「コスモスは秋に欠かせない花ですね」と語るのは、花のアトリエ『ブランディーユ』の落合惠美さん。自身の畑でもたくさんのコスモスを育てています。暮らしのなかで楽しむ、コスモスのおしゃれないけ方、飾り方を、長もちさせるコツと一緒に伺いました。
目次
コスモスを美しく飾るために、準備したいこと
細い茎の先に、大きく花びらを開くコスモス。ピンクや白の花は、多くはひと重咲きです。素朴な花は、郷愁を誘うのでしょう。庭先や公園、河川敷などに咲いていた、懐かしい風景を思い浮かべる人が多いようです。
コスモスは涼しい時期であれば、花もちは5~10日。つぼみもついていて、花もちは悪くありません。ただし、堅いつぼみは咲きません。花にエネルギーが十分使えるように、摘み取ってからあしらうといいでしょう。また、丸く小さなつぼみを、アレンジに生かす手もあります。
新鮮なコスモスを選ぶポイントは「茎」
長もちするコスモスを見極めるポイントは、茎です。購入時は、茎がしっかりと締まっていることを確かめましょう。水分や肥料を与えられ過ぎたコスモスは、茎が太くて柔らかく、水あげがよくない場合があります。
咲き始めたばかりの花は花びらが伸び切らず、本来の大きさではありません。咲き始めは花の中心は硬く、花粉が出ていないのが特徴です。
上の写真のコスモスは、咲き進んで花粉が出ています。花びらにもついているのがわかりますかか。そう、新鮮を判断するときは、花の中心を見るとよいのです。そして、葉が生き生きしているものを選びましょう。
また、購入時には、花首が曲がっていないものを選んでください。茎が細い割には花が大きいので、満開になると花の重みで自然とうつむいてしまうものもあるからです。
水に入る、余計な葉を取り除きます
コスモスは細い葉がたくさんついています。葉が多いと水落ちしやすいので、不要な葉は取っておきましょう。葉をごく少し残す程度が、表情がはっきりして、花がきれいに見えます。
茎先は、切り口が斜めになるように
買ってきたコスモスをいけるときは、茎の先を水に浸けて茎を切る「水切り」をします。これは切り口の吸水面を広くするのがポイントです。
手順は簡単です。大きめのボウルなどの器に水をたっぷり入れ、その中に茎を入れます。よく切れるハサミやナイフを使って、茎を斜めに1~2㎝ほどカットしてください。
水が落ちしたときは、湯あげを施して
水あげは悪くありませんが、もし、水が落ちたとき、また不安な場合は湯あげをします。
①花と葉が傷まないように、コスモスはあらかじめ、新聞紙で包んでおきます。湯に浸ける茎の長さだけ、新聞紙から出しておきましょう。
②茎の先を熱湯に入れ、数十秒浸けます。その後すぐに、新聞に包んだまま、コスモスを深水に入れます。深水とは、言葉どおり深い水に花材を入れて水あげすること。水をたっぷり張った器に、コスモスを入れてください。このとき、花首の下まで水につけるほうが効果的です。ただし、花が水に濡れないように。
コスモスを飾るときに、必要なアイテムってあるの?
庭や花畑で摘んできたような、ナチュラルなムードを漂わせるコスモス。その、親しみやすさを生かすなら、グラスやカップ、空き缶など、身の回りにある器を選ぶのも素敵です。特別な器がなくても、花は楽しく、素敵に飾れます。
アレンジのイメージは、器によって変わります。季節感溢れる、華やかなおもてなしアレンジにしたいときは、陶器など、飾るシーンにふさわしい器を考えてみましょう。
購入してきたコスモスは、よく水があがるように、前述した「水切り」をしてから器にいけます。いけるときは、必ず花切りバサミかナイフを用意しましょう。普通のハサミで茎を切ると、水の通り道の“道管”がつぶれやすくなります。切れ味が悪かったり、汚れていたりするハサミは、花のもちを悪くするので注意です。ハサミは使い終わったら、洗って汚れを落とし、水分をよく拭き取ってください。
おしゃれに飾りたいときに重宝するアイテムがあります
コスモスは、茎が細く、吸水性スポンジや剣山に挿しにくいので、投げ入れが向いています。とはいえ、投げ入れで、思うような向きや角度に挿すのは簡単ではありません。そこで、便利なのがアルミワイヤー。ワイヤーは手で曲げることができます。茎が留まりやすい形に丸め、花留めとして使いましょう。
上の写真では、アルミワイヤーがコスモスの花留めに。器の大きさに合わせて丸めたワイヤーを、器に沈めています。これなら、口が広い器でも簡単に、コスモスがいけられますね。
コスモスをおしゃれに飾りたい。そのコツを教えて
コスモスの持ち味を生かして、季節感たっぷりにあしらいます。茎のしなやかさ、ひと重咲きの可憐さ、八重咲きの華やかさを生かしましょう。
花の高さを変えて、シンプルに愛でます
コスモスだけを数輪使い、シンプルにあしらいます。コスモスは高低差をつけると、1輪1輪の表情がはっきりと味わえます。華奢な茎のライン、繊細な葉が描く空気感まで伝わるアレンジに。
花材:コスモス(あかつき、ピコティなど)
透明なガラス瓶に飾ると、瓶の中の茎の表情まで楽しめます。いけるのはコスモスだけ。花首をすっと伸ばし、葉は少しだけ残して、茎のラインを強調。すらりとした茎に咲く姿、ときに花の重さでうつむく姿も、コスモスらしくて可憐ですね。
コスモスを集めて、秋のピンクを堪能
ピンク系や白の花色がさまざまに揃うコスモス。ほとんどがひと重咲きで、軽やかさが身上ですが、微妙に異なる花色のコスモスをたっぷり集めると、華やかさが出ます。
花材:コスモス(あかつき、ピコティ、ダブルクリックなど)、ブルーセージ、ミント、ヒペリカム、スモークグラス
縁取りがあるタイプ、花の中心が濃いものなど多彩に重ね合わせ、コスモスの美しいグラデーションを味わいます。コスモスは、2、3輪ずつグルーピング。中心は低めに密にあしらい、周囲に花を飛ばすと、風に揺れるようなナチュラル感が演出できます。キクのように花びらを重ねる八重咲きは、アクセントに。
明るいグリーンを花のクッションにして
茎が細いコスモス。そのまま投げ入れにするにはかなりテクニックが必要です。そこで、グリーンをクッションにするように、コスモスの足元にあしらい、花留めに使う方法も。
明るい葉色のハーブは、コスモスの軽やかさ、野の花のようなムードによく合います。いけるときは最初にハーブを器に入れ、コスモスを受け止めるクッション役に。葉と葉の間で、コスモスの茎が留まるのを確かめながら、1輪ずつあしらいます。
コスモスをきれいに飾るための注意点は、下準備です
コスモスの葉は細かいので、たくさんついていても大きな影響がないような気がしませんか。ところが、このたくさんの葉が活発に蒸散すると、吸い上げた水分が花まで回らなくなり、コスモスは水落ちしやすくなります。また、葉が水に浸かると水が汚れるので、下葉は必ず取り除いてからいけましょう。
残す葉の量は、ほんの少しでOK。ほとんどの葉を取り除いたほうが、コスモス本来の美しさが際立ちます。
コスモスを長もちさせるには、こんな方法を
コスモスを飾るときは、花瓶の水を半分以下にしましょう。葉が水に浸かっていると、傷んで水を汚します。そして、長もちさせるためには、毎日のお手入れが大切。水替えをして水を清潔に保ち、そのたびに水切りをして、茎の切り口を更新します。
前述したように、水替えをして、器にいけ直す前には、水が花までよくあがるよう、茎の「切り戻し」をします。切り戻しとは、茎や枝の切り口を新しく切り直すこと。このとき、「水切り」をするとさらに効果的。水切りは、名前のとおり、水の中で茎をカットすること。水中で茎を切ると、水の通り道である導管内に空気が入らないため、水がスムーズに、花や葉まであがるのです。さらに、切り口の乾燥を防ぐこともできます。
水切りの方法は、「1.コスモスを美しく飾るために、準備したいこと」を参照してください。水を替えるたびに茎先を水切りすると、新しい導管の断面が常に水に接し、水があがりやすくなり、長もちすることにつながります。
コスモスは、ドライフラワーにして楽しむこともできます。ドライフラワーの作り方は、「コスモスの、上手なドライフラワーの作り方と簡単アレンジ」で紹介しています。
手軽に気軽にフラワーアレンジ。コスモスの飾り方アイデア
その1 花畑に咲くように、リズミカルに
花材:コスモス(ピコティ、ダブルクリック、あかつき)
たくさんの器を並べて飾れば、そこはコスモス畑。ポイントは畑に咲く姿をなぞるように、気ままな表情を生かすことです。花はそれぞれ高さを変えて、花の色や形、角度に変化をつけて、ナチュラル感を演出します。軽やかな花なので、いくらあしらっても多すぎることがありません。丸いつぼみはアクセントとして生かします。
その2.ハーブを合わせて、キッチンに飾って
花材:コスモス(あかつき、ピコティ、ダブルクリック)、バジル、セージ、ハーブゼラニウム、ミント
公園や道端にも咲くコスモス。身近なイメージを描きたくて、キッチン小物にあしらいました。花柄のかわいいキャニスターなので、八重咲きや赤みの強いコスモスを選び、コンパクトながらも賑やかに。ハーブは細かく枝分かれして、葉がたくさんついているので、コスモスの細い茎もしっかり留まります。
その3 コスモスだけを、さりげなく数輪
花材:コスモス(あかつき、ピコティ)
庭に咲いたコスモスを、空き瓶にちょっと挿したようなアレンジです。コスモスは余計なことをしなくても、持ち味を発揮してくれる花。大きな花はさりげなく下の方に、小さな花は高く、それぞれが違う方向を向くように挿すと、表情豊かにバランスよくあしらえます。
Credit

落合惠美
『ブランディーユ』主宰。1988年、東京・三軒茶屋に、 花のアトリエを設立。花教室のほか、ウエディングやイベントの花装飾などを手掛けている。ナチュラルでありながらエレガントなスタイルのアレンジが、幅広い年代の女性に支持され、雑誌やテレビ、広告でも活躍中。オーガニックや自然素材にこだわり、地球環境や動物へ配慮した野菜中心の食生活を心がけている。現在、オーガニックフラワーの普及を目指した活動も。著書多数。
https://www.instagram.com/brindilleflowers/
構成と撮影と文・瀧下昌代
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