紙を1枚巻いたようなシンプルな花形、すらりと伸びた茎が美しいカラー。大きなガラスの器にさっといけると、それだけで洗練された大人のムードです。ウエディングシーンで大活躍する清楚な白から、鮮明な花色、シックな花色まで、バリエーション豊か。「メインはもちろん、サブ花材としても重宝する花ですね。ほかの花とは明らかに違う花形が印象的です」と語るのは、東京・用賀の花店『ブロッサム(blossom)』の嶋 友紀さん。カラーの生け方、飾り方について伺いました。
目次
カラーを美しく飾るために、準備したいこと
くるくるっと1枚の紙を巻いたようなカラー。縁には大きくフリルも入る斬新な花形です。この花として楽しんでいる部分は、じつは「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼ばれる葉が変化したもの。この中にある、細い棒状の「花序(かじょ)」が本来の花です。
カラー選びのポイント
画像の上は新鮮なカラー、下は時間がたったカラーです。カラーはとても水あげ、水もちがよく、一日吸水しなくてもほとんど花に変化がありません。ただし、鮮度が落ちると茎に張りがなくなり、柔らかくなります。購入するときは、茎に張りがあって、しっかり水分を含んだものを選びましょう。
また、新鮮なものは、中心の花に花粉が出ていません。
切り口は、垂直に切ります
水あげがいい球根植物のカラー。いける前に茎の先を1~2cm切るだけで、水切りなどは必要ありません。茎に対して垂直にスパッと。よく切れるフローリストナイフがベストです。
カラーを飾るときに、必要なアイテムってあるの?
花をいけるとき、多くの人は素敵な花瓶が必要と考えるようです。実際は、“水が漏れない器”さえあれば、花はいけられます。たとえば、どの家のキッチンにもあるガラスのコップ、瓶、ボウルなどでもOK。ただし、器の雰囲気でいけた花のイメージは大きく変わります。
茎を切るため、切り花用のナイフまたはハサミを用意します。普通のハサミで花の茎を切ると、水の通り道の“導管”がつぶれやすくなります。切れ味が悪かったり汚れていたりすると、花のもちが悪くなるので注意したいですね。花切りバサミは使うたびに洗って汚れを落とし、しっかり水分を拭いておきます。
おしゃれに飾りたいときに重宝するアイテムがあります
カラーを思うままに素敵にあしらいたいときは、花留めになる便利アイテム、吸水性スポンジを用意するといいでしょう。カラーの茎は張りがあり、とても太く、しかも真横にカットして使いうため、スポンジにうまく挿すことができないことも。挿すときは、思い切って一気に挿しましょう。
カラーをおしゃれに飾りたい。そのコツを教えて
すらりと伸びた張りのある茎、大きな1枚のような花びら。ほかの花にはない、これらの特徴を生かすと、カラーらしいおしゃれ感が楽しめます。茎を生かすアレンジ、花の色と形を生かすアレンジのふたつを紹介します。
張りのあるきれいな茎を生かすアレンジ
ガラスの器へまとめてさっといけるスタイルは、みずみずしい茎の美しさが味わえます。また、茎をカーブさせる簡単なテクニックで、おしゃれな飾り方ができます。
茎は張りがあって柔らかく、しっかり水分を含んで中身が詰まっています。
茎をカーブさせるテクニック
まっすぐに伸びた茎は、親指に少し力を入れて、数回しごきます。
真っすぐだった茎が、きれいな曲線を描きました。ただし、このまま水に浸けておくと、自然と茎は元に戻ります。
花材:カラー(カントール)
個性的な花のフォルムと黒に近い斬新な花色、茎も生かしたスタイリッシュな飾り方です。カラーの茎をガラス器の内側に沿わせていくと、美しい曲線が描けます。カラーの特徴を存分に生かしたおしゃれなアレンジです。ただし、夏場は水に浸けた茎は溶け出しやすいので、この飾り方は低温の時期におすすめします。
大きな花びらの色と形を生かしたアレンジ
花材:カラー(キャプテントリニティ)、アンスリウム、パイナップルリリー、セルリア
画像はトロピカルムード満点の組み合わせ。パンチのあるオレンジ色のカラーに、アンスリウムやパイナップルリリーなど、同じくトロピカルフラワーを合わせました。手の中で組んだ花を、そのまま花瓶に挿します。茎は見せず、花を寄せて、花形と花色を楽しみます。
カラーをきれいに飾るときの注意点は、水の量です
カラーはとても水あげがよい花材です。水もちもよく、丸1日吸水しなくてもしおれません。ところが、水に浸かった茎は溶けやすいというウィークポイントがあります。つまり、長くきれいにカラーを飾るために注意すべきは水の量。少ない水量に飾りましょう。
カラーを長もちさせるには、こんな方法を
カラーを長もちさせるには、毎日の水替えが大事。茎が傷まないように、器の水をきれいに保ちましょう。
花を飾ったあとの日々のお手入れ「切り戻し」
カラーを長く楽しむために、飾ったあとにもできることがあります。水替えをして花を器に生け直す前に、茎の「切り戻し」をします。切り戻しとは、茎や枝の先を切って、切り口を新しくすること。カラーは水あげがとてもいい花なので、水に浸けずにそのまま切る「空切り」をして、切り口を更新します。
空切りは、ナイフかハサミで茎先をカットするだけ。水を替えるたびに茎の先を1~2cm切り、導管の断面を新しくすると、水があがりやすくなり、長もちにつながります。
手軽に気軽にフラワーアレンジ。カラーの飾り方のアイデア
くるりと巻いた花に、すらりと長い茎。独特なフォルムを生かした、カラーらしい飾り方を紹介します。
その1 茎の曲線を生かすスタイル
スタイリッシュな印象のカラーですが、キッチン用品に飾ると、おしゃれでしかも身近な雰囲気になります。
①2本のカラーは花の高さを変え、茎を揃えてカフェオレボウルの内側に沿わせ、丸めていきます。
②弾力のある茎ですが、ボウルに沿わせるときれいに湾曲します。花は立てておきます。
花材:カラー(キャプテントリニティ)
③花が重ならないように角度を整えて、完成。斜め上から見ると、茎のラインが美しいモダンな飾り方。内側にも模様がある器を選んでいます。
その2 蓋つきのキッチン雑貨に飾ります
その1同様に、キャセロールの内側に沿って、押さえるように茎を曲げています。浅い器に生けた大きな花が印象的です。テーブルに食事と並べて飾れば、会話が弾みそう。おいしそうな野菜を周りに飾って、テーブルフラワーにしてもいいですね。
その3 シンプルに1輪は、ボタニカル風
毎日切り口を切り戻していくと、丈がだんだん短くなります。短くなったカラーは、こんなふうに、花一輪、葉一枚で飾っても素敵です。和のあしらいを思わせる一花一葉。黒い薬瓶に挿すと、植物標本のよう。ボタニカルなムードになりますね。黒い花色が印象的なカントールと、アンスリウムの葉を合わせています。
その4 花と茎を生かす白×グリーンのアレンジ
白い花色のブラックアイビューティを7、8本。白い小花をひらひらとちりばめるデンファレと、さっと花瓶に飾りました。スタイリッシュなカラーに、かわいいデンファレの組み合わせは、白と緑色に絞り込むと、爽やかな南国風。とくに春から夏にかけておすすめの彩りですね。
その5 ラインが美しい山野草と、大きくいけます
ガラス瓶に、カラーを5、6本と、山野草風のグリーン花材を2種類あしらいました。長い丈のまま大きくダイナミックにいけるときは、グルーピンクしてまとめて飾ると、むしろ野に咲くようなナチュラル感が生まれます。涼しい風が吹いてきそうなあしらいです。
Credit
嶋友紀
『ブロッサム(BLOSSOM)』オーナー。
1輪の花との出合いをきっかけに植物に魅了され、2000年、会社勤務から花の世界へ。人気花店、市場の仲卸で経験を積み、2011年、東京・用賀にショップをオープン。日々の暮らしを豊かにする花を提案し、ヨーロッパスタイル、トロピカル、和テイストの花などをオーダーメイドで応えている。さりげない1本、葉や枝ものをたっぷり、といった植物そのままの魅力を生かした作風に定評がある。
https://www.blossom-jp.com
https://www.instagram.com/blossom_shima/
構成と撮影と文・瀧下昌代
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