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チューリップのおしゃれな生け方・飾り方。 フラワーアレンジで長もちさせるコツ

チューリップのおしゃれな生け方・飾り方。 フラワーアレンジで長もちさせるコツ

春の花の代表ともいえる、チューリップ。コロンとしたかわいい卵形の花が、庭の花壇で風に揺れ、花屋さんの店先にずらりと並ぶ姿を目にすると、誰でも心が躍ります。ピンク、赤、黄、紫と色の種類が豊富なうえ、花びらが細く尖ったユリ咲きや、オウムの羽根に似た切れ込みが入るパロット咲きなど、さまざま咲き方があります。切り花は、晩秋から春まで絶え間なく出回るのも魅力です。そんなチューリップの生け方や飾り方について、東京・原宿の花店『ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズ(THE LITTLE SHOP OF FLOWERS)』の壱岐ゆかりさんに、アドバイスをいただきました。

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チューリップは多彩。7つの種類があります

前述したように、チューリップには、いろいろな咲き方があります。それぞれの特徴は比較的わかりやすいので、花屋さんで見かけたら、ぜひチェックしてみてください。

ひと重咲き

花びら6枚の基本形。丸い花形が親しみやすい、もっともポピュラーな咲き方です。品種数もさまざま。

八重咲き

おしべが花弁化して、花びらの枚数が増えたもの。開き切ると、シャクヤクのようで、存在感は格別です。

ユリ咲き

尖った細長い花びらが、外側に反るように開く姿がユリに似ています。茎が細く、しなやかな印象です。

パロット咲き

切れ込みの入る花びらが、オウム(parrot)の羽根に似ていることから。波打つ花びらがドラマティックです。

フリンジ咲き

花びらの先に、フリルのような細かい切れ込みが入るのが特徴です。ひと重のほか、八重もあります。

原種系

小さくて素朴です。さまざまな品種の親となった原種をはじめ、原種系の中からいくつかが切り花として流通。

クラウン咲き

比較的新しく出てきた咲き方。花びらの先がつぼむ、独特な花形が王冠に似ていることから、こう呼ばれます。

チューリップを美しく飾るために、準備したいこと

チューリップを購入して飾るのだから、なるべく花を長もちさせたい! しかし、いけるときにどれほど気を配っても、もともと鮮度の落ちている花を買ってきてしまっては、長もちをさせることはできません。まずは、花屋さんで鮮度のいいチューリップを選ぶことが、花を長く楽しむためのはじめの一歩です。

長もちするチューリップを見極めるには…

鮮度のいいチューリップは、花びらや葉がピンと張っていて、しわがありません。花色がくっきりしているうえ、茎は硬くて勢いがあり、きれいな緑色をしています。特に注目したいのは葉です。新しい花についている葉は、先が尖って、張りと艶があります。

チューリップが長もちするための準備「水切り」

新鮮なチューリップを買ってきたら、いける前にひと手間かけて下準備をしましょう。花が水をよく吸い上げて、みずみずしい状態が続くように、不要な葉を整理し、茎を「水切り」するのです。

水切りとは、名前のとおり、水の中で茎をカットすることです。植物の茎には、水の通り道である導管があります。水の中で茎を切ると、この導管内に空気が入らないため、水がスムーズに通るのです。つまり、茎先から入った水が、花までしっかり上がる、というわけです。水切りはまた、切り口の乾燥を防ぐことができます。

水切りの方法は簡単です。大きめのボウルや器に水をたっぷり入れます。その中に茎を入れて、ハサミで茎先をカットするだけ。カットする分量は、自分がいけたい長さによりますが、最低でも1~2㎝は切りましょう。このとき、切ってすぐ茎を水からあげないことがポイントです。短くても5分、できればそのまま1時間以上、茎を水につけておくと、水圧でより水が上がります。

チューリップを飾るときに、必要なアイテムってあるの?

花をいけるとき、多くの人は「花瓶がないとダメ!」と思うようです。花束をいただいたのはいいけれど、花瓶がなくて困った、という話もよく聞きます。実際は、“水が漏れない器”さえあれば、花瓶がなくても花はいけられるのです。たとえば、どの家のキッチンにもあるガラスのコップ。これと花を切るハサミさえあれば、花を飾ることができます。

ハサミだけは必ず、花切りバサミを用意してください。普通のハサミで花の茎を切ると、前述した水の通り道である“導管”が、つぶれてしまう可能性が大だからです。こうした理由から、花の茎をつぶさずにカットできるよう工夫された、花切りバサミが必要になります。花切りバサミを使っても、切れ味が悪かったり汚れていたりしたのでは、花のもちが悪くなるので注意しましょう。花切りバサミは使うたびに洗って汚れを落とし、しっかり水分を拭いておきます。

チューリップをより美しく飾りたい。そのコツを教えて

チューリップの魅力のひとつは、長くてしなやかな茎。きれいな緑色をした、艶やかな茎の美しさを存分に見せたいので、茎はできるだけ長めにカットするといいですね。アレンジする前に、切りすぎてしまわないように注意しましょう。そうすると、日が経つにつれて光の方向に曲がっていく、茎のおもしろさも生きてきます。

飾るときは、あまり茎を短くしないほうが素敵です

チューリップの場合、茎を長く取っていけると、花ガ魅力的に見えてきます。というのも、チューリップは花が下向きに垂れる姿が愛らしいからです。まあるい花がお辞儀をしているような花姿を演出するには、やはり茎が長めのほうがよいのです。

チューリップを素敵に飾るためのワンポイントアドバイス

チューリップは、かわいらしい形だけに、ともすると子どもっぽい印象になりがち。合わせる花に、ちょっとくすんだ同系色のものを選んでみてください。チューリップを引き立てるよう、抑えた色みの花を添えると大人っぽく見えます。

チューリップを飾るときの注意点は、葉にあります

花を長くもたせることだけを考えると、葉ははずしたほうがいいでしょう。チューリップに限らず、水に浸かった葉はすぐに腐ってきますし、葉が多いと無駄に水分が蒸発してしまうからです。ただ、チューリップは、葉の色形が美しいので、「しゅっとした葉が好き! あの葉があってこそチューリップよ」という葉っぱファンもいます。葉も一緒に楽しみたいときは、水に浸かる下のほうの葉をはずし、上の葉を1枚残しましょう。あるいは購入して1~2日は葉をつけたまま飾り、そのあとははずす、という飾り方でもよいかもしれません。

また、花を飾る場所には注意が必要です。直射日光が当たるところ、エアコンの風が直接当たるところは避けてください。涼しくて風通しのいい場所に飾るのがベターです。

チューリップを長もちさせるには、こんな方法を

花を長もちさせる基本は、毎日の水替えと切り戻しです。器の水は毎日替えて、茎先のぬめりを流水で洗い落とします。ついでに菌が繁殖しないよう、器の中も洗剤をつけたスポンジで洗っておきましょう。もういちど器に、チューリップをいけ直す前に、2の準備の項で紹介した水切りをします。水を替えるたびに茎先を1~2cm切ると、新しい導管の断面が水に接することになり、水が上がりやすくなります。

チューリップに元気がないときは「湯あげ」が効果的

チューリップに元気がなくなってきたなと感じたら、「湯あげ」をしましょう。湯あげとは、茎の切り口をお湯につける方法です。水切りのあと、切った茎をいちど、お湯につけるほうが、よく水が上がります。温度の高いお湯につけることによって、茎の導管内の空気が膨張し、追い出されるのです。つまり、導管の水の通りがよくなる、というわけです。お湯につけたあと、すぐまた、その茎を水に入れることで水圧をかけ、通りのよくなった導管を通じて一気に水を花まであげる、という効果があります。さらにいうと、お湯という高温の液体にさらすことで、切り口の殺菌にもなるのです。

湯あげの方法は、茎先を10cmほど出して、花と茎をペーパーで包みます。これは花にお湯の熱気がかからないようにするため。ペーパーはなるべくきっちりとすき間なく巻いて、セロハンテープで留めてください。このまま茎先3~4cmほどを、熱湯に10~20秒ほど浸し、すぐにたっぷりの水につけます。できれば1時間ほど茎を水につけたままにしておくと、さらに効果的です。

手軽に気軽にフラワーアレンジ。チューリップの飾り方アイデア

ここまでに挙げた準備や注意点をしっかり押さえたら、実際にチューリップをアレンジしてみましょう。紹介するのは、誰にでも簡単にまねができて、絶対に失敗しないシンプルな3つのスタイルです。この3つの基本スタイルさえマスターすれば、チューリップのアレンジは完璧! それぞれのスタイルについて、ワンランク上に見えるコツも解説しているので、参考にしながらぜひ、自分らしいスタイルにチャレンジしてみて。

その1 チューリップだけの1種アレンジ

花材:チューリップ

同じ種類の花同士なら、どんな色を組み合わせてもきれいにまとまります。チューリップだけを数種類あしらって、その多彩な色柄をとことん楽しみましょう。コツは花の高さを変えること。こんなふうに1輪だけつぼみを使って極端に高さを出すと、アレンジに広がりと躍動感が生まれます。カラフルな柄のチューリップには、白を1輪加えると落ち着きますよ。

その2 チューリップと同じ季節の花で春爛漫

花材:チューリップ、スイートピー

全体を同系色でまとめれば、どんな花を合わせても、アレンジはきれいに調和します。特に相性がいいのは、同じ季節に咲く花。ここではチューリップと同じ春の花、スイートピーを選びました。素敵に見えるコツは、形の違う花を合わせること。チューリップと同じ丸い花ではなく、フリルのようにひらひらしたスイートピーを合わせたほうが、お互いの個性が引き立ちます。

その3 咲ききったチューリップ1輪の風情を愛でる

花材:チューリップ

チューリップはすぐに花が、わっと開いてしまうから、あまりもたないのよね…そんなふうに思っていませんか? 花びらが反り返るほど開ききり、花芯が見えるチューリップには、丸くつぼんでいるときとは違う造形的なおもしろさがあります。1輪だけポンとマグカップに入れてじっくり眺めると、チューリップの新しい魅力に気がつくはず。その際のコツは、丈を短くすること。茎が短いほうが花もちはよくなるので、思いきって茎を短くすると、開ききってから花びらが落ちる寸前までの風情が楽しめます。

Credit

記事協力

壱岐ゆかり
『ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズ(THE LITTLE SHOP OF FLOWERS)』主宰。
インテリアショップやファッションプレスなどを経て、2010年に週末だけのフラワーショップを東京・代々木上原にオープン。2013年に東京・原宿に移転。花をもっと日常的に楽しんでもらいたいというコンセプトから、日々のちょっとした花贈りをはじめ、展示会やパーティの装花、結婚式の装飾・演出まで、花をプロダクトと捉えたアレンジなどを独自のスタイルで展開している。
http://www.thelittleshopofflowers.jp/
https://www.instagram.com/thelittleshopofflowers/

撮影・村瀬雅和 構成と文・高梨奈々

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