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ユリのおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

ユリのおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

日本は美しい野生ユリの宝庫です。江戸時代末に日本からヨーロッパへ渡り人気を博し、やがて欧米でさまざまに品種改良されました。日本人と縁の深いユリ。今、こうして多種多彩になったユリたちを、おしゃれに飾ってみましょう。「ユリは1輪がとても大きく、存在感のある花。特徴をつかんで生けると、もっと素敵に飾れるし、気軽に手に取って楽しめるのでは」と、語ってくれたのは世田谷・二子玉川の花店『メゾンフルーリー』の佐々木久満さんです。

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ユリを美しく飾るために、準備したいこと

ユリは周年出回っていますが、本来の開花時期はいつでしょう? ユリは夏の花。5~8月にかけて花を咲かせます。だから、夏の暑い時季も、花もちがいいのです。反対に、寒い時季につぼみを購入して、なかなか開花しなかったという経験はありませんか? 花産地から出荷されるときはつぼみです。チューリップと違って、ユリは開いて初めて花色がわかります。そのため、花屋さんでは時間をかけて、つぼみのうちの1輪を咲かせてから販売するそうです。

私たちがユリを飾る前に知っておきたいこと、準備しておきたいことは次の5つです。

ユリ選びのポイント

寒い時季にユリをつぼみで購入してしまうと、なかなか開きません。ユリを飾って、おもてなしの予定がある場合は、購入は早めに。暖かく、明るい場所に置いておくと、つぼみは早く開花します。また、青々とした葉が下の方まできれいについているものは、質のいい新鮮なユリです。

花瓶の中の水量のこと

もうひとつ開花を左右するのが、水。水あげがいいと、ユリは開花が早まります。寒い時季は花瓶の水を多めにして開花を促します。水が少ないと、きれいに咲かないことも。暑い時季は茎が浸かる部分が多いと水が汚れやすいので、ある程度の量にしましょう。

花粉は取りのぞいて

ユリのおしべには大きな花粉がついています。花粉はユリの花びらや周りの花を汚すので、まず、いちばん先に取り除きます。花店で購入すると、おそらく取り除いてありますが、つぼみが咲いたら、必ず早めに取り除きましょう。

下葉を取っておきます

ユリは上から下まで葉がついています。下葉が水に浸かると、花瓶の中の水を汚すので、取り除きます。また、花の周りの葉を取り除くと、花が際立ちます。

切り分けて使います

1本にたくさんの花がつくユリ。花やつぼみのつき方をよく見て、切り分けて使います。

多種多様なユリについて、お話しましょう

原種から交配種(ハイブリッド)まで多種多様なユリ。青や紫系以外は、茶色や赤黒い花色まであり、花の大きさもさまざまです。今、特に注目が集まっているユリは、OTハイブリッドと、八重咲きのオリエンタルハイブリッドのふたつのタイプ。その特徴をお話しましょう。

OTハイブリッド

ユリ(テラソル)

ユリ(ニンフ)

OTハイブリッドは、日本の大輪のヤマユリなどの交配種に、トランペット形の中国のユリの交配種を交雑させた品種。それまで大輪のユリにはなかったクリアな黄色、オレンジ色が出回るようになりました。OTハイブリッドは開花が早いので、花屋さんが仕入れるとすぐに咲く花。より新鮮な状態で店頭に並び、つぼみも次々に咲きます。主に、1本に3輪ぐらいの花がついたものが出回ります。

八重咲きのオリエンタルハイブリッド

ユリ(シアラ)

ユリ(エディーサ)

ユリ(デジマ)

もっとも知名度が高いユリ、カサブランカと同じ仲間のオリエンタルハイブリッドに、八重咲き品種が誕生しています。1本にたくさんのつぼみがついて豪華。つぼみもよく咲きます。八重咲きは、10年前のほんの数品種からだいぶ品種が増えましたが、まだ、気軽に使える流通量ではありません。華やかで、香りも魅力的なうえに、八重咲きは花粉がなく、扱いやすいところもポイント。おすすめは小ぶりに作り込んだタイプです。

ユリを飾る時に、必要なアイテムってあるの?

花をいけるとき、多くの人は「素敵な花瓶がないけれど…」と思うようです。花束をいただいても、花瓶がなくて困った、という話をよく聞きます。実際は、“水が漏れない器”さえあれば、花瓶がなくても花はいけられます。たとえば、どの家のキッチンにもあるガラスのコップ。これと花を切るハサミさえあれば、花を飾れます。

ただし、ハサミだけは必ず、花切りバサミを用意してください。普通のハサミで花の茎を切ると、水の通り道である“導管”がつぶれやすいのです。花の茎をつぶさずにカットできるよう工夫された、花切りバサミが必要になります。花切りバサミを使っても、切れ味が悪かったり汚れていたりしたのでは、花のもちが悪くなるので注意しましょう。つい忘れがちですが、花切りバサミは使うたびに洗って汚れを落とし、しっかり水分を拭いておくといいですね。

おしゃれに飾りたいときに重宝するアイテムがあります

ユリを思うままに素敵にあしらいたいときは、花留めになる便利アイテム、吸水性スポンジを用意するといいでしょう。吸水性スポンジは挿した花を固定しながら、水を供給するためのスポンジです。思いどおりの位置に花材が留まるうえに、水に挿したのと同じように花が吸水できます。

少量のユリが、おしゃれに見える飾り方のコツ

ユリの多くは丈が長く、大きな花がたくさんついています。ダイナミックに丈を生かして飾るには、それにふさわしい大きな器が必要になり、また、かなり広い空間が必要になります。広い空間に飾れないならば、丈を短くして、コンパクトにあしらい、花びらの色や形の美しさが楽しめるおしゃれなアレンジにしてみませんか。八重咲きで華やかなオリエンタルハイブリッドの場合は、小ぶりに作り込んだ花のほうが、ほかの花と合わせやすく、きれいに飾れておしゃれな印象になります。

花材:ユリ(エディーサ)、バラ、カーネーション

細長く滑らかなユリ、ひらひらとしたフリルのカーネーション、丸い形のバラなど、きれいな花びらをコレクションしたようなアレンジです。ニュアンスのあるピンク系の花色もキュートですね。

花材:ユリ(イエローウィン、エリカ)、アンスリウム、オンシジウム、モカラなど

主役は、透明感のある黄色いイエローウィン。大きな花を短く使って、色と形の美しさを際立たせました。トロピカルムード満点のアンスリウム、オンシジウムなど、形が異なる花を合わせています。

ユリをきれいに飾るときの注意点は、花向き

ユリの花をよく見ると、横向きからややうつむくタイプと、上を向いて咲くタイプがあります。よく知られたカサブランカは、横向き。上を向いて咲くほかの花と取り合わせにくく、ユリ単体のアレンジになりがちです。しかも大きなあしらいが多くなります。その点、上を向いて咲くタイプは、ほかの花と合わせてもきれいにコンパクトに飾れるので重宝され、多く出回るようになりました。また、花茎が長いタイプは切り分けてアレンジに使えます。

ユリ(イエローウィン)

大輪が上を向いて咲くOTハイブリッド。クリアな黄色い花色が特徴。

ユリ(イザベラ)

オリエンタルハイブリッドの八重咲き。上を向いて咲き、たくさんのつぼみが下から順に咲きます。小ぶりに作った八重咲きがおすすめ。

上を向いて咲くタイプの大輪のユリ。

コンパクトに飾る場合は、花と、上のほうについたつぼみを切り分けて使います。

ユリを長もちさせるには、こんな方法を

球根の花はほとんどが水分なので、水はとても大切。水が濁るとダメージが大きいので、頻繁に水替えをしてください。水を替えるときには一緒に、茎の先を少し切る「切り戻し」をして、切り口を新しくして、吸水しやすくします。

花を飾ったあとの日々のお手入れ「切り戻し」

ユリを長く楽しむために、飾ったあともできることがあります。前述したように、水替えをして、器にいけ直す前には、水が花までよく上がるよう、茎の「切り戻し」をします。切り戻しとは、茎や枝の切り口を新しく切り直すこと。このとき、「水切り」をするとさらに効果的です。水切りは、名前のとおり、水の中で茎をカットします。水中で茎を切ると、水の通り道である導管内に空気が入らないため、水がスムーズに、花や葉まで上がるのです。さらに、切り口の乾燥を防ぐこともできます。

水切りは簡単です。大きめのボウルなどの器に水をたっぷり入れ、その中に茎を入れて、ハサミで茎先をカットするだけ。水を替えるたびに茎の先を1~2cm切ると、新しい導管の断面が常に水に接し、水があがりやすくなり、長もちすることにつながります。

手軽に気軽にフラワーアレンジ。ユリの飾り方アイデア

花色、大きさ、咲き方、香りもさまざまなユリ。購入するときは、よく性質を確かめ、使い方を考えてから、花選びをするといいですね。横を向いて咲くのか、上を向いて咲くのか、咲きは早いのか遅いのか、香りの強さも花材選びのポイントでしょう。それぞれのタイプや性質を生かした飾り方で楽しみたいですね。

その1 クリアな黄色が、軽快なアレンジ

花材:ユリ(テラソル)、バラ、カーネーション

ユリ、バラ、カーネーションと、大輪の主役花を華やかにいけました。豪華な花材ばかりなのに重苦しくならないのは、クリアな黄色いユリのおかげ。ユリは大きく開くので、花と花の間隔をあけてあしらっています。

その2 白とグリーンで、爽やかに夏を迎えて

花材:ユリ(アルレッタ、デジマ)、アナベル、チゴユリ、スモークグラス、ギボウシなど

清楚なイメージの白いユリとグリーンの、爽やかな2色アレンジ。ユリの花びらの質感に似た肉厚の大きな葉に、グラスの細い葉など、形や質感の異なるグリーンが、2色のアレンジに奥行きを描きます。

その3 八重咲きユリとランで、アジアンに

花材:ユリ(イザベラ)、クレマチス、モカラ

1輪だけで十分に存在感を発揮しているのが、八重咲きのユリ。華やかな複色はトロピカルなランとの相性もよく、漆器にあしらってアジアンテイストに。開くと大きな花なので、つぼみはもう1輪だけ添えています。

Credit

記事協力

佐々木久満
『メゾンフルーリ』統括マネージャー。
生産者とのつながりを大切にし、これまでに訪問した花の生産地は150以上。数多い日本国内の花店のなかでも特に、産地や新品種に精通するフローリストとして活躍している。東京・二子玉川にある本店『メゾンフルーリ』とともに、長野県松本市でも花店を営む。いずれも珍しい品種の花が揃うのはもちろん、季節感を重視し、地域いちばんを目指しているというサービスのよさでも知られる。
https://www.facebook.com/MaisonFleurieTamagawa

構成と撮影と文・瀧下昌代 花材協力・湯浅花園  

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