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バラのおしゃれな生け方・飾り方。 フラワーアレンジで長もちさせるコツ

バラのおしゃれな生け方・飾り方。 フラワーアレンジで長もちさせるコツ

バラは、花のなかでも圧倒的な人気があります。色も形もじつに多彩で、花屋さんには切り花のバラが、1年を通して並んでいます。1本でも十分存在感がある花なので、楽しみ方はさまざま。気軽に飾ってみませんか? バラの飾り方について、東京・用賀の花店『ブロッサム(BLOSSOM)』の嶋 友紀さんに、アドバイスをいただきました。

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バラを美しく飾るために、準備したいこと

購入してきたバラを、少しでも長く楽しみたい! そのためには知っておきたいことがあります。バラは比較的水あげがよく、日もちしますが、ひと手間かけると、さらに長もちしてくれるんですよ。

余計な葉は取りましょう

花の水分は葉から蒸散します。従って、葉がついている分、その花はエネルギーを消耗していることになります。長く楽しむためには、水に浸かる葉、デザインに不要な葉は取り除きましょう。花器の水に葉が浸かっていると、水の汚れの原因にもなります。葉は、写真のように、手で持って下に引くと、ハサミを使わなくても簡単に取れます。

ついているトゲはカット

バラのトゲは周囲の花や葉を傷めるので、ついているときは取り除きましょう。最近はトゲがない品種が多く、また花店に並ぶバラはほとんどが処理してあります。

元気がない花は「湯あげ」を

水落ちしてバラに元気がなかったら、「湯あげ」をしてみてください。バラは茎の先だけ出して、全体を新聞紙で巻いて保護しておきます。60℃以上の湯にサッと浸し、茎の道管をふさぐ空気を追い出します。

湯あげのあとは、そのままたっぷり水を貼った花瓶やバケツなどに、バラを浸けて約1時間置きます。

形、色、特徴など、バラの種類はじつに多彩

青い花色以外はすべての色が揃うバラ。大きさも花形もじつに多様です。また、1輪ずつ花がつくスタンダードタイプ、1本にいくつかの花がつくスプレータイプがあります。そのほか、香りがいいバラ、特に日もちがいいバラなど、バラを選ぶときの切り口はさまざま。ここでは、花屋さんでどんなバラに出合えるのか、主な種類を紹介します。自分好みのバラを選ぶ参考にしてください。

花の形は大別すると、6つの種類があります

剣弁高芯咲き

花びらが巻いて中心が高い上品な花形。花びらの先が反り返り、剣咲きのように尖るため、シャープな印象を与えます。以前はこの形が主流でした。写真は、スウィートアヴァランチェ+。

カップ咲き

花びらが内側を向いてカップ形に開きます。中心まで花びらが開き切るオープンカップ咲き、中心の花びらが小さいシャローカップ咲きがあります。写真はトワパルファム。

ロゼット咲き

大小の花びらが複雑に重なり合う、人気の花形です。花の中心が4つに分かれて見えるタイプは、クオーターロゼット咲きと呼ばれます。写真は、環~美空~。

平咲き

高芯咲きのように中心が高くならず、全体が平らな花形。ひと重咲きや半八重咲きを表す場合と、八重咲きを含める場合があります。写真は半八重咲きで、花びらにフリルがあるプリエール。

ポンポン咲き

小さな花びらがきれいに並んで、球形や半球形に咲きます。丸みのある花形がかわいらしく、繊細な印象。小輪のガーデンローズに多く見られます。写真はグリーンアイス。

変わり咲き

品種改良によって、これまでの花形では表現できないような品種が増えてきました。写真のラロックは、花の中心に緑色のしべが見えて、バラらしからぬ個性的な花形です。

スタンダードとスプレー。花のつきかたは2タイプ

スタンダードタイプ

1本の茎に1輪ずつ花がつきます。中大輪がほとんど。写真はヤギパープル。

スプレータイプ

1本の茎に複数の花がつきます。1輪の大きさは小輪から大輪まで。写真はペールアンジュール。

見つけたら即買い!? 特に花もちがいいバラたち

オリエンタルエクレール。スプレータイプの小輪のバラで、濃い緑色が野性味を感じさせます。

ブラッドオレンジ+。しっかりした花びらは厚みがあって、長もちします。花全体が大きく、波打つ花びらも魅力です。

マイエルノワール。剣弁高芯咲きの花形。花びらに濃いピンク色の縁取りがあります。ニュアンスカラーの個性的なバラです。

アルヌワブラン。非常に多くの花びらを重ねます。あまり開かないタイプですが、非常に花もちがよいバラです。

バラを飾るときに、必要なアイテムってあるの?

花をいけるとき、多くの人は「花瓶がないとダメ!」と思うようです。花束をいただいたのはいいけれど、花瓶がなくて困った、という話もよく聞きます。実際は、“水が漏れない器”さえあれば、花瓶がなくても花はいけられるのです。たとえば、どの家のキッチンにもあるガラスのコップ。これと花を切るハサミさえあれば、花を飾ることができます。

ハサミだけは必ず、花切りバサミを用意してください。普通のハサミで花の茎を切ると、水の通り道である“導管”がつぶれてしまう可能性が大だからです。こうした理由から、花の茎をつぶさずにカットできるよう工夫された、花切りバサミが必要になります。花切りバサミを使っても、切れ味が悪かったり汚れていたりしたのでは、花のもちが悪くなるので注意しましょう。花切りバサミは使うたびに洗って汚れを落とし、しっかり水分を拭いておきます。

おしゃれに飾りたいときに重宝するアイテムがあります

バラを思うままに素敵にあしらいたいときは、花留めになる便利アイテムを用意するとよいでしょう。アイデア次第で、いろいろなものが花留めになります。ここでは代表的なものを紹介します。

吸水性スポンジ

吸水性スポンジは、全体が浸かる量の水に浸けて、水を十分に浸透させてから使います。水が十分に浸透していないと、花が水分を吸収できません。

使うときは、器のサイズや形に合わせて、ナイフでカットします。

クラフトワイヤー

曲げたり、巻きつけたりしやすいクラフトワイヤーを利用します。

ワイヤーを適当な長さにカットし、茎が絡みやすいように丸めて、器の中に入れます。

花材:バラ(テナチュール)

この花留めは、口が大きな器、大輪で頭が重たいバラなどを飾るときに便利です。クラフトワイヤーはホームセンターなどで購入できます。

花材:バラ(フェアー・ビアンカ)

こちらは口が大きくて浅い器に、丸めたクラフトワイヤーを入れました。花が重たいバラが、写真のように美しく飾れます。

枝ものやグリーン

花材:バラ(ミスティックサラ)、ヘデラベリー

器の中に枝ものやグリーンを入れ、足場を作ります。これが花留めに。バラをいけるのはそのあとです。ここでは実つきの枝ものを使用しました。

ビー玉

花材:バラ(ラベンダーレース)

ビー玉も花留めになります。特に、ガラスの器では、デザイン的に美しく、見た目も楽しく! 使うときは器の中のビー玉とビー玉の間に、茎を挟んで花留めにします。

おとし

水を入れられない器には、「おとし」を入れれば、花を飾ることができます。おとしは、グラスや空き瓶でOK。

大きな口の器に、おとしを使えば、まとまりよくいけることができます。写真はガーデン用の鉢カバー、おとしを入れています。

花材:バラ(ミスティックサラ)

口が広いキャニスターでも、おとしを使えば、バラ3輪をバランスよくいけられます。

■ワンランクアップ!

中が見えるバスケットでは、蔓のグリーンなどをおとしに絡めると、おとしが目立ちません。

花材:バラ(ミスティックサラ)、アイビー

写真は、ワイヤー製の小さなバスケットに、グラスをおとしとして入れました。さらに、アイビーを絡めて花留めにしています。

少量のバラが、おしゃれに見える飾り方のコツ

1輪をさっと器に挿すだけで、おしゃれな雰囲気を運んでくれるバラ。ほんの少しの工夫やアイデアで、ぐっと素敵なあしらいになります。

スプレーバラを1本、切り分けて飾るだけで素敵に

1本に数輪が咲く、スプレータイプのバラ。価格が手ごろなうえに、切り分けて使えるから、ボリュームが出せます。グリーンを合わせたり、草花を合わせたりして、センスアップしてみて。

スプレータイプとひと口に言っても、花のつき方は品種によって異なります。花茎が短く、まとまって咲くタイプ、異なった高さで咲くタイプなど。切り分けるときは、いけやすいように、用意した器と花の長さを考えながらカットしましょう。

その1 スプレーバラはいけ分けて、あちこちに

花材:バラ(ラベンダーレース)、ローズマリー

短く切ったバラは、キッチン用品や食器など身近なものを器にしてみましょう。ここでは、料理に重宝するハーブと一緒に。調味料を入れたキャセロールと並べて飾りました。キッチンコーナーがぐっと華やぐアイデアです。

花材:バラ(ラベンダーレース)、ハゴロモジャスミン

こちらは、ティーカップやガラスのピッチャーに、収まりよく、バラ1輪を飾りました。ハゴロモジャスミンの繊細な茎のライン、細いつぼみを合わせると、軽やかさが演出できます。

その2 数輪まとめれば、華やかさが出ます

花材:バラ(ラベンダーレース)、ユーカリ

切り分けて茎が短くなった3輪を、小ぶりな花器に飾ります。短い茎では表情を描きにくいので、葉先が細いユーカリの葉を使うと動きが出て、いきいきとしたアレンジになりました。

花材:バラ(ラベンダーレース)、ハゴロモジャスミン、ユーカリ

こちらは、3輪まとめたバラとユーカリに、蔓ものを加えることで、複雑な動きを演出しました。

2種類のバラを合わせれば、ぐっと印象的に

花材:バラ(オリエンタルエクレール)、ヘデラベリー

花材:バラ(オリエンタルエクレール、テナチュール)、ヘデラベリー

比べてみてください。上の写真は、濃い緑色が野性的なバラ、オリエンタルエクレールと、大粒のヘデラベリーを合わせたアレンジ。これに、茶系のシックなバラ、テナチュールを加えたのが下の写真です。テイストはそのままに、赤みを添えました。咲き方、色などが共通のバラを2種類組み合わせると、アレンジに深みが出ます。

同じ花でも飾る場所で、イメージは自在に

バラをあしらった花器を置く場所によっても、アレンジのイメージは変わります。場所を選んで、おしゃれに飾りましょう。

花材:バラ(ジャルダン・アラ・クレム)

無彩色の壁を背景にして飾ると、バラの淡いピンクの色が浮かびあがってきれいに。スタイリッシュな印象です。

花材:バラ(ジャルダン・アラ・クレム)

同じアレンジを、今度は温かみのある木製アンティークのチェストに飾りました。心落ち着く印象に変わりましたね。

まだあります! すぐにできる飾り方アイデア

その1 高いところから吊るして

花材:バラ(ミスティックサラ)

切り分けた短いバラを小さな器に入れて、高い場所から吊るしました。小瓶はワイヤーを使って下げています。

その2 小分けにしてまとめます

花材:バラ(ミスティックサラ、ブラッドオレンジ+)

小さな器に低くいけたバラをいくつか。大きなトレーの上にひとつにまとめると、存在感が生まれます。

その3 水に浮かべて花首アレンジ

花材:バラ(オリエンタルエクレール)

水に浮かべて、涼を運ぶアレンジはいかが。大きなガラスのボウルに浮かべて飾りましょう。

バラをきれいに飾るときの注意点は、いけ方です

バラは大きさ、色や形も多種多彩です。花が大きく開くタイプは、花をぎゅっとまとめず、周りの空間に余裕を持たせたいけ方をするといいでしょう。花が開いたときを考えずに、コンパクトにまとめてしまうと、せっかくの花がきれいに見えません。また、バラは上を向いて咲くので、茎に角度をつけてあしらうと、表情豊かに見せることができます。

花材:バラ(テナチュール)

花をいけるときの水の量は、草花よりも多めに入れます。また、花を飾る場所にも注意が必要。花が乾燥してしまうので、エアコンの風に当てないこと。熱を発散するパソコンの近くも避けてください。バラは、閉め切った部屋も嫌います。直射日光の当たらない、涼しくて風通しのいい場所に飾るのがベターです。

バラを長もちさせるには、こんな方法を

花を長もちさせる基本は、毎日の水替えと切り戻しです。器の水は毎日替えて、茎先のぬめりを流水で洗い落とします。ついでに菌が繁殖しないよう、器の中も洗剤をつけたスポンジで洗います。

花を飾ったあとの日々のお手入れ「切り戻し」

バラを長く楽しむために、飾ったあともできることがあります。前述したように、水替えをして、器にいけ直す前には、水が花までよく上がるよう、茎の「切り戻し」をします。切り戻しとは、茎や枝の切り口を新しく切り直すこと。このとき、「水切り」をするとさらに効果的です。水切りは、名前のとおり、水の中で茎をカットします。水中で茎を切ると、水の通り道である導管内に空気が入らないため、水がスムーズに、花や葉まで上がるのです。さらに、切り口の乾燥を防ぐこともできます。

水切りは簡単です。大きめのボウルなどの器に水をたっぷり入れ、その中に茎を入れて、ハサミで茎先をカットするだけ。水を替えるたびに茎の先を1~2cm切ると、新しい導管の断面が常に水に接し、水があがりやすくなり、長もちすることにつながります。

日々忙しくて、毎日の切り戻しが難しいときは、切り花の鮮度保持剤も有効です。

手軽に気軽にフラワーアレンジ。バラの飾り方アイデア

その1 グリーンの花材で主役を引き立てて

花材:バラ(マロンフォレスト)、アオモジ、ビバーナム、クリスマスローズなど 撮影・落合里美

主役のバラはマロンフォレスト。開き始めたピンクの色はもちろん、小さなつぼみのアオモジ、ビバーナムのライトグリーンも、爽やかな彩りです。春先の暖かさを連想させる、おしゃれなアレンジに。

その2 躍動感を演出したいときは高低差を

花材:バラ(ナギサウェーブ)、スカビオサ、ブルニア、ビバーナム・ティナス、ゼラニウム 撮影・落合里美

濃いピンクのバラはスプレーバラのナギサウェーブ。光沢のある濃紺の実ものなどを合わせ、フェンスに咲き誇るガーデンローズのようにあしらいました。インパクトの花色をナチュラルにあしらったおしゃれなアレンジが、秋の空気を運びます。

その3 グルーピングして、花色を強調します

花材:バラ(オリエンタルエクレール、グリーンハート)、宿根スイートピー、スターチス 撮影・落合里美

初夏にはこんなワイルドなバラを飾ってみたくなります。バラには珍しい濃い緑色がすがすがしく、紫色の小花も涼感を誘います。甘さを抑えたおしゃれなアレンジです。

Credit

記事協力

嶋友紀

嶋友紀
『ブロッサム(BLOSSOM)』オーナー。
1輪の花との出合いをきっかけに植物に魅了され、2000年、会社勤務から花の世界へ。人気花店、市場の仲卸で経験を積み、2011年、東京・用賀にショップをオープン。日々の暮らしを豊かにする花を提案し、ヨーロッパスタイル、トロピカル、和テイストの花などをオーダーメイドで応えている。さりげない1本、葉や枝ものをたっぷり、といった植物そのままの魅力を生かした作風に定評がある。
https://www.blossom-jp.com
https://www.instagram.com/blossom_shima/

撮影・落合里美、瀧下昌代 構成と文・瀧下昌代

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