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アジサイ(紫陽花)のおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

アジサイ(紫陽花)のおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

アジサイ(紫陽花)は、梅雨のシーズンを彩る風物詩。庭や沿道を青やピンクの花で染め上げる様子に、誰しも心が弾むものです。しかし現在では、アジサイ(紫陽花)は梅雨時だけの花ではありません。花屋さんには切り花のアジサイ(紫陽花)が、ほぼ1年を通して並んでいます。これは、6月前後に旬を迎える国産ものに、海外からやってくる輸入の切り花が加わったから。結果、いろいろなアジサイ(紫陽花)が入れ替わり立ち代わり、花屋さんの店頭を賑わせています。1本でもボリュームがある花なので、楽しみ方はさまざま。気軽に飾ってみませんか?切り花のアジサイ(紫陽花)の飾り方について、アジサイ(紫陽花)が大好きな、東京・用賀の花店『フルール ド ショコラ』の古賀朝子さんに、アドバイスを伺いました。*アジサイ(紫陽花)の花びらは、ガクが変化したもの。正式には装飾花といいます。しかし、本記事では「花びら」とわかりやすく表記します。

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まずは、鮮度のよいアジサイ(紫陽花)を見極めましょう

飾り方がどんなにおしゃれでも、花があっという間にしおれてしまったら、悲しいですよね。そうならないために、まずは、アジサイ(紫陽花)についての基礎知識を。花屋さんでアジサイ(紫陽花)を購入するときは、どこを見て選んだらよいのでしょう。

購入前に、アジサイ(紫陽花)は花びらと葉をチェック

アジサイ(紫陽花)の鮮度の良し悪しは、花びらと葉に表れます。ひとつひとつの花びらに張りがあり、発色もよい状態が元気な証。花が新鮮なアジサイ(紫陽花)は、葉が青々として、上を向いていることも特徴です。

写真のように、花びらや葉の縁が茶色く変色していたら、赤信号! 確実に鮮度が落ちています。また、アジサイ(紫陽花)は、数多くの花びらが密集しているため、蒸れやすく、ときにはカビが発生していることもあります。できることなら、お店の人に失礼にならないよう、ひと声かけて、花の裏側を見てから購入できるとベター。

みずみずしいアジサイ(紫陽花)を、飾るための準備

アジサイ(紫陽花)を買ってきたら、すぐに器にいけて飾りたくなりますよね。でも…ちょっと待って! 花を買ってきたら、最初にしたいことがあります。それは、花が水をよく吸いあげて、元気な状態が続くための下準備。ひと房に、たくさんの花がつくアジサイ(紫陽花)は特に、元気でいるために多くの水が必要です。つまり、体に見合った量の水を吸いあげられないと、花びらも葉もしなしなとしおれた状態に。この状態は一般的に「水が下がる」といわれます。

アジサイ(紫陽花)の葉を整理しましょう

花の水が下がらないためにまず、不要な葉は取ってしまいましょう。不要な葉とは、器の水の中に浸かってしまう葉、飾ったときになくてもいいなと思った葉です。特に、水に浸かった葉は腐ると、バクテリアの発生を促すので、注意して。

植物は主に葉から、吸いあげた水を蒸散します。葉から排出される水蒸気が、吸いあげた水よりも勝ってしまうと、ぐったりと水切れを起こします。アジサイ(紫陽花)は、葉が大きく蒸散しやすい花。水切れを起こさないためにも、余計な葉は取ることをおすすめします。そして、写真のように折れた葉は躊躇することなく、取ってください。葉を取るときは、つけ根をつまんで、ポキッと折るだけ。簡単に取れますよ。

アジサイが長もちするために、茎の中を掃除します

植物はみな、茎の中に「導管」という繊維状の細胞をもっています。それは、根から吸いあげた水分を、上部の花や葉まで届ける、いわばパイプです。そのパイプがきれいな状態なら、水はどんどん上がっていくはず。ここでは、パイプの詰まりを解消する方法をレクチャー。このひと手間で、アジサイ(紫陽花)の花もちはぐっと変わってきます。長もちさせたいときは、必須作業!

手順1 アジサイ(紫陽花)の茎を、斜めに大きくカット

よく切れるナイフかハサミで、アジサイ(紫陽花)の茎を斜めに大きくカットしましょう。アジサイ(紫陽花)の導管は、茎の外皮の裏側に通っています。切断面を広げることで導管の入り口が増え、アジサイ(紫陽花)はたっぷりと水を吸いあげられるようになります。また、花へ水が届きやすいよう、丈はできるだけ短めに。

手順2 アジサイ(紫陽花)の茎から、ワタを取ります

アジサイ(紫陽花)の茎を切ると、“ワタ”と呼ばれる白いものが詰まっています。この部分には導管は通っていません。吸水の妨げにもなるので、このワタをナイフやハサミなどの先で丁寧に取り除きます。その後は、水を張ったバケツなどに入れて、しばらく休めておきましょう。

花が長もちするワンポイントアドバイス_水切り

花屋さんでは茎をカットするとき、切り口を潰さないようナイフを使いますが、ハサミでももちろんOK。ハサミで茎を切るときは、水を張ったボウルの中で「水切り」をしましょう。水の中で茎を切ると、導管内に気泡が入りません。そのため、花や葉へ上がる水の流れをスムーズにする効果があります。この場合も茎の切断面は斜めに大きく。2分ほど水中で休めてから、アジサイ(紫陽花)のワタ取りの処理を行います。

花が長もちするワンポイントアドバイス_深水

購入してきたアジサイ(紫陽花)が、すっかり水落ちしてしおれていたときや、いけてから元気をなくしたときの救急処置が「深水(ふかみず)」。その名のとおり、深い水に花材を入れて水あげすることをいいます。

手順は簡単! アジサイ(紫陽花)が、すっぽり入る大きさのバケツまたは器を用意。水をたっぷりと張ったら、茎を下に、アジサイ(紫陽花)を沈めます。写真のように、水の深さは花の半分くらいまで。荒療治とも思える方法ですが、花びらからも水を吸いあげるため、2時間ほどで張りのあるアジサイ(紫陽花)に復活です。水から引き上げたら、バサバサと花を振って、表面の水を落としまましょう。

アジサイ(紫陽花)を飾るときに、必要なアイテムってあるの?

花をいけるとき、多くの人は「花瓶がないとダメ!」と思うようです。花束をいただいたのはいいけれど、花瓶がなくて困った、という話もよく聞きます。実際は、“水が漏れない器”さえあれば、花瓶がなくても花はいけられるのです。たとえば、どの家のキッチンにもあるガラスのコップ。これと花を切るハサミさえあれば、花を飾ることができます。

ハサミだけは必ず、花切りバサミを用意してください。普通のハサミで花の茎を切ると、前述した、水の通り道である“導管”が、つぶれてしまう可能性が大だからです。こうした理由から、花の茎をつぶさずにカットできるよう工夫された、花切りバサミが必要になります。花切りバサミを使っても、切れ味が悪かったり汚れていたりしたのでは、花のもちが悪くなるので注意しましょう。花切りバサミは使うたびに洗って汚れを落とし、しっかり水分を拭いておきます。

1本のアジサイ(紫陽花)が、おしゃれになる飾り方8選

長く楽しむために下準備したアジサイ(紫陽花)を使い、さあ、飾り方のレッスンです。気軽にまねられるよう、少ない本数のアジサイ(紫陽花)で、おしゃれに飾るコツを紹介しましょう。フラワーベースを持っていなくても大丈夫! 生活のなかの身近な器や雑貨を味方にすれば、少量のアジサイ(紫陽花)をセンスアップさせることができますよ。

アジサイ(紫陽花)を飾るときに必要なもの

・アジサイ(紫陽花)*下準備済みのもの
・飾りたいフラワーベース*食器や雑器でもOK
・ハサミ

他に、合わせたい花があれば…。

アジサイ(紫陽花)を飾るときの注意点

アジサイ(紫陽花)をできるだけ長く楽しむためには、飾る場所もポイントです。

・直射日光、照明が直接当たらないところ
・エアコンの風が直接当たらないところ
・電化製品がそばにないこと
・風通しのよい場所

が、花の居場所としてはベター。直射日光やエアコンの風が当たると、アジサイ(紫陽花)は花びらから水分を奪われ、しおれの原因に。花にやさしい場所を選んでください。

その1 アジサイ(紫陽花)を水に浮かべて、潤う花を愛でます

*アジサイ、ラナンキュラス、アイビー、リリオペ

水が似合うアジサイ(紫陽花)ならではの飾り方で、いちばん簡単なのがこれ。器にしたアイテムは、陶器のボウルです。器になみなみと水を注いだら、短く茎をカットした季節の花とアジサイ(紫陽花)を浮かべて。窓辺に飾ると、光が水面に反射して、爽やかな光景が楽しめます。

その2 小分けにしたアジサイ(紫陽花)を、空き瓶にいけ分けて

*アジサイ、バラ、宿根スイートピー

スパイスやジャムの空き瓶でOK。アジサイ(紫陽花)を少量ずつ、水を入れた瓶にいけたら、お気に入りのコーナーに並べて飾りましょう。形も色もばらばらな小瓶アレンジのまとめ役は、丸いプレート。アジサイ(紫陽花)がスイーツに見えてくる、かわいいアイデアです。

その3 アジサイ(紫陽花)とキッチンツールで、ミニアレンジ

*アジサイ、ヘレボルス(通称クリスマスローズ)

手のひらサイズの飾り方の提案です。器にしたアイテムは、持ち手がついた小さな調理用計量器。紫色のアジサイ(紫陽花)をひとつまみに、ヘレボルスを2輪添えました。アルミの器なので、レースのマットを敷いて、やさしいミニアレンジの完成です。

その4 器に描かれた模様と、アジサイ(紫陽花)の色をお揃いに

*アジサイ、ハゴロモジャスミン

選んだのはファイヤーキングの容器。ティーカップでもポットでも構いません。花が描かれていることがポイントです。花模様と同じ色のアジサイ(紫陽花)をいけると、かわいらしく。ここではハゴロモジャスミンの蔓を組み合わせ、軽やかな動きをつけています。

その5 ピッチャーに、大きな房のアジサイ(紫陽花)をそのまま

*アジサイ、ユーカリ・ポプラス

アジサイ(紫陽花)を小分けせずに、そのまま飾るときのお助けアイテムは、大きめのピッチャーです。バランスよくいけることができ、持ち手がさりげないアクセントになります。グリーンを合わせるなら、笹形の葉が涼しげなユーカリがおすすめ。

その6 氷の中に、アジサイ(紫陽花)を咲かせることもできます

*アジサイ

氷の中に花を封じ込める花氷。作り方は簡単! 製氷皿に水を半分ほど注いだら、1輪ずつにしたアジサイ(紫陽花)を浮かべて、冷凍庫で凍らせます。花が動かない状態になったら、さらに水を注いでまた冷凍庫へ。湯冷ましした水を使うと透明度があがるそう。もちろんこれは鑑賞用。真夏にはあっという間に氷が溶けてしまいますが、来客の際のちょっとしたおもてなしにもおすすめです。

※アジサイの喫食による食中毒事例が過去にいくつかあります。ですので、口に入れるのはやめましょう。

その7 ドライへの移り変わりが楽しめるアジサイ(紫陽花)スワッグ

*アジサイ、プロテア

秋になったらこんな飾り方はいかが? 風通しよく、直射日光が当たらない場所にアジサイ(紫陽花)を吊り下げておくだけで、きれいなドライフラワーができます。おすすめのアジサイ(紫陽花)は、秋に花店に出回る秋色アジサイやミナヅキ。一緒に吊るした花は、オーストラリア産のワイルドフラワーです。花に含まれる水分量が少なく、ドライフラワーで楽しむには格好のパートナーです。

その8 蔓のベースを使って完成する、アジサイ(紫陽花)リース

*アジサイ、スズメウリ、蔓

生花からドライまでを楽しむという点では、上記のスワッグと一緒です。蔓を巻いたリースベースの隙間に、切り分けたアジサイ(紫陽花)を挿して作ります。アジサイ(紫陽花)はワイヤーや麻紐などで留めても。風が通り、直射日光の当たらない場所に掛けて、ゆっくりとドライフラワーに変化する過程を楽しんでみましょう。

アジサイ(紫陽花)を飾るときのコツと注意点

きれいに飾ったアジサイ(紫陽花)。少しでも長く眺めていたいですね。そのためには、毎日のお手入れを忘れずに行いましょう。特に、気温の高い夏場は、いけたままでは水中にバクテリアが発生します。花の寿命を縮めるバクテリアの繁殖を防ぐために行いたいのが、水替えと切り戻しです。

器の中の水を入れ替える作業「水替え」

水替えとは、花をいけたあと、器の水を入れ替えることです。いけた水は、見た目には変わらなくても、汚れているもの。毎日が難しくても、2日にいちどは、器の中の水をきれいな水に替えましょう。その際、茎も丁寧に洗い、ヌメリを取るのがベター。また、器の中を、食器用の中性洗剤で洗浄すると、バクテリアの発生がぐっと抑えられます。器を洗うときは、汚れが溜まりやすい底まで丁寧に。口が狭く、手が入らない器も、コップや水筒用の柄つきスポンジを使えば、隅々までキュキュッと洗うことができます。

「切り戻し」で茎を切り直し、吸水しやすく

花をいけたあと、茎や枝の切り口を新しく切り直すことを、切り戻しといいます。水替え時に、茎のヌメリを洗ってから行ってください。茎を新たにカットすることで、導管の入り口が新しくなるのです。水が下がりぎみのアジサイ(紫陽花)も、このひと手間でまた、元気に水を吸いあげてくれます。アジサイ(紫陽花)の茎の切り方は、斜めにカットし、さらにワタ抜き。最初に水あげするときと同様です。

もっと素敵に楽しむワンポイントアドバイス

アジサイ(紫陽花)を長く楽しんでいると、切り戻しをいくどか行っているため、茎がどんどん短くなります。最初にいけた器とのバランスが、崩れていきますね…。そんなときは、飾り方をチェンジ! アジサイ(紫陽花)の房を小さく切り分けて、プリンの空き容器やジャム瓶で、ミニアレンジを楽しんでみませんか? 買ったばかりのときには、もったいなくてできない花遊びが待っています。

※アジサイ(紫陽花)の見頃が終わってしまったら…

花の見ごろが終わり、いけたアジサイ(紫陽花)とさよならをするとき、使った器は台所用除菌剤で、菌を徹底退治!しましょう。次の花のために、ぜひ行いたいお手入れです。

切り花のアジサイ(紫陽花)には、こんな種類があります

最後に、時期によって異なるアジサイ(紫陽花)の種類を知っておきましょう。花屋さんに並ぶ切り花のアジサイ(紫陽花)には、大別すると5つの種類があります。どの季節でも出合え、もっとも出回り量が豊富な西洋アジサイのほか、初夏と秋の季節到来を知らせるアジサイ(紫陽花)があります。このほか、いけばな用花材の専門店では、ヤマアジサイなどの風情のある日本アジサイも旬の頃にお目見えします。

西洋アジサイ

日本原産のアジサイ(紫陽花)がヨーロッパに渡ったのち、品種改良された園芸品種です。花(正確にはガクが花弁のように変化した装飾花)が大きく、ピンク、白、緑、紫など多彩なカラーバリエーションが。西洋アジサイのなかには、花びらの縁に切れ込みがあるものや、複数の色が混じるものなど、数多くの品種があります。
出回り時期/周年

アナベル

北アメリカ東部原産のアメリカノリノキの園芸品種。アジサイ(紫陽花)の仲間です。手毬のように丸く膨らんだ房は、大きなもので直径30㎝近くにもなります。先始めの初夏は白。咲き進むと、涼しげな淡い緑色に変わります。時期によって、違う色合いの花に出会えるのが魅力です。
出回り時期/6~9月

ミナヅキ

縦に長い円錐形の花房から、ピラミッドアジサイとも呼ばれています。漢字で書くと、「水無月」。旧暦の6月(現在は7月)に開花することから、名づけられました。花色は白と淡いライムグリーン。花びらは主にひと重で小さく、軽やかな印象です。秋になるとピンクや赤に色づいた花が「秋色ミナヅキ」として出回ります。ノリウツギの園芸品種。
出回り時期/6~10月

カシワバアジサイ

円錐形の房はミナヅキとよく似ていますが、葉を見れば違いがわかります。「柏葉アジサイ」の名前が示すように、5~7つに深く裂けた柏の葉のような葉形が特徴。北アメリカ東部原産で、園芸品種が出回ります。花は白く、ひと重と八重のタイプがあります。
出回り時期/6~7月

秋色アジサイ

じつは「秋色アジサイ」という名前は“通称”。西洋アジサイやアナベルのなかで、秋に、くすんだニュアンスカラーに変化する品種の総称です。花びらが固く締まっているのが特徴。赤みや青みを帯びながら、ひと房の中に複雑な色合いが混じります。
出回り時期/10~11月

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ガーデナーに大人気のアジサイ‘アナベル’の楽しみ方
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Credit

記事協力

古賀朝子
『フルール ド ショコラ(Fleurs de chocolat)』オーナー。
1994年よりフローリストとして活動。定期的にヨーロッパに渡り、旬のデザインを吸収するなか、イタリアを中心に活躍するフローリストと交流。ローマやヴェネツィアでの結婚式の装花をともに手掛ける。東京・用賀のショップでは、森のような空間が広がるなか、全国各地から届く季節の切り花と枝もの、ヨーロッパのアンティーク雑貨を販売。著書に「フランスの伝統色でつくるフラワーデザイン」(誠文堂新光社)。
http://kogaasako.com/
https://www.instagram.com/fleurs_de_chocolat/

構成と撮影と文・鈴木清子

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