簡単な調理次第でご飯に合うおかずにも、甘いおやつにもなる万能野菜、サツマイモ。今が旬を迎えた「サツマイモ」の収穫から調理まで、そして美味しい食べ方とは? 神奈川県葉山で旬の野菜を育て、植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんがご紹介します。
目次
食べなきゃ損? サツマイモに含まれる栄養素

サツマイモは、お腹の調子を整えてくれる食物繊維が野菜の中でもトップクラス! 食物繊維により腸の活動が活発になることで、便秘や肌荒れの改善効果も期待できます。
さらに、抗酸化作用によって皮膚や血管の老化を防ぎ若返り効果が期待できるというビタミンC、むくみ防止に効果があるカリウムなど、その他にも身体によい栄養素がたくさん含まれており、女性のための野菜といっても過言ではないでしょう。
世の中の大多数の女性はサツマイモ好きな印象がありますが、もしかしたら本能レベルでサツマイモの効能を知っているのかもしれませんね。

最近では紫やオレンジなどのカラフルなサツマイモも出回っており、身体にも目にも美味しい食材です。
薩摩の国からやってきた芋「サツマイモ」

サツマイモは中国を経由して沖縄(琉球)へ伝わり、その後しばらくしてから種子島に伝わりました。1700年代初めには火山灰の影響で稲作に向いていない土地が多く、お米が取れなかった薩摩の国(鹿児島県)で主食として栽培され始めました。関東では薩摩から伝わった芋なので「薩摩芋(さつまいも)」と呼ばれるようになったようです。
江戸時代には甘いものが貴重だったため、火を通せば甘くなる砂糖いらずのサツマイモは庶民にとって貴重なお楽しみデザートだったようです。
戦中戦後の貧しい時代には、育てやすさと豊富な栄養で、多くの人を飢餓から救いました。
当時を知るシニア世代からは「辛い敗北の味」として嫌厭されることもあるようですが、良くも悪くも日本人にはとても身近な野菜となったようです。
欧米諸国では、サツマイモは「SWEET POTATO」や「Yam」と呼ばれています。日本人に馴染みがある品種とは少し違い、オレンジ色で水分が多く、ホクホク感は少なめ。日本のサツマイモを想像して食べてしまうと、少しガッカリする味かもしれません。
食卓へ上がる頻度は日本ほどではなく、調理法も限られていましたが、近年では栄養素が注目され、雑誌などのおしゃれなレシピでも見かけます。
美味しくなるための追熟

神奈川県は葉山にある我が家の畑のサツマイモも、つい先日11月上旬に収穫が始まりました。6月に植え付けをして、首をながーくしながら待ち続け、やっとのご対面。
紅はるかちゃんと紅あずまちゃん。なんだか一昔前の女優さんの名前にも聞こえてくる古風なお名前の2品種です。
「どうもはじめまして、美味しくいただきますから、いい子にしてね」とご挨拶もそこそこに、次々と土の中から取り上げていきます。

紅あずまは、水分少なめでほくほく系、さっぱりと上品な甘さ。紅はるかは水分多めのねっとり系、クリーミーで濃厚な甘さが特徴です。

葉っぱは虫たちにもお裾分け。有機栽培なので葉っぱも美味しいでしょ! と、ある程度は目をつぶります。

収穫したら軽く土を落として乾燥させ、新聞紙に包んで、冷暗所で最低でも2週間程寝かしておくと、甘くねっとりとした食感に変化していきます。
酵素が活性化し、でんぷんを分解し糖質に変えるので、甘みが増すのです。
掘り立てのお芋はすぐに食べてみたい‼ しかし、そこはグッと我慢。
熟成させ、甘みを引き出してみましょう(スーパーなどで販売されているものは、基本的には追熟後に出荷されています)。
放任主義でも立派に育つ
サツマイモを育てるのに必要なコツは特になく、手間もほとんどかかりません。
強いていうなら肥料を与えないこと。もともとサツマイモは痩せた土地での栽培に向いているので、栄養豊かな土地で育てると、つるボケ(葉ばかりが茂り、芋が大きくならない)してしまい、せっかくの楽しい芋掘り作業が台無しとなります。
暑さや病気にも比較的強いので、誰にでも簡単に育てられる野菜といってよいでしょう。
オーブン料理で楽しむサツマイモ
アメリカに住んでいた頃によく食べたのがオーブン料理。
美味しいケーキやジューシーな肉料理、そして今回ご紹介する典型的なアメリカ料理のキャセロールなど、どれも簡単な下ごしらえをしてオーブンに入れたら1時間も経たずにとっても美味しい料理となって出てくるのです。まるでサマンサが口と鼻を動かして魔法をかけるように、アメリカの奥様たちはオーブンという名の魔法を使うのです。
日本ではオーブン料理はなんだか難しそう、手間がかかりそうなんて思われがちですが、私はこんなに便利で簡単なものはないと思っています。使わなきゃ損! せっかく文明社会に生きているのだから。
伝統的なアメリカ家庭料理キャセロール

本来キャセロールとは、フランス語で“フタ付き厚手鍋”、またはその鍋で作った料理のことをいいます。しかし一般的にアメリカで呼ばれるキャセロールとは、パイレックスなどの耐熱皿に野菜や肉、お米などの具材を入れ、チーズやソースを加えてオーブンで焼いたもの。キャセロールの定義は曖昧、アレンジの幅が広く各家庭にお袋の味的キャセロールが存在します。
旬のサツマイモとキャセロールの相性は抜群! じっくりと熱を加えることで甘みが引き出されますよ。
今回ご紹介するレシピは、ユタ州でよく食べられているCheesy Potato Casserole (チーズィーポテトキャセロール) 、別名Funeral Potato (フューネラルポテト)。Funeralはお葬式という意味なので、直訳すると葬式芋。なんだかとても不思議な名前の料理ですが、私のお料理教室の10月のメニューに登場! とても簡単で美味しいと評判でした。

不思議な名前ですが、由来は、モルモン教徒のお葬式の食事の際に、サイド・ディッシュとして出されることが多いところから…とか。
時間がなくバタバタしたお葬式の際にも、家にある物をダーッと混ぜてポンッとオーブンに入れるだけで簡単に作れて、美味しさで人々の心を癒やす…きっとそんな料理だったのだろうと勝手な想像が膨らみます。
材料はとってもシンプル。
ジャガイモ(アメリカでは冷凍の刻んだポテトを使うことが多い)、サワークリーム、チーズをキャンベルのスープ缶クリームオブチキンと混ぜ、コーンフレークを一番上にのせてオーブンで焼く料理です。
本来はジャガイモを使ったレシピですが、今回はサツマイモも一緒にベイク!
サツマイモはハーブとの相性も抜群。清涼感のあるローズマリーとタイムを入れることでサツマイモの甘みに風味や深みが出て、グッと大人の味に。香りのよいハーブは食欲促進作用もあるので、ついつい食べ過ぎてしまうかも!

Cheesy Potato Casseroleの作り方
<材料> 4〜6人分

- サツマイモ 2本
- ジャガイモ 2個
- タマネギ 1/2個
- キャンベル クリームオブチキン 1缶
- 牛乳 スープ缶の1/2
- とろけるチーズ 1カップ
- サワークリーム 1カップ
- タイムやローズマリーなどのハーブ 少々
- 塩・胡椒 少々
- コーンフレーク 1カップ半
- バター 大さじ2程度
- 上にのせる彩りの野菜(ラディッシュやパプリカなど) お好みで
<作り方>

- サツマイモとジャガイモを適当な大きさに切り、茹でる(スライスやサイコロ状に)。
- タマネギをみじん切りにして透明になるまで炒める。
- サワークリームとクリームオブチキン缶、みじん切りにしたローズマリーと②で炒めたタマネギを混ぜ、塩・胡椒する。
- コーンフレークに溶かしたバターをかけてよく混ぜる。
- 耐熱皿に1のイモを並べて3のソースを混ぜ入れ、上にチーズをかける。
- 4のコーンフレークをチーズの上に散らし、180℃のオーブンで40分程焼く。
お好みでチキンを入れても美味しいです。

焼く前に最後、ラディッシュで彩りをプラス。平面的に置かないで、挿すようにトッピングするときれいに見えますよ。

サツマイモには豊富な栄養が含まれていますが、特にビタミンCやカルシウムなどは皮に多く含まれ、便秘の解消に役立つヤラピン(生のサツマイモを切った時ににじみ出てくる白い液体)は皮と実の間に多く含まれます。
皮を剥いて食べては、せっかくの栄養がもったいない! 私はグリルする時も、スープにする時も、いつも皮を剥かずに調理して、サツマイモの栄養をありがたく無駄なくいただいています。皮を剥く手間も省けて、栄養も余すことなく摂れるので、一石二鳥ですよね。
ぜひこの冬はサツマイモを使った料理を食べて、元気に楽しく過ごしてみてはいかがでしょうか? お試しあれ!
Credit
写真&文 / ルーシー恩田

ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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