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ピリリと爽やかな山椒を使った和・洋・中レシピ

ピリリと爽やかな山椒を使った和・洋・中レシピ

山椒は小粒でもピリリと辛い…とは、体は小さくとも才能や技能に非常に優れていて、侮ることのできない人を山椒の実に例えたことわざです。これは実際に料理をするようになると、とてもよく分かります。魚の臭みを消したり、爽やかさを演出したり。主役ではないけれど、山椒がないと成り立たない料理は少なくありません。初夏が旬の山椒が、実にいい仕事をするレシピを、会津郷土料理研究家の本間のぞみさんが紹介してくれます。

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山椒は芽吹きの頃に出回る若葉の「木の芽」や4〜5月に開花する雄花の「花山椒」、7月頃に緑色の小さな果実が房状になる「実山椒」と、季節によって食用部位が変化します。また、雌雄異株といって雄木と雌木があり、実がなるのは雌木のほうです。会津の実家では、ご近所から実がなる雌木の苗をおすそ分けしてもらって育てており、季節になると母がその枝を切って東京の私のところへも送ってくれます。

会津の実家の庭で、バーベキューで筍の蒸し焼きをつくりました。山椒の葉を散らすと筍の香りがさらに引き立ち、美味しいです。

実山椒の下処理

5~7月くらいに収穫できる実山椒は、下ごしらえをして保存しておくと、いろいろな料理に使えます。冷凍で1年ほど保存できます。

  1. 実を枝から外して水で洗う。
  2. たっぷりのお湯で、実を5分ほど、指の腹でつぶせるくらいになるまで茹でる。
  3. 1時間ほど水にさらしておく。味見してアクが強いようなら水にさらす時間をのばす。
  4. 3をザルにあけてペーパータオルなどで水気をよく切り、塩をまぶしておく。

実山椒の和風ピクルス

実山椒と一緒に、ミョウガやトマトなど季節の野菜を漬け込みます。

<材料>

・下ごしらえした山椒の実
・トマトやミョウガなど季節の野菜
・(ピクルス液) 酢1/2カップ、水1カップ、昆布1枚(2g程度)、ハチミツ大さじ1、塩ひとつまみ、醤油小さじ1

<準備すること>

トマトを使う場合は、ヘタをくりぬき、沸騰したお湯に入れて皮がはじけたら冷水に浸し、皮をすべてむいておく(湯むき)。

<つくり方>

  1. 小鍋に水と昆布を入れ、10分ほど煮て出汁をとる(昆布はそのまま入れておく)。
  2. 他の材料を1に入れて煮立て、火を止めて昆布を取り出し、熱いうちにトマト、実山椒を漬け込み、ひと晩以上おく。
実山椒がたくさん手に入ったときには実山椒だけで漬けてもGood。サラダやオーブン料理などに使えます。

実山椒のオイル漬け

下処理した実山椒をオイルに漬けるだけでさまざまな料理に活用でき、保存性もアップします。母が旅行したスペイン土産のオリーブオイルに実山椒を漬けました。お好きなオイルを使って、いろいろな味わいを楽しんでみてください。

春キャベツとサバの山椒オイル炒め

山椒は油の多い魚と好相性。最近ダイエットや健康によいと話題のサバ水煮缶は、山椒オイルでよく炒めると生臭さが消え、さらに旨みがアップします。春キャベツと炒めてパスタとあえたり、サンドイッチにして楽しみます。

<材料>

・サバ水煮缶1缶
・山椒オイル大さじ1
・塩適宜
・キャベツ大きな葉2枚分くらい
・パスタ200gくらい

<準備すること>

・パスタをたっぷりのお湯で茹でておく。
・キャベツを食べやすい大きさに切っておく。

<つくり方>

  1. フライパンに山椒オイルをひき、香りが出てきたらサバをよく炒める。
  2. 1にキャベツを投入し、水煮缶の汁も全て入れて炒める。
  3. 2に茹で上がったパスタを投入して炒め、塩で味を整える。

サバサンドの場合は、半分に切ったバゲットにマヨネーズを塗り、「工程2」とニンジンの山椒マリネを挟んで完成。山椒マリネは、ニンジンを細切りにして塩をまぶし、水気を切って実山椒とピクルス液で和えるだけ。サンドイッチや肉料理の付け合わせにぴったりです。付け合わせのジャガイモも、実山椒ピクルスを刻んで混ぜたタルタルソースであえました。

天ぷらや香りづけに便利な山椒塩

塩に山椒の葉を入れるだけで、山椒の風味がさわやかに香ります。ぜひ美味しい塩を使ってみてください。天ぷらや魚の塩焼きなど、素材の味を生かした料理にぴったりです。

魚の天ぷらに山椒塩はよく合います。

おつまみにオススメの山椒クッキー

市販の山椒粉があれば美味しくできるスパイシーなクッキー。冷えたワインとの相性もぴったりです。カマンベールチーズにも山椒オイルを一さじ。キリッと冷えたワインにぴったりです。

<材料>

・米粉30g
・コーンスターチ30g
・オイル(あれば山椒オイル)大さじ2
・ハチミツ大さじ2
・山椒粉1g

<用意するもの>

保存袋を小さめのボウルに広げておく。

<つくり方>

  1. オイルとハチミツを保存袋に入れ、緩いゼリー状になるまでもみほぐす。
  2. 全ての材料を入れてよくもみ、袋の上からめん棒で3㎜くらいの厚さに伸ばして切る。
  3. 余熱なし170℃のオーブンで20分ほど焼いて火を止める。オーブン皿に乗せたまま、余熱で完全に焼き上げる。

山椒香る水餃子

酢醤油に山椒オリーブを添えるだけで、本格的な美味しさに。時間があるときには、ぜひ皮から手づくりするのをオススメします。意外と簡単でモチモチな食感がやみつきです。

<材料/約20個分>

(皮)
・準強力粉160g
・白玉粉40g
・水100ccくらい

(肉餡)
・ニラ50g(約1/2束)
・キャベツ80g(大きな葉約1枚)
・ネギ30g(約1/3本)
・豚肉みじん切り150g
・塩と砂糖 各小さじ1
・醤油大さじ1/2
・ごま油、鶏ガラスープの素、オイスターソース 各小さじ1

(サバ餡)
・サバ水煮50gと肉餡50gをよく混ぜ合わせる。

<準備すること>

ボウルにキャベツと塩1つまみ(分量外)を入れてよく揉み、キャベツの水分をしっかり抜いておく。

<つくり方>

  1. 皮をつくる。材料をすべて混ぜ合わせ、耳たぶくらいの固さになるまでよくこねてから棒状にまとめ、ラップに包んで30分ほど冷蔵庫で休ませる。
  2. 20等分したらそれぞれ丸め、めん棒で10㎝くらいに伸ばす。
    生地づくりから餡を包むまで、子どもたちもはりきってお手伝いしてくれます。粘土遊びみたいで楽しそう。

    山椒粉入りの皮は生地をめん棒で伸ばす際にふりかける。
  3.  餡の材料をすべて混ぜ合わせる。
  4. 皮の中央に小さじ1くらいの餡をのせて半分に折り、両端を合わせて止める。
  5. 大き目の鍋にお湯を沸かして4を入れる。浮き上がってきたら差し水をする。差し水を3回繰り返したら、水気を切って器に盛る。
  6. 酢醤油、山椒オリーブ漬けを添えて出来上がり。

*暑い日には茹で上がった餃子を冷水で冷やしても、サラダ感覚で楽しめます。

身欠きニシンの山椒漬け

会津では昔から漆工芸も盛んです。写真の漆器は会津の漆作家・相田雄壱郎さん作のこづゆ椀。相田さんのブログを見て、その美しさにひと目惚れしました。お椀のおかげで、料理がさらに美味しそうに見えるのが嬉しいです。
http://yuichirou-aida.blogspot.jp

身欠きニシンの下ごしらえが重要なポイント。身欠きニシンは油が塗ってあるものが多いので、漬ける前にしっかりと油抜きをして臭みを取り除きます。

<材料>

・身欠きニシン(上乾)6匹くらい
・山椒の葉 ひとつかみくらい
・醤油、酢、酒 各カップ1ずつ

<つくり方>

  1. 身欠きニシンをさっと洗って米のとぎ汁に6時間ほど漬けて戻す。戻しすぎると口当たりがフニャフニャで美味しくなくなってしまうので注意。
  2. よく洗い、ウロコも取る。
  3. ひたひたの酢に1時間ほど漬けて生臭みを取る。その後、よく水分を拭き取る。この時、水分に生臭みが溶け込んでいるので、重石をして水分を取ったほうがよい。
  4. 保存袋に3を山椒の葉と交互に並べ、醤油、酢、酒を混ぜた液に漬け込み、なるべく空気を抜いて口を閉じる。
  5. 4の上に重石を置き、冷蔵庫で一週間ほど置いて完成。

*葉が足りない場合は、実山椒を潰して入れると香り立ちます。
*重石がない場合は、袋に入った塩や砂糖でも代用できます。
*さっと炙ると香ばしくいただけます。

身欠きニシンの山椒漬けと酢飯を笹で包んだ笹寿司や、押し寿司にしても。翌日のほうが身が柔らかく味が馴染んで美味しいです。

魚の生臭さを抑えて旨みを引き出す
山椒の魔法

会津地方はぐるりと山に囲まれた盆地のため、昔から海産物が手に入りにくく、手に入る海産物はその多くが干物でした。そのため、会津の伝統料理には干物を多く使ったレシピが残っています。

母は北海道生まれですが、嫁ぎ先となった会津は、今と違って冷凍技術が発達していなかったために、生の魚介類は北海道で普段食べていたものよりだいぶ鮮度が劣ってがっかりしたそうです。その代わり、干物を使った伝統食の滋味深い味にたくさん出合い、今ではその虜になっています。特に身欠きニシンは母の生まれ故郷である北海道が産地のため、とても馴染み深い魚でしたが、地元では新鮮な生のニシンを料理することが多く、身欠きニシンの食べ方といえば皮をはいでそのままかぶりつくくらいだったとか。ですから、初めて食べたニシンの山椒漬けの美味しさには、とても驚いたそうです。

会津では昔から、この身欠きニシンの山椒漬けをつくるためだけに山椒を育てている人が大勢いるほど、家庭で親しまれている料理です。さらに驚くのは、会津の伝統的な陶芸「本郷焼き」には、山椒漬けを仕込む専用につくられた「にしん鉢」があり、昔は会津の嫁入り道具の一つとされていたようです。

会津の伝統的な陶芸「本郷焼き」の中でも、にしん鉢の製造で有名な窯元は「宗像窯」です。6代目はベルギーのブリュッセル万国博覧会でグランプリを受賞しました。

山椒漬けをつくるのは、山椒の若葉が生えてくる田植えの頃。今も農作業の休憩に、お茶請けとしてよく食べられています。

身欠きニシンは、ニシンの頭部、内臓、背骨、尾などを切り取って素干しにしたもので、「身欠き」という名は、戻した干物が筋ごとに取れやすくなることからその呼び名がついたそうです。

身欠きニシンの干し具合には一番乾き具合によって本乾~半生(ソフトニシン)までいくつか種類があります。山椒漬けには「上乾」という硬い身欠きニシンを使い、米のとぎ汁で戻してから調理します。

身欠きニシンの山椒漬けに使う山椒の葉は5月頃~暑くなる前までに出る柔らかい新芽で、採れたてのものを使います。山椒の葉は若く柔らかいうちに摘み取り、すぐに使わない場合は冷凍しておくことができます。山椒の実をそのまま育てると赤や黒に熟し、それを乾燥させて潰したものが粉山椒です。

薬味として普段の料理に使うほか、クッキーやチーズに混ぜると、お酒のおつまみにぴったりな味が楽しめますよ。

山椒は「水の音を聞いて育つ」といわれるほど水切れに弱い植物です。鉢植えで育てる場合は水やりに注意しましょう。場所さえ気に入れば、ひこばえがたくさん生えてきます。

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