秋の夜をしっとり過ごす フランキンセンス&ラベンダーの芳香浴【おうちでアロマテラピー】
秋も深まり、自分自身を見つめるのにぴったりな、静かな季節がやってきました。 今回ご紹介するフランキンセンスは、エジプトや中東で何千年も前から人々に親しまれてきた、瞑想を誘う香り。この時期の、静かに降り注ぐ月の光を思わせるような香りです。悠久の香りでリラックスしながら、自分に目を向ける時間を持ってみませんか。
目次
砂漠に生える生命の木 フランキンセンス
フランキンセンスは、アフリカ北東部から中東のアラビア半島南部、インド北部にかけての乾燥した山岳地帯に分布する、ムクロジ目カンラン科ボスウェリア属(Boswellia)の低木で、オリバナム、乳香、とも呼ばれます。木の表面を傷つけると染み出てくる乳白色の樹脂は、空気に触れるとしずく状に固まりますが、樹木同様に乳香と呼ばれるこの樹脂は、古くから香として焚かれ、また、薬剤や香水の原料として使われてきました。
最高級の乳香を産出するといわれる、オマーン南部のドファール地域は、紀元前から乳香貿易で栄えた土地として知られます。当時の都市や港、交易路の遺跡や、フランキンセンスの群生地は、「乳香の土地」として、ユネスコの世界文化遺産に登録されており、歴史的価値のある場所となっています。
古くから珍重された乳香
日本ではあまりなじみのない乳香ですが、アフリカや中東、欧州では、古代エジプトをはじめ、古い時代からさまざまな宗教の儀式で焚かれた記録が残されています。聖書では、イエス・キリストの聖誕に際し駆けつけた東方の三博士が、乳香(フランキンセンス)、没薬(ミルラ)、黄金を捧げたとされており、乳香が当時、黄金と並ぶほどに貴重で、神聖なものであったことが分かります。キリスト教では、現在でも儀式の際に使われることがあります。神に捧げる祈りの香りとして、乳香は人々の生活の中でずっと親しまれてきました。
オマーンのフランキンセンスの産地では、今も乳香を焚いて来客を迎えるそうです。空気を清浄にし、平穏を促し、虫よけにもなるという香り。日本のお香にも通じるものがありますね。
心身を落ち着かせる香り
アロマテラピーでは、フランキンセンスの樹脂から水蒸気蒸留法で抽出された精油を使います。現在の精油の主な産地には、ソマリア、エチオピア、オマーンがありますが、その土地によって生える品種が異なるため、同じ「フランキンセンス」の名でも、香り成分や効能が微妙に異なってきます。日本で一般的に流通している精油は、ソマリア産の品種(Boswellia carterii)が多いようです。
フランキンセンスの精油には鎮静作用があり、不安を感じる時やパニック気味の時に用いると、心を落ち着かせてくれます。
また、抗菌、抗ウイルス作用があり、気管支炎や風邪の予防や緩和に役立ちます。深い呼吸を促して、咳のひどい時など、呼吸器の働きを整えてくれます。肌に用いれば、傷の回復を早め、皮膚の乾燥やアンチエイジングに役立ちます。
芳香浴レシピ:フランキンセンス3滴+真正ラベンダー2滴+ゼラニウム1滴
6~8畳のディフューザー用のレシピです。(真正ラベンダーについてはこちら、ゼラニウムについてはこちらをご覧ください)。
秋の夜の美しい月明かりを浴びながら、心の内を静かに見つめてみる。そんなあなただけの大切なひとときに寄り添ってくれる香りです。透明感のある落ち着いた香りに包まれて、ゆったりリラックス。思い思いに、素敵な秋をお楽しみください。
*『おうちでアロマテラピー』シリーズ、その他のブレンドはこちらからどうぞ。
*精油はアロマテラピー専門店での購入が安心です。下記に取り扱い時の注意をまとめましたので、ぜひご一読ください。
〈精油を使用する際の注意〉
・ 原液を皮膚につけない。ついたらすぐ石鹸で洗い流す。
・飲用しない。目に入れない。
・火気に注意する。
・医師による治療や投薬を受けている場合は、必ず当該医療機関に相談する。
・3歳未満の乳幼児には芳香浴以外は行わない。また3歳以上であっても使用量を半分以下にし、十分注意を払う。
・高齢者、既往症のある方は半分以下の量を目安に。妊娠中は体調を考慮し、芳香浴以外のアロマテラピーを楽しむ場合は十分注意する。
〈精油の保管・保存について〉
・直射日光と湿気を避け、火気のない冷暗所に保管する。
・子どもやペットの手の届かないところへ保管し、誤飲に注意する。
・開封後1年以内を保存期間とし、柑橘系の精油は半年以下を目安にする。
・香りに異変を感じたら使わない。
〈精油の品質について〉
・次の内容を箱やラベル、使用説明書で確認できるものを選ぶ。ブランド名、品名、学名、抽出部分(位)、抽出方法、生産国(地)または原産国(地)、内容量、発売元または輸入元。
Photo/1) jakkapan / 2) Maros Markovic / 3) vvoe /4) JurateBuiviene / 5) Madeleine Steinbach / 6) jakkapan / Shutterstock.com
〈参考文献・ウェブサイト〉
和田文緒(2008)『アロマテラピーの教科書』新星出版社
木田順子(2014)『あたらしいアロマテラピー事典』高橋書店
公益社団法人 日本アロマ環境協会(2017)『AEAJ認定 アロマテラピーインストラクター アロマセラピスト公式テキスト 共通カリキュラム編』
キャロリン・フライ/著 甲斐理恵子/訳(2018)『世界植物探検の歴史:地球を駆けたプラント・ハンターたち』原書房
小磯学(2016)「乳香とオマーン ―その歴史、文化、観光について― 研究ノート」 https://www.kobe-yamate.ac.jp/library/journal/pdf/univ/kiyo18/18koiso.pdf
Credit
アドバイス / 髙畠美穂 - アロマテラピーインストラクター -
たかはた・みほ/公益社団法人 日本アロマ環境協会認定アロマテラピーインストラクター。特定非営利活動法人 日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター。香りとクラシック音楽が大好き。
文/萩尾昌美
文 / 萩尾昌美
はぎお・まさみ/ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。20代の頃、ロンドンで働き、暮らすうちに、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するように。早稲田大学第一文学部卒。神奈川生まれ、2児の母。
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