トップへ戻る

アネモネのおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

アネモネのおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ

春はさまざまな色や形の花が咲き乱れる季節ですが、なかでも独特の魅力を放つのがアネモネです。薄紙のような色のついた部分は、じつは花びらではなくガク。その中心に、たくさんのおしべに囲まれた、ベルベットのような質感の花芯があります。この花芯が、花びらの色とはまったく違う黒紫色や緑色をしているので、アネモネはどこかミステリアスな、そしてインパクトのある花として知られています。赤やピンク、白、紫とはっきりした色が多く、ひらひらと可憐なひと重咲きから花びらが重なる八重咲きまで、咲き方にも種類があります。そんなアネモネの生け方や飾り方について、東京・原宿の花店『ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズ(THE LITTLE SHOP OF FLOWERS)』の壱岐ゆかりさんにアドバイスをいただきました。

Print Friendly, PDF & Email

アネモネの種類について知っておきましょう

前述したように、切り花で出回るアネモネには、ひと重咲きと八重咲きの2種類の咲き方があります。以前は、ひと重咲きが主流でしたが、現在では八重咲きも多く、花屋さんの店頭を飾っています。

ひと重咲き

もっとも一般的な咲き方です。中心の花芯が黒紫色タイプ、緑色タイプの2種に大別されます。花径は大きいものは10㎝以上にも。

八重咲き

キクのように細かい花びらが並びます。黒紫色の花芯に、ひと重咲きに比べると小輪のものが多くあります。

アネモネを美しく飾るために、準備したいこと

アネモネを購入して飾るのだから、なるべく花を長もちさせたい! しかし、いけるときにどれほど気を配っても、もともと鮮度の落ちている花を買ってきてしまっては、長もちをさせることはできません。まずは、花屋さんで鮮度のいいアネモネを選ぶことが、花を長く楽しむためのはじめの一歩です。

長もちするアネモネを見極めるには…

アネモネのつぼみは開きやすいので、花が閉じた状態のものを買うことが大切です。花びらにしっかり色がのっていて、花が上を向いているものを選びましょう。白っぽく色褪せているものや、花がうつむいているものは避けてください。新鮮なアネモネの茎は、硬くて勢いがあり、きれいな緑色をしています。

アネモネが長もちするための準備「水切り」

新鮮なアネモネを買ってきたら、いける前にひと手間かけて下準備をしましょう。花が水をよく吸い上げて、みずみずしい状態が続くように、茎を「水切り」するのです。

水切りとは、名前のとおり、水の中で茎をカットすることです。植物の茎には、水の通り道である導管があります。水の中で茎を切ると、この導管内に空気が入らないため、水がスムーズに通るのです。つまり、茎先から入った水が、花までしっかり上がる、というわけです。水切りはまた、切り口の乾燥を防ぐことができます。

水切りの方法は簡単です。大きめのボウルや器に水をたっぷり入れます。その中に茎を入れて、ハサミで茎先をカットするだけ。カットする分量は、自分がいけたい長さによりますが、最低でも1~2㎝は切りましょう。このとき、切ってすぐ茎を水からあげないことがポイントです。短くても5分、できればそのまま1時間以上、茎を水につけておくと、水圧でより水が上がります。

アネモネを飾るときに、必要なアイテムってあるの?

花をいけるとき、多くの人は「花瓶がないとダメ!」と思うようです。花束をいただいたのはいいけれど、花瓶がなくて困った、という話もよく聞きます。実際は、“水が漏れない器”さえあれば、花瓶なんかなくても花はいけられるのです。たとえば、どの家のキッチンにもあるガラスのコップ。これと花を切るハサミさえあれば、花を飾ることができます。

ハサミだけは必ず、花切りバサミを用意してください。普通のハサミで花の茎を切ると、前述した、水の通り道である“導管”が、つぶれてしまう可能性が大だからです。こうした理由から、花の茎をつぶさずにカットできるよう工夫された、花切りバサミが必要になります。花切りバサミを使っても、切れ味が悪かったり汚れていたりしたのでは花のもちが悪くなるので、注意しましょう。花切りバサミは使うたびに洗って汚れを落とし、しっかり水分を拭いておきます。

アネモネをより美しく飾りたい。そのコツを教えて

アネモネは、1輪のなかに最低でもふたつのまったく違う色をもっています。花びらと花芯、それぞれの色です。花びらが赤や紫色など出回りが多い濃色の場合、花芯は黒紫色という非常に強い色です。そのため、花芯自体に飛び出すような立体感があります。花そのものが非常に造形的で絵になり、ほかの花の力を借りる必要がないほど。1輪でも十分に美しく、インパクトがあるアネモネは、1種類だけでいけるか、葉ものを少し添えるくらいにすると、その個性が生きてきます。

サブ花材には、アネモネと違う形状の花を選びます

アネモネをいけるときに避けたいのは、似たような大きさ、形の花と合わせること。たとえば、ガーベラのような花芯が目立つ丸い花を合わせてしまうと、お互いの個性がぶつかりあって、アネモネの魅力が半減してしまいます。

アネモネを素敵に飾るためのワンポイントアドバイス

アネモネは基本的に、上を向いて咲く花です。一般的にアレンジをするときは、花同士に大きく高低差をつけるものですが、アネモネの場合はあえてはっきりした高低差をつけず、花顔を同じくらいの高さで並べてみましょう。こうすると、上から見たとき、ぎゅっと集まった花顔のおかげでインパクトが一段と強まり、いっそう印象的に見えます。

アネモネを飾るときの注意点は、飾る場所です

アネモネの花びらは、光と温度に敏感に反応します。朝になると開き、夜になると閉じる、開閉を繰り返し、最後には開きっぱなしで花びらが反り返ります。また、暖かい場所に飾ると、すぐにぱあっと花が開いてしまいます。このため、アネモネはできるだけ涼しく、日が当たらないところに飾りましょう。薄い花びらは傷つきやすいので、丁寧に扱ってください。花びらが開閉する際に当たることを考えて、アザミのようなトゲトゲした花材とは一緒にいけない配慮も必要です。エアコンの風が直接当たるところも避けます。

アネモネを長もちさせるには、こんな方法を

花を長もちさせる基本は、毎日の水替えと切り戻しです。器の水は毎日替えて、茎先のぬめりを流水で洗い落とします。ついでに菌が繁殖しないよう、器の中も洗剤をつけたスポンジで洗っておきましょう。もういちど器に、アネモネをいけ直す前に、2の準備の項で紹介した水切りをします。水を替えるたびに茎先を1~2cm切ると、新しい導管の断面が水に接することになり、水が上がりやすくなります。

アネモネの場合、花器の中の水は少なめに

アネモネは、茎の中が空洞のため、水に浸かった茎が腐りやすいという性質があります。そのため、花をいけるときは水の量に注意が必要。器の縁までいっぱいに水を入れてしまうと、すぐに茎がとろけてしまいます。水の量は写真のように少なめにして、こまめに水替えをしてください。

7.手軽に気軽にフラワーアレンジ。アネモネの飾り方アイデア

ここまでに挙げた準備や注意点をしっかり押さえたら、実際にアネモネをアレンジしてみましょう。紹介するのは、誰にでも簡単にまねができて、絶対に失敗しないシンプルな3つのスタイルです。この3つの基本スタイルさえマスターすれば、アネモネのアレンジは完璧! それぞれのスタイルについて、ワンランク上に見えるコツも解説しているので、参考にしながらぜひ、自分らしいスタイルにチャレンジしてみて。

その1 茎の動きでアネモネをオブジェのように

花材:アネモネ

アネモネだけでシンプルに構成したアレンジです。ただし、花の大きさと茎の長さに、極端な変化をつけています。大きな2輪は短くして器の縁に並べ、小さな2輪は茎を長く取って空間に遊ばせます。こうするとアネモネの茎のしなりが生きて、オブジェのような味わいになるのです。コツは上の花と下の花に共通の色(ここでは紫色)を使うこと。上下が分離せず、全体の統一感が生まれます。

その2 アネモネを壁掛け1輪挿しで格好よく

花材:アネモネ、コデマリ

存在感のある壁掛けの1輪挿しに、アネモネ1輪としなやかな枝ものを組み合わせました。上を向くまっ赤なアネモネと、下に垂れる白い花の、大きさや色の対比が鮮烈です。枝ものが醸す雰囲気で、アネモネがちょっと和の風情をまとうのも新鮮。このアレンジを美しく見せるコツは、コデマリの分量にあります。かなり長めに垂らすことで、格好よく決まりますよ。

その3 アネモネとたっぷりグリーンの南国風花束

花材:アネモネ、ユーカリ、アメリカイワナンテン

アネモネをたっぷりの葉っぱ(グリーン)と合わせて、ざっくりと束ねてみました。野性味のあるアメリカイワナンテンの葉に包まれると、黒紫色の花芯のアネモネが、南国の花のようにワイルドな表情になります。コツはアネモネを中心に固めて印象を強めること。そして、1輪だけ白いアネモネを加えることです。この1輪が花束に明るさと、都会的なエッセンスをプラスしてくれます。

Credit

記事協力

壱岐ゆかり
『ザ・リトル・ショップ・オブ・フラワーズ(THE LITTLE SHOP OF FLOWERS)』主宰。
インテリアショップやファッションプレスなどを経て、2010年に週末だけのフラワーショップを東京・代々木上原にオープン。2013年に東京・原宿に移転。花をもっと日常的に楽しんでもらいたいというコンセプトから、日々のちょっとした花贈りをはじめ、展示会やパーティの装花、結婚式の装飾・演出まで、花をプロダクトと捉えたアレンジなどを独自のスタイルで展開している。
http://www.thelittleshopofflowers.jp/
https://www.instagram.com/thelittleshopofflowers/

撮影・村瀬雅和 構成と文・高梨奈々

Print Friendly, PDF & Email

人気の記事

連載・特集

GardenStoryを
フォローする

ビギナーさん向け!基本のHOW TO