プチグレンの爽やかフレグランス&デオドラントスプレー【おうちでアロマテラピー】
ビターオレンジの葉や小枝から抽出されるプチグレンの精油は、フレッシュなグリーンの印象が強い香り。でも、じつは、フローラル系や柑橘系、樹木系の香りをあわせ持っていて、ブレンドの香りを引き立てる、重宝な精油です。今回は抗菌作用にも優れるこのプチグレンを使って、汗ばむ季節に役立つボディ用のスプレーを作ってみましょう。汗のニオイを抑えるデオドラントの役割だけでなく、ほのかに香るフレグランスとしても楽しんでほしいスプレーです。
目次
「小さな青い粒」プチグレン
プチグレンは、ミカン科の常緑樹、ビターオレンジ(Citrus aurantium、別名ダイダイ)の葉と小枝から、水蒸気蒸留法で抽出された精油のことをいいます。
「プチグレン(Petitgrain)」には、フランス語で、「小さい(petit)」「果実の粒(grain)」という意味があります。その昔、もともとは、熟す前の小さな青い実を材料としていたため、この名がついたとされますが、現在のプチグレンの精油は、一般的に葉と小枝を材料とします。その名の通り、未熟な青い実を思わせる、フレッシュで、少し青臭い香りが特徴。他の柑橘系の葉や小枝を材料とする精油もプチグレンと呼ばれることがありますが、ビターオレンジのものが主流です。精油の主な産地には、フランス、チュニジア、パラグアイなどがあります。
3種の精油が採れるビターオレンジの木
ビターオレンジとは、お正月のお飾りに使われる「橙(だいだい)」のこと。橙という和名は、冬に熟した実をそのままにしておいても、数年は木から落ちないことから、「代々(だいだい=橙)続く」という、おめでたい意味合いで名付けられたといわれ、それ故、正月の縁起物に使われます。橙色の実は、木につけたままにしておくと、春から夏に再び緑色に戻るという性質があります。一度熟した果実がまた青い実に戻るとは、ちょっと不思議な感じがしますね。果実は酸味と苦味が強いため、生食には好まれませんが、マーマレードの材料に使われたり、香りのよい果汁がポン酢に利用されたりします。
アロマテラピーの観点からすると、ビターオレンジはじつに有用な果樹で、花、果皮、葉から抽出される3種類の精油は、どれも重宝されています。真っ白な花から水蒸気蒸留法で抽出される精油、ネロリは、甘さの中に苦さのある繊細な花の香りがします。傷ついた心を癒してくれる香りで、ネロリの精油は香水の原料としてもよく用いられます。
・おうちでアロマテラピー ちょっとぜいたく、ネロリのしあわせボディオイル
一方、熟した果実の皮から圧搾法で抽出される精油は、オレンジ・ビター(ビターオレンジ)と呼ばれます。オレンジの精油には主に2種類あり、食用とされるオレンジ・スイート(Citrus sinensis)の香りには、果実そのままの爽やかな甘さがありますが、オレンジ・ビターの香りには、甘夏や八朔のように、少し苦味が感じられます。いずれのオレンジも、気持ちを明るくしてくれる香りで、ビターのほうが芳香成分の種類が多く、より複雑な香りとなっています。
・おうちでアロマテラピー オレンジ・スイートのリラックス・ブレンド
そして、緑の葉や小枝から採れるのが、プチグレンの精油です。プチグレンは、初めは青臭い香りが目立ちますが、時間が経つにつれ、ネロリの花の香りや、オレンジ・ビターの柑橘の香り、それから、樹木系のウッディな香りも感じられます。初めの青臭い香りが苦手という方もいるかもしれませんが、ブレンドの調和を図ってくれるプチグレンは、香水やオーデコロン作りには欠かせない存在。柑橘系などの軽い香りから、樹木系の重い香りまで、さまざまな香りをつなげ、全体を引き締めるという、素晴らしい役割を果たしてくれます。男性にも好まれる、ユニセックスな香りです。
花の精油ネロリは大変高価なものですが、プチグレンは比較的安価に求められます。プチグレンは、数種の柑橘精油とブレンドすることで、ネロリの代用として使うことができます。
メンタルにも肌にもよいプチグレン
プチグレンの芳香成分には、ラベンダーに代表される、鎮静、抗不安、抗菌、抗炎症などの作用のある成分が多く含まれています。知名度は低いかもしれませんが、さまざまな有用な作用の期待できる精油なので、ラベンダーのように常備しておくとよいでしょう。
抗不安作用や抗うつ作用など、精神面によいとされる香りで、ラベンダーと同じように、落ち着きたい時や気分を明るくしたい時に使うのもオススメです。また、副交感神経を優位にするので、ストレスからくる耳鳴りや不整脈を緩和します。ネロリ同様にスキンケアにも向きます。
プチグレンの爽やかデオドラントスプレー 作り方
【材料】
- 無水エタノール 10ml
- 精製水 40ml
- 精油
プチグレン 4滴
レモン(ベルガプテンフリー、もしくは、FCF、フロクマリンフリーのもの)5滴
ゼラニウム 3滴
真正ラベンダー 3滴
【道具】
ビーカー(50ml用)、ガラス棒、スプレー瓶(50ml用)、ラベルシール
*アロマテラピーで使用する瓶は、青、茶、緑色などのガラス製のものがオススメです。遮光性があり、アルコール耐性のあるものを選びましょう。アロマテラピー専門店での購入が安心です。
【作り方】
- ビーカーに無水エタノール10mlを注ぐ。
- ビーカーに精油を分量通りにそれぞれ垂らし(精油のしずくが自然と落ちるのを待つ)、ガラス棒でよく混ぜる。
- 精製水40mlを加え、ガラス棒でよく混ぜる。
- スプレー瓶に移し、フタをする。ラベルシールにレシピ名、日付、総量(ml)、精油名などを書いて貼る(ビーカーに精油が残る場合は、ごく少量の無水エタノールを入れて溶かしてもよい)。
スプレーする前にはボトルをよく振って、1カ月を目安に使い切ります。足や脇などの局所はしっかりと、ボディには軽くまとわせるイメージで使ってみてください。最初は柑橘を感じさせる爽やかさがあり、少し時間が経つとフレグランスソープのような香りがしてきます。つける人によって印象の変わる香りかもしれません。爽やかで自然な香りなので、女性だけでなく男性や、体臭が気になってくる思春期のティーンズにもお使いいただけるでしょう。
*『おうちでアロマテラピー』シリーズ、その他の記事はこちらからどうぞ。
*精油はアロマテラピー専門店での購入が安心です。下記に取り扱い時の注意をまとめましたので、ぜひご一読ください。
〈精油を使用する際の注意〉
・ 原液を皮膚につけない。ついたらすぐ石鹸で洗い流す。
・飲用しない。目に入れない。
・火気に注意する。
・医師による治療や投薬を受けている場合は、必ず当該医療機関に相談する。
・3歳未満の乳幼児には芳香浴以外は行わない。また3歳以上であっても使用量を半分以下にし、十分注意を払う。
・高齢者、既往症のある方は半分以下の量を目安に。妊娠中は体調を考慮し、芳香浴以外のアロマテラピーを楽しむ場合は十分注意する。
〈精油の保管・保存について〉
・直射日光と湿気を避け、火気のない冷暗所に保管する。
・子どもやペットの手の届かないところへ保管し、誤飲に注意する。
・開封後1年以内を保存期間とし、柑橘系の精油は半年以下を目安にする。
・香りに異変を感じたら使わない。
〈精油の品質について〉
・次の内容を箱やラベル、使用説明書で確認できるものを選ぶ。ブランド名、品名、学名、抽出部分(位)、抽出方法、生産国(地)または原産国(地)、内容量、発売元または輸入元。
〈参考文献〉
和田文緒(2008)『アロマテラピーの教科書』新星出版社
太田奈月、監修:ロジャー・ルッツ、小平悦子(2014)『「アート」と「サイエンス」の両面から深く学び理解する香りの「精油事典」』BABジャパン
バーグ文子(2017)『アロマテラピー精油事典』成美堂出版
Credit
アドバイス / 髙畠美穂 - アロマテラピーインストラクター -
たかはた・みほ/公益社団法人 日本アロマ環境協会認定アロマテラピーインストラクター。特定非営利活動法人 日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター。香りとクラシック音楽が大好き。
文/萩尾昌美
文 / 萩尾昌美
はぎお・まさみ/ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。20代の頃、ロンドンで働き、暮らすうちに、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するように。早稲田大学第一文学部卒。神奈川生まれ、2児の母。
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