咲かせて、眺めて、飾ってうれしい、花のある暮らしにオススメの植物をセレクトしてご紹介。小さな庭のある暮らしを楽しむ前田満見さんが、秋のインテリアに取り入れる、実が美しいヨウシュヤマゴボウなどの植物をご紹介します。
草木が秋の装いを始める10月

ふだん何気なく通っている公園や空き地、道端に、色とりどりの草花の実が顔を覗かせています。オトメバナ、アオツヅラフジ、カラスウリ、ヨウシュヤマゴボウ….。草陰にキラリと光る小さな実は、まるで「わたしを見て!」と言わんばかり。目が合うと、その美しさについ見とれてしまいます。
オトメバナとアオツヅラフジの実

道端のフェンスや樹木などに絡みついているオトメバナとアオツヅラフジは、鈴なりの実をつけるつる性植物です。
オトメバナは、別名ヘクソカズラ。葉や茎に悪臭があるのでこんな可哀想な名前がつけられていますが、白と赤の小花も小粒の実も可愛らしく、オトメバナのほうがお似合いです。この時季の艶やかな初々しい緑色の実は、ネックレスやブレスレットのモチーフになりそうなほどきれい。容姿に似つかわしくない悪臭を放つのも、可憐な花やこの美しい実を守る術なのかもしれませんね。

アオツヅラフジは、夏に白黄色の花をつけるようですが、あまりにも地味で目立たないらしく、残念ながらまだその花を見たことがありません。秋の装いも紫黒色で、実も花と同じく控えめな印象ですが、葡萄に似たシックな実は、とても魅力的。枝葉に絡まりながらぶらりと垂れ下がる様は、野趣溢れる風情があります。緩く絡んだつるは、引っ張るとスルスルと簡単にほどけるので、道端で見かけたら先端を切って持ち帰ります。
実の愛らしさを楽しむ花あしらい

オトメバナやアオツヅラフジのようなつる性の実を活ける時は、少し高さのある陶器の平皿を器にします。器の端につるを沿わせるだけのナチュラルな花あしらい。あえて花は足さず、実の美しさと、つるの動きを楽しみます。この時、実を隠している葉っぱを少し整理してあげると生き生きと見えますね。道端で見る姿とは、またひと味違った印象です。それにしても、緑色と紫黒色の実、灰緑色の温かみのある器は好相性。自然な色合いがどんな家具にもしっくり馴染みます。

また、オトメバナの実は、庭のガーデンシェッドのドアに吊るしてガーデンアクセサリーに。焦げ茶色のドアに緑色の実が映えて、殺風景な景色がぱっと明るくなり、艶やかな鈴生りの実の美しさはアイキャッチ効果も抜群です。
自然の造形美が際立つヨウシュヤマゴボウ

ヨウシュヤマゴボウは、昔から大好きな野草のひとつ。田舎で実家暮らしをしていた頃から、近所の空き地に生えていたヨウシュヤマゴボウを活けて楽しんでいました。夏に咲く花、秋の実、赤褐色の茎、四季折々に見せる表情のどれもが個性的で鮮烈。これほど自然の造形美を堪能できる野草は他にないのではないかと思えるほど魅了されています。

結婚して都会暮らしになった今でも、ヨウシュヤマゴボウは案外身近な場所に生えていて、偶然、近所の空き地に群生している姿を見つけた時の何と嬉しかったこと。しかも、背丈を遥かに越える大株でした。何度か根元から刈られていたこともありましたが、強健で生育旺盛なヨウシュヤマゴボウは、すぐに復活して元の姿に。今秋も、たわわな緑色〜紫黒色の実が圧倒的な存在感を放って輝いています。

じつは、嬉しいことに数年前から、わが家の庭にもヨウシュヤマゴボウが根づいています。きっと野鳥からの贈りもの。はじめは、思いがけない贈りものが嬉しくて成長するがまま放っておいたら、後に大変なことに。以来、結実したらバッサリと剪定を兼ねて切り花で楽しむようにしています。実のボリュームに負けない大ぶりの器に、一種活けであしらうだけで、とても華やかに。この実の独特の美しさは、不思議と和洋問わずどんな空間にもマッチし、近くで見れば見るほど、人の手では創り出せない自然の色や形状の優美さに魅了されます。

秋が深まるにつれ、さらに色鮮やかに染まる草木の実。みなさんも、身近な道端の樹木や草むらに目を向けて、小さな宝物を探しながら歩いてみませんか。
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Credit

写真&文/前田満見
高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
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