トップへ戻る

ラベンダーのおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

ラベンダーのおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

ハーブの女王、ラベンダー。初夏の訪れとともに花屋さんの店先にも種類さまざまに鉢ものや苗が並びます。そんな花を使って、アレンジしてみませんか? 繊細な花合わせが人気の花のアトリエ『サブリナ』を主宰する田辺ゆりさんに、おしゃれにいけるためのコツを教えてもらいました。爽やかな高原の花、ラベンダーとぐっとお近づきになれます。水にいけるときは、浅い水がポイントですよ!

Print Friendly, PDF & Email

ラベンダーの品種を知りたい

香りよく、紫の色が冴え渡るラベンダー。爽やかな高原を思わずにいられない、ハーブのなかでは特別な存在です。そこで、ラベンダーをアレンジしてみたいという人へ。まず、このことを最初に知っておきましょう。

ラベンダーは切り花での出回りは、ごくわずか。

旬の初夏の季節でも、花屋さんで見かけたことは、ほとんどないはずです。市場に出回るラベンダーの切り花は、とても希少。花もちもとても短く、飾っているうちに、花がぽろぽろと落ちていきます。切り花として長く楽しめるよう改良されているわけではなく、価格も高め。

めったに出会えない切り花のラベンダーを無理に探すより、もっと簡単な方法がありますよね。そう、鉢花から切って、活用すれば花期の間は、いつでも楽しめます!

母の日の贈り物としても人気のラベンダーの鉢花やポット苗は、早いものでは4月のうちに、花屋さんや園芸店に並び始めます。鉢ものや苗なら、お手頃価格で種類もさまざま。花穂の下から咲き上がりながら、花を楽しませてくれます。いいこと尽くめの鉢もの、ポット苗。ネットショップでも、種類豊富に出回っています。

さて、その種類について。ラベンダーの花を漠然とイメージしていたら、意外にも多くのタイプがあることに驚くはずです。↓の写真を見て。左から、アングスティフォリア系ラベンダー、ラバンディン系ラベンダー、ストエカス系ラベンダー。

鉢花や苗で出回るラベンダーは、おもに下記の4系統に分類されます。花が咲く時期と香りの強弱もあわせて、覚えておきましょう。

ストエカス系ラベンダー
開花は4月上旬から6月上旬。代表的なのは「フレンチラベンダー」です。ウサギの耳のように、ぴょんと立った“花びら”が特徴。この花びらに見えるものは、じつは花穂を守るために葉が変異したもので、苞葉(ほうよう)と呼ばれます。苞葉は4枚。香りは微香ですが、かわいらしいのでアレンジでも人気です。

アングスティフォリア系ラベンダー
開花は5月上旬から6月上旬。なんだか舌を噛みそうな名前ですが、この系統に含まれる品種でもっともよく知られるのは「イングリッシュラベンダー」です。別名コモンラベンダー(真正ラベンダー)と呼ばれる種類で、精油にも使われるほど、ラベンダーの中ではもっとも強く、芳しい香りをもっています。香りを楽しむならイングリッシュラベンダーで。

ラバンディン系ラベンダー
開花は6月下旬から8月上旬。大株に育ち、長く伸びた花茎に、たくさんの花が固まってつくのが特徴です。香りは濃厚。野趣あふれる香りです。代表的な品種は「ラベンダーグロッソ」です。茎がとにかく長いので、スケール感のあるアレンジやスワッグに向いています。

プテロストエカス系ラベンダー
上手に育てると、開花は周年。ほかの系統のラベンダーは1本の茎に花穂がひとつ。この系統は、茎が3つに分かれて花穂がつくという特徴が。切り花でいうところのスプレータイプですね。アレンジに使えば、動きが生まれます。代表的な品種では、葉がこまかく切れ込む「レースラベンダー」です。花色は、淡く、やさしい紫。花の先端に花冠(かかん)というとんがった部分があるのも特徴です。香りは微香。

もともと、ラベンダーは地中海や北アフリカなどの、花期には乾燥した気候で育つ植物です。冬越しできる耐寒性はあっても、梅雨のない北海道以外では梅雨時に蒸れてダメになってしまうケースが多いようです。イングリッシュラベンダーやレースラベンダーは特に高温多湿が大の苦手。蒸れを解消するためにも、剪定して、部屋に飾ってあげませんか?

ラベンダーを飾るときに、必要なアイテムってあるの?

では、気になる飾り方へと話を進めていきましょう。ラベンダーをいけて楽しむときに、なにか特別なものが必要なわけではありません。ほかの花と一緒。前述したように鉢ものか苗もののラベンダーを入手したら、以下のアイテムを用意します。

必要なアイテム
・花をいけられる器
・花切りバサミ
・ボウル

花を飾るための器は、コップやピッチャーなどの日常の器でもOKです。また、水を入れられるガラス瓶などを併用するとバスケットにもアレンジできます。

ハサミだけは必ず、「花切りバサミ」を用意してください。普通のハサミで花の茎を切ると、水の通り道である“導管”がつぶれてしまう可能性が大だからです。花の茎をつぶさずにカットできるよう工夫された、花切りバサミは100円ショップでも購入できるので、持っていなかったらぜひ、用意しましょう。花切りバサミは使うたびに、洗って、拭いておくと、切れ味をキープできます。また、家庭で楽しむなら、吸水性スポンジはいりません。直接、水にいけて楽しみましょう。

ラベンダーを美しく飾るために、準備したいこと

ラベンダーを飾る前に、必要な作業は「水あげ」です。さまざまな方法があるなかで、適している方法は、草花全般に使われる「水切り」です。鉢やポットから切って、すぐに飾れば、水が下がっていない状態ですが、より長くもたせるためにぜひ、行ってください。

水切りの方法
ラベンダーの茎を、たっぷりと水を張ったボウルに入れたまま、水中で茎をカットするだけです。水圧の力で、導管内に瞬時に水を吸い上げることができる、水あげのベーシックな方法。その際、切り口は大きく斜めにカットすることがコツです。茎の断面が広がるぶん、導管の入り口の数も増え、たっぷりの水を吸い上げることができます。切ったら、1時間ほど、そのまま水に休ませておきます。

なお、水切りの前に、アレンジに生かさない葉や茎の下のほうについている葉は取り除いておくこと。これで、水が下がらず、いけた水も汚れません。

鉢から切って使う場合ならではの悩みどころは、「どこで切るべきか」かもしれません。そう、茎の切り位置。

切ったあとも、また花を楽しみたいですよね? そのためには、新しく伸びた枝のところでカットすること。株元の茶色く木質化した古木(ラベンダーは木なのです)までは切らないでくださいね。ラベンダーに限ったことではありませんが、植物はその年、新しく伸びた茎と葉の間に芽を育みます。

下の写真のように、新しい茎についた「葉のすぐ上」でカットすることで、また花が咲きます。茎を長く取りたい場合も、木質化した枝より上の位置でカットしましょう。

撮影:田辺ゆり

ラベンダーが素敵になる飾る方のコツ

実際にいける前に、覚えておきたいことがあります。それは器の水位。

ラベンダーをいけるときは、5㎝程度の浅い水に!

切り花で入手したラベンダーでも、鉢から切った場合でも、同じです。深い水にいけると、茎からアクが出て、水を汚しやすくなります。汚れた水はバクテリアの温床。せっかくいけたラベンダーももたなくなります。浅い水でも、もちろんアクは出るので、汚れたら水替えを。

飾り方は、基本的には、ラベンダーの枝の長さに合わせて選びます。たとえば、短い枝なら、コップに小さくいけて、テーブルに。長く枝がとれた場合は、リビングや玄関に飾るスワッグに、というように、長さに応じて使い分けます。

でも、あの小さな花穂だし、鉢からはそんなに数多くの花は採れないなんて思っていませんか? ご安心を! この5つのルールを活用することで、ラベンダーの魅力を生かし切ることができます。

ほかのハーブとミックス

ラベンダーが咲く頃は、ハーブがまさにオンシーズン。癒されたいときは、さまざまなハーブと合わせてみましょう。そう、香りをミックスして、自分だけのエッセンシャルオイルを作るイメージで。花が咲くハーブではハーブゼラニウムやマロウ、カモミール、マウンテンミントなど。グリーンも兼ねて添えるなら、ミントやローズマリーが入手しやすくておススメです。これらのハーブも4~5月頃、園芸店に種類豊富に並びます。

ミント 撮影:落合里美

紫や青い花で印象的に

初夏に、ぴったりなアイデアはこれ。紫や青い花と組み合わせると…ラベンダーの小さな花穂の色も何倍にも広がるんです! ラベンダーが旬を迎える初夏から夏の花で、切り花として出回るのはデルフィニウムやブルースター、ルリタマアザミなど。蒸し暑さを忘れる爽快な色彩を楽しみませんか?

左から、ルリタマアザミ、スターチス2種 撮影:田辺ゆり

アクセントカラーとして生かす

実際のところ、ひと鉢からでは、そんなにたくさんの花は採取できません。でも、ラベンダーの花穂の色はとても鮮烈。数本をほかの花に添えるだけでも、ぱっと目を引く効果を発揮します。さらに、加え方で、ラベンダーの色の見え方はがらりと変わります。やさしくナチュラルになら、ちりばめて。ぱっと目を引かせたいときには、固めてあしらってみて。

そのままドライになる花材と

ラベンダーは、風通しのよい場所に吊るしておくだけで、色のきれいなドライフラワーになります。そこで提案! ドライにしやすい花やグリーンと合わせ、リースやスワッグにしてみましょう。最初は、いきいきとした生花の色。時の経過とともに、しだいに色が抜け、また違う美しさで楽しめます。ドライになりやすい花は、スターチスやセンニチコウ、カスミソウなど、水分の少ない花。グリーンではユーカリ、ローズマリーが代表格です。乾燥しにくい梅雨の時期を避けて作ってみましょう。作り方や楽しみ方は、こちらの記事をどうぞ。「ラベンダーの、上手なドライフラワーの作り方と簡単アレンジ」「ラベンダーのドライフラワーで、おしゃれなアレンジ・飾り方、アイデアまとめ10選

手軽に気軽にフラワーアレンジ。ラベンダーの飾り方アイデア

前述の飾り方の4つのコツを踏まえると、こんなフラワーアレンジが楽しめます。

その1 バラとハーブのフレグランスブーケ

花材:イングリッシュラベンダー、バラ(ライラッククラシック)、ラムズイヤー、バジル、ブラックベリーなど

バラを合わせるなら、青みを含む、やわらかな藤色の花を選んでみましょう。ラベンダーの色合いがさらに涼やかに引き立ちます。白っぽい産毛で覆われたラムズイヤーを加えることで、初夏にぴったりな爽やかな花束にしています。花束に組んでからいけると、水替えのときも形が崩れません。

その2 目に鮮やかなパープルの色を重ねて

花材:イングリッシュラベンダー、ルリタマアザミ、スターチス

こんなにも目に鮮やかです! 合わせたのは、ほのかな光をまとうような丸いルリタマアザミと、明るい紫の色を添えるスターチス。ラベンダーは固めてあしらうことで、その美しい色をアピールさせました。紫の濃淡でまとめた花束には、白黒ストライプのリボンを結び、洗練されたイメージで楽しみます。そして、この花束は、このままドライになる花の組み合わせ。葉をすべて取ってから束ねましょう。

その3 キッチンには明るく澄んだ黄色い花と

花材:フレンチラベンダー、インプレスパープルラベンダー、マリーゴールド、ハーブゼラニウム、ブラックベリーなど

ウサギの耳のようなフレンチラベンダーとインプレスパープルラベンダーの2種を使いました。レモンイエローの花は、ハーブでもあるマリーゴールド。反対色の組み合わせでも、淡いイエローの花となら、すっきり爽やかに楽しめます。実ものはブラックベリー。ラベンダーが花咲く頃、緑から少しずつ色づき始め、初夏の空気を盛り込めます。明るい雰囲気で、囲んだみんなが笑顔になれそうだから、飾る場所は、キッチンや食卓のそば。ガラスの器にいけてから、バスケットに入れます。

その4 ワイルドフラワーとスワッグ仕立て

花材:イングリッシュラベンダー、アーティチョーク、エリンジウム、ユーカリ3種など

ほら、ラベンダーがしっかりと目に留まります! 大きなスワッグには、固めてあしらうこと。合わせたのは、野趣溢れるワイルドフラワーとユーカリ。風通しのよい場所に吊るしておくと、このままきれいなドライフラワーになります。茎を束ねたラフィアはラベンダー色! おしゃれですね。ラベンダーの葉はすべて取ってから束ねます。

ラベンダーを飾るときの注意点は?

生花のラベンダーをできるだけ長く楽しむためには、飾る場所もポイントです。花の居場所としてベターなのは、以下の場所です。

・直射日光、照明が直接当たらないところ
・エアコンの風が直接当たらないところ
・電化製品がそばにないこと
・風通しのよい場所

直射日光やエアコンの風が当たると、花から水分が奪われ、しおれてしまいます。花にやさしい場所を選びたいものですね!

飾ったラベンダーを長く楽しむために

ラベンダーが旬を迎える初夏は、気温が上がり、水中にバクテリアが発生しやすい季節。花の寿命を縮めるバクテリアの繁殖を防ぐために行いたいのが、「水替え」と「切り戻し」。毎日のお世話が大切ですよ。

いちどいけた水は、見た目には変わらなくても、汚れていきます。毎日するのは難しいなら、2日にいちどは、器の中の水をきれいな水に替えましょう。その際、器の中も、食器用の中性洗剤で洗浄すると、バクテリアの発生がぐっと抑えられます。

そして、水替え時には茎もやさしく洗ってから、最初、行ったように水中で茎を切る「切り戻し」を。導管の入り口がリフレッシュして、また吸水しやすくなります。

苗ものや鉢花を使って、初夏、毎日の暮らしにラベンダーを!

Credit

記事協力

田辺ゆり
『サブリナ』主宰。
イギリス・ロンドン郊外のオークランズカレッジのフローリスト学科に在籍し、フラワーデザイン、写真、マーケティングなどを学び、ディプロマを取得。同時に、ロンドンの有名ホテルや花店で、ウエディングやパーティーの花装飾に携わる。帰国後、花がもつ美しさ、癒やし、エネルギーを多くの方々に伝えたいと2008年、アトリエを設立。現在は、花のデザインやスタイリングのほか、撮影も手掛けている。
https://www.instagram.com/sabrinaflowerphoto
https://www.sabrinaflower.com

撮影・落合里美、鈴木清子、田辺ゆり 構成と文・鈴木清子 撮影協力・サラグレース

Print Friendly, PDF & Email

人気の記事

連載・特集

GardenStoryを
フォローする

ビギナーさん向け!基本のHOW TO