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槇谷桜子の古民家グリーン・リノベーション「コミュニケーションのための間取り」

槇谷桜子の古民家グリーン・リノベーション「コミュニケーションのための間取り」

築100年の古民家を自宅兼会社にリノベーションした、植物のwebショップオーナー、槇谷桜子さん。「主婦」と「母」、「社長」の3役をこなすためには効率化が必須の一方で、家族や社員とのコミュニケーションも大切。忙しいながらも、互いの気持ちの機微を汲み取れるよう間取りの工夫を凝らした家づくり。家庭も仕事も両立する槇谷さん流家づくりをご紹介します。

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効率化とコミュニケーションの2つの課題

リノベーション前の間取り。

古民家をリノベーションするにあたり重要なことが間取りです。もとは12部屋の小さな和室が集まったような間取りでした。

強度的に撤去できない柱が多く、どのようにして現代に合った使いやすい間取りに変えるかという物理的な課題と同時に、それに加えて、我が家は会社兼自宅のため、仕事スペースと自宅スペースの振り分けをどうするのかという課題もありました。その課題をクリアするために、最も重要視すべきは、私が一日24時間の中で、どれだけ有効に時間を使うことができるかということ。そこで生まれたのが、仕事の効率化を図るために、廊下をなくして仕事場と家庭をドア一つで行ったり来たりできる間取りです。

リノベーションした間取り。

この間取りのメリットは、仕事の効率化が図れるとともに、コミュニケーションが取りやすいということ。私は母親として、また社長として家族や社員とのコミュニケーションをとても大切に考えています。仕事をしながら家族とコミュニケーションを取り、はたまた家事をしながら社員とコミュニケーションが取れれば理想的です。

1階は私が一日の大半を過ごすオフィスルームを中心に、壁1枚を隔てて家族スペースになっています。また、オフォス内には2階の「家族リビング」へつながる家族玄関があり、子どもたちは帰宅後、オフィスにいる私に一日の出来事を話してから2階の「家族リビング」へ帰って行きます。私は仕事の手を止めることなく、子どもたちの顔を見て、話を聞き、その表情から心情を読み取り、フォローすることができています。

天井の梁はもともとあったものではなく、つけ足した部分になります。「家族リビング」として大きな空間を確保するために、従来あった壁や柱を取り除いたため、強度的に必要になりました。

この梁は壁紙で覆うことや、天井を低くし隠すこともできたのですが、大きなボルトも隠すことはせず、自分たちでウォールナットに塗装し、あえてデザインとして見せました。これは現し天井(あらわしてんじょう※仕上げ材を用いず構造を露出するつくり)というスタイルで、デザイン面だけでなく、1階と2階の隔たりが薄くなったことで、オフィスにいても2階の足跡が聞こえ、大きめの声を出せば2階の子どもたちと普通に会話ができるのです!

まだ小学生の息子には多くの声かけも必要ですが、何をしているのかも把握でき、部屋が離れていても常に声をかけられる環境がここにはあります。

子どもたちとの時間、姉弟の時間をつくる家族スペース

2階「家族リビング」。

私が子どもたちとの時間が多くは取れないため、個室にこもることなく、子ども同士で過ごせる時間を確保したいと考えました。

個室にはテレビは置かず、子ども2人が共有して過ごせる2階の「家族リビング」にテレビなどを置き、姉弟の時間が取れるようにしています。お友達が遊びに来た時は「家族リビング」で広々とゲームなどもできるようになっています。また、3匹の犬のケージもこのリビングにあり、広々とした空間で遊ばせてあげることができます。ちなみに「家族リビング」にはIPカメラを設置しており、オフィスの私のパソコンから犬や子どもたちの様子がリアルタイムで見られるようにもしています。

廊下をなくしたため、「家族リビング」には6つものドアがあります。

それぞれの子ども部屋へ、階段へ、トイレへ、ウォークインクローゼットへ、屋根裏へ。ドアだらけの部屋となりますが、逆にそれを利用し海外のアパートメント風に!

壁紙は外壁をイメージしてレンガ模様で、ドアは黒のしっかりとしたディテールのものにすることで個々の家に帰るような雰囲気をつくっています。

いずれはドアに部屋のナンバーをつけて、よりアパートメント風にしようと考えています。現在、2階は子どもだけのスペースのため、1階のシンプルなデザインとは違い面白味を持たせました。家族スペースは全て壁紙を採用し、生活の変化と共に変更できるように考えています。

私の個室はメインルーム奥の扉を開けた先にある3.5畳。

私はといいますと、夕食後もオフィスに戻り仕事をしますので、今のところ子どもたちとくつろぐ時間は設けていません。

多くは取れない子どもたちとの時間ですが、食事中や、一緒に入るお風呂の中、また従業員が帰宅して私だけがオフィスで仕事をしている時間など、細切れではありますが話す時間は意外と多く、コミュニケーションは十分に取れていると思います。私の個室は1階のメインルーム奥にある、たった3.5畳のとても小さな部屋にしました。

シンプルに眠るだけの部屋で、もちろんテレビもパソコンもありません。今はできるだけ仕事をする時間を取りたいので、この狭さで不自由はありません。生活スタイルが変わった頃には子どもたちは家を出ているでしょうし、2階の個室に移動することも可能です。将来、この3.5畳の部屋はゲストルームなどに活用できればと考えています。

仕事をするには時間の確保が不可欠ですが、子育てにおけるコミュニケーションは時間の長さだけが全てではないと考えています。

私が仕事を始めたときは、娘は6歳、息子は1歳でしたが、それから10年。ある程度年齢も上がり、自我に目覚めた子どもに親としてするべきことは、見守り、助けを求めてきたら全力で助けることだと考えています。

我が家は手取り足取りではなく、自分のことは自分で、がモットー。自分でできるようになるための子育ては必要ですが、できるようになれば、むやみに手を出す必要はないと考えています。子育てにおいては、時間が短くとも、ポイントを押さえた濃密な時間を過ごすことを目指しています。

仕事と家庭との両立に悩む女性は少なくありません。私も長年、頭を悩ませてきたことでしたが、子どもと会社の成長とともに、こうして解決の糸口が見つかりました。私のこの家づくりが、同じ悩みを持つ誰かのヒントになればとても嬉しいです。

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