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桜の季節をよろこぶ「紅い器で愉しむ春茶会」

桜の季節をよろこぶ「紅い器で愉しむ春茶会」

東京に桜満開のニュースが届いた3月下旬、東京・台東区にある古民家のギャラリーを会場に、紅や桜色の器をつくる北海道の陶芸家、高橋里美さんの作品展が開かれました。会期中は、高橋さんの器を主役にした「春茶会」も開催。フードスタイリスト、黒瀬佐紀子さんによる春を彩る料理と抹茶のおもてなしをレポートします。

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食と器を愛でるイベント

北海道・札幌を拠点に作陶を続けている高橋里美さんの作品は、平皿や茶碗、酒器やマグカップ、花器など、日々の生活で出番が多いアイテムを中心に、使い勝手のいい形とサイズ感で人気があります。特に、磁器には珍しい紅色を基調とした作品が特徴です。

「この深い紅色の八角のお皿に一目惚れして、数年前購入したのが高橋さんとの出会いでした」というのは、フードスタイリストの黒瀬佐紀子さん。今回、東京での作品展を開催するにあたり、高橋さんの作品を身近に感じてもらえる機会になればと、フードスタイリストの黒瀬佐紀子さんによる食を組み合わせたイベントが行われました。

下町情緒が残る台東区根岸にある「そら塾」を会場に、2018年3月21〜27日に行われた「高橋里美 うつわ展」。会場のあちこちに、満開の桜の枝が活けられて、春の雰囲気。
会場の「そら塾」は、築90年を超える古民家。2階の和室で食事会が開かれました。
まるで折り紙でつくったように薄い磁器の壁掛けタイプの花器。桜の小枝をランダムに挿して。

高橋さんの作品は、札幌にあるご自宅のアトリエで生まれます。制作の工程は、成形後、素焼きに7時間、その後釉薬を施し、窯で10時間焼いて、冷ますために2日ほど要します。鮮やかな紅色を出すのは、赤色釉の銅(辰砂/しんしゃ)で、焼く前の色は、なんとエメラルドグリーン。窯内の酸素の状況によって赤の濃度が変わり、時には桜のようなピンク色になるそう。「陶芸は、土物からスタートしましたが、ガラス質が色に染まる磁器づくりに気持ちが動いたことをきっかけに、今のスタイルに。紅は色出しが難しいといわれていますが、自分が思う色に到達するまでの研究も楽しいです」と高橋さん。

この会に参加した女性たちは、食事をしながら高橋さんの作品に実際に触れ、持ちやすいサイズ感や湯切れのよい注ぎ口、また料理を引き立てる色に驚かされる機会となりました。

紅い器と春の味が競演する食事会

「紅い器で愉しむ春茶会」は、ほんのり桜の香りが移った桜茶からスタート。まず一品目は、まるで桜餅のような「桜餅風、中華おこわ」。桜色から濃い紅へとグラデーションに色づいた八角の器に料理が引き立ち、食欲をそそります。

春をイメージした前菜は、左から卵とかぶの葉のひと口寿司、菜の花のサーモン巻き、炙りイカとプチヴェールのスモークオイル和え、野沢菜とクリームチーズの玉子巻き、筍とパプリカとわさび菜の肉巻きピーナッツソース添え、ポテトサラダに紫のカリフラワーの酢漬け乗せと、いくつもの春の味を堪能できる一皿。

続けて、ウォータークレソンと筍が彩る海老しんじょ、六角の赤い器にドライトマト味噌漬けの鳥焼きにスイスチャードを添えて。パースニップ、タルティーボ、ニンジン、などを塩こしょう、オリーブオイルでローストした野菜盛り。食事のしめには、アマランサスの新芽と菜花の緑、ラディッシュの赤が引き立つ春のちらし寿司。旬の野菜がカラフルで目にも楽しい春の味の創作コース料理です。

これまで聞きなれない野菜の名前の登場に驚きながら、素材一つひとつをしっかり味わう2時間でした。

食後のお抹茶に用意されたお菓子は、銘々違うデザインの器に。高橋さんの器にバランスが合うお菓子をと、この会のために黒瀬さんが手づくりで練り切りを用意。中には、イチゴの餡が。
古民家を会場に、桜が咲く時期、お茶をカジュアルに楽しめる食事会を開いてみたかったという発案者のひとり、黒瀬さん。参加した6名に自ら1杯ずつ、ていねいにお茶を点てます。

フードスタイリストを仕事にしながら、数々の器に触れてきた黒瀬さん。高橋さんの器を使った感想は?

「最初は、こんなに鮮やかな赤色は難しいなと思いましたが、どんな料理も、盛りつけてみると不思議と引き立つんです。紅といっても、見る光線によって、奥に黒や紫、青を感じる飽きのこない赤で。なんといっても、料理が美味しく映える器との出会いは嬉しいですね」

旬の料理が引き立つ食器や味覚を探して、春到来の喜びを目でも舌でも、ぜひ味わいましょう。

左から、「紅い器で愉しむ春茶会」会場となった、「そら塾」を運営する内藤裕子さん、陶芸家・高橋里美さん、フードスタイリスト・黒瀬佐紀子さん。
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