バラの成分が凝縮され、豊かな芳香と上品な味わいがあるローズウォーターは、女性に嬉しい効果を秘めていると話題の飲み物です。古代ペルシャで始まったバラ栽培とローズウォーターの歴史、そして国産ローズウォーターに使われている品種とその味わい方を、バラ文化と育成方法研究家で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんに教えていただきます。
目次
ローズウォーターの歴史

最近、飲用もできる、無農薬で栽培された香り高いバラで作られるローズウォーターに注目が集まっています。
その歴史は、紀元前810年頃まで遡ります。古代ペルシャのファリスタン州では、ローズウォーターを約3万壺もバグダッドに納入するよう義務付けられていました。当時、ローズウォーター生産の中心であったファリスタン州及びシラーズ周辺で作られた大量のローズウォーターは、インド、中国、イエメン、エジプトへも輸出されていたとのことです。それらの輸出先では、ローズウォーターは宗教の儀式や洗浄、飲用、薬用、美容、体の香り付けなどに使われ、古くからその地の人々の暮らしと文化に深い繋がりを持っていました。
なお、古代ペルシャは、バラを庭に並べて植えるなど、バラを栽培した最初の地といわれています。

それらのバラに魅了された、古代ペルシャを支配したイスラム教徒のアラブ人たちは、6世紀にバラをイスラム教のしきたりの中心にすえました。10世紀には、アラブの医師アウィンケンナが、冷却管を使用する蒸留技術を完成させましたが、その際実験に使用されたバラは、ダマスクローズだったようです。
現在でもイランは、生産した高品質のローズウォーターを、毎年大量に、聖地メッカの壁を洗浄するために輸送しています。
ローズウォーターの作り方

日が高くなると、バラの花の精油の含有量は、約30%にまで減ってしまうとされています。そのため、なるべく日が高くなる前(午前5~10時頃)にバラの花を摘み取り、そして蒸留は、摘み取ってから、なるべく数時間のうちに行わなければなりません。
蒸留は、主に伝統的な水蒸気抽出法で行われます。水蒸気抽出法では、水と香り豊かなバラを蒸留釜に入れて熱することで発生する水蒸気を冷却し、液体に戻します。その時に分離した水分がローズウォーターで、油分がエッセンシャルオイルと呼ばれるバラの精油です。
ローズウォーターの利用法

飲用する際は、無農薬で栽培されたバラで作られたローズウォーターを選びます。無農薬で香り豊かなバラを使用して作られたローズウォーターは、口に含むと、とても香り高く上品で優雅な味わいです。
そのままグラスに注いで飲んでもいいのですが、ローズウォーターに砂糖を加えれば、ローズシロップができます。また、ローズゼリーやローズドレッシングなど、香りを生かしたお菓子やお料理作りにも最適です。

例えば、グラスの底に、お好みの量のローズジャムを入れ、氷を加えて、ゆっくりローズウォーターを注ぐと、2層のドリンクができ上がり。
ローズウォーターの成分と作用
成分の大半はフェネチルアルコールで、他にシトロネロール、ゲラニオール、リナロールなどが含まれます。
ローズウォーターには、肌を整え、清潔にするための殺菌消毒作用と収れん作用のあるローションとしての美容効果も期待できます(個人差がありますので、肌に合わない場合は利用を控えます)。
ローズウォーターの主な産地

ローズウォーターの生産量で世界1位を誇る国はイランであり、ファールズ州のシラーズやダラブ、イスファハーン州のカシャーンなどで多く作られています。2015年のイランの公式発表では、イランのローズウォーター年間生産量は約26,000tでした。
他には、ブルガリアのカザンラク、トルコのウスパルタ、モロッコのケレアメグーナ、フランスのグラース、インドのガーズィープル、オマーンのアリラ・ジャバルアフダール他があります。
日本産のローズウォーター

日本国内でも、無農薬で栽培された香り高いバラを使用して作られたローズウォーターを入手できるようになりました。
八ヶ岳にある「アサオカローズ」で作られるローズウォーターは、ダマスクローズ‘ゴル・ムハマディ’と、ミニチュアローズ‘オーバーナイト・センセーション’の2種類があります。どちらも、八ヶ岳の湧き水を使用して蒸留された、ピュアで、バラのエネルギーが凝縮された大変香り高いローズウォーターです。
瓶にピンクの色付けがされているのは‘ゴル・ムハマディ’、透明の瓶に入っているのは‘オーバーナイト・センセーション’のローズウォーターです。ローズウォーター自体はどちらも無色透明です。
ローズウォーターに使われるバラの品種

ダマスク系のバラは、香り高い品種が多く、古い時代から儀式や香料用に栽培がされてきました。こちらの‘ゴル・ムハマディ’と呼ばれるダマスクローズは、ゴルは花を、ムハマディはモハメッドを指し、「モハメッドの花」という意味があります。つまり、イスラムの世界では「最高の花」として用いられています。このバラは、もともとイランにあったバラで、イスファハーン州のカシャーンにて、ローズウォーター及び、ローズエッセンシャルオイルを生産するために、栽培されているのだそうです。八ヶ岳南麓の気候に適し、アサオカローズの浅岡正玄(あさおか まさはる)氏と奥様のもとで元気に生育しています。
バラと人との悠久の歴史を物語るような、深く豊かなダマスクの香りと味わいがあります。

‘オーバーナイト・センセーション’は、ミニチュアローズにしては、パティオローズを思わせる花の大きさで、現代バラなのに、とても香りの強い芳香品種の一つです。1998年にアメリカのマサチューセッツ州、ノーイースト社が作出したこの‘オーバーナイト・センセーション’は、1998年10月29日、日本人宇宙飛行士、向井千秋さんらと共に米ケネディ・スペースセンターから打ち上げられたディスカバリー号に乗って宇宙へ旅立ち、無重力状態と地球上にあるときとで香りの成分に違いがあるかなどの研究に貢献しました。つまり、「宇宙に行った最初のバラ」となりました。
こちらは、ダマスク香にティー香やフルーツ香が混ざったような、豊かな中にも爽やかさと甘さを含んだ香りと味わいがあります。

夏の暑い時期、冷たく冷やしたローズウォーターで、体も心もリフレッシュしてみてはいかがでしょうか。
参考文献:『バラ油』ジュリア・ローレス著、高山林太郎訳(フレグランスジャーナル社)

今回伺ったアサオカローズさんでは、「バラ摘み&蒸留体験」もさせていただけます(季節限定・詳細は以下までお問合せください)。
Information
お問合せ&ローズウォーター購入先
アサオカローズ
〒399-0211 長野県諏訪郡富士見町富士見6464-1
TEL : 0266-75-5882 / FAX : 0266-75-5892
Credit
写真&文 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -

神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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