ロザリアンにとって、バラは見るだけでなく、その香りも味も、すべてを楽しみたいもの。バラ文化と育成方法研究家で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんに、バラの果実・ローズヒップの効能とハチミツ漬けの作り方を教えていただきます。
目次
冬の悩みに役立つローズヒップ
初冬のガーデンでは、花が少なくなりますが、ローズヒップの赤やオレンジの鮮やかな色彩が、明るく彩ってくれるのは嬉しいですね。
日に日に気温が下がり始めるこの季節、人の体温も低くなり、抵抗力が落ちるといわれています。また、空気が乾燥すると、風邪やインフルエンザなどのウイルスが空気中に浮遊しやすくなり、それらのウイルスが体に侵入しやすい条件が増えるとのことです。さらに、肌も乾燥しがちで、カサカサしたり、小じわができるなど、とても困った季節ですよね。
そんな季節に、バラは「ローズヒップ」という自然の恵みを用意してくれました。
バラの実、ローズヒップとは
ローズヒップは、一般にバラの実と思われていますが、じつは花床という部位が膨らんだものです。一見果実に見えることから、植物学上では「偽果」と呼ばれています。
上写真は、「ペネロペ」(HMsk)のローズヒップです。春に咲いた花の咲きがらをそのままにしておくと、秋~冬にかけてローズヒップが色付きます。
ローズヒップの成分
ローズヒップには、各品種ごとに違いはあるかもしれませんが、一般に、ビタミンC、カルシウム、鉄分、ベータカロテン、ビタミンE、植物繊維他が含まれているといわれています。
特にビタミンCが豊富で、本来ビタミンCは水や熱に弱く、体に吸収されにくいのですが、ローズヒップの中には、ビタミンCを守るビタミンPやビタミンEも含まれているため、熱を加えてもビタミンCを有効に働かせることができるそうです。
また、一緒に含まれるフラボノイドは、ビタミンCの働きを増強します。
ローズヒップの効能
ロ-ズヒップを体内に取り込むと、ビタミンCが、肌のハリや弾力性を保つコラーゲンの生成を促進し、冬の乾燥や紫外線などによってダメージを受けた肌のコラーゲンの減少を抑える効果があるとのことです。
人によって違いはあるようですが、一般的に、ローズヒップは美肌作りだけでなく、風邪やインフルエンザ、便秘の予防と改善にも役立つといわれています。
※大量摂取はなさらないよう気を付けてください。また、アレルギーのある方や妊婦さん、お子様、高齢の方のご使用は十分気を付けてください。
自家採取したローズヒップの利用法
今回は、そんな冬の自然の恵みである「ローズヒップ」の利用方法の一つをご紹介します。
なお、ローズヒップは12月以降、寒さとともに、徐々に硬さを増していきますので、なるべくみずみずしいうちに採取し、利用することをオススメします。また、あまり小さなものより、2cm以上の大きさのローズヒップがよく、無農薬で育てたバラのローズヒップをご使用ください。
ローズヒップを半分に切ると、種子と白毛がびっしり詰まっています。食用にするので、これらをきれいに取り除きます。
ローズヒップを瓶に入れ、ハチミツを注いで、約2週間漬けてでき上がりです。生のまま漬けるので、少し硬めの仕上がりとなります。
ジャムのように使うなど、柔らかめがよい時には、ハチミツに漬ける前にスライスしたり、みじん切りにして、鍋で約20分煮ます(それでも少し硬さは残ります)。ローズヒップをよく煮た後、ハチミツに漬けましょう。
ローズヒップのハチミツ漬けでティータイム
私はよく紅茶やヨーグルトに加えて頂いています。他では売っていないオリジナルのローズヒップのハチミツ漬け。花好きの友達とのお茶の時間やリラックスタイムに、ぜひローズヒップでビタミン補給してください。
春にたくさん花が咲けば、それだけ冬に恵みをいただけることになります。ですので、また次の春に、たくさん花が咲いてくれるように冬のバラのお手入れをすることは、とても大切ですね。これから寒い季節を迎えますが、ローズヒップの効果を得ながら、来春に向けた庭作業も少しずつ進めていきましょう。
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Credit
写真&文 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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