌力と防腐作用があります。エジプトのミイラは、じつはオレンジポマンダーの作り方と同じ。オレンジも、通常だったらそのままにしておくと腐ってカビが生えますが、クローブのおかげで腐らず、「オレンジのミイラ」になります。
こちらは、昨年と一昨年、そして今年作ったオレンジポマンダー。右から古い順に並んでいます。一昨年に作ったものは、すっかりオレンジがミイラ化しています。元のオレンジはほぼ同じくらいのサイズだったのに、年々小さくなってきました。
オレンジポマンダーの作り方
<材料>
- オレンジ
- クローブ(ホールで)
- シナモンパウダーなどお好みのスパイス
- マスキングテープ(リボンと同程度の幅のもの)
- リボン
<手順>
- オレンジに、十文字にテープを貼ります。
でき上がったらテープを剥がしてリボンを結ぶので、テープはリボンと同じくらいの幅にします。 - クローブを刺していきます。
- 袋の中にクローブを刺したオレンジを入れて、材料のスパイスをまぶします。
- テープを剥がし、同じところにリボンを巻いて結んで、でき上がり。
クローブの頭の向きを揃えること。隙間なく順序よく並べること。この2点に注意すれば、見栄えよく、きれいに仕上がります。 よく乾燥させてから飾りましょう。
ポマンダーと一緒に、香りのクリスマスアレンジ
ポマンダーは、部屋に吊して楽しまれていたそうですが、乾燥するまでは、オレンジの果汁が出たり、オレンジの重みがありますので、よく乾燥してから飾ったほうがよいでしょう。乾燥後も、スパイスが飛び散ったりするので、私はモミやスギの枝と一緒に器に入れて飾ります。
<アレンジの手順>
- 器にスギの枝を敷きます。
- ポマンダーを置きます。
- 空いているところに、松ぼっくり、シナモンスティック、アニス、姫りんごなどをお好みで添えます。
モミ、スギの代わりに、ローズマリーやユーカリなどもいいですね。お好きなグリーンでアレンジしてください。
ヨーロッパ各国のおいしいクリスマスのケーキ
クリスマスに欠かせないものといえば、やはりクリスマスケーキですね。有名パティスリーやショコラティエ、ホテルブティックなどでは、アート作品のようなケーキがお目見え、年々、その芸術度が増しているように思います。これは食べてもいいの? と、ナイフを入れられないこともしばしば。
クリスマスケーキは、国によっていろいろなものがありますね。ドイツのシュトーレン、イギリスのクリスマスプディング、フランスのブッシュドノエル、イタリアのパントーネ。 どれも、日本でもよく知られるようになって、とても人気があります。私は、なんといってもシュトーレンがいちばん好きです。一年中あればいいのにと思うくらいです。オレンジやレモンなどのフルーツと、ナッツ、そしてクローブやシナモンなどのスパイス。これらがミックスされたら、これはもう、私の大好きなクリスマスの香りです。
私が2年間暮らしたことのあるハンガリーにも、伝統的なクリスマスのケーキがありました。「ベイグリ」という名前です。これは、パンのような生地に、ケシの実やくるみのフィリングを巻いてロールケーキのようにした焼き菓子です。ケシの実のほうを「マーコシュ・ベイグリ」、くるみのフィリングのほうを「ディオーシュ・ベイグリ」といいます。 クリスマスシーズンに手作りするのが伝統で、家庭ごとに味が違うのだそうです。
シュトーレンやベイグリなどのお菓子にはどれも、ドライフルーツやナッツ類が入っていて、長期保存可能な焼き菓子です。この時期にこのようなお菓子が多いのは、寒い冬を越すための昔の人の知恵でもあり、家族が揃う一年で一番大切な日のための贅沢なお菓子でもあったとのことです。
ハンガリーで初めて迎えたクリスマスに、夫の職場のハンガリー人スタッフのお一人、リヴィアさんから、ケシ味とクルミ味、それぞれ1本ずつのお手製のベイグリをいただきました。 どちらも風味抜群で、日本人にも程よく甘さ控えめ。とてもおいしいお菓子でした。シュトーレンのように薄くカットして、クリスマスまでの間に少しずつ食べていきます。 受け継がれてきたベイグリのレシピは、「お母さんの味、おばあちゃんの味として、これからもずっと大切にしていかなくちゃね」とリヴィアさんがお話ししてくれました。ブダペストに来て初めてのクリスマスに、心のこもった手作りのベイグリをいただいて、心もおなかもとても幸せになりました。
Credit
写真・文/海野美規(Unno Miki)
フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
http://www.annegarden.jp
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