ペットと生活を共にしている人が誰しも願うのは、健康で長く一緒に暮らしてほしいということです。愛犬の健康と長寿のためには、適度なスキンシップが大切。ハーバルセラピストの海野美規さんに、犬にも人にも心地よいスキンシップの方法を教えていただきました。
目次
愛犬の長寿の秘訣はスキンシップ

犬と暮らしている人は、愛犬がいつまでも元気で長生きしてほしいと思っていることでしょう。もちろん私も、我が家にいる柴犬のあんが、一日でも長く私たちと一緒にいてくれることを願っています。
愛犬の長寿の秘訣はというと、体によいご飯、体を清潔に保つこと、適度な運動、そして愛情たっぷりのスキンシップなのだそうです。「ベタベタに可愛がられている犬は長生きする」と何かの記事で読みました。ベタベタしてよい! ということであれば、あんには遠慮なくいっぱいベタベタして、ハグも一日に何回もしよう! と心に決めました。
「ベタベタに可愛がる」といっても、飼い主が一方的にベタベタしたら、犬も迷惑かもしれません。犬のほうも気分がよくなるスキンシップの方法があるといいなと思っていたところ、「テリントンTタッチ」、「プレイズタッチ」というものに出合いました。
「テリントンTタッチ」のメソッドとは?

「テリントンTタッチ」をご存じでしょうか。私は3年前、ホリスティックケアカウンセラーの勉強を始めるまで、聞いたこともなく知りませんでした。
Tタッチとは、馬のトレーナーとして活躍していたアメリカのリンダ・テリントン・ジョーンズ氏が、人間のために考案されたボディーワークを馬に応用したことから始まった方法です。
「1983年、手に負えない気性の荒い馬に円を描くように皮膚を動かすタッチを行ったところ、馬の気持ちが落ち着き、リラックスして従順な態度を示すようになりました。この結果をもとに、円を描く強さ、大きさ、速さをさまざまな形で研究し、いろいろな動物の好みに合わせて開発したものがTタッチとして今日知られるようになったもの」ということです。
Tタッチの大きな特徴は、「身体のバランスを整えること」と「感情や情緒のバランスを整えること」です。
Tタッチでは、身体に非習慣的なタッチ「いつもと違う撫で方」をすることで、皮下組織から脳へ新しい知覚情報を伝達します。軽いタッチを行うことにより、副交感神経に働きかけ、身体の緊張が解けて、心の緊張も解けてきます。犬の神経を落ち着かせて心身のバランスが整ってくると、吠えたり唸ったり、リードをぐいぐい引っ張ったり、怖がりで落ち着きがなかったりという問題行動が軽減されるといいます。
マッサージとは違うTタッチ
マッサージは「筋肉」に働きかけてこわばりをほぐし、血流やリンパの流れを改善して身体のコンディションを整えるのに対し、Tタッチは、皮膚にとても軽くタッチし、「いつもと違う撫で方」をしながら、犬の神経回路に変化を与え、心のバランスを整えるというものです。
マッサージを行うには、動物における解剖学の知識が必要ですし、ツボの位置を確認する際には、動物の骨格を把握しておかなくてはいけません。
Tタッチは、いつでもどこでも簡単に行うことができます。無理なく優しく、が一番のポイントのようです。
より気軽な「プレイズタッチ」

テリントンTタッチよりももっと気軽に、家庭で誰でも毎日できるようにと、日本人で初めてTタッチのプラクティショナーの資格を得て幅広い分野で活躍されている山田りこ氏が、日本古来の考え方や手法も取り入れたオリジナルの「プレイズタッチ」というものを考案されました。
プレイズタッチとは、「一緒にいることの幸せを、愛情のこもった触れ合いで、心と心を通い合わせ、その一体となった静けさ、穏やかさと共に感じる」ということです。触れ合いを通じてのコミュニケーションは、お互いの心と体を健康にします。
「大好き」「おはよう」「おやすみ」の3つの方法があって、それぞれ6~8つのタッチの種類があり、3分ほどでできます。
プレイズタッチに必要なものは、「愛情」と「手」だけ。そんなところに、私は大いに惹かれました。これなら今すぐ、あんにやってみようと思いました。
プレイズタッチを体験してみました

プレイズタッチを体験するには、各地でセミナーが開催されていたり、ペットのイベントなどで講演会も開かれているようです。また、ラーニングキットがありますので、DVDで学習することもできます。

私が初めてプレイズタッチを経験したのは、犬と一緒に宿泊できるホテルで開催されたセミナーに参加したとき。宿泊しているいろいろな種類の犬と飼い主がロビーに集まって、和やかな雰囲気の中でレクチャーを受けました。自分の愛犬を参加させて実際にタッチしながらのセミナーは、一緒に学べる楽しさと嬉しさがありました。ホテルに到着するまで長い時間車に乗って、飼い主も犬も疲れているところに、このプレイズタッチをすることで、心が落ち着き、ふ~っと体がほぐれる感じでした。参加していたワンちゃんの中には、とろ~んと気持ちよさそうで、眠ってしまいそうな犬もいました。
リゾートホテルというところで、温泉に入ったりして、飼い主がリフレッシュ・リラックスしている気持ちが、手や声、それと呼吸から犬に伝わるということもあるのでしょうか。お互いにゆったりした気持ちになりました。
私の好きなタッチ

テリントンTタッチ、プレイズタッチ、それぞれいくつものタッチがあって、一つ一つに名前が付いています。「大好き、おはよう、おやすみのルーティーン」は、それぞれ6つ~8つのタッチの組み合わせで1セットです。組み合わせの通り行えばより効果的だと思いますが、残念ながら私はどちらのメソッドもまだ全部はマスターできていません。覚えた中で、私も、そしておそらくあんも大好きだろうなと思うタッチがありますので、ご紹介します。
「パッシブタッチ」
手のひらの力を抜いて柔らかくして、犬が好きな体の上(お腹とか肩とか)に置きます。犬の体温を感じ取っていきます。手を通して、温かさと安心感を伝え合います。
「マズルのストローク」
鼻先から耳の下あたりまでをマズルに沿ってゆっくり撫でます。母犬が子犬を舐めるようにやさしく。
「アバロニのTタッチ」
手を平らにして犬の体に置いて、手のひら全体で1と1/4の円を描くように皮膚を動かします。実際に皮膚が動くくらい。
どれも簡単です。大事なことは、ゆったりとした呼吸で、手の力を抜いてやさしく動かすことです。
人と犬は触れ合うことで、他のどの動物よりも、双方に愛情ホルモンであるオキシトシンの量が増加することが分かっています。オキシトシンには、心を癒したり、体の痛みを和らげたりする働きがあるそうです。
タッチをすることで、飼い主も犬もきっと心穏やかに、よりよい関係を築けると思います。毎日少しの時間でいいので、取り入れていきたい習慣です。
Credit
写真・文/海野美規(Unno Miki)
フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
http://www.annegarden.jp
参考
「公式テキスト プレイズタッチ 『大好き』のルーティーン 『おはよう』のルーティーン、『おやすみ』のルーティーン」一般社団法人 アニマルライフパートナーズ協会
『犬のストレスがスーッと消えていくなで方があった』青春出版社
ホリスティックケア・カウンセラー養成講座テキスト
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