花屋さんにはいつもたくさんの花が並んでいます。なかでも1年中出回っている花で、女性に人気が高い花といえば、ガーベラは必ず上位にあがってきます。丸い花芯を中心に、ぱっと大きく花びらが開く愛らしい花形は、それだけで「かわいいものが大好き!」な女性の心をとらえます。ピンク、赤、黄といったポピュラーな色から、染料を吸わせた“染め”と呼ばれるものまで、色の種類が豊富なことも嬉しい点。さらに、花びらが二重、三重に連なる八重咲きや、花びらが細く先端が尖ったスパイダー咲きなど、咲き方もさまざまです。そんなガーベラの生け方や飾り方について、東京・原宿の花店『ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズ(THE LITTLE SHOP OF FLOWERS)』の壱岐ゆかりさんに、アドバイスをいただきました。
目次
ガーベラは大別すると、5つの種類があります
前述したように、季節を問わず、花屋さんの店頭に並ぶガーベラには、いくつか咲き方の種類があります。どんな種類があるか、はじめに知っておきましょう。ガーベラの花径は一般的には9cm以下。とはいえ、大輪になると、15㎝ほどになるものもあります。
ひと重咲き
もっとも一般的な咲き方です。中心の花芯が、花びらと同色のタイプ、濃色で目立つタイプの2種に大別されます。
八重咲き
中心まで、花びらがぎっしり。花芯の周囲に小さな花びらが集中するもの、花芯がまったく見えないものなどがあります。
スパイダー咲き
針のように細い花びらが無数につき、花火を彷彿とさせる咲き方。花弁の先が尖っているのが特徴です。
カール咲き
花びらが、うねるように波打っています。ドラマティックな躍動感があります。主に大輪。
変わり咲き
ボール形や花芯が肥大化したものなど、一見、ガーベラとは判断できない個性派グループ。
ガーベラを美しく飾るために、準備したいこと
ガーベラを購入して飾るのだから、なるべく花を長もちさせたい! しかし、いけるときにどれほど気を配っても、もともと鮮度の落ちている花を買ってきてしまっては、長もちをさせることはできません。まずは、花屋さんで鮮度のいいガーベラを選ぶことが、花を長く楽しむためのはじめの一歩です。
■長もちするガーベラを見極めるには…
一般的にガーベラは、セロファンの保護カバーがついているため、新鮮だと過信しがちです。購入するときは、花びらと花芯を見てください。鮮度のいいガーベラは、花びらがぎっしりつまり、花びら全体が水平より前を向いていて、花のつけ根がしっかりしています。色もくっきり鮮やかです。花の根元で茎がぐったりと折れたり、茶色くなったりしているのは鮮度のよくない証拠。ガーベラは茎に曲がりがあるものが多いですが、この曲がり自体は鮮度とは関係ありません。鮮度のいいものは茎が硬くてピンとして、きれいな緑色をしています。
■ガーベラが長もちするための準備「湯あげ」
新鮮なガーベラを買ってきたら、いける前にもうひと手間かけて下準備をしましょう。花が水をよく吸い上げて、みずみずしい状態が続くように、「湯あげ」をするのです。このひと手間で、ガーベラはさらに長もちしてくれます。
湯あげとは、茎の切り口をお湯につける方法です。多くの花は茎を切るとき、水中で茎を切る「水切り」をします。ガーベラはこの水切りのあと、切った茎をいちど、お湯につけるほうが、よく水が上がります。温度の高いお湯につけることによって、茎の導管内の空気が膨張し、追い出されるのです。つまり、導管の水の通りがよくなる、というわけです。お湯につけたあと、すぐまた、その茎を水に入れることで水圧をかけ、通りのよくなった導管を通じて一気に水を花まであげる、という効果があります。さらにいうと、お湯という高温の液体にさらすことで、切り口の殺菌にもなるのです。
湯あげの方法は、茎先を10cmほど出して、花と茎をペーパーで包みます。これは花にお湯の熱気がかからないようにするため。ペーパーはなるべくきっちりとすき間なく巻いて、セロハンテープで留めてください。このまま茎先3~4cmほどを、熱湯に10~20秒ほど浸し、すぐにたっぷりの水につけます。できれば1時間ほど茎を水につけたままにしておくと、さらに水がよく上がります。
ガーベラを飾るときに、必要なアイテムってあるの?
花をいけるとき、多くの人は「花瓶がないとダメ!」と思うようです。花束をいただいたのはいいけれど、花瓶がなくて困った、という話もよく聞きます。実際は、“水が漏れない器”さえあれば、花瓶がなくても花はいけられるのです。たとえば、どの家のキッチンにもあるガラスのコップ。これと花を切るハサミさえあれば、花を飾ることができます。
ハサミだけは必ず、花切りバサミを用意してください。普通のハサミで花の茎を切ると、先ほどお話した、水の通り道である“導管”がつぶれてしまう可能性が大だからです。こうした理由から、花の茎をつぶさずにカットできるよう工夫された、花切りバサミが必要になります。花切りバサミを使っても、切れ味が悪かったり汚れていたりしたのでは、花のもちが悪くなるので注意しましょう。花切りバサミは使うたびに洗って汚れを落とし、しっかり水分を拭いておきます。
ガーベラをより美しく飾りたい。そのコツを教えて
ガーベラは茎を短くして、器の縁に花顔を並べるように飾ることが多いものです。このスタイルはとても愛らしいのですが、それだけだとどうしても動きがなくて、重い印象になるうえ、子どもっぽく見えてしまいがちです。ガーベラをより美しく演出したいときは、サブ花材と合わせて躍動感を出すか、ガーベラの茎を長くして飾ってみましょう。
サブ花材は、小花かグリーンがおすすめです
サブ花材には、ガーベラにはついていないグリーンか、ガーベラの存在感を邪魔しない小花を選ぶといいでしょう。葉ものはどんなものでもよく合います。一方、小花は、合わせ方に迷ったら、同系色のものをチョイスすると、全体がまとまりやすくなります。なかでもおすすめは季節の花。ガーベラは1年中出回っているため、季節感や自然の息吹を感じにくい花なので、その時季に旬を迎える花をふんだんに合わせると、よりナチュラルに仕上がります。
また、ガーベラの茎を長く使うと、いつもとは違う大人っぽい雰囲気が演出できます。ガーベラの茎はまっすぐではなく少しうねりや曲がりがあるので、長さを出すとニュアンスのある美しいアレンジになります。
■ガーベラを素敵に飾るためのワンポイントアドバイス
花そのものがラブリーなガーベラは、器までかわいくすると甘くなりすぎてしまいます。器はなるべくシンプルなもの、モダンなものを選びましょう。ちょっと辛口な要素が加わると、しゃれたビタースイートなアレンジになりますよ。
ガーベラを飾るときの注意点は、器の中の水量です
ガーベラは茎が腐りやすいので、花をいけるときは水の量に注意が必要です。器の縁までいっぱいに水を入れてしまうと、すぐに茎がとろけてしまいます。水の量は写真のように少なめにして(浅水といいます)、こまめに水替えをしてください。
もうひとつ、気をつけたいのが花の根元。花と茎との境目が弱いので、水があがらなかったり弱ったりして、ここがくたっと折れてしまうことがあります。いけるときや水替えのときは、なるべくこの部分に触らないようにしましょう。
花を飾る場所にも注意が必要です。直射日光が当たるところ、エアコンの風が直接当たるところは避けてください。涼しくて風通しのいい場所に飾るのがベターです。
ガーベラを長もちさせるには、こんな方法を
花を長もちさせる基本は、毎日の水替えと切り戻しです。器の水は毎日替えて、茎先のぬめりを流水で洗い落とします。ガーベラの茎は他の花に比べ特に、水にとろけやすいので、よく洗っておきましょう。ついでに菌が繁殖しないよう、器の中も洗剤をつけたスポンジで洗います。
■花を飾ったあとの日々のお手入れ「切り戻し」
ガーベラを長く楽しむために、飾ったあともできることがあります。水替えをして、器にいけ直す前には、水が花までよく上がるよう、茎の「切り戻し」をします。切り戻しとは、茎や枝の切り口を新しく切り直すこと。このとき、「水切り」をするとさらに効果的です。水切りは、名前のとおり、水の中で茎をカットします。水中で茎を切ると、水の通り道である導管内に空気が入らないため、水がスムーズに、花や葉まで上がるのです。さらに、切り口の乾燥を防ぐこともできます。
水切りは簡単です。大きめのボウルなどの器に水をたっぷり入れ、その中に茎を入れて、ハサミで茎先をカットするだけ。水を替えるたびに茎の先を1~2cm切ると、新しい導管の断面が常に水に接し、水があがりやすくなり、長もちすることにつながります。
ガーベラに元気がなくなってきたときは、もういちど「2.ガーベラを美しく飾るために、準備したいこと」の項で紹介した湯あげをしてみてください。
手軽に気軽にフラワーアレンジ。ガーベラの飾り方アイデア
ここまでに挙げた準備や注意点をしっかり押さえたら、実際にガーベラをアレンジしてみましょう。紹介するのは、誰にでも簡単にまねができて、絶対に失敗しないシンプルな3つのスタイルです。この3つの基本スタイルさえマスターすれば、ガーベラのアレンジは完璧! それぞれのスタイルについて、ワンランク上に見えるコツも解説しているので、参考にしながらぜひ、自分らしいスタイルにチャレンジしてみて。
その1 ガーベラ1輪だけをスタイリッシュに
青い染料を吸わせた染めのガーベラを1輪だけ、色ガラスのボトルにいけました。たったこれだけのあしらいなのに、とても格好よく粋に見えるのは、花色と器の合わせ方にコツがあります。なるべくシックな色みのガーベラとボトルを選ぶこと。特に自然界にはない青のガーベラは、見る人にインパクトを与え、1輪でも印象的になります。
その2 ガーベラに小花で動きとスケール感をプラス
ガーベラに、小花を加えてみましょう。それだけで、こんなにも躍動感と広がりのある魅力的なアレンジになります。コツは、空間の多い小花を選ぶこと。ガーベラは花びらがみっしりとつく密度の高い花なので重く見えがち。対照的な密度の低いふわふわした小花を合わせると、全体が軽やかになって透明感が出てきます。
その3 サブ花材でガーベラに季節感を演出して
アレンジや花束にとって季節感は大切な要素です。その季節に咲く花を添えて、春夏秋冬を演出しましょう。ここでは、春の枝もの、ヤマブキやウイキョウを合わせました。ガーベラはどっしりした花なので、存在感の強い枝ものもよく合うんですよ。コツは、花色を同系色でまとめ、色でも季節感を表現すること。ガーベラを含め、全体を黄色系で統一しているので、まとまりがいいのはもちろん、黄色が春の温かな日差しを連想させてくれます。
Credit
壱岐ゆかり
『ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズ(THE LITTLE SHOP OF FLOWERS)』主宰。
インテリアショップやファッションプレスなどを経て、2010年に週末だけのフラワーショップを東京・代々木上原にオープン。2013年に東京・原宿に移転。花をもっと日常的に楽しんでもらいたいというコンセプトから、日々のちょっとした花贈りをはじめ、展示会やパーティの装花、結婚式の装飾・演出まで、花をプロダクトと捉えたアレンジなどを独自のスタイルで展開している。
http://www.thelittleshopofflowers.jp/
https://www.instagram.com/thelittleshopofflowers/
撮影・村瀬雅和 構成と文・高梨奈々
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