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シャクヤクのおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

シャクヤクのおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

「立てば芍薬(シャクヤク)、座れば牡丹(ボタン)、歩く姿は百合(ユリ)の花」と、古来よりシャクヤクは立ち姿が美しい美人の例え。すらりと細い茎の先に咲く、華やかな大輪の花です。この華やかさは日本はもちろん、欧米でも大人気。春から初夏に欠かせない花となっています。「季節の花のなかでも、初夏はとりわけシャクヤクに関心を寄せるかたが多いですね」と語る、東京・用賀の花店『ブロッサム(blossom)』の嶋 友紀さんにシャクヤクのアレンジについて伺いました。

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シャクヤクを美しく飾るために、準備したいこと

シャクヤクの花びらは、シルクのように艶があって、薄く繊細。輸送中にその花びらが傷まないように、すべてつぼみの状態、長い茎にはたくさんの葉がついた状態で、産地から出荷されます。花屋さんの店先に並んだシャクヤクは、水あげなどの処理がすべてすみ、準備万端の場合もありますが、産地から届いたままの場合もあるでしょう。いける前に、シャクヤクならではの準備があるので、まずは、そこをチェックしておきましょう。

色づいて少しゆるんだつぼみを購入します

花材を選ぶときに、つぼみの膨らみ具合に注意。左は確実に開くつぼみ。右はかなり堅いため開かないかもしれません。堅いつぼみは避けて、色づいて開きかけてきたもの、つぼみ全体にみずみずしさを感じるものを選びましょう。いくら全体がいきいきと新鮮に見えても、シャクヤクは開かないことがあるので、つぼみの状態を確かめて購入したいですね。

全体の半分ぐらいの下葉を取り除きます

意外と葉はたくさんついています。葉は水分を水蒸気として排出するので、葉が多いと吸い上げた水が先端の花まで届かないことも。つまり花が開きにくくなります。思い切って、葉を全部取り除いて、別のグリーンを合わせてもいいでしょう。

葉は簡単に手で取り除けます。

下の写真では、茎の上のほうの3枚に分かれた葉があります。まん中の長い1枚が垂れているので、これを取り除きます。2枚にすると、ちょうどよい葉の存在感になります。

つぼみの表面についた蜜を洗い流します

つぼみの表面についた蜜は、花びらがきれいに開くことをじゃまするので、水で丁寧に洗い流します。

以上の下処理が終わったシャクヤクは、水切り(水の中に茎を入れてカットすること)してから、花瓶にいけます。

いけるときは、水の中で茎をカットする「水切り」をします。

和シャクヤクと洋シャクヤクが出回っています

ピンク系を中心にコーラルカラー、赤、黄色、白などの品種が切り花で出回っています。花形はひと重咲き、おしべが花弁化して、内側と外側の花弁が違う形の翁咲き、おしべが完全に花弁と同じ色や形になったバラ咲きなどがあります。日本では、日本生まれの和シャクヤクと、ヨーロッパ生まれの洋シャクヤク、両方の品種が出回り、漢字とカタカナの品種名が混在しています。

和シャクヤク・ひと重咲き(コーラルキング)

和シャクヤク・翁咲き(富士)

洋シャクヤク・バラ咲き(サラベルナール)

シャクヤクを飾る時に、必要なアイテムってあるの?

花をいけるとき、多くの人は「花瓶がないとダメ!」と思うようです。花束をいただいたのはいいけれど、花瓶がなくて困った、という話もよく聞きます。実際は、“水が漏れない器”さえあれば、花瓶がなくても花はいけられるのです。たとえば、どの家のキッチンにもあるガラスのコップでもOK。

シャクヤクは花びらが薄く、ふわっと空気を含んでいます。量感があって花が重いので、口が細い器にいけると、茎の位置が安定します。口が広い器の場合は、シャクヤクを器の縁に乗せてあしらいましょう。

花と水を入れることができる器と、花を切るハサミさえあれば、花を飾ることができます。

ハサミだけは必ず、花切りバサミを用意してください。普通のハサミで花の茎を切ると、水の通り道である“導管”がつぶれてしまう可能性が大だからです。こうした理由から、花の茎をつぶさずにカットできるよう工夫された、花切りバサミが必要になります。花切りバサミを使っても、切れ味が悪かったり汚れていたりしたのでは、花のもちが悪くなるので注意しましょう。花切りバサミは使うたびに洗って汚れを落とし、しっかり水分を拭いておきます。

1本のシャクヤクが、おしゃれに見える飾り方のコツ

シャクヤクは花びらが多いので、湿気が多いと蒸れて茶色く変色することも。直射日光に当たらない、なるべく涼しく、風通しのいい場所を選んで飾ります。

さっと花瓶にいける、ただそれだけで素敵なシャクヤク。さらに美しくあしらうには、まず、きれいに開いた1輪を花器に挿してみてください。シャクヤクを見ていると、あの花を合わせたい、あのグリーンが似合いそう… って、そんな気持ちになりますよ。

花材:シャクヤク(サラベルナール)

よく開いた1輪をガラス器へ。それだけで十分に美しいシャクヤク。つぼみから満開まで、大きく変化する姿、美しさを堪能できます。

花材:シャクヤク(サラベルナール、バンカヒル、滝の粧)

たくさんのシャクヤクを、無造作にガラス瓶へ。シャクヤクはその時季にしか咲かない季節の花です。花屋さんの前を通ると、そろそろシャクヤクが咲く時期かしら…と、気になる花のひとつ。開花時期や花の量が年によって変動しやすい花でもあります。春はやや高価ですが、夏が近づくにしたがって出回る量が増え、最盛期になると種類も豊富になります。手に取りやすくなったら、いろいろな種類をたっぷり楽しんでみてください。

シャクヤクを飾る時の注意点は、花びらの蒸れです

花びらが多いので、湿気には注意を。蒸れると花びらが茶色く変色します。なるべく涼しい場所、直射日光の当たらない場所へ。風にも当たると水が落ちるので、当てないように注意しましょう。

大輪は色の面が大きいので、花色をしっかり見極めることが大事です。ピンク系は特に色幅が広いので、青みを含むピンクなのか、黄色みのあるピンクなのかを確かめて、合わせる花材の色を選びましょう。

シャクヤクを長もちさせるには、こんな方法を

シャクヤクを長もちさせるためには、毎日の「水替え」と、切り口を新しくする「切り戻し」が大切です。茎がすぐにぬるぬるするので、少なめの水にいけます。水は器の1/3の量があれば十分です。

花を飾ったあとの日々のお手入れ「切り戻し」

シャクヤクを長く楽しむために、飾ったあともできることがあります。前述したように、水替えをして、器にいけ直す前には、水が花までよく上がるよう、茎の「切り戻し」をします。切り戻しとは、茎や枝の切り口を新しく切り直すこと。このとき、「水切り」をするとさらに効果的です。水切りは、名前のとおり、水の中で茎をカットします。水中で茎を切ると、水の通り道である導管内に空気が入らないため、水がスムーズに、花や葉まで上がるのです。さらに、切り口の乾燥を防ぐこともできます。

水切りは簡単です。大きめのボウルなどの器に水をたっぷり入れ、その中に茎を入れて、ハサミで茎先をカットするだけ。水を替えるたびに茎の先を1~2cm切ると、新しい導管の断面が常に水に接し、水があがりやすくなり、長もちすることにつながります。

日々忙しくて、毎日の切り戻しが難しいときは、切り花の鮮度保持剤も有効です。

手軽に気軽にフラワーアレンジ。シャクヤクの飾り方アイデア

シャクヤクはほかの花に比べて格段に大きく、圧倒的な華やかさ。それだけでおしゃれな雰囲気なので、むしろ合わせる花材やデザインに迷ってしまうかもしれません。そんなとき、まずはシャクヤク1輪をあしらってみましょう。しっとりと咲く1輪、艶やかな1輪を飾ると、部屋の中はがらりとおしゃれなムードに変わります。

ステップアップして、シャクヤクになにかを少し合わせる場合は、まずは、グリーンを。初夏の爽やかな枝ものとの相性もぴったりです。花を合わせるときは、丸いシャクヤクと形が異なる花、穂状の花や小さな花とアレンジしてみましょう。

簡単ですぐにできるアレンジを、いくつか紹介します。

その1 シャクヤクだけを1輪飾ります

花材:シャクヤク(サラベルナール)

大きな花を小ぶりの花器にあしらうときは、思い切って丈を詰めて安定させましょう。コンパクトにまとめると、むしろ華やかさを強調できます。黒い器なら、花色はより艶やかに。

花材:シャクヤク(夕映え)

遊び心のあるあしらい。額縁のなかに収めたのは、濃色のピンクが艶やかなシャクヤク1輪。額縁から飛び出すようにあしらった3D風も、大輪だから迫力満点です。

その2 シャクヤクの花に、葉を添えて

花材:シャクヤク(サラベルナール)

下処理のときに取り除いたシャクヤクの葉を添えて、ナチュラル感をプラス。

その3 旬のみずみずしい枝ものと一緒に

花材:シャクヤク(サラベルナール)、リョウブ

初夏らしい若い緑に爽やかな小花をつけたリョウブを合わせると…。まるで涼しげな木陰の風景。シャクヤクは落葉樹の足元が似合います。

その4 小花を合わせて、花の大小を強調

花材:シャクヤク(サラベルナール)、アストランチア

大輪と野の花のようなアストランチア。花の大きさで変化をつけて、シャクヤクの大きさを強調します。アストランチアがほんのり浮かべるピンクと、シャクヤクの花色を合わせました。

花材:シャクヤク(サラベルナール)、スターチス

花の大きさと、花びらの質感が対照的なふたつをアレンジ。薄いシルクのようなシャクヤクと、カサカサとした質感の小さなスターチスです。

その5 立体的なシャクヤクと平面的な花で

花材:シャクヤク(サラベルナール)、クレマチス

花びらをたっぷり重ねる球形のシャクヤクと、平面的なクレマチス。こちらも対照的な花形のふたつをあしらいました。

その6 同系色の小花と葉で、最強のコンビ

花材:シャクヤク(サラベルナール)、アストランチア、リョウブ

花材を3種類に増やしても、花色は2色。ピンクとグリーンに絞っています。

その7 葉の長いグリーンで動きをプラス

花材:シャクヤク(サラベルナール)、シモツケ、スモークグラス、リキュウソウ

シャクヤクは丈を短くすると、花のボリュームは強調されますが、動きありません。そこでグラスや蔓ものを合わせると、風が通るような動きが生まれました。

その8 いけたのは花2輪。それだけできれい

花材:シャクヤク(サラベルナール)

シャクヤクは大きく開くので、2輪は同じ高さに並べないことが肝心。花1輪分以上の変化をつけてあげるといいでしょう。つぼみが開いてきたら、いけ直して高さや位置を調整します。

その9 同系色のシャクヤクだけをたっぷり

花材:シャクヤク(サラベルナール)

暑くなるころにはシャクヤクの流通量が増え、数本ずつ束にして販売していることもあります。そんなときは、シャクヤクだけをたっぷりあしらってみては。こんなふうに花首をまとめると、つぼみのかわいい丸い形が強調できますね。大きく開いてきたら、複数の花瓶にいけ分けてもいいでしょう。

その10 散る間際の美しさを水と一緒に愛でて

花材:シャクヤク(火祭り)

満開になったら、花びらが散る前に短く切って水に浮かべると、シャクヤクはまだまだ楽しめます。大輪なので大きな器に浮かべましょう。器の底に貝殻などをあしらって、海のイメージに。夏のムード満点のアレンジです。

花材:シャクヤク(火祭り)、アジサイ、カモミールなど

シャクヤクのフューシャピンクに、小花の水色や黄色などを浮かべたカラフルなアレンジ。もともと中国生まれのシャクヤクです。ときにはシノア風を楽しんでみては。

その11 やさしい花色をアンティークカラーと

花材:シャクヤク(滝の粧)、バラ(カフェラテ)、ワックスカラー、ユーカリ

発色のいい花色が多いシャクヤクですが、滝の粧はニュアンスのある淡いピンク。初夏の爽やかさとは異なり、ややアンニュイなイメージなので、アンティークカラーの茶系バラが好相性です。シルバーカラーのユーカリを合わせ、小花を添えて古い器にアレンジしています。

花材:シャクヤク(滝の粧)、秋色アジサイ

淡いピンクのシャクヤクと、くすみ感のあるアジサイでシックなムードに。合わせる花材は、丸いシャクヤクとは異なる形の花を。丸く見えても小花が集まるアジサイのような花を選ぶといいですね。高さで変化もつけています。

Credit

記事協力

嶋友紀

嶋友紀
『ブロッサム(BLOSSOM)』オーナー。
1輪の花との出合いをきっかけに植物に魅了され、2000年、会社勤務から花の世界へ。人気花店、市場の仲卸で経験を積み、2011年、東京・用賀にショップをオープン。日々の暮らしを豊かにする花を提案し、ヨーロッパスタイル、トロピカル、和テイストの花などをオーダーメイドで応えている。さりげない1本、葉や枝ものをたっぷり、といった植物そのままの魅力を生かした作風に定評がある。
https://www.blossom-jp.com
https://www.instagram.com/blossom_shima/

構成と撮影と文・瀧下昌代

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