春~夏の花壇で、元気いっぱいにオレンジ色や黄色の花を咲かせているマリーゴールド。近年では、切り花としても人気が高まっています。太陽を思わせる鮮やかな色合いと、群を抜くもちのよさ、細くて柔らかな花びらがくしゅくしゅと集まるキュートな花形が、愛される秘密なのでしょう。最近では、大輪タイプや一重咲きタイプも登場しています。そんなマリーゴールドの生け方や飾り方について、東京・二子玉川の花店『メゾンフルーリ』の佐々木久満さんに、アドバイスをいただきました。
目次
マリーゴールドを美しく飾るために、準備したいこと
せっかくマリーゴールドを購入して飾るのだから、なるべく花を長もちさせたい! しかし、いけるときにどれほど気を配っても、もともと鮮度の落ちている花を買ってきてしまっては、長もちをさせることはできません。まずは、花屋さんで鮮度のいいマリーゴールドを選ぶことが、花を長く楽しむために大切なことです。
長もちするマリーゴールドを見極めるには…
暑さに強く、夏でも2週間は飾っておけるほど、非常に花もちのいいマリーゴールド。その鮮度を見極めるには、花よりも葉っぱを見るほうがいいでしょう。上のふたつの花は、花の部分だけを見ると、さほど鮮度に違いがあるようには見えません。でも、葉っぱを見れば、右側のものは先端が茶色くなったり、しわしわとしおれて元気がないのに対し、左側のものは先端までピンとハリがあって上を向き、全体がきれいな緑色をしています。このように、葉っぱに勢いがあって変色していない花を見つけるのが、鮮度のいいマリーゴールドを選ぶコツなのです。
マリーゴールドを飾るときに、必要なアイテムってあるの?
花をいけるとき、多くの人は「花瓶がないとダメ!」と思うようです。花束をいただいたのはいいけれど、花瓶がなくて困った、という話もよく聞きます。実際は、‟水が漏れない器”さえあれば、花瓶なんかなくても花はいけられるのです。たとえば、どの家のキッチンにもあるガラスのコップ。これと花を切るハサミさえあれば、花を飾ることができます。
ハサミだけは必ず、花切りバサミを用意してください。普通のハサミで花の茎を切ると、水の通り道である‟導管”がつぶれてしまう可能性が大だからです。こうした理由から、花の茎をつぶさずにカットできるよう工夫された、花切りバサミが必要になります。花切りバサミを使っても、切れ味が悪かったり汚れていたりしたのでは花のもちが悪くなるので、注意しましょう。花切りバサミは使うたびに洗って汚れを落とし、しっかり水分を拭いておきます。
マリーゴールドをよりおしゃれに飾りたい。そのコツを教えて
マリーゴールドの茎は、ご覧のように特徴的な形をしています。花首の下は非常に太いのに、急にすっと細くすぼまって、そのまま同じ太さですうっと下まで伸びます。この形のせいで大きな花が不安定に見え、バランスが悪く感じられてしまうのです。しかも、普通の花の茎はなめらかな円筒形ですが、マリーゴールドの茎はちょっと四角っぽく、角張ってゴツゴツしています。言ってしまえば、マリーゴールドの茎は、見た目があまりかわいくないのです。葉っぱが下につきすぎているのも難点。アレンジしたときにあまり見えないばかりか、水に浸って腐りやすくなるので、あらかじめ取ってしまう場合がほとんどです。ですから、マリーゴールドは器の低い位置に挿すか、ぎゅっと固めて使い、茎を見せないようにあしらうのが、かわいらしくおしゃれに見せるポイントです。
マリーゴールドを素敵に飾るためのワンポイントアドバイス
マリーゴールドには明るい黄色・オレンジ系の花が多いもの。黄色・オレンジ系の花を素敵にあしらう方法は、大きくわけてふたつあります。ひとつは、明るい色みの反対色を添えること。明るく澄んだブルーや紫の花と合わせると、コントラストがついてマリーゴールドの色彩が引き立ち、しかも全体に透明感が加わるので、アレンジがよりいきいきとして愛らしく見えます。もうひとつは、黒や濃い茶色などの、ダークな色の実ものや葉っぱを合わせること。こうすると、鮮やかなマリーゴールドの色だけが浮き上がって見え、はっとするほど印象的です。
マリーゴールドを飾るときの注意点は、器の中の水量です
マリーゴールドをいけるときは、器の中の水の量に注意が必要です。器の縁までいっぱいに水を入れてしまうと、すぐに細菌が繁殖して水のコンディションが悪くなり、花が傷む原因になります。水は低めの水位を保ち、こまめに替えてください。水に漂白剤を1滴垂らしてから花をいけると、細菌の繁殖が抑えられるのでさらに効果的です。また、下の方についている葉っぱは、水に浸かって腐りやすく、汚れの原因になるので、いける前にはずしておきましょう。
茎が折れやすい点にも注意が必要です。花をいけているとき、飾っているとき、乱暴に扱ったりぶつかったりしないでくださいね。
花を飾る場所にも気をつけましょう。直射日光が当たるところ、エアコンの風が直接あたるところは避けてください。涼しくて風通しのいい場所に飾るのがベターです。
マリーゴールドを長もちさせるには、こんな方法を
花を長もちさせる基本は、毎日の水替えと切り戻しです。マリーゴールドは水の汚れに敏感な花なので、器の水はなるべく毎日替えてください。夏場などの細菌が繁殖しやすい時期は、1日2回水替えをすると、かなり花もちが違ってきますよ。その際には茎先のぬめりを流水で洗い落とし、菌が繁殖しないよう、ついでに器の中も洗剤をつけたスポンジで洗います。
花を飾ったあとの日々のお手入れ「切り戻し」
マリーゴールドを長く楽しむために、飾ったあともできることがあります。水替えをして、器にいけ直す前に、水が花までよく上がるよう、茎の「切り戻し」をするのです。切り戻しとは、茎や枝の切り口を新しく切り直すこと。一般的な植物の場合は、水の中で茎を「水切り」しますが、マリーゴールドは非常に丈夫な花なので、とくに水の中で切る必要はありません。水を替えるたびに、作業台の上で茎の先を1~2cm切るだけでOK。すると、水に入れたとき、新しい導管の断面が水に接するので、水があがりやすくなり、長もちすることにつながります。
また、マリーゴールドは、コップなどに水を張っていけるよりも、吸水性スポンジにいけたほうが長もちします。スポンジにアレンジするときは、1本1本の茎をわけて挿すため、スポンジで茎の先端がガードされることになり、細菌が発生してもほかの花に伝染しづらいためです。もうひとつ、マリーゴールドの茎は折れやすいので、スポンジに挿すほうが茎の保護にもなるのです。透明なガラス以外の器であれば、器のなかにスポンジを仕込んで花を挿してみましょう。こんなふうに、ボックスのなかにセロハンを敷いてスポンジを入れ、花を挿してもいいですね。
手軽に気軽にフラワーアレンジメント。マリーゴールドの飾り方アイデア
ここまでに挙げた準備や注意点をしっかり押さえたら、実際にマリーゴールドをアレンジしてみましょう。紹介するのは、誰にでも簡単にまねができて、絶対に失敗しないシンプルなスタイルです。この基本スタイルさえマスターすれば、マリーゴールドのアレンジは完璧! それぞれのスタイルについて、ワンランク上に見えるコツも解説しているので、参考にしながらぜひ、自分らしいスタイルにチャレンジしてみて。
その1 縦に花を並べるとポップな印象に
2色の花を交互に並べて縦のラインを作り、伸びやかに仕立てたアレンジです。器も花と同じオレンジ色にして、下から上までオレンジ色×黄色でまとめ、花色のポップな印象を強調します。コツは、茎を長く伸ばした花の足元に、丈の短い花を重ねて、なるべく茎を見せないようにすること。また、周りに細長い花材を添えることです。
その2 固めていけて柔らかな質感を強調
花をぎゅっと固めていけ、外側にふたつ折りにしたグリーンを添える、モダンなあしらい。左側にマリーゴールド、右にケイトウ、手前に実ものと、あえて花材を1カ所にまとめていけるのがコツです。こうすると、それぞれが1輪の花というより素材となって質感が強調され、とくにマリーゴールドの花びらの柔らかさ、愛らしさが引き立ちます。
その3 和風のあしらいなら落ち着いた表情にも
マリーゴールドはキク科の花なので、じつは和風のあしらいも似合うんです。コツは、花数を1~2輪に抑え、周りを落ち着いた色の和風の花材で囲むこと。こうすると、鮮やかな花色だけがぐっと浮き上がって見え、しっとりとしていながら印象的なアレンジになります。和室はもちろん、洋間や洋風の家にも似合いそう。
Credit
佐々木久満
『メゾンフルーリ』統括マネージャー。
生産者とのつながりを大切にし、これまでに訪問した花の生産地は150以上。数多い日本国内の花店のなかでも特に、産地や新品種に精通するフローリストとして活躍している。東京・二子玉川にある本店『メゾンフルーリ』とともに、長野県松本市でも花店を営む。いずれも珍しい品種の花が揃うのはもちろん、季節感を重視し、地域いちばんを目指しているというサービスのよさでも知られる。
https://www.facebook.com/MaisonFleurieTamagawa
構成と撮影と文・高梨奈々
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