真夏のフラワーアレンジ 多彩なグリーンを使ってアジアのリゾート風に。アレカヤシの葉を編んで器もアレンジ

暑い夏には、暑い季節ならではのフラワーアレンジメントを楽しみたいもの。今回は、バリエーション豊富な葉物をたっぷり使った、アジアンテイストのグリーンアレンジを海野美規さんに教わります。グリーンのバスケットに飾って、タイのリゾート気分を味わいましょう。
目次
真夏のグリーンアレンジ アジアンテイストで

真夏のフラワーアレンジ、どうされていますか? こう気温が高いと、切り花は長持ちしなくて残念ですが、 それならば暑い季節ならではのフラワーアレンジを楽しみましょう。
今回ご紹介するのは、フラワーというより、グリーンだけのアレンジです。 イメージするのは、熱帯モンスーン気候のタイのリゾート。暑いけれど、鬱蒼と茂る植物に囲まれて、心地よい風を感じるような、アジアンテイストのグリーンアレンジメントです。
バリエーション豊富な葉物
アレンジに使うグリーン(葉物)にはどんなものがあるかというと、アレカヤシ、モンステラ、クッカバラ、タニワタリ、ニューサイラン、ドラセナ、ホスタ(ギボウシ)、アンスリウムなどなど…。
お花屋さんでも、切り花としてのグリーンはバリエーション豊かに揃っています。ユニークな形をしたものや、同じ緑色でも、濃いもの明るいもの、ツヤツヤしたもの、マットなもの、いろいろあります。鉢物の観葉植物をなぜか枯らしてしまうとおっしゃる方は、切り花のグリーン、おすすめですよ。 大きなガラスの器に大きな葉を2~3枚活けるだけで、気分はアジアンリゾートです。

アレカヤシの葉で作るバスケット

アレンジに使う器にもグリーンを使ってひと工夫。アレカヤシの葉を編み込んでバスケット風にします。用意するものは、アレヤカシの葉2枚と、ちょうどいい大きさのガラスの器です。

アレカヤシの葉を、上向きと下向きになるよう2枚重ねて、葉を編み込んで作ります。
<アレカヤシの葉で作るバスケットの作り方>
1.葉を互い違いに重ねたら、まず、中心の葉脈の3カ所くらいをワイヤーでとめます(動くと編みにくいため)。

2.端のほうから編んでいきます。隣り合った葉が「横糸」「たて糸」になるようクロスさせて編みます。はじめは分かりにくいかもしれませんが、コツをつかむと、ささっと編めます。そのコツさえつかめば簡単です。

3.左右両側を編んだら、裏返しにして、ところどころセロハンテープを貼っておきます。この後、ガラスの器に巻きつける際に、どうしてもバラバラとほどけてしまいますので、テープを貼っておいたほうがきれいに仕上がります。

4.編んだ葉をガラスの器の周囲にぐるりと巻き付け、重なるところをワイヤーでとめます。


器から出る、葉の先のバラバラしたところは、揃えてカットしてもいいのですが、私はラフな感じがよいと思い、そのままにしておきました。これで、アレンジの器となるアレカヤシの葉で作るバスケットは完成です。

アレヤカシのランチョンマット

器に巻き付ける前の編みこんだアレヤカシのマットは、ランチョンマットとして使うのもオススメです。この上にフルーツやスイーツを並べれば、まるで南国のリゾートホテルにいるかのよう。

真夏のグリーンアレンジの作り方
使った花材

・モンステラ
・エメラルドウェーブ
・ホスタ
・アンスリウム(赤・白)
アレンジの手順
バスケットの器ができたら、グリーンアレンジを作りましょう。大きな葉のモンステラから始めて、次のような順番で器に花材を入れていきます。
モンステラ → エメラルドウェーブ → ホスタ → アンスリウム(緑)→ アンスリウム(白)。

モンステラは平面的に重なってしまいがちですので、向きを変えたり、葉の間にエメラルドウェーブやホスタを挟んだりして、なるべく立体的になるようにします。

アンスリウムの向きは、揃えすぎず、あちらこちら向いているほうが楽しそうに見えると思います。
器も葉のグリーン、アレンジもグリーンで、東南アジアの鬱蒼とした密林の雰囲気を楽しんでください。


ジム・トンプソンハウスの庭園

タイのシルク王として知られる ジム・トンプソン氏。同名のタイシルクの有名ブランドが、バンコク市内や空港などに、色鮮やかなタイシルクの商品を扱うショップを展開しています。そのジム・トンプソン氏の家がバンコク市内に現存します。ここは人気観光スポットの一つ。家といっても、チーク材を使ったタイの伝統様式で建てられた屋敷に、家具調度品、食器、骨董などの美術コレクションが展示されていて、博物館のようになっています。そして屋敷を取り囲むように広がる庭園がとても魅力的です。

ジム・トンプソン氏は、庭園のことを「ジャングル」と呼んでいて、整いすぎない、野生味のある庭をつくってきました。ただ、熱帯庭園では、特に雨季の熱帯植物の成長が激しく、本来の造園デザインがぼやけてしまうため、彼が住み始めてから30年間、何度も植物を入れ替えて変化してきたそうです。「ジャングル」は「手なづけられたジャングル」となり、いつも新鮮な魅力あふれる庭園になっているといわれています。
私もジム・トンプソンの色鮮やかな店内の雰囲気と、上質なタイシルクの商品が大好きで、いつかこのジム・トンプソンハウスの見学をしたいと、とても楽しみにしていました。念願叶って初めて訪れた時は、 建築物もインテリアも、もちろん庭園もとても興味深く見学しました。ちょうどその日は途中でスコールが来て、辺りが薄暗くなり、屋敷内に展示されているコレクションの銅像や仏像が不気味に佇み、庭園の木々は、大きな葉がザワザワと音を立てて揺れ、まるでジャングルに迷い込んでしまったかのような感覚になりました。

ジム・トンプソン失踪事件と松本清張『熱い絹』
ジム・トンプソンハウスでちょっとゾクゾクした感覚になったのは、ジム・トンプソン氏が、マレーシアのキャメロン・ハイランドのジャングルに散歩に出かけたまま、二度と戻らず、彼の失踪は今もなお謎につつまれたままであるという出来事が背景にあるからかもしれません。 ジム・トンプソン氏は、アメリカの元軍人で、終戦後そのままタイに住み続けました。東南アジアの美術に興味を持ち、タイシルクの復興に貢献しましたが、軍では諜報機関に属し、失踪当時はベトナム戦争の最中であったため、いろいろな憶測を呼んだようです。 キャメロン・ハイランド、ジャングル、謎の失踪、未解決、諜報機関。う~ん、これはサスペンス。興味をそそられます。

松本清張は、この事件をモデルに『熱い絹』という推理小説を書いています。
舞台は「シルク王」 が失踪したマレーシアのキャメロン・ハイランドのほか、クアラテルアという紅茶の村、バンコ ク、彼の妹が殺された軽井沢、赤坂の骨董店などなど。そして、登場人物は、私と同じ静岡出身の刑事、マレーシアの警視、シンガポール人や中国人の関係者、服飾デザイナー、舞踏団、熱帯蝶収集家、透視術師、マレーシアの山岳原住民など、いろいろな人物が次から次へと登場し、事件も次々と起こり、複雑に絡み合って、ぐいぐい話に引き込まれていきます。 結末はちょっと意外だったなという印象ですが、壮大な話の展開に大いに読み応えがありました。
この夏、キャメロン・ハイランドに行ったつもりになって、シルク王の失踪の謎を追いかけてみてはいかがでしょうか。鬱蒼とした密林にひんやりとした気分になれるかもしれません。私ももう一度読んでみようと思います。
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 海野美規 - フラワー&フォトスタイリスト -

うんの・みき/フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
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