キクを小さくしたような可憐な花が、茎先にスプレー状につくアスター。気取らない花姿で、さまざまな使い方ができるため、ナチュラルなアレンジのサブ花材として活躍します。そんなアスターをもっと長く楽しめたらいいのに…と思うことはありませんか? ドライフラワーにすれば、お気に入りのアスターをずっと部屋に飾っておくことができます。花のアトリエ『グリーン ローズ』の松浦奈美子さんに、アスターのドライフラワーの作り方と、その簡単なアレンジについて伺いました。
目次
アスターのドライフラワー作りはそんなに難しくありません
「小さな花びらがたくさんついているアスター。ドライにするのは難しいのではないかしら」と思うかもしれません。でも、大丈夫!「アスターをドライフラワーにするのは、そんなに難しくはないですよ」。アスターのドライフラワー作りを教えてくれた松浦奈美子さんはこう言います。「ただし、アスターなどのキク科の花は、乾燥させるのに時間がかかり、すべての花がきれいなドライフラワーになるわけではありません。最初はうまくいかないかもしれませんが、アスター1本にたくさん花がつくし、とてもリーズナブルな花材です。失敗しても諦めずに、ぜひ何度かトライしてみてください」。
それでは、花の選び方や、作ったドライフラワーの飾り方など、アスターをドライフラワーで楽しむ方法について、具体的に教えてもらいましょう。
ドライフラワーに適している、アスターの種類と選び方
基本的には、どんな色、形のアスターでもドライフラワーにすることができます。ポイントは、花屋さんで買ってきたばかりの、新鮮な花をすぐにドライフラワーにすること。新鮮な花ほど、花びらのつけ根がしっかりしているので、形をキープしやすいからです。反対に、飾ってから日数が経ったものやガクが傷んでいるものは、避けたほうが無難です。ドライフラワーにしたときに、花の形が崩れやすくなってしまいます。
もちろん、「生花として少し楽しんでからドライにする」という方法もあります。その場合も花瓶に入れて楽しむのは1~2日に留め、早めにドライフラワーにするほうが、仕上がりがきれいです。そのうえ、ドライフラワーとしてのもちもよくなります。
アスターのなかでも、特にドライフラワーにおすすめなのは、下記のタイプです。
花びらに厚みがあって密な花
アスターのドライフラワー作りで注意したいのが、花びらが落ちやすいこと。そのため、花びらが丈夫で、少しくらいなら枚数が欠けても目立たない花形のほうが、ドライフラワーにするときに失敗が少ないといえます。さらに、花びらの枚数が少ないものは、乾かしているうちに花が閉じたようになってしまい、あまり美しく仕上がりません。
色が濃いもの、黄・オレンジ色系のもの
ドライフラワーは乾燥させているうちに、どうしても花びらが茶色っぽくなります。もともとの花色が濃い紫色のものや、茶色くなっても味が出る黄・オレンジ色系のものなら、茶変した部分があまり目立ちません。反対に、白やピンクの花は茶変した部分が目立ってしまいます。
アスターのドライフラワーの作り方は、ふたつあります
ドライフラワーの作り方には、大きく分けて、ハンギング法、シリカゲル法、ドライ・イン・ウォーター法の3つがあります。このうち、ドライ・イン・ウォーター法は、花に水分を多く含むアスターには向きません。花の形が崩れる原因になるからです。また、ひと昔前には電子レンジを使う方法もありました。ただ、生きている花を電子レンジにかけることに抵抗を感じるかたが多く、また、作っている途中で嫌な臭いがしたり、花の形が崩れたりしやすいので、こちらの方法も避けたほうがいいでしょう
今回は、アスターに比較的向いているハンギング法とシリカゲル法、このふたつの方法について手順を紹介します。
簡単にアスターをドライフラワーにする「ハンギング法」
花を束ね、下に向けて吊すだけ、という、もっとも一般的なドライフラワーの作り方です。簡単で手間がかからず、できあがったドライフラワーをそのまま飾ればいいので、初心者向きといえます。ただし、外気に触れながら乾燥させるので、あとで説明するシリカゲル法と比べると、どうしても色褪せの度合いは大きくなります。その褪せた花色こそがドライフラワーの魅力でもあるので、ドライフラワーらしさを好む人には、いちばんおすすめの方法です。
ハンギング法でドライフラワーにしたアスター
さらに言うと、アスターはシリカゲル法にすると花がつぶれやすいので、どちらかといえばハンギング法のほうがおすすめです。乾燥の度合を毎日確認できるハンギング法なら、花びらがチリチリになる前に乾燥を止めることができるので、多少花色が褪せてもきれいな形のドライフラワーを作ることができます。
ハンギング法で必要なもの
・アスター
・輪ゴム
・麻紐 *吊すために使うので、紐でもリボンでも可
・ハサミ
ハンギング法のコツと注意点
アスターは、乾燥すると茎から水分が抜けてしまい、茎が細くなります。そのため、アスターをハンギングにするときは、最初に輪ゴムで茎を束ねておきます。このとき、輪ゴムは、できるだけきつく掛けるほうがいいでしょう。茎が細くなって輪ゴムがゆるむと、途中で花が落ちてしまうことがあるからです
花を束ねるときは、やや花顔をずらしながら重ねるのが、ハンギング法でのドライフラワー作りのコツです。花同士が重なっていると風通しが悪くなり、乾燥までに時間がかかったり部分的に花色が悪くなったりします。
ハンギングを行うのに最適なのは、からっとした晴天が続く日。長雨の時は湿気が多くなるので避けましょう。できるだけ風通しがよく、直射日光があたらない場所に吊るしてください。また、閉めきりにした室内で、エアコンを風量控えめの暖房に設定し、直接花に風が当たらないようにしながらやさしく乾燥させる、という方法もあります。
ハンギング法の手順
① アスターの茎を束ねて、根元を輪ゴムで留めます。できるだけきつく掛けましょう。なるべく花が重ならないように、花の向きや重なりを調整してください。
②輪ゴムの上から麻紐をきつく巻きつけます。干すときに結びつけられるよう、紐の端は長めに残してカットしておきましょう。
③湿気が少なくて直射日光があたらない、風通しのいいところに②を吊します。外気にあてると花が傷むので、室内のほうがいいでしょう。コート掛けやタオル掛けなどを使うのもよい方法です。ただし、壁の近くに吊るすときは、花の湿気で壁紙がふやけたりしないよう注意してください。乾燥の度合いは好みにもよりますが、10日~2週間ほどして花びらからほぼ水分が抜けたらできあがりです。
アスターの色をきれいに残す「シリカゲル法」
クッキーや海苔の乾燥剤として、よく目にするシリカゲル。水分を吸着するシリカゲルの働きを利用してドライフラワーを作るのが、この方法です。シリカゲルを使う方法は、乾燥させている間、花が外気に触れないため、退色を防ぐことができます。従って、花の色をきれいに残すことができるのです。一方で、シリカゲル法で作ったドライフラワーは、ハンギング法で作ったドライフラワーよりも湿気に弱く、花びらがへたりやすいという特徴もあります。
シリカゲルにはドライフラワー専用のものがあります。お菓子用でも代用できますが、避けたいのは、粒状のもの。粒だと、花と花の間など、細かいところまでシリカゲルが入らないからです。シリカゲルは100円ショップやインターネット、資材店などで購入することができます。
シリカゲル法で必要なもの
・アスター
・シリカゲル *パウダー状のもの
・密封できる蓋つきのタッパー *蓋付きの瓶でも可
・ハサミ
・スプーン
・ピンセット
シリカゲル法のコツと注意点
花をタッパーに入れてしばらくすると、「もうできているかな?」と、中の状態を確認したくなるものですが、しっかり水分が抜けるまで、タッパーの蓋を何度も開け閉めするのはやめましょう。乾燥させている途中で、花が空気に触れると、色が悪くなってしまいます。作る時期や保管場所の湿度にもよりますが、できあがりまではだいたい10日~2週間ほどかかります。
シリカゲル法は花だけをドライフラワーにするものと思われがちですが、大きなタッパーを使えば、茎をつけたまま、アスターを丸ごと1本ドライフラワーにすることも可能です。ただし、大きな容器と大量のシリカゲル、タッパーを置くスペースが必要になるので、そうした点を考慮したうえでトライしてみましょう。
シリカゲル法の手順
① タッパーにシリカゲルを敷きます。目安としては、深さ1~2㎝ほどです。
② シリカゲルの上にアスターを置きます。花だけをドライフラワーにする場合は、複数の花を同じ容器に入れて構いません。ただし、花同士がくっつかないように、1輪1輪を離して、それぞれの四方がシリカゲルで埋まるようにするのがポイントです。
③ 花の上や周りに、シリカゲルをやさしくかけていきます。シリカゲルがいちどにどっと花にかかると形が崩れてしまうので注意しましょう。隙間ができないように、スプーンを使って花びらと花びらの間にも丁寧にシリカゲルを詰めてください。細かいところは、丸く切った紙を円すい形にしてジョウゴを作り、その中に入れたシリカゲルを砂時計の砂のように少しずつ落としていくといいでしょう。
④花が完全に隠れて見えなくなるまで、③を繰り返したら、蓋をきっちり閉めます。日の当たらない湿気の少ない場所に、約10日~2週間置けばできあがりです。
⑤ ドライフラワーになったアスターを取り出すときは、タッパーから新聞紙などの上に少しシリカゲルを移します。花が見えたら、ピンセットで下からやさしく、すくうようにつまんで取り出しましょう。最後に、花びらをペーパーなどにトントンと軽く何度か打ちつけて、なかに入り込んだシリカゲルをきれいに取り除いてください。
アスターのドライフラワーをより楽しむために…
アスターは花がびっしりついているので、ドライフラワーにしたあとも花びらと花びらの間がムレやすいものです。湿気の多い場所に置くとカビが生えることがあるので、飾る場所には注意しましょう。
さらに、どんな作り方をしても、ドライフラワーは完成したあとも少しずつ乾燥が進み、徐々に色が褪せていきます。飾っておけばホコリがつきますし、花びらが落ちやすいため、あまり手をかけることもできません。季節に関係なく長く楽しめるのがドライフラワーの魅力ではありますが、やはり時々は花をいけ替えるのがベストです。
アスターのドライフラワーを使った、簡単アレンジ
ドライフラワーを作ったら、部屋に飾ってみましょう。ここでは、一般的なアレンジだけでなく、ひと手間加えたおしゃれなあしらい方も紹介します。
その1 まあるい花材をつないだフェルトのリース
花材:クジャクアスター、ツルウメモドキ
ベースにしたのは、雪の結晶をつないだような白いフェルトのオーナメント。その上に、アスターの花と、ツルウメモドキの実を、接着剤で丸くリース状に貼っていきました。ビビッドな紫と赤が印象的で、簡単なのにとっても愛らしいリースです。
その2 ナチュラルな花材とキャンドルスタンドに
花材:アスター、野バラの実、リューカデンドロン、スモークツリーなど
LEDライトをキャンドルのように灯したまっ白いキャンドルスタンドに、アスターと実ものなどのナチュラルな花材たちを、たっぷりあしらいました。野バラの実やマツカサの赤に、白い花びらの先端がほんのり青に染まった、複色のアスターが映えます。
その3 ポイントに花を飾った簡単ガーランド
花材:クジャクアスター、マツカサ、ダリア、スターアニス
毛糸とリボンを編み込んで、ガーランドを作ります。ところどころに花を接着剤で貼りつけて、リボンを垂らし、ポイントを作りました。毛糸とリボンの色を、花材と同系色の落ち着いた色にすることで、どんな部屋にもマッチするおしゃれなインテリアになりました。
Credit
松浦美奈子
『グリーンローズ(Green Rose』主宰。国立岐阜大学農芸化学科卒業後、外資系製薬会社に勤務中、プリザーブドフラワー、ドライフラワー、生花のアレンジを習得。退職後、世界各地で研鑽を積み、スクール開校、プリザーブドフラワージャパンアート協会設立に至る。伝統的なスタイルから新しい感覚のデザインまで、既成概念にとらわれることなく、自由な発想のアレンジを提案。ほか、スタイリングや写真技術、アクセサリー制作も指導している。
http://www.greenrose-m.com
https://www.instagram.com/green_rose_matsuura/
撮影・松浦奈美子 構成と文・高梨奈々
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