クリスマスを待つ特別な日々 ドイツ風にアドベントを過ごしてみませんか?
12月25日はクリスマス。日本でもすっかり定着した、イエス・キリストの生誕を祝うキリスト教の祭日です。キリスト教徒ではない人にとっても大切な人と過ごす特別な一日ですが、特にキリスト教圏であるヨーロッパでは、一年で最も大切な日の一つ。
今回は、そんな特別な日のクリスマスを待つ期間である「アドベント(待降節)」について、ドイツ出身のエルフリーデさんにお話を伺いました。
目次
クリスマスを待つ心豊かな時間 アドベント
アドベント、という言葉をご存じでしょうか? 日本語では待降節や降臨節などとも呼ばれ、イエス・キリストの人間世界への到来を待つ、クリスマス前の4週間の期間のことを意味します。最近では、日本でもアドベントカレンダーなどが普及してきているので、耳にしたことがある人も多いかと思います。アドベントが始まるのは、宗派などによっても異なりますが、基本的にはクリスマスから数えて4回前の日曜日。2018年は12月2日に当たります。キリスト教圏では、クリスマスはクリスマスイブとクリスマス当日だけでなく、その日が訪れるまでの準備期間も大切にされているのです。今回は、私が子どもの頃から過ごしている、ドイツ流のクリスマスの迎え方についてお話しします。
アドベントのリースとロウソク
前述の通り、アドベントが始まるのは、クリスマスの4回前の日曜日。ですが、人によって11月半ば頃からクリスマスを迎える準備を始める家庭もあり、アドベントが近づくと町や家が忙しい雰囲気を漂わせ始めます。娘の小学校では、アドベントの時期になるとエントランスホールの天井から大きなリースが吊り下げられていました。また、幼稚園でもテーブルにはいつも大きなリースが飾られ、子どもたちは先生と一緒に朝にロウソクに火を灯すのをとても楽しみにしていました。ここで、リースにロウソク? と思った人もいるかもしれませんが、アドベントにロウソクは欠かせません。ドイツでは、アドベントの始まりにドアに掛ける、壁掛けタイプのリースもポピュラーですが、テーブルなどに置いて飾るリースがより一般的で、そこにはロウソクが飾られています。
日曜日ごとに灯すロウソクと香り
リースに飾るロウソクは一般的に4本。伝統的には、赤いロウソクを用います。アドベントの期間中には、4回の日曜日があり、最初の日曜日には1本のロウソクにだけ火を灯し、次の日曜日には2本の、そして3本、4本と次第に火を灯すロウソクの数を増やしていきます。アドベントの最初の朝、朝食時に最初の光が灯されると、ミツロウのロウソクのよい香りが家中に広がり、一年の中でも特別な期間の始まりを感じさせます。火を灯すのは、朝食時やティータイムなど、家族や客人が揃ってテーブルに着く時が基本。もちろん、日曜日だけでなく、他の曜日にも火を灯してクリスマスらしい雰囲気を楽しみますが、灯すロウソクの数を新たに増やせるのは日曜日だけです。ドイツの冬は朝が遅くて暮れるのも早く、午後4時半頃にはもう日が沈んでしまうので、ロウソクの暖かな明かりが余計に美しく引き立ちます。段々ロウソクの高さが異なっていくのを見ると、クリスマスが近づいてきているのを実感します。ちなみに、このようなロウソクはリース以外に飾る場合もあります。
手作りや既製品でフレッシュなリースを飾る
私の家ではリースは「基本的に自分たちで作るもの」。切った枝をリースの形に整え、母と一緒にそれをデコレーションしていました。リースづくりに利用するのは、基本的にモミやマツなどの枝。最近では、他の常緑樹が使われたり、モミ、マツ、トウヒ、イレックス、ヒノキなど異なる木の枝をミックスさせたり、とてもカラフルなリースもあります。私にとって、アドベントとクリスマスのカラーといえば、緑、赤、そして金色。時にそれにわずかにオレンジが加わります。このような色を用いて飾りつけをしていくのは、アドベントの時の楽しみの一つです。
もっとも、リースがうまく作れなかったり、時間がなかったりした時には、お気に入りの花屋さんに電話をかけて一つオーダーすることもありました。既製品のリースを購入して飾るのも、クリスマスの準備としてはもちろんOKですよ。
飾りつけは家庭によっても違いますが、私の家では、赤と金のリボンだけを使い、4つの大きなミツロウキャンドルを飾っていました。リースを手作りするには、ワラなどのリース土台を購入すると簡単。そこにモミやマツなどの緑の枝を、ワイヤーを用いて固定します。キャンドルを飾りたい場合は、専用のキャンドルホルダーを用意しましょう。ホルダーがない場合は、耐熱ガラスのコップを用いるほか、ワイヤーを数本まとめて温め、ロウソクの底面に刺して固定すれば代用できます。ただし、火を使うので、火事にならないように十分注意し、目の届く範囲で飾って楽しむことに気をつけてくださいね。リースの下にトレーやプレートなどを敷くと、ロウが落ちる心配もなく、移動も楽で、コンパクトに飾ることができるのでオススメです。
ドイツでは、テーブルに置くタイプのリースが一般的ですが、アドベントの始まりに、扉にリースをかけるのもとてもポピュラーな習慣。その場合はロウソクはなし。スライスオレンジのドライやナッツ、ストロースター(わら細工でできた星形の飾り)などで飾りつけられているのをよく見かけます。暖かな室内では、リースはすぐに乾燥してしまいますが、ドイツの冬の気候は冷たく湿っているため、屋外に飾られたリースはよくもち、アドベントの4週間の間、美しい姿を保ちます。
クリスマスに欠かせないクッキー
ドイツでのクリスマスの準備といえば、たくさんのクッキーを焼くことも忘れてはなりません。日本ではクリスマスというとフレッシュなデコレーションケーキが主流だと思いますが、このようなケーキは保存がききません。ドイツのクリスマスはみんな忙しいので、手間のかかるケーキはなかなか準備できないのです。そのため、ドイツのクリスマスはクッキーやシュトーレンなどが主役です。このクッキーは種類もさまざま。焼き上がってからしばらく置いて、柔らかくしてから食べるものもあります。焼いたクッキーは、缶や密封容器などで保存し、クリスマスを待ちながら少しずつ食べてもいいし、プレゼントにもぴったりです。私の友人にも、すでに今シーズンの分のクッキーを焼いている人が幾人かいますよ。クッキーのレシピは数多くありますが、私の家ではクリスマス前には10種類ぐらいのクッキーを焼いて準備していました。
数あるクッキーの中でも、一番オーソドックスなのは、バタークッキー。バター、砂糖、卵を混ぜ、すりおろしたレモンの皮とラム酒を加え、小麦粉とダイスアーモンドを混ぜて焼いたクッキーです。焼き上がったら、アイシングやデコレーションシュガーを使って飾りつけて完成。このレシピをベースに、ナッツやドライフルーツなどの材料を追加したり、分量を変えたりしてさまざまなクッキーを用意するのです。また、クッキーのほかにクリスマスの定番のお菓子がシュトーレン。ナッツやドライフルーツをたっぷりと焼き込んだ菓子パンのようなお菓子で、こちらも長期間保存ができ、毎日少しずつ食べながらクリスマスを待ちます。今ほど食材が潤沢になかった時代、ドイツではナッツやドライフルーツ、卵などがお菓子の材料としてよく使われていました。昔ながらのお菓子を見ると、そのような材料を用いて作られたものが多くありますよ。
クリスマスデコレーションとアドベントカレンダー
アドベントの時期には、クリスマスリースのほかにも家の飾りつけをします。例えば、バルコニーのデコレーションのために私がつくったものは、常緑樹のガーランド。太い紐に緑の枝をワイヤーでくくり、完成したら赤いリボンをつけてバルコニーに吊るしました。かつてスイスで働いていた時には、このようなガーランドを使ってとある有名ファッションショップの飾りつけをしたこともあります。生の木を使ったガーランドは、目にもとても美しく、香りも素敵なんですよ。
アドベントカレンダーもまた、この時期ならではの飾りの一つ。普通のカレンダーとは違い、日づけの部分が開けられるようになっており、その中には、一般的にチョコレートなどの小さなお菓子が入っています。朝、目が覚めるとその日の分の箱や袋を開け、中身を取り出すのは、一日に一回しかできないからこそ余計に心躍る時間です。市販のものもたくさんありますが、袋や靴下などを使って手づくりもできるので、自分なりのアドベントカレンダーをつくって飾ってみるのもオススメですよ。
それから、アドベントには花を飾るのも忘れずに。ポインセチアやシクラメン、クリスマスローズなどの花を飾って、クリスマスを待ちましょう。
クリスマスは年に一度の特別な日。日本でもたくさんの飾りが並びますが、自然由来のシンプルでナチュラルなクリスマスを楽しむのがドイツ流です。今年は、ぜひ生の枝を使ったクリスマスツリーなどを飾ってみてください。生き生きとした植物の美しさがあり、とても清々しい気持ちになれますよ。リースでなくても、きれいな緑のマツの枝を選び、マツボックリやリボンを組み合わせるだけでも、素敵なアドベントの飾りになります。自分らしいしつらいで、ぜひクリスマスを待つまでの素敵な期間を過ごしてくださいね。
併せて読みたい
・家族との時間を楽しむ ドイツ流のイースターの過ごし方
・クリスマスリースをフレッシュグリーンで簡単におしゃれに作る方法
・イギリス、中世の館「コーティール」のクリスマス・ガーランド(花綱飾り)
Credit
ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/Friedrich Strauss/Stockfood
取材/3and garden
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