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艶やかなサクランボやほのかに色づく梅の実など、果実や木の実はフラワーアレンジメントで季節感を演出するのにとても効果的。今回は、そんな果実を取り入れた旬のアレンジメントを海野美規さんに教わります。ガラスのコンポート皿を花器にした、食卓にぴったりのフラワーアレンジメントです。

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季節感のあるアレンジにするための演出

旬のフラワーアレンジ

花や野菜、果物など、今が旬というものを目にすると、「あ~もうそういう時季だな~」と、季節の巡りを改めて実感します。フラワーアレンジメントで私がいちばん大切にしていることは、その時々の季節を感じられることです。庭に咲いている花を摘んで活けると、まさにリアルタイムの季節を楽しめます。

お花屋さんの花、たとえばバラやユリ、ガーベラなどは、技術や流通が進んだおかげで安定的に手に入り、いつでも楽しむことができるのが魅力ですね。そんな一年を通して手に入れることができる花を使うときは、季節がはっきり分かる(その時期しかない)花や枝ものを組み合わせると、グンと新鮮なアレンジになります。花に限らず、果実、木の実なども、季節を意識させる、とてもよい脇役になります。

日本には美しい四季があります。季節感のある暮らしを大いに楽しみたいものです。

初夏から夏にはどんな果実がある?

フルーツのフラワーアレンジ

初夏から夏にかけては、果実が豊富ですね。切り花として、お花屋さんに出回るものもありますので、ぜひ取り入れてみてください。

例えば、房すぐり、ブルーベリー、ブラックベリーなどの枝ものがあります。小さな丸い実が可愛らしく、アレンジにも取り入れやすく使いやすい花材です。

果実そのものを花材にするのは、サクランボ、アメリカンチェリー、プラム、梅、びわ、アプリコットなど。色が綺麗ですから、アレンジの差し色にしてもいいですね。

果実をアレンジメントに取り入れる方法

果実のフラワーアレンジ

コンポート皿に、フルーツの盛り合わせのようにアレンジしてみましょう。ガラスのコンポート皿であれば、より涼しそうで、今の季節にピッタリです。

コンポート皿の上に、ガラスのボウルなどを重ねて花器にします。ボウルのほうに花を活けて、果実はコンポート皿の空いているところに配置してみてください。

実をつけた枝ものを、ガラスの器にざっくりと活けても素敵です。カンパニュラ、アガパンサスなどは、この時期にだけ出回る花ですので、合わせてみてはいかがでしょうか。活けるときは、実が見えるように葉を剪定したり、実がちょうどよい位置(器から垂れ下がるような感じ)に来るようにすると、より効果的です。

使った花と果実

フラワーアレンジの花材

*花
アジサイ、アナベル、クレマチス、ブラックベリー(枝)、シモツケ、ペパーミント、ゼラニウム、ビオラ、アジサイ‘隅田の花火’

*果実
アメリカンチェリー、びわ、青梅

手順/ケーキスタンド型のガラスのコンポート皿の場合

  1. コンポート皿に浅めのガラスのボウルを重ねる。ボウルのほうに水を入れて花を活けていく。
    フラワーアレンジ手順
  2. アジサイとアナベルを全体に入れる。
    フラワーアレンジ手順
  3. アジサイを花留めとして、間にミント、ブラックベリーを入れる。
    フラワーアレンジ手順
  4. 色の鮮やかな、ゼラニウム、ビオラ、クレマチスをバランスよく入れる。
    フラワーアレンジ手順
  5. コンポート皿の空いているところに、果実を配置する。
    フラワーアレンジ手順

完成!

果実のフラワーアレンジ

手順/深いガラスのコンポート皿の場合

  1. コンポート皿の中央に、小ぶりのガラス器をセットする。
    フラワーアレンジ手順
  2. コンポート皿とガラス器の間に果実を入れる。
    フラワーアレンジ手順
  3. 中央にセットしたガラス器に水を入れ、最初にアジサイを、間に小花を入れていく。
    フラワーアレンジ手順

日本の梅仕事、ハンガリーのチェリー仕事

ハンガリーのチェリー

6月は梅の季節。「梅雨(つゆ・ばいう)」とは、梅の実る頃を指すといわれています(諸説あり)。「梅仕事」は、一年のこの時期だけのお楽しみです。心待ちにされている方も多いのではないでしょうか。梅干し、梅酒、梅シロップ、梅ジャム。私の母も、必ず一年分の梅干しを漬け、梅酒を作り、最後に黄色く色づいた梅でジャムを作っています。私も母の手伝いをしながら、一緒に楽しんでいます。

実家の梅仕事は、親戚の梅の木の畑(というのでしょうか)で、梅狩りをするところから始まります。広い畑は、手入れをしていないので草がぼうぼう。虫はいるし、蒸し暑いし。この収穫作業は、なかなかの重労働なので、父も手伝います。収穫した後は、水洗いして、水につけて、干すところまでしたら、その後は、梅干しや梅酒によって違う工程となります。

若い頃は、母がしている梅仕事にあまり興味がなく、積極的には手伝いをしませんでした。

けれども、私が13年ほど前ハンガリーに住んでいた時の経験をきっかけに、日本の梅仕事のことを大切に思うようになりました。

ハンガリーのチェリー

ハンガリーでは、一家に1本チェリーの木があるといわれるくらい、庭に植えているお宅が多くありました。あるとき、あちらで親しくさせていただいていたブダペスト在住歴の長い日本の方に、ご自宅のチェリー狩りにお誘いいただいたことがありました。郊外にあるお宅の広い庭には、どのくらいチェリーの木があったでしょうか。真っ赤なチェリーがたわわに実った木が何十本もありました。

ハンガリーのチェリーは、生食用のダークチェリー(チェレスニュ)と、加工用のサワーチェリー(メッジ)の2種類。用途によって使い分けをします。メッジは、ハンガリーの名物料理のチェリースープにしたり、ジャムやチェリー酒にして楽しみます。私も教わって、チェリージャムをたくさん作りました。酸味があって美味しいジャムができました。

ハンガリーのチェリー

ハンガリーの人々は、国の経済が困難な時代が長く続いてきたこともあって、暮らしぶりは質素で、家族で一緒に過ごすことをとても大切にしていると聞きました。日曜日には教会に行き、食事を共にするというのが、今でも習慣になっています。

この季節は、週末に庭のチェリーの木を囲んで、家族で収穫を楽しみます。それは何よりも穏やかで幸せな家族の時間です。そして収穫したチェリーを、保存食にする。「まあ、なんて素敵なことでしょう~」と思いましたが、あれ、これって、日本でも同じことがあるではありませんか。「梅仕事」という同じ習慣がある! と改めて気づきました。国が違って、収穫できるものが違ったとしても、暮らし方の工夫や姿勢は同じなのですよね。

フルーツのフラワーアレンジ

ハンガリーのチェリー狩り体験から、俄然、梅仕事への興味が高まり、年を重ねるにつれて、一つひとつの作業が面白いと思えるようになってきました。自然の恵みを、昔からの知恵と工夫で一年分の保存食にしておく。丁寧に暮らすということは、こういう作業の積み重ねなのだと分かるようになってきました。

私は赤シソを入れる前の青梅の梅干しと、トロトロの梅ジャムが大好きです。青い梅の香りのなんと爽やかなことでしょう。スワーッと清涼感、爽快感に満ちています。この美味しさは、手作りでなければ味わえません。本当に美味しいものは、こうやって自分で手間暇かけて作らないといけないんだなと思います。

高齢の母は、今も元気で、大量の梅を水洗いしたり、梅がいっぱい入った陶器製のかめを運んだりします。これからも、1年でも長く一緒に梅仕事ができるといいなと願っています。

Credit

写真・文/海野美規(Unno Miki)
フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
http://www.annegarden.jp

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