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サクラ(桜)のおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

サクラ(桜)のおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

春の季語にもされるサクラ。「サクラ」と口にするだけでも、春の喜びが胸いっぱいに広がります。花屋さんでサクラを見かけたら、家にも飾って、お花見をしませんか? ここで紹介するのは、より長く咲いてもらうための水あげのことから、花留めのこと、そして素敵なあしらい方まで。季節の枝ものや草花をこよなく愛する『ブケ ド ソレイユ』の井出 綾さんに指南してもらいました。

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鮮度抜群で長もち! アレンジしやすいサクラ(桜)の選び方

ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心なく 花の散るらむ

これは、百人一首でおなじみの紀 友則(きの とものり)の名歌。うららかな春の陽光のなか、サクラの花びらがはらはらと散る、のどかな景色を詠んでいます。平安の頃より、花といえばサクラ。冬が去り、ようやく訪れた春の喜びをこの花に重ね、愛されてきました。

日本に、サクラは何種類あるかご存知ですか? 桜前線の標本木にされ、サクラの代名詞といえるソメイヨシノ(染井吉野)にはじまり、か細い枝に可憐な花を咲かせるシダレザクラ(枝垂桜)、山に自生し、花と同時に赤い葉が芽吹くヤマザクラ(山桜)…。さらには、秋から冬にかけて花の季節を迎えるジュウガツザクラ(十月桜)などという珍しいサクラも含めると、1年を通して、なんと600種を超える種類が咲いているそうです。そして、日本の春を染めあげるサクラの約8割は、写真↓のソメイヨシノ(染井吉野)。

では、花屋さんに出回るサクラには、どんな種類があるのでしょう。もっとも身近なのは、以下の2種です。枝が細く、いけやすい長さで売られています。自宅でいけるのにちょうどいいサクラたち。

ケイオウザクラ(啓翁桜)
花屋さんで、ま冬にも関わらずサクラを見かけることがあるはず。それは「ケイオウザクラ(啓翁桜)」。“蒸かしもの(ふかしもの)”といって、温室で開花させたものが12月から出荷されます。細く、しなやかな枝に、淡いピンクの花を数多く咲かせます。主に、山形が産地。

ヒガンザクラ(彼岸桜)
寒さもやわらぐ春の彼岸の頃に咲くのが、ヒガンザクラ(彼岸桜)。別名を「小彼岸桜」。花はケイオウザクラよりひとまわり大きめ。花柄(かへい・花についている茎のこと)が長めなので、うつむきながら、やさしげに花を咲かせます。花色はごくごく淡く、ピンクの色がより濃いものは写真↓の「ベニヒガン(紅彼岸)」。

そのほか、今回の取材では、こんなサクラにも出会いました。

ヨシノザクラ(吉野桜)
大きな枝で出回り、主にディスプレイなどのいけ込み用。ケイオウザクラなどと異なり、枝が力強く曲がっています。花色は白に近い色。花が固まってつくため、ボリューム感も楽しめます。

ベニヨシノ(紅吉野)
別名はヨウコウザクラ(陽光桜)。つぼみは赤に近く、開くと濃いピンクの花が。

さて、サクラは花が咲いてから散るまで、約1週間。それなら、どんなサクラを選ぶべきか、答えは明快です! そう、早く花を愛でたいなら、つぼみが膨らみかけたサクラを選ぶこと。

サクラが出回るのは、12~3月のまだ気温の低い時期です。テーブルなどの少しでも高い場所に置いておくと、つぼみが咲きやすくなります。

ただし、これは早く咲かせたい場合のコツ。より長く楽しみたい場合は、玄関などの寒い場所に飾るのがよいようです。そのほうが、花色は濃くなるそう。

サクラ(桜)を美しく飾るために、準備したいこと

サクラをいける前に、かならず行いたいのは「水あげ」です。水あげとは、植物のすみずみまで、しっかりと水を行き渡らせるための大事な作業。草花などの多くの花は「水切り」といって、水中で茎を切る方法で行いますが、サクラは固い枝もの…。水があがりやすいように、特別な方法を使います。

枝先などのほっそりした枝は、ハサミで斜めにカットするだけで構いませんが、問題は太い枝の場合です。持っていれば、バネつきの剪定バサミを用意してください。

方法は簡単です。まず、枝の根本を斜めにカット。ほんの少しの振動で、咲いた花は散ってしまうので、慎重にハサミを入れてください。

そして、十文字に、深く切り込みを入れましょう。これを「根元割り」といいます。サクラは表皮のすぐ裏側から水を吸い上げるため、深く、切込みを入れるほど、水を吸い上げやすくなります。また、深く割っておけば、剣山を使っていけるときも、しっかりと針にかませることができます。

サクラ(桜)を飾るときに、必要なアイテムってあるの?

短い枝をコップや一輪挿しに飾る場合は、なんの苦労もなくいけられます。しかし、間口の広い器に、のびやかにサクラをいけるとなったら、昔ながらの花留め「剣山」の出番です! 枝の長いサクラはずっしりと重く、広口の器にそのままいけると、器から落っこちてしまいますよね。重量のある金属の剣山に挿すことで、重石の役割も果たします。なお、金属製の剣山を使う際は、器に1枚葉を敷くと、器へのダメージを防げます。小さめの剣山なら、100円ショップでも購入できますよ。

ただ、剣山は必ずしも必要なわけではありません。サクラ自体を花留めにすることもでき、ほかの花材を最初に挿すことで、サクラを固定することもできます。その方法を使った飾り方を5項で紹介しましょう。

サクラ(桜)を素敵に見せるには、3つのコツがあります

家庭で楽しむなら、難しいことは何も必要ありません。覚えておきたいことといえば、切り分けをはじめとする以下の3つのコツです。

コツ1.「切り分け」で、1本のサクラを上手に生かす

花屋さんでサクラを買ってきたはいいものの、ちょうどいい器がなくて…。サクラは長めの枝で売られているため、そんな声をよく聞きます。大きな花瓶がないなら、手持ちの器に合わせて、切り分けてみませんか? 1本の枝ぶりを見ながら切り分けることで、上に伸びる枝や横に広がる枝などと、いくつものパーツが生まれます。

たとえば…写真↓は枝の途中で、ふたつに切り分けた例。1本のままで使うより、いけたときにボリューム感が出せますよね。いけたい器の高さや間口に合わせて、切り分けましょう。

ハサミを入れる位置とカットの仕方もポイントです。写真↓のように、枝分かれした箇所で、斜めに入れてください。切り口が変に悪目立ちしていませんよね?

枝を切り分けているうちに、間引かなければならない小枝もでてくるかもしれません。そんなときには、一輪挿しやコップに挿して、愛でてあげませんか? 花が終わる頃には、若々しい緑色の葉が芽吹き、それもサクラのお楽しみです

コツ2.枝には表と裏があるのを知っていますか?

表と裏。いったいなんのこと?と思ったでしょうか。植物はすべて、日の光に向かって茂ります。少しでも多くの日を浴びて、繁殖しようという植物の営み。サクラも、それは変わりません。↓の写真を見て。これが表で、

↓は裏。あえてはっきりとした違いがわかるサクラを選びましたが、どんなサクラでもよく見ると違いがわかるはずです。表と裏を意識すれば、サクラあしらいは、ぐっと素敵にできます。

コツ3.いまだけの季節の草花を合わせましょう

ただひと枝をいけても風情のあるサクラですが、春はさまざまな花々がいっせいに咲きほころぶシーズンです。一緒にいけて、その季節ならではの出会いを楽しみませんか? サクラには、しなやかな蔓のものや繊細な草花を。はかなげな美しさを引き立て、少し武骨なサクラの枝でも、やわらかく見せてくれます。写真↓は、左からジューンベリー、ヤマブキ、コゴメウツギ。

なお、いける際は、花には触れないでくださいね! 枝を持っていける。これも素敵にいけるための大切なポイントです。いけたあとは、こまめに水替えをすることで、つぼみが咲きやすくなります。

手軽に気軽にフラワーアレンジ。サクラ(桜)の飾り方アイデア

さて、このシーズンは、どんなふうにサクラをいけましょうか。ごくごく小さな一輪挿しから、大きめの鉢まで。まねやすいサイズの器で、日常から、おもてなしの日までのサクラあしらいを提案します。

その1.葉をくるりと巻いて、サクラと遊ぶ

花材:サクラ(ベニヒガン)、リリオペ

一輪挿しに小さくいけるとき、何を合わせますか? サクラの繊細な美しさをシンプルに楽しみたいなら、グリーンを選んでみましょう。細いリボンのような葉はリリオペ。くるりと丸めるだけで、ひと枝のサクラに曲線のしなやかなアクセントを添えられます。

その2.片口に小さくいけて、春を愛でる

花材:サクラ(ヨシノザクラ)、チューリップ

サクラが出回る頃、チューリップも旬を迎えます。一緒にいけて、春を満喫しましょう。短く切り分けたサクラを縁にもたせかけてから、チューリップ、上へ伸びるサクラの順にいけます。足場ができているので、花留めを使わなくても、すっくと立てていけられます。器が片口だとわかるよう、片側だけにあしらって。

その3.爽やかに、ふくいくと。香りを楽しむあしらい

花材:サクラ(ベニヒガン)、シャクヤク、センテッドゼラニウム、ウグイスカズラ

サクラのシーズンが終盤を迎える頃、花屋さんには早咲きのシャクヤクが登場します。そんな季節には、サクラに香りをまとわせるあしらいを。丸い葉のグリーンは柑橘系の香りがするセンテッドゼラニウム。最初に、このグリーンをみっしりといけることで、サクラの花留めにしています。

その4.長い枝で、空に伸びゆくサクラの姿を

花材:サクラ(ヨシノザクラ、ベニヨシノ)、アリウム、ナズナ

サクラを大枝で楽しむなら、安定感のある壺形の器。斜めに、おおらかに伸ばしてみましょう。サクラの大木を思いながら。それでも、ゴツゴツと太い枝があまり気になりませんよね。ナズナでカムフラージュしているからです。くねくねと茎が曲がるアリウムを加えて、春の躍動感を。

以上。1年のうち、限られた時期だけのサクラ。サクラ1種で、または好きな花と合わせて…今年のサクラを存分に楽しんでください。

サクラはドライフラワーにすることもできます。作り方は「サクラ(桜)の、上手なドライフラワーの作り方と簡単アレンジ」で紹介しています。

Credit

記事協力

井出綾

井出綾
『ブケ ド ソレイユ』主宰
アトリエは東京・都立大学。“自然と暮らしをつなぐ花”をコンセプトに、花手(かしゅ)、プランツスタイリストとして活躍中。広告、雑誌での花いけと商業店舗でのスタイリングを行う一方、野山の花の会やレッスンを通して、暮らしの花を提案する。風合豊かな手仕事の器と、野山の花や木で紡ぐ世界は、静かに語りかける美しさ。著書に『花の教室―季節の花の85アレンジ』(グラフィック社)など。

http://soleil-net.com
https://www.instagram.com/aya_ide/

撮影と構成と文・鈴木清子

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