春は心躍るサクラの季節。サクラを見上げては、思わず笑みがこぼれてしまいます。いまだけしか楽しめないなら、ドライフラワーにして長く眺めていたい…。でも、あんなに繊細な花びらが、そもそもドライに向いているの? 花のアトリエ『グリーンローズ』を主宰する松浦奈美子さんに、サクラのドライフラワー作りを教えてもらいました。最後に紹介する、おしゃれな飾り方のアイデアも見逃せません!
目次
サクラ(桜)のドライフラワー作りは難しくはありません
はじめてでも、ドライフラワー作りに簡単に取り組める花といえば、“水分が少ない花”が筆頭に挙げられます。春ならミモザ、夏はルリタマアザミ、秋には秋色アジサイなど。水分の含有量が少ないほど、乾燥するまでの時間が短く、きれいに仕上がるんです。
それにくらべると、サクラは…。花びらを触ると、しっとり。サクラを飾ったことのある人ならわかると思いますが、いけて数日経つと、花びらは張りを失っていきます。それでも、本当にドライフラワーにできるの?と疑問に思われるはずです。
方法やサクラの種類によっては、仕上がりの美しさは異なりますが、サクラはドライフラワーにできます! 次の項で、実際に作った結果をご覧ください。
サクラ(桜)のドライフラワー、3つの作り方
では、ドライフラワーにするには、どんな方法があるか、説明していきましょう。多くの花に使われる定番の手法は3つ。「ハンギング法」と「ドライ・イン・ウォーター法」、「シリカゲル法」です。
サクラのやさしいピンクの色合いをそのまま残せるのは、「シリカゲル法」。「ハンギング法」でドライにしたサクラは好みが分かれるところかもしれません。
では、実際にどんなふうになるか見ていきましょう。
サクラのやさしい色を残す「シリカゲル法」
最大のメリットは、サクラの色合いをキープできることに尽きます!
写真↓が生花のときのサクラ。使ったのは八重ザクラです。

この花をシリカゲル法でドライフラワーにしたら…↓

花は、やや小さくしぼんだものの、色は、ほとんど変わっていません。驚きですよね!
シリカゲルの成分は二酸化ケイ素。表面に微細な穴が空いていて、水分をはじめとするさまざまな物質を吸着する作用があることから、食品などの乾燥剤として使われています。
サクラをドライフラワーにするには、粉末状の「ドライフラワー専用シリカゲル」が便利です。ネットやショップで販売されていているので、探してみて。

シリカゲル法で必要なもの
・サクラ
・シリカゲル *粉末状のもの。ドライフラワー用が最適
・タッパー
・スプーン
・ピンセット
・ハサミ
シリカゲル法のコツと注意点
シリカゲルを用意するときは、ドライフラワー用を選びましょう。ドライフラワー用シリカゲルは、花びらの間に入りやすいよう、さらさらとした粉末状になっています。一方、食品などについているものは粒状のため、乾燥はしても、シリカゲルの粒の跡が残ることがあります。
シリカゲルによるドライフラワーの作り方
①タッパーにシリカゲルを敷きます。目安は底から3㎝ほど。浅く、ムラのある状態では水分の吸着力が十分に働かないので、丁寧に敷きつめてください。

②サクラは、花だけにカットします。枝をつけたい場合は、タッパーのサイズに合わせて、短くカット。

③花同士が重ならないようにしながら、サクラをシリカゲルの上に並べます。

④スプーンを使って、サクラの上にシリカゲルをやさしくかけていきます。

⑤まんべんなくシリカゲルをかけて、花も茎も完全に見えなくなればOK。しっかりと蓋をします。入れてから2、3日は蓋を開けないこと。

⑥1週間ほどしたら、完成です。ドライフラワーになったサクラは、とてもデリケート! ピンセットで、すくうように取り出さないと、花びらがすぐに取れてしまします。タッパーを少しゆすって、サクラの頭がでてきたら、近くからピンセットを入れ、下からすくうようなイメージで取り出します。
参考までに、ひと重のサクラをシリカゲル法でドライした写真↓です。取り出すときに、いっそうの慎重さが必要ですが、サクラのはかなげな美しさがキープされていますね。

なお、シリカゲルで作ったドライフラワーは湿気に弱く、退色もしやすい傾向にあります。春に作って、梅雨時くらいまでのお楽しみと考えて。そのまま美しい状態で残しておきたい場合は、密封ボトルに入れて飾るのがおすすめです。
吊るして乾燥させる「ハンギング法」
もっとも定番は、ハンギング法。花を下に向けて吊るすだけなので、初心者にも嬉しい方法ですが、サクラの場合、どうなるのか気になりますよね?
写真↓は生花のとき。ひと重と八重のサクラを使いました。


湿度50~60%の室内に吊るし、ドライフラワーにしたところ、ひと重は花が小さくなったものの、淡く繊細な色は残りました↓。

八重は、くすみトーンの大人っぽい色に。

作ってみたい人は、からっとした晴天が続く日に作りましょう。雨が続くときは湿度が高くなり、カビが発生することもあるのでNG。仕上がりの目安は、10日から2週間ほど。茎がポキッと折れたら、水分がしっかり抜けたサインです。
ハンギング法で必要なもの
・サクラ
・麻紐 *紐のなかでも茎を傷めません
・輪ゴム
・ハサミ
サクラを吊るす場所
風通しよく、直射日光の当たらない場所を選んでください。
湯気が立ち込めるキッチンやバスルームの近くに吊るすのはもちろん、窓辺もNGです。光が入る窓辺では、日に当たるうちに色褪せ、きれいな色合いのドライフラワーとは呼べないものになってしまいます。
サクラの吊るし方
問題は、どこにどうやって吊るすかです。悩む人も多いようですね。「スタンドタイプのコート掛け」や「ハンガーラック」を利用してみませんか? 壁に接した状態で吊るすよりも通気性がよく、早く干し上がります。

ハンギング法のコツと注意点
サクラは、乾燥するにしたがい、茎からも水分が抜け、細くなります。しっかり縛ったつもりでも、縛り方が緩いと、干している間にするっと花が抜け落ちてしまうことも。輪ゴムでいったんまとめてから、麻紐をきつく巻きつけましょう。

サクラを水にいけて作る「ドライ・イン・ウォーター法」
浅く水を入れた器にいけながら、花からゆっくりと水分が抜けていくのを待つ方法です。一般的には、自然な風合いに仕上がり、ドライフラワーになるまでの過程で、生花のみずみずしさも同時に楽しめてお得な方法でもあります。

しかし…今回は、ちょっと悲しい結果になってしまいました。ひと重のサクラはこんな感じに↓。

八重のサクラがこちらです↓。

花も葉もしょんぼりとうなだれて、お世辞にもきれいだとはいえないサクラに。生花のときのコンディションにもよるのかもしれませんが、おすすめはしません。
タッパーに入れて作るシリカゲル法は、小さなクラフトを作るときに。長い茎のまま乾燥させるハンギング法は、アレンジにと使い分けてください。
また、サクラが満開のころ、鳥がついばんで、花が落ちていることがよくあります。朝、落ちたばかりなら、まだまだきれい。拾って、シリカゲルでドライにしてみませんか?
ドライフラワーに適したサクラの種類と選び方は?
サクラの代表格、ソメイヨシノが咲き始めるのは、3月下旬~4月初旬(関東)。花屋さんでは、それよりももっと早くから切り花のサクラが並び始めます。
迎春用に、早くも12月に出荷されるのはケイオウザクラ。春の彼岸の頃には、ヒガンザクラ。八重ザクラは、ヨシノザクラが咲いたあとの4月半ばに出回ります。
さまざまなサクラがあるなか、ドライフラワーにもっとも適しているのは、「ヤエザクラ」。
前の項の結果を見て、もうおわかりとは思いますが、水分が抜けても、ふっくらした花形を保つからです。ただ、ひと重がおすすめできないというわけではありません。ハンギング法で作ったドライは、花は小ぶりながらもサクラらしい繊細さ。お好きなサクラで試してみましょう。

いずれにせよ、肝心なのは、「しっかりと花が開いた枝を選び、新鮮なうちにドライフラワーにすること」です。サクラの季節は、まだ寒の戻りもある頃。もしも開花していない枝を買ってしまったら、テーブルの上などに置いて、開花させてからドライに。床の上よりも卓上のほうが、いくぶん、室温は高いためです。
作ったドライフラワーで、おしゃれサクラアレンジ!
サクラを上手にドライフラワーにできたら、さあ、何を作って楽しみましょう? おしゃれなインテリアから、デスクに飾れる実用も兼ねたアイデアまで、毎日、お花見気分になれるお手本を紹介します。
その1 かわいらしいサクラのガーランド

台紙に、吊り下げ用のリボンを取りつけたら、サクラを貼っていきます。使うのは、シリカゲルでドライにしたサクラ。花びらがたっぷりの八重咲きの花を多くすることで、愛らしいイメージのインテリアになります。台紙にはグルーで固定。ピンセットで軸をつまみながら丁寧に貼っていきましょう。
その2 小さく束ねて、ガラス瓶にポン!

枝つきでドライにできるハンギング法なら、アレンジして楽しめます。すぐにまねられるのは小さな花束。ひと重は長く伸ばして、サクラらしさを演出してみて。ドライにしたローリエの葉で、サクラのピンクがいっそう明るく感じられます。
その3 デスクの上には、サクラ模様のペン立て

素敵ですよね! ペン立てに巻いたリボンに、シリカゲルで乾燥させたサクラを貼りました。グルーで固定しながら、リボンにひだをつけ、サクラをちりばめていきます。ごくごく淡色づきのこんなサクラには、春の空のような、やさしいブルーがよく似合います。
Credit
松浦美奈子
『グリーンローズ(Green Rose』主宰。国立岐阜大学農芸化学科卒業後、外資系製薬会社に勤務中、プリザーブドフラワー、ドライフラワー、生花のアレンジを習得。退職後、世界各地で研鑽を積み、スクール開校、プリザーブドフラワージャパンアート協会設立に至る。伝統的なスタイルから新しい感覚のデザインまで、既成概念にとらわれることなく、自由な発想のアレンジを提案。ほか、スタイリングや写真技術、アクセサリー制作も指導している。
http://www.greenrose-m.com
https://www.instagram.com/green_rose_matsuura/
撮影・松浦奈美子 構成と文・鈴木清子
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